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『総力戦【NM】昔日のスーヴニール 』
三島・玲奈7134)&瀬名・雫(NPCA003)


■再会はいつも必然として

 三島・玲奈(みしま・れいな)が、いつものネット喫茶に足を踏み入れた。
 店員が玲奈へ声をかけるよりも早く、何処かの席から歓喜に湧いた、聞き覚えのある声が耳に届く。
 声のした方へ向かってみれば、友人の瀬名・雫(せな・しずく)がホームページ『ゴーストネットOFF』を更新しているところだった。
「あ、玲奈ちゃん、いい所に! ……ね、見て! 今日はすっごい写真を手に入れたんだよ。オカルト満載のヤツっ!」
 声をかける前に、雫が玲奈に気づいた。興奮醒めやらぬ調子で捲し立てると、玲奈の腕をとってモニタの前へ座らせる。
 この写真の景色――各地を飛び回る玲奈には、これが南米の密林だと認識できた。
「ほら、ここ」
 雫が玲奈に覆いかぶさるように身を乗り出し、マウスを操作する。
 画面のマウスカーソルが指した場所には、
 宇宙人グレイらしき物体や、宙に浮かぶ青白い人魂、恨みがましい女の顔などが映り込んでいる!
 玲奈の目に鋭さが宿るものの、それもすぐに消えた。
「拡大したり細かく分析したけど、合成やオモチャじゃないんだ! 特ダネだよ!」
 興奮した雫に肩を揺さぶられ、玲奈の視界が僅かにぶれた。
(あ……)
 突如、目眩を覚えた。雫の行為にそう感じたわけではない。
『写真撮影者』の欄に記された、その姓名に、だ。
 稀に見るスクープに熱を上げている雫は、そんな彼女の気持ちも汲んであげる余裕はない。
「ね、玲奈ちゃん。この写真場所へ、一緒に取材に行ってほしいの! お願いしますっ!」
 こうも真剣に頼み込まれてしまっては、玲奈も断りづらい。
 渋々といった形で引き受けると雫は狂喜乱舞し、玲奈に抱きついて感謝する。
 宥めるように雫の手に軽く触れ、写真を見つめながら玲奈は独言する。
「孤児院の友達とこんな形で再会するなんてね……」

■IO2ブラジル基地内

「元気だった?」
 逞しい従軍記者に成長した彼。
 がっちりとした腕で玲奈と握手を交わし、つかの間の再会を懐かしむ。
「ところで、君も写真家になったのか?」
「ただの取材の手伝いよ」
 それよりも、と手を離し、玲奈は悪戯っ子のような眼をして彼を見上げる。
「何か頼み事があるんでしょ? あんな凝った手口で私を呼ぶからには」
 言葉に詰まった彼は、玲奈の表情を伺うように見つめ、敵わないなと苦笑する。
「勘が鋭いところも相変わらずだね」
 彼は訥々と語る。【モントークボーイ】を知っているだろうか、と。
 米軍の超能力部隊の名。当然、玲奈も知っていた。
 脱走者――子供達を麻薬組織が養育しているという。
 当然ながらというべきか……その少年たちはそこでただ養われているわけではないはずだ。
 
 この界鏡現象の元凶である『敵』の捕虜や尖兵を鹵獲すべく開始された【ニムロデ】作戦中、判明したものだ。
 件の……雫が狂喜乱舞していた写真撮影現場付近を捜索していると、
 放棄されて久しい開拓キャンプがあり、そこに彼の誘拐された娘も居るらしいことまで掴んだ。
 それが分かったのは偶然とも運命ともいえよう。
「娘と、子供たちをできうる限り救出して欲しい」
 そう言って協力を仰ぐ彼を、玲奈は過去と重ねあわせた。
「……あの時は、お互い子供だったのにね……うん、いいよ」
 助けに行ってあげる、と言いながらも、玲奈の紫瞳は現在の彼をまっすぐ見て、黒瞳はうすぼんやりと過去の彼を見ていた。

