▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『大食少女が往く! 』
最上 憐 (gb0002)

●序
 傭兵達の学業施設、カンパネラ学園。
 エミタ適合検査の末に能力者となった者の中には就学期間中の少年少女も存在し、その補足教育の一環として誕生した機関である。
 学業への意思さえあれば年齢は問わない。学園生のほか聴講生も広く募っている。
 傭兵という特殊な立場ではあったけれど、彼らは一般の学校生活と何ら変わりない喜怒哀楽と青春を、このカンパネラで謳歌していた。

 クリスマスも近い、年の瀬のある日の事。
 購買から一般教室に繋がる廊下を、カレーパンの山が移動していた。
「‥‥ん。今日も。カレーパン。大漁。大漁」
 小柄過ぎてカレーパンのインパクトしかないが、運んでいる人物は存在する。最上 憐 (gb0002)、見た目年齢十歳の小柄な女の子である。
 入荷の手伝いかと思うほど大量のカレーパンを抱えた憐だが、周囲は慣れたものだ。初めて見る者こそ驚くが、それが学園では昼の日常なのだと知れば微笑ましく見送るだけの事である。
 さてこの大量のカレーパン、今日は何処で食べようかと考えていた憐。
「‥‥ん。あっちから。食べ物の。匂いと。気配がする」
 何やら察知した模様。カレーパンの山は匂いの発生箇所目指して歩き始めた。

●調理実習室
 さて、この日実習室を使用していたのは料理研究会。
 生活に密着した料理レシピを修得しましょうの名目で活動している会員達が本日調理するのは、年末年始の晴れを彩るご馳走メニューだ。
「今日はクリスマスメニューとお節料理を作りますよー」
「会長、私お節料理を作った事ありません!」
「ローストチキンって、家で作れるんですか〜?」
「私、ケーキだけ作れればいいです‥‥」
 何とも頼りない会員達だが、レシピと道具や材料は揃っていたし、会長は前向きだった。
「皆さん、練習だと思って頑張りましょー!」

 小一時間後。
「会長〜 これ、どうするんですか〜」
「練習でも作り過ぎでしょう‥‥」
 大量に出来上がった祝いの料理の数々を前に、食傷気味の会員達がいた。
 口元をハンカチで押さえている会長も、かなりの量を食べたらしくてもう口に入らない様子だ。
「余った分は寮へ持ち帰って‥‥」
「「「却下!!」」」
「‥‥ん。食べ切れないなら。私が。処理しようか?しようか」
 そんな料理研究会員達に救世主が現れた!ドアを開けた憐の背には後光が射していたと言う――

 ちょうどカレーパンを食べる場所も欲しかったしと、テーブルに並んだ料理の横にカレーパンの山を置いて、憐は勧められるまま食べ始めた。
 まずはローストチキン。会員達が音を上げた丸鶏を、憐はぺろりと平らげてカレーパンを食しつつ言ったものだ。
「‥‥ん。量が。少しで。良く。味が。分からなかった。おかわりはないの?」
「「「少し‥‥!」」」
 感動の声を挙げる会員達の横で憐にお茶を勧めながら、会長は重箱の蓋を開ける。
「レシピ通りの分量で作ったんですけど‥‥初めてで」
 味見して欲しいらしい。
 地方によっては『ごまめ』とも呼ばれる田作りを勧められて、一口。
「‥‥ん。美味しいけど。パンチが足りない。ありきたりで。普通な。味」
「うーん、唐辛子もう一本添えましょうかねー」
 焼き物に煮しめ――他の料理にも箸を付けつつ、思うままの感想を口にする。律儀にメモを取っていた会長に暫く付き合っていたのだが、憐が次の気配を察知したようだ。
「‥‥ん。向こうからも。匂いと。気配がする」
 全部食べ終えたカレーパンの袋を実習室のゴミ箱に入れて、料理研究会員達に惜しまれつつ憐は調理実習室を後にしたのだった。

