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『戦乙女の休日 』
白鳥・瑞科8402)&(登場しない)

「瑞科、ありがとう。折角の休日につきあわせちゃって」
「何を仰るの。わたくしもちょうどオフですから構いませんわ?」
わたくしも休日は楽しみたいですもの――茶色の髪を耳に掻き上げながら、
白鳥・瑞科(しらとり・みずか)は申し訳なさそうにする同僚に、優しく微笑んだ。
 新しい服が欲しいと言うので、瑞科もじゃあ行こうと同意し並んで街を歩く。
 同僚がちらちらと瑞科の方を伺い、とうとうその唇から溜息が零れ落ちた。
「……いつも、瑞科と並んで歩くと自分の魅力が乏しいんだな、って思うわぁ……」
「な、なんですの、突然……貴女の魅力、十分ありますわよ?」
 瑞科が困ったような表情を浮かべ、同僚の女性を見つめた。
 同僚も普通に【可愛い】。しかし、瑞科は【完璧】なのである。
 茶色のロングヘアーは綺麗に手入れされ、戦闘任務後であろうと輝きは損なわれない。
 白いミニのプリーツスカートからは、しゃぶりつきたくなるようなむっちりした太腿が晒され、
 ロングブーツに隠れてしまって全てを見ることはできないが、足首に向かっていくにつれスラッとした、非常に理想的な脚線美を持っていた。
 大きく張りだした胸は歩くたびに揺れ、同性ばかりか異性の目を十二分に引いてやまない。
 そして整った顔立ち――ぱっちりとした二重の瞳。厚ぼったくなく、ふっくらした唇は艶やかで、吸い付きたくなる。
 白い肌、薔薇色の頬。まるで生誕した時に美の女神の祝福を受けているようだった。
 こんな女が恋人や伴侶であれば。どれほど誇らしいだろう――道を歩けば男が振り返る、そんな女性だった。

「瑞科に言われると、嬉しいけどなんか複雑……。大事な友だちだけど、彼氏ができても瑞科には紹介しないって決めてるから、そこだけは許してね」
「なんですの、それは失礼ですわよ!」
 肩を落としていた同僚兼友人の言葉と視線に、眉を吊り上げ、可愛らしく頬を膨らませる瑞科。
 美人がこんな表情をしても、様になるものだ。
 お互い顔を見合わせて笑いあった後、
ショーウィンドーに飾られていたパステルカラーのコートに目を留め、揃って店に入る。
相手に似合いそうな色や服をアドバイスして身体に当ててみたり、試着したりなどして吟味していた。
空だった買い物かごは服をぽいぽいと投げ入れられ、満足した頃改めて見ると――かごの中身は山のような盛りを見せている。
「任務が多いとあまりお金も遣いませんし、たまの買い物。これくらいバッと買ってしまうのも良いでしょう?」
「そうそう! ストレスの発散にもなるし、欲しいものは今じゃないと買えないもの」
同感ですわと苦笑しながらカードを出して支払いを済ませると、配送手続きを頼む二人。
店員から満面の笑みでありがとうございましたと言われながら店を出る。

ブランド物の腕時計をちらりと見れば、もう昼を過ぎていた。
「ね、瑞科。そろそろ御飯食べない? ここの通りに、御薦めのパスタ屋さんがあるの」
「まぁ‥‥貴女の御薦めは毎回外れがありませんから、大いに期待していましてよ?」
目をキラキラと輝かせ、同僚の御薦めだというパスタの店へと向かう。
道中、何回か気易そうな男にナンパをされたりしたが、こういうあしらいも慣れたもので素気なく断り、
カツカツと足早に進む瑞科。やや大股で歩くので、プリーツスカートが大きく揺れ、ぷりんぷりんしたお尻が誘惑的に振られている。
ニーソックスの絶対領域は完璧。短いスカートが揺れるたび下着が見えそうで――見えない。このもどかしさもまた男の目を引いている。
「瑞科さぁ、なんか時々ワザとやってるんじゃないかって思うときがあるんだよね‥‥」
「何をです?」
 問い返しに『なんでしょうねー』と返されたまま、小首を傾げる瑞科。彼女はワザとこういうことをしているわけではないのだ。
 その危機感のない為草が、男にイケると思わせるに足る【下心】へ拍車をかけているとも知らず。


