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『 』
白鳥・瑞科8402)&(登場しない)
●閃光のバトルシスター/後

 地下施設内部からは、不定期に地響きと破壊音が幾度も幾度も響き渡る。
 天井に設置された照明はだらしなく色とりどりの配線を垂らし、辛うじて落下を防いでいる状態でゆらゆらと揺れていた。これらが落ちるのも時間の問題だろう。

 山羊のような頭を持った異形は、瑞科に鋭利な爪を振るい続ける。柔らかく張りのある瑞科の肌など、触れただけで刻まれそうな印象さえ受けた。
 妖しい魅力を持ったシスターを切り裂こうと、風を切り、唸りを上げるが――振り下ろされた先、既に瑞科の姿はない。
「常々思いますけれど、悪魔には造形美がありませんわね。契約を行った代償にしては、あまりにも悲しい姿……」

 彼女は上空に跳躍していた。黒いスカートを大きくたなびかせ、
 豊かな胸をさらに強調するかのように脇を締め、片手を前に突き出し異形へと迫る。
 ヴェールが風を受けてひらりと踊る。
 垣間見える整った顔には微笑を称え、天よりの御使いのような神々しさをも感じさせていた。
 死を告げる天使――それが彼女に相応しい。

 己の所業を悔いなさい――凛とした声で告げ、空中で脚を開く。
 柔らかな修道服の生地は、彼女が瞬時に行った激しい動きに煽られ、
 特にスリットが入った側の脚は、隠しようもないほど晒された。
 ニーソックスは太腿に食い込んだまましっかりと固定され、少しもずり下がっていない。
 そのまま上半身を仰けぞらせ、豊かな胸を突き出す。
 コルセットで整えられた身体は、見事な双丘を更に際立たせ、ウェストからヒップまでのラインももっと美しく整えられていた。
 肉付きの良い悩ましい脚を見せつけるかのように、異形の頭へ向かってまっすぐ伸ばす瑞科。
 空中で姿勢を入れ替える。
 その動きは優雅ではあっても素早く、異形が迎撃しようと彼女へ伸ばした爪は一瞬遅く、かすりもしない。
 しかし――彼女の動作を追うように、遅れて動いたヴェールは切り裂かれ、穴を開けられてしまった。
「あらいやだ……当たってしまいましたわ。ですが、わたくしの髪が無事でしたら、それはそれでよかったと思うことに致しましょう」
 ヴェールの事は『今日の天気は悪いわね』と同じくらいの軽い響きしか持っていない。
 特に気にした様子もなく言ってのける彼女に、さしもの異形は憤怒した。
『教会の小娘が……! 余裕を見せているのもここまでだ!』
 腕を掲げると、魔力が集中していく。
 小さい炎が瞬時に火球となり、異形の手のひらに集約されていた。
『死ねぇい!!』
 渾身の魔力を持って、瑞科へと投げつけたはずだった。
「お馬鹿さんですのね……。わたくしに余裕があるというのは、貴方が――」
――わたくしを満足させるほどの強さがないからですわ。
 小鳥の囀りのような声音で、酷なことを言いつつ瑞科は剣を素早く振り抜き、迫り来る巨大な火球を両断してしまった。
 瑞科を通り過ぎ、目標を失った火球は壁に接触して爆発した。
 爆風に乗って石粒がケープにパラパラと振り、長い髪の毛先が煽られつつも、
 瑞科は涼しげな顔でぱっぱと払いながら近づいてくる。
「多少は期待して待ち構えてみましたけれど……てんでお話になりませんわね。あなたの本気、それでお仕舞いですこと?」
 施設の長という地位と実力を持っている異形だったが、これほどの絶望や狼狽を感じたのは初めてであった。
 自分より強いものが居ないなどと豪語するわけではないが、そう、瑞科とは次元が違いすぎる。
 己の敗北を、無力さを嫌というほど進行形で味わっている異形は言葉も無く立ちすくむ。
『バカな……』
 お決まりの台詞に、瑞科はまたしても目を閉じて落胆する。
 いつまでも遊んでいられませんので、もう終わりにしましょう――と、再び開眼し、微笑んだ。



「――以上で、件の組織壊滅の報告を終了致しますわ」
 教会に戻り、司令へと任務報告を行う瑞科。
 革製の椅子に深く腰掛けている司令は、報告結果に目を細めると軽く頷いた。
「そうか、ご苦労。いつもながらその手腕は素晴らしいな」
「うふふ……司令から直々にお褒め頂き、恐悦至極です。任務も楽なものでしたわ?」
 そのようだな、と呟いた司令の声も温かいものを持っていた。
「次もお前に任せようと思う。期待しているぞ」
 司令の寵児と言えるほどに目を掛けて貰っているが、彼女はそれ相応、いや、それ以上の任をこなしているのだ。
 司令でなくとも、彼女の実力は正当に評価されているといってもいいだろう。
「お任せ下さいな。ご期待を裏切らぬと断言できますわよ」
 優雅に一礼し、くるりと踵を返した。彼女の動きに合わせ、長いスカートは優しく緩やかに揺れ動く。
 服の上からでもわかる、形の良いヒップを左右に振りながら司令室を後にする瑞科。
 編み上げブーツが床を打ち鳴らす音は、無人の長い廊下に響き渡る。
「人に礼を言われるのは、良い気分ですわね……」
 ましてや、全幅の信頼を置いている司令に。
 堪えきれず、瑞科の口角が持ち上がって、忍び笑いが漏れた。
「ああいった手前、そして信頼のために次もそつなくこなしましてよ……?」
 高い目標は、いつか自分を重圧で押しつぶすといわれている。しかし、瑞科にはそれは訪れようもない。
 なぜなら、彼女は完璧を目指しているわけではない。持ちうる力の半分も出さずに、任務の完遂を行っているだけだ。
 出し渋りをしているわけではなく、歌いながらでも十分こなせる。それほどの実力の持ち主である。
 次の戦いまで、暫く心身を休めると致しましょう。
 万全の体制で任務へ臨むという楽しみのため、僅かな休息を得た瑞科は、リフレッシュに勤しむことにしたのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【8402 / 白鳥・瑞科 / 女性 / 21 / 武装審問官(戦闘シスター)】
PCシチュエーションノベル(シングル) -
藤城とーま クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年03月05日

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