■米国ロングアイランド

 その東端、モントーク基地跡。近くまで行き、物陰に身を隠しながら、玲奈は双眼鏡を覗き込む。
 やや不安そうに玲奈の服を握り締める雫だが、その目は恐怖ばかりではなく、心霊ネタが濃厚な『ニオイ』に期待の色も見せている。
「頼りにしてるからね、雫」
「それ、こっちが玲奈ちゃんに言うセリフだよっ……」
 お互い顔を見合わせくすくす笑う。緊張が解けた雫に、ここで待っていてと指示し、
 監視に見つからぬよう気配を消して側面から後方へじわじわ回りこみ、徒手空拳のまま一気に距離を詰めると見張りの首筋に叩きこみ、一撃で倒す。
 雫の手を取り、基地内部へ侵入していく玲奈。暗い道を息を潜め進んでいく。
 空を切る音を聞き逃さず、玲奈が雫を押しのけて飛んできた鉄柱を避けた。
「殺さないと」
「死んでね?」
 少年兵達が玲奈を発見し、口々に呪いの言葉を浴びせかけた。
 念力でねじ切った鉄柱を武器がわりに握りしめて玲奈を襲う!
 身を捻ってそれを避け、鳩尾に拳をねじ込む。
 彼の願いを覚えていたので、敵は殲滅が信条の玲奈も、今回は手加減しているようだ。
 やりづらいと思いながらも、襲い掛かる刺客を捌いていく。
 玲奈が交戦中に、雫はめぼしい資料がないかとあたりを見回す。
 ちょうど左側の小部屋に、埃の被った書類が無造作に置かれているのが見えた。
 玲奈に任せたよと声をかけ、小走りに部屋へ近づいた――雫はギクリとして立ち止まる。
 小さな悲鳴が聞こえ、玲奈がハッとして雫の向かった部屋へ飛び込むと。

 そこに、従軍記者だった彼が立ちはだかっていた。
 雫に手を伸ばした姿勢で玲奈を見つめている。彼の魂胆を見抜き、間に合ったことに安堵する玲奈。
 駆けてきた雫を身体の後ろに庇い、彼を睨みつけた。
「やっぱり……罠、だったんだね」
 再会した瞬間から、軍に鍛え上げられた嗅覚は、彼は危険だと警鐘を鳴らしていた。でも、彼女の心は――それを信じたくなかった。
「勘が鋭いのは、困るよな。命を短くするぞ」
 彼は肩をすくめ、銃を二人に向ける……。
「……貴男とは思い出のままで居たかった……」
 楽しかったあの頃のままで。
 溢れ出しそうな涙を堪え、左目から光線を発射し、彼の急所を狙い撃った。
 ゆっくり倒れる彼は、何処か満足そうな顔をしていた。

 一人だったら、思い出が現実を塗り替えそうで泣いたかもしれない。
 でも、今は。トンネルの奥底からうぞうぞ湧いてくる宇宙人たちを蹴散らすという役目と――
「玲奈ちゃん……」
 抱きしめてくれる友人を守ること。
「今は……友達は雫がいるから……大丈夫」
 追憶を振り捨てるように、玲奈はがむしゃらに魔物をなぎ倒していく。
 白い影の魔物……宇宙人だろう。無数の影が襲いかかるが、今の彼女の敵ではない。
 瞬時に霊力を高め、影を手刀で切り裂き、連なれば纏めて眼力光線で撃ちぬいた。
 その影が消える僅かな間に、雫はシャッターを押す。割と元気だ。

 武神さながらの戦いぶりは、気づけば敵の数をみる間に減らしていき、あっという間に蹴散らしていた。
 大したことないのね、と呟き、頬に付着した返り血を拭う玲奈。自身に外傷はない。
「無理しないで、玲奈ちゃん……」
 心配そうに見つめる雫に、心配いらない、と言いながら
「いいの……私は、軍が恋人だから」
 その貌に悲しみはもう無い。さぁ、帰ろう、と、いつもの調子で彼女は声をかける。
 共に歩きながら、その横顔を見つめる。玲奈の横顔は凛としていて、とても美しかった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【7134 / 三島・玲奈 / 女性 / 年齢16歳 / メイドサーバント:戦闘純文学者】
【NPCA003 / 瀬名・雫 / 女性 / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人】
PCシチュエーションノベル(シングル) -
藤城とーま クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年02月22日

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