「――え、じゃあ、また【出張】行ってきたの?」
「そうですわよ。今朝帰ってきたばかりですわ」
 出張、とは任務のことである。
【教会】に所属している彼女たちには、任務や組織のことを口外することは当然禁止されているし、本人たちも十分にそれは自覚している。
 それゆえ、隠語を使って会話に盛り込んでいるのだ。
「そうと知っていれば、今日はゆっくり寝かせてあげられたかな……ゴメンね」
「さっきも言いましたでしょう。構わない、と。わたくし嫌なら嫌だと断りますもの」
 フォークを持つ手を止めた同僚に、くすりと笑いながら応える瑞科は、それに今回も大した事ありませんでしたわ、とミニトマトを口に運ぶ。
「でもさ、【先生】から褒められたし手当もいっぱい出たんでしょ? トップだもんねー、瑞科」
「貴女も頑張っているのでしょう? 【先生】にお褒めいたくと、苦労も吹き飛びますわよ。何でしたら口添えしますわ」
「げっ。いいよ、緊張して、纏められなくなって混乱しちゃうと死にたくなるし」
 嫌そうな顔をして拒否する同僚に、大げさねと軽く笑って。
「ですが、遣り甲斐はありますわよ。わたくし、この仕事好きみたいです」
 嬉しそうに微笑む瑞科に、つられて同僚も微笑んだ。

 互いに、命を落とす同僚も数多く見てきた。組織に不要とされたものも。
 だが、それを知っても瑞科はどちらが悪いのだと糾弾しない。
 それはこの世界が実力社会でもあるし、悪魔だのという存在は隠匿しなくてはならない。
 どちらともなく無言になり、窓の外を歩く人々を眺めた。
 こうしている間にも、同僚たちが。志を同じくする者たちが、戦っている。
 その多大な犠牲や功績があり、彼らや自分たちの安息があるのだ。

 言い尽くされてきた言葉だが、この笑顔を守るために。平和を維持するために、戦っている。

「……瑞科」
「?」
「一緒に、これからも頑張ろうね」
 寂しく、優しく笑う同僚の意図に気づいた瑞科。
「勿論ですわ! 貴女も早くトップクラスにいらっしゃい? 二人で依頼に出るのもよさそうですわよ」
力強く肯定し、凛とした表情と、強い意志のある瞳を向けていた。
「そ、そーだなぁ……素質とか、そういうものもあるんだけど…………はい、精進シマス」
 ぎこちない笑いを返す同僚。
カニクリームパスタを頬張りながら、このあとの予定をどうするかと尋ねる。
「エステとか行かない? 海藻由来の泥パック、全身コースとマッサージ付き! すっごいイイよ!」
 若返るよ、と言う同僚に、貴女もわたくしも十分若いですわよと言いつつ、乗り気な瑞科。
「そうと知っていれば、少しお昼の量を少なくしましたのに」
「いいんじゃない? どうせ太らないっしょ」
 マッサージするときにお腹がポコッとしていると恥ずかしいじゃありませんか、と言ってしまった瑞科は、同僚のジト眼に見つめられる。
「じゃあ私が食べます。瑞科はスリムを維持してね」
「だ、駄目ですわ! 全部食べます!」
 引っ張られた皿を慌てて回収し、急いで口に運ぶ瑞科を見つめながら、同僚は笑う。
「仕事中の瑞科も格好良くて好きだけど、オフの瑞科は、もっと好きだなぁ」
 と素直に言われて、瑞科は少し――頬を赤らめた。


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登場人物一覧

【8402 / 白鳥・瑞科 / 女性 / 21 / 武装審問官(戦闘シスター)】
PCシチュエーションノベル(シングル) -
藤城とーま クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年03月05日

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