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『●閃光のバトルシスター/前 』
白鳥・瑞科8402)&(登場しない)

「……悪逆非道と呼ばれる組織の割には、作りは非常に質素ですのね」
 修道女が一人、薄暗い廊下を散歩するかのような足取りで進んでいた。
 しかし、ここは教会ではない。そして彼女……白鳥・瑞科(しらとり・みずか)は当然、ただの修道女でもない。
 組織の名は『教会』。そこに所属する彼女は武装審問官、と呼ばれている。
 教会に所属しているため着用しているものも修道服なのかもしれないが、彼女の体に吸い付くようにフィットした修道服。
 伸縮性のある生地を使っているようで、瑞科のボディラインをくっきりと示していた。
 コルセットで胸部も豊かに強調されてされているが、何よりも眼を引くのは、スカートに深く大きく入ったスリット。
 瑞科が歩くたびに揺れ、黒色のニーソックスで覆われた柔らかそうな白い脚が覗く。
 その清楚な修道服に、魅惑的なスリットが入っているのは戦闘時に動きを妨げぬため、機能も追求した結果だろう。

 瑞科は大きなアルミ製の扉の前に立つ。
 当然施錠してあるのだが、彼女は僅かに悩んだあと、踝まで有る長いスカートをほんの少したくし上げ、膝が胸につきそうになるまで上げ――
「防犯対策は減点ですわ、ね!」
 と、勢い良くアルミ製の扉を蹴り穿つ。その細い体の何処に此程の力が隠されていたのか。
 派手な音を立てつつ、扉であった金属は床に打ち付けられて転がり、音に気付いた組織員が武器を手にして其処此処より駆けつけてくる。
 お邪魔いたしておりますわ、と優雅に礼をしたが、誰一人として答えてくれるものは居ない。
 漸くお出ましになった彼らの所持している武器を見て、瑞科は落胆の表情を浮かべた。
「まぁ、ナイフや、銃? ……そんな武器で立ち向かってくるなど、本当にどうするのでしょう」
 やる気も薄れたような瑞科へと向けられた無数の銃口。
 問答無用で射出された銃弾が彼女に降り注ぐ。常人では目で追えぬほど速く、身を食いちぎる凶雨である。
 防刃・防弾にも効果がある最先端の素材だが、敵に髪一本すら触れさせぬ彼女には縁のないものかもしれない。
 いや、動きやすさと、破れにくいということが重宝しているくらいだろうか。
 身を低くして上半身を狙う凶弾をやり過ごし、くるりとターン。躍るような足さばき と優雅な動作で数多の銃弾を躱す。
「貴方がた、ダンスは踊れまして?」
 スカートが空気をはらんで柔らかく舞い、スリットは大きく開いて彼女の瑞々しく、むっちりと滑らかな太腿を露わにした。
 瑞科は艶やかに微笑み、前方へと跳ぶ。空中でふわりと一回転。
 ケープが羽のように彼女の後ろでひらひらと靡く。
 ヴェールに隠されていた彼女の表情は、物柔らかで余裕さえ感じられる。
 敵の頭上へ来ると、そのすらりとした脚を水平に薙ぎ、数人まとめて蹴り飛ばす。
 太腿に食い込むニーソックスで大半は隠れてしまっているが、脚は一部の無駄もなく、過剰な筋肉もない。
 しかし、美脚から繰り出される攻撃は優雅な体さばきに反して鋭く、まともに食らった戦闘員を巻き添えと共々壁へ叩きつけた。
 かつ、とブーツの踵が床と接して大きな音を部屋に響かせる。着地時の振動に瑞科の 胸は重たげに揺れ、ちゃり、とロザリオが小さな音を立てた。
 敵が行動を起こそうとする刹那、瑞科は白い残像を残し、相手に肉薄する。
 鳩尾に拳をねじ込み、跳びかかろうとする者には後ろ回し蹴りで頭部を狙う。
 彼女の肢体に見惚れる間もなかった組織員の骨を砕く鈍い音がし、哀れな男は地をまき散らして冷たい床に沈んだ。
 太腿の付け根近くまで露わになっていた脚を、今度は勢い良く前へ蹴り上げ、くるりと反転。
クセのない絹糸のような光沢を持つ髪がさらりと揺れる。