●化学実験室
 何やら妙な場所から匂いがする。
 古今東西、化学実験室でラーメンを煮る学生は後を絶たないが、化学実験室から漂うのはラーメンの匂いでも薬品臭でもなかった。
「‥‥ん。私。参上。味見なら。任せて。任せて」
「「ようこそ、健康食研究会へ!!」」
 同好会と言うには少なすぎる2名が憐を迎えてくれた。

「‥‥ん。今日は。何。作ってるの」
 憐の問いに「じゃーん」と出したのは三角フラスコ。中に何やら液体が入っている。
「‥‥ん。何。何?」
「これ一瓶で1日に必要な栄養素が全て賄える、万能ドリンクゥゥゥ!」
 非常に怪しい物体だった。
 テーブルに残っている物体を見れば、ある程度の材料は予測できる。ケールにゴーヤにオートミール、野菜と果物の皮が散乱しておりハチミツの瓶とチョコレートのアルミホイルが甘味添加を伺わせる。
 確かに、理論上は栄養満点なのだろう――しかし味は如何なものか。
「「飲みやすいよう甘くしてみました!」」
 何処ぞのテレビ通販もかくやのノリで、会員2名が勧めてくる――健康どころか食欲を減退させそうな物体を、憐は一口飲み下した。
「‥‥ん。個性的な。料理に。特化し過ぎて。弱い。キメラなら。倒せそうな。味になってるよ」
「「そ、そんなはずはー!!」」
 健康食研究会の会員2名、有り得ないと言った面持ちでフラスコを交互に煽り――卒倒した。
「‥‥ん。弱い。キメラと。一緒。だね」

●カレー番長、現る!
 二人の為に担架を呼んだ後、憐は次の気配を求めて学園内を彷徨い始めた。
「おおっ、そこ行くは最上 憐ではないか!」
 暑苦しい声に振り返れば、天辺の抜けた学生帽を被った赤髪の男が立っていた。
「‥‥ん。修行。終わったの。おかえり。おかえり」
 ボロボロの学生服に、そこだけは真っ白なハチマキを締めた男は、必殺技を編み出す為アマゾンに籠もっていた熱血漢だ。澄み切った青い瞳を煌めかせ、男は言った。
「おう、今ならば根性で宇宙にも行ける気がするぞ!」
 酸素どうするよと突っ込む者は此処にはいない。根性さえあればバグアを倒せるが、この男の口癖だ。
「しかし腹が減ったな‥‥根性では腹は満たせんのだ。最上 憐よ、食堂に行かんか? 久々に学食のカレーが食いたい」
「‥‥ん。ちょうど。カレー成分が。欲しかった。ところ」
 そう言えば、カレーパン以降、カレー成分を摂取していない。
 そうだろうそうだろうと、男はがははと大笑した。
「では行こうではないか! ときにカレーの具は大きくなったか?」
「‥‥ん。あまり。変わり。ない」
 そりゃいかんと難しい顔をする男、学食は傭兵達の栄養を担う場所、経費をケチって力が出ないではバグアにも勝てんぞ等々、大声で話しながら、二人は学生食堂へと消えて行った。ちなみに、カレーは細かい事は気にしない男の奢りである。
「‥‥ん。今日は。何か。そこそこ。沢山。無料で。食せて。結構。満足」
 そんなこんなで食堂で寸胴鍋ひとつ分のカレーを飲み干して、憐は学園を後にするのだった――



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【gb0002/最上 憐/女/10/噂の大食少女】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 周利でございます。この度はご指名ありがとうございました!

 ちっこいのに存在感は大きい憐さん。
 その存在感は1日7食(+α?)の食事で培われているのかも‥‥なんて想像しながら、楽しく書かせていただきました。
 折角なのでカレー番長も登場させてみました。きっとこの後、彼は単位取得に走り回るのです‥‥(笑)
WF!Xmasドリームノベル -
周利 芽乃香 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2012年01月23日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.