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『初詣に行こう 』
ラサ・ジェネシス(gc2273)

毎年の如き、年末年始は色々と慌ただしい。
新年という事もあり、神社などは初詣客でいっぱいだ。

「‥‥なのに、それなのに‥‥何でここには初詣客が来ないんですか!」

巫女姿の少女が拳を高く突き上げて、青い空に向かって大きな声で叫ぶ。

「(男だけど)美人の巫女さん(ちなみに俺)もいるのに! 営業スマイルはそこらの女よりめろめろのキュンってなるはずなのに!」

はぁぁぁぁ、と新年から盛大なため息を吐き、いつ客が来てもいいように境内の掃除を始める。

ちなみに、この神社はそこら中に幽霊が出ると噂が立ったせいで、お客が毎年ぜろなのだ。

「日当たりもいいのに、初詣客の為にがらがらの鐘も買い換えたのに!」

こんな巫女さん(男ですが)がいる神社にあなたは初詣に行きませんか?

視点→ラサ・ジェネシス

「一年の計は元旦にあり! というわけで鵺殿と神社に――‥‥初詣に行くのだ!」
 ぐ、と強く携帯電話を握りしめながら呟くのはラサ・ジェネシスだった。
「まずは電話電話――‥‥」
 携帯電話のアドレスから『鵺殿』という文字を探し、電話を掛けようとした時にラサの携帯電話が着信を知らせて震えている。
「む、鵺殿?」
 画面には『鵺殿』と表示されており、ラサは少しドキドキしながら「も、もしもし?」と電話に出る。
『こんにちは、ラサちゃん。今年はお世話になりました♪ 明日――来年からもどうぞ宜しくね』
「こ、こちらこそ宜しくデス」
『ねぇ、明日は時間あるかしら? 良かったら一緒に初詣に行かない?』
 初詣に誘おうと思っていたラサだったが、逆に鵺から誘われ「も、もちろんデス!」と姿勢を正しながらラサは言葉を返す。
『そう、それじゃお昼くらいにいつもの場所で待ち合わせをしましょうか♪ それじゃあ、明日ね♪』
 ぷつりと電話が切れ(鵺殿から誘われてしまった‥‥!)とラサは心の中でガッツポーズを取る。
「はっ、こうしている場合ではナイ! 着物! 着物を着てばっちりと決めて行こウ!」
 ラサはそれから慌ただしく部屋の中を漁り、振袖を探しだし、どんな着方をすれば可愛く見えるかなど日付が変わる瞬間まで悩んでいたのだった。

