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『■Is the blessing of God also your inside? 』
エマ・フリーデン(ga3078)

●揺らぎ、揺らぐは


 ほしい、と。ほしくない、と。
 いらない、と。いる、と。

 矛盾した想いが、ゆらゆらと揺れる。

「ただいま」と「新しい一歩」と、独りがいい。
 誰の心にも、残りたくない。

 ……でも。

「絆」がほしい。
 誰かと繋がっていたい。


 背もたれにブラウンのカバーをかけた白いソファで、ぼんやりと彼女が思考を漂わせていれば。
 つん。と、足に何かが当たる感触がした。
 視線を下ろすと、鼻をひくひくさせながら一羽の兎が黒目がちな瞳で彼女を見上げている。
「……ただいま、ノエル」
 同居人に話しかけた朧 幸乃はソファから降り、傍らにしゃがんで首の辺りから背中をゆっくりと撫でてやった。やがて目を細めた兎はぺったりと身体を伸ばし、嬉しそうに幸乃が撫でるに任せている。
「寂しくさせて……ごめんなさい、ね」
 ふわふわもふもふとした手触りと、その下の暖かい温もりと、呼吸に合わせて規則正しく繰り返される背や腹の動き。小さくとも確かに生きている証に柔らかく彼女は微笑み、それからふとケージへ目を向けた。
「……お世話しないと、ですね……」
 少なくなった干し草入れの干し草に、ぽつりと呟く。
 ここしばらくは大規模作戦があったり、その後に小隊の活動を休止する準備で忙殺されて、留守にしていた自室。当然その間の同居人の世話は、預かってくれる管理人に任せてばかりになっていた。

 ……そう。これで実質的に、小隊は活動休止……。

 自然と楽しく頼もしく、心強い友人たちの顔が浮かんで、ふっと視線は遠くを彷徨う。
 これを機に、今後は自身の傭兵としての活動も、だんだんと縮小していくことになるだろう。

 ……でももう、大丈夫。
 矛盾していた自分、だけど。
 きっと大丈夫……自分に素直に。等身大の自分に……。

 ペットシートやトイレ砂を交換して、水を替えて、新しい干し草を足して。
 幸乃がケージを整える間にも同居人もまた毛繕いをし、それが終わると彼女の傍をくるくると回る。
 そっと頭を撫でながらひと通りの世話を終え、遊んで満足した同居人は棲み家に落ち着く様子にひと息ついて伸びをした。指を組み、背筋を伸ばして大きく呼吸をすると、なんだか妙に肩の力が抜けた気もする。
 思えば、自分でも気付かない間に随分と肩肘を張り、背伸びしていたのかもしれない。
 失敗したり、変わってしまうのが怖くて動けてなかった自分……だけど、そんな自分も大事な自分だと。今は素直に思えるのは、決して時間のせいだけではないだろう。
 そうしている間にも窓から差す冬の陽光はいつしか弱まり、暮れかけた空に気付いて立ち上がる。見慣れた『ラスト・ホープ』の光景にカーテンを引き、そして何気なくチェストの上に置いた木製フレームの写真立てに目を留めた。
 ずっと変わらない、『あの瞬間』に固定された時間。
 そこにある懐かしい笑顔に、胸の痛みを感じたこともあった。
 だけど写真の外側にある時は変わりなく、流れ続け……。
 懐かしい『彼』と重なるように、ふっともふもふ銀狐な『彼』の顔が思い浮かんだ。
 髪の色も瞳の色も歳も、何もかも違うけど。
 自分の気持ちも、まだしっかりとはわからない、けど。でも、向き合って。

 ……一歩、踏み出してみる。

 同居人の棲み家を整えたり遊び相手をしたりと無心で身体を動かすうち、気持ちも少しほぐれてきて、整理ができたのかもしれない。
 そして暖かく柔らかなノエルの温もりが、何かをくれたような気も。

 自信がなくて、自分なんかよりもっと……って。

 そう理由をつけて、心の内にある暗い部屋の中で膝を抱えたまま座り込んでいる自分。
 失敗したり、変わってしまうのが怖くて動けてなかった自分も。
 人見知りで、恥ずかしがりやで、寂しがりな自分も。
 やっぱり自分……大事な、自分だと。

 変わりたくない、でも変わりたい。
 伝えたい、でも失いたくない。
 怖いのは変わらない、けど。

「もう1歩、歩いてみる……?」
 小さく口に出して、写真の自分に訊ねてみた。
 変わらぬ写真の中から、答えは返ってこないけれど。


 ゆらり、ゆらりと、胸の内の想いは揺れる。
  ほしい、と。ほしくない、と。
  いらない、と。いる、と。

 きっといつまでも、揺れ続けたままだろう。
  矛盾した感情と想いの狭間で。

 そんな自分と向き合って、一緒に手をとって。
  新しい、一歩を……。


 そっと、写真立てをチェストの上に戻す。
 ソファの脇にあるスタンドの明かりを点け、すとんとソファに腰を下ろした。
 そのままクッションを抱きしめて、肘掛けを枕にするように柔らかなクッションへ寝転がる。
 少し顔を動かせば、棲み家の中からノエルが相変わらず鼻をひくひくと動かしながら、伸びをするように黒い瞳で幸乃を窺っていた。
 気遣うような同居人に再び微笑んでから、ぎゅっと幸乃はクッションを抱きしめる。

 一歩を踏み出した先の結果が、どこへ向かっているのか。
 どうなるかは、わからない。
 ためらいも恐れもあるけれど、だけどそんな自分と向き合って、動いてみるのも……いいかもしれない。
 例え、失敗したって。どういう道に、つながったって。
「……それは、私の道……」
 抱きしめていたクッションを開放すると胸に下げたロザリオを手に取り、口唇へ寄せる。
 いつも友人のため、誰かのために祈ってきた言葉を、小さく幸乃は呟いた。
 揺れる自分を支えながら、変わるための小さな無数の切欠をくれた、沢山の人たちを想って。


 ――God bless you……。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【ga3078/朧 幸乃/女性/外見年齢23歳/エレクトロリンカー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お待たせしました。「WF!迎春ドリームノベル」が完成いたしましたので、お届けします。
 今回はノベルという形での楽しいご縁を、ありがとうございました。
 変わろうとする幸乃さんの大事な切欠を書く機会を預けていただいて、とても嬉しいです。その一方で随分とお待たせしてしまい、申し訳なく……。
 ご好評をいただいているCTSも、残すところ一年を切ってしまいました。それでも、それで世界が終わるわけでもなく。残す期間と、その更に先へ進むための小さな切欠となれば幸いです。
 もしキャラクターのイメージを含め、思っていた感じと違うようでしたら、申し訳ありません。その際にはお手数をかけますが、遠慮なくリテイクをお願いします。
 最後となりますが、ノベルの発注ありがとうございました。
 またお届けが遅くなり、本当に申し訳ありませんでした。
(担当ライター:風華弓弦)
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2012年03月07日

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