 瑞科と対峙し数分しない間に数十人が倒れてしまった。
 危機と捉えた組織員たちは、示し合わせたかのように一斉にめりめりと筋組織、体躯が変化していき――本来の姿を現す。
 この世のものと思えぬ姿。それを眼にした瑞科には一分の動揺もなく、可憐な桜色の唇をきゅっと引き締め、剣を構えた。

「人類に仇なす魑魅魍魎……【教会】の名のもとに。この武装審問官、白鳥瑞科が天罰を下して差し上げましょう――」
 革のグローブが擦れる音を立て、銀色の剣が異形の姿を刀身に映しだす。
『グルェウ……』
 声と呼べぬような音が変形した肉塊から漏れた。
 鮫のように鋭い歯を持つ口が唾液を零しながらも大きく開かれ、瑞科の喉元に喰らいつこうと、ぶよぶよとした円形の胴を揺らしながら突進してくる。
「品が良くありませんわ。わたくし、マナーを守れない方には厳しくてよ?」
 ギョロギョロした目に映った最期の光景は、瑞科の剣か、彼女の嗜めるような表情か。
 頭上から剣を振り下ろされ、異形の身体は左右綺麗に両断された。
 それを合図に、または恐怖を戦闘本能が凌駕したか。一気に瑞科目掛けて化け物どもが襲いかかっていく。
 柳眉を寄せた瑞科は、棘を飛ばす魚人の両腕を断ち切り、返す刃で首を撥ねる。
 体を捻り、左足に重心を傾け、スイングの要領で剣を水平に薙ぐ。
 キラリと光ったように見えたであろう剣の軌跡は視認できず、彼女が動けば悪魔に成り下がった者共の四肢は一分、あるいは全て切り離されていく。
 為す術もなく切り刻まれていく身体を見つめ、奇怪な断末魔を上げることだけが唯一の抵抗。
 息を吸うように容易く、踊りながら悪魔を殺す。
 美しき修道女が剣を振るうのを止め、血脂をふるい落として鞘に収め――

「――覗きなんて、感心しませんことよ」
 暗闇に向かって囁くように言った。

『ただの小娘ではないと思っていたが……【教会】の飼い犬とはな』
 血溜まりと屍が点在する通路通路の先、奥へと誘う暗闇からくぐもった声が聞こえた。
 ずしずしと重い足音が徐々に近づき、空気が振動する。

 照明と瑞科の蒼瞳が見据えたのは、巨大な異形だった。
 山羊のような角を頭部に持ち、甲虫のような光沢のある身体。
 指の長爪は肉食獣のそれよりも鋭く、触れただけで刻まれそうなほど。
 およそ統一感のない姿は【合成獣】という言葉を瑞科は頭の片隅に浮かべ、すぐに消し去る。
 その巨体で既に動かぬ部下だった身体を石を蹴るように散らしつつ踏みしめ、死者の尊厳すら奪う。
 姿を現した異形は、今戦った奴らとは違う闘気を持っていた。指揮官クラス……恐らく、この施設を守る長であろう。

「犯した罪は大きいとはいえ……死者の冒涜とは、許しがたい蛮行。つくづく邪悪ですわね」
 あくまでも理知的に語りかける瑞科に対し、小癪な、と吐き捨てる異形。
『貴様は我の贄として、教会の泣きっ面を拝みながら貪り食ってくれよう!』
 言い終わる前に瑞科目掛け突進してくる異形。巨体から生み出されるスピードは、想像よりも速い。
 飛び上がって突進をやり過ごした瑞科。
 頭に生えているゴツゴツした角に目を留め、短い気合の声を発して鋭い蹴りを見舞い、へし折る。
 左足で頭を踏みつけてやりながら、離れた場所にふわりと着地した。
 艶かしい脚が際まで露出し、勿体ぶるようにスカートがそれをゆっくり覆い隠す。
「貴方はわたくしを満足させてくださるかしら?」

 白いロングブローブを身につけた腕を、挑発するように、それでいて優雅に相手へ伸ばした。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
藤城とーま クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年03月05日

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