 そして翌日――‥‥。
(うぅ、寒いナァ‥‥)
 身を竦めながらラサが心の中で呟く。鵺を待っている間、目の前を通りゆく人はラサ達と同じく初詣を目的としているのか、女の子同士、カップル、着物を着ている女性の方が多く目立っていた。
「あ、鵺殿ダ‥‥」
 少し離れた所から見えてきたのは艶やかな振袖を身に纏った鵺の姿だった。だが人が多いせいかなかなかラサに気づく事がない。
 そこでラサの心に1つ悪戯心が芽生え――そっと鵺の後ろ側に回り「‥‥だ〜れだ!」と鵺の背後から抱き着く。
(本当は目隠しをして『だ〜れだ』をしたかったケド‥‥背が届かないヨ!)
 ラサと鵺は身長差が40センチ以上あり、ラサが望む目隠しをする事は不可能だった。
「あら、ラサちゃんも着物で来たのね♪ 可愛くて気づかなかったわ――っと、挨拶がまだだったわね、今年もどうぞよろしくね」
「こ、こちらこそ宜しくなのデス」
 お互いに丁寧に頭を下げて新年の挨拶をする。
「さ、行きましょ」
 自然に差し出された手を見て、ラサは鵺と鵺の手を見比べ、少し照れたように自分の手を差し出されたものに重ねた。
 そして2人は神社へと足を運んだのだが――‥‥。
「‥‥少ないわねぇ‥‥今日は元旦なのに」
「そうデスネ‥‥本当に神社なんでしょうカ」
 鵺とラサは周りを見渡しながら首を傾げる。参拝客を狙っていくつかの屋台は出ているが、何故か参拝客がほとんど――いや、かなり――‥‥むしろ全然いない。
「ここは幽霊が出るとかって噂で参拝客も少ないんだろうよ」
 屋台でとうもろこしを焼いているおじさんがラサ達に言葉を投げかける。
「幽霊‥‥まぁ、普段我輩たちは幽霊みたいなモノと戦ってますカラネ。今さら怖くは、ない‥‥ハズダ」
 ぎゅ、と鵺の手を強く握りしめると「大丈夫よ」と鵺が言葉を返してくる。
「幽霊が出たら――‥‥」
(オオッ、まさか少女マンガ王道の『俺が守る』が来るカッ!)
 心の中で期待していたラサだったが「アタシ、全力で逃げるわ。ラサちゃんを連れて」という言葉が返って来て、思わずラサはコケてしまいそうになる。
(で、デモ‥‥我輩も一緒に連れてってくれるらしいカラ、良いのかな?)
 苦笑しながら境内へと向かうと、巫女さんが「何で俺がこんなに掃除してんのに客が来ねえんだぁぁぁっ!」と新年早々嘆いていた。
(ここの巫女さんは男の人ナノカ)
 ちらりと隣の鵺と巫女さん(しかし男)を見比べ「ふ、鵺殿の方が似合うナ」と勝ち誇ったように呟いたのだった。
「さ、お参りしちゃいましょ」
 鵺に手を引かれ、ラサと鵺はお賽銭を多めに入れて、それぞれ願い事を心の中で呟く。
(早く色々片付いて、鵺殿のお嫁さんになれますように‥‥)
 何度も心の中で繰り返し願っていると「‥‥ぷっ」と隣から笑い声が聞こえてきた。
「えっ、え‥‥?」
「ラサちゃん、何を願ってたの? すっごく一生懸命お願いしてたみたいだから」
「それは‥‥」
 鵺殿のお嫁さんに、と言いかけて少し恥ずかしくなって「内緒デス」と言葉を返した。
「そ、それより‥‥鵺殿も巫女服を着てみたらどうカナ! あの人より似合うと我輩は思うケド‥‥!」
 びしっとラサが指差しながら鵺に言葉を返すと「はぁっ!? 何で参拝客に巫女服を譲らなくちゃいけないんだよ!」と巫女姿の男性が慌てて言葉を返してくる。
「だって鵺殿は背も高いし! 背が高い人は何でも似合うノダ!」
 巫女姿の鵺を想像してウットリしながらラサが言うと「頼むからこれ以上、俺を悩ませるのはやめてくれ!」と巫女さん(しかし男)は自分の巫女服を死守しようと構えている。
「ほらほら、巫女姿なら家に帰ったら見せてあげるから屋台で何か食べましょ。お腹すいたでしょ」
 鵺が苦笑しながらラサに言葉を投げかけると「持ってんのかよ! 一体お前何なんだよ!」と巫女さん(しかし男)からツッコミが入る。
「ちくしょう! 人ン家の神社でイチャついてんじゃねぇ! 幽霊に憑りつかれちまえ!」
 ぎゃあぎゃあと巫女さん(しかし男)はラサたちに向かって言葉を投げかけ「せっかく人が来たと思ったらバカップルかよ! ちくしょう!」と先ほどより凄まじい勢いで掃除を始めたのだった。

 それから2人は屋台でたこ焼きを買い、お互いに食べさせあったりして周りに桃色オーラを振りまいていた。
 それはもう元旦から仕事をしている人たちがピシッと青筋を立てるくらいに。
(あ、あのふわふわのぬいぐるみ‥‥鵺殿好きそうだナァ)
 射的でふわふわのぬいぐるみを見つけ、ラサはそれを見事に落として見せ、鵺へと差し出した。
「あら、ありがとう! あ‥‥あそこを見ましょうか」
 鵺が指差した先にあったのは、ビーズなどで作られたアクセサリーやストラップなどを売っている露店だった。
「このぬいぐるみのお礼にこれをあげるわ。おじさん、これ2つちょうだい」
 2つ? とラサが首を傾げながら視線だけで問いかけると「お揃いよ」と鵺が照れたように言葉を返してきた。
「今年も仲良くしましょうね♪」
 ピンク色のビーズストラップの1つをラサに差し出しながら、鵺が呟き、ラサは何度も首を縦に振ったのだった。


END



―― 登場人物 ――

gc2273/ラサ・ジェネシス/16歳/女性/イェーガー

gz0250/鵺/26歳/女性/エキスパート

――――――――――
ラサ・ジェネシス様>

こんにちは、いつもお世話になっております。
今回は迎春ドリノベのご発注をありがとうございました。
話の内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入っていただける話に仕上がっていると嬉しいです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました。

2012/1/6
WF!迎春ドリームノベル -
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2012年01月06日

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