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『―― たまには温泉でゆっくりと ―― 』
幸臼・小鳥(ga0067)&月影・透夜(ga1806)&ロッテ・ヴァステル(ga0066)&相沢 仁奈(ga0099)

普段は戦いの場に身を置いている能力者たちだが、彼ら彼女らだって人間だ。
 たまにはゆっくりと羽を伸ばして体を休めさせたい。
 今回は魔弾メンバーで集まり、温泉旅行に行こうという事になった。
「たまにはこんな風にゆっくりする時があっても良いわよね」
 少し年期の入った旅館を見上げながらロッテ・ヴァステルが呟く。
「うん、自然に囲まれているしリフレッシュできそう」
 ロッテは森林に囲まれた旅館を見て、満足気に呟いた。
「へぇ、良い場所じゃないか。休日が重なっていないから誰もいないし貸切気分を味わう事が出来そうだ」
「あぁ、最近は戦ってばかりの毎日が続いているからな。今日くらいはゆっくりしよう」
月影・透夜が呟いた後、アロンソ・ビエルも頷きながら言葉を返した。
「はー♪ 温泉なんてどれくらいぶりやろ? 皆でゆーっくり羽伸ばそなー♪」
 相沢 仁菜も大きく伸びをしながらロッテ、そして幸臼 小鳥に抱き着きながら言葉を投げかけた。
「おやおや、お早いご到着だったんですねぇ」
 旅館の中から現れたのは女将と呼ぶにはまだ若い、だけど品の良さそうな女性。穏やかそうな笑顔が余計に品を良く感じさせている。
「‥‥ご、ごめんなさい‥‥楽しみだったものですから‥‥ご迷惑だったでしょうか‥‥?」
 幸臼がおどおどとしながら女将に言葉を投げかけると「とんでもない!」と手を振って答えてきた。
「楽しみにしてもらえて私たちも嬉しいですよ。お部屋は片づけてありますし、皆様どうぞ中に入ってくださいませ。あ、ですけど……」
今まで穏やかに微笑んでいた女将が申し訳なさそうな表情で能力者たちを見る。
「……? 何か問題でもあるん?」
相沢がかくりと首を傾げながら問いかけると「えぇ、実は……」と女将が歯切れ悪そうに言葉を続けてきた。
「男湯の方がちょっと使えない状態なんですよ……」
「……つまり、俺たちは温泉に入れない――という事か?」
月影が少し驚いたような表情で女将に問い掛ける。
「いえ、女湯の方に衝立をしてありますのでそちらで入れるようにはしてあります」
つまり衝立一つで仕切られた温泉に男女一緒に入るという事なのだろう。
(……嫌な予感しかしないな……)
ちらり、と幸臼、ロッテ、相沢の3人を見ながら月影が心の中で呟く。
「……いや、別に一緒じゃなくても時間帯で変えてもらえれば……」
アロンソが呟きかけた時――。
「別にいいじゃない。見知らぬ仲というわけでもないんだし」
ロッテがアロンソに言葉を投げかけてくる。
「せや、2人が初っ端から覗く気満々やったらあかんけど下心ないんやったらええんちゃう?」
相沢までもがこんな事を言い始め――。
「‥‥せっかくですから‥‥みんなでいっしょに入りたいですぅ‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
トドメであるかのように幸臼からうるうるとした瞳で見つめられては断れるはずがない。
「わ、わかったからそんなに泣きそうな顔をするな‥‥」
(あ〜ぁ、絶対無事にこの温泉旅行が終わる気がしなくなってきた)
アロンソが慌てて幸臼に言葉を返すのを見ながら、月影が心の中で呟いていたのだった。


「はー♪ こういう所でのんびり出来るって幸せやなぁ‥‥」
まだ温泉に入るには早いため、5人は近くの森を散歩する事にしていた。
「戦いばかりの毎日だとこういう穏やかな時間ってとても貴重なのよね」
ロッテも空を仰いで木漏れ日を浴び、気持ち良さそうに目を細めながら呟いた。
「本当ですぅ‥‥凄く、気持ちいいですねぇ‥‥」
幸臼もロッテの言葉に賛同しながら、木々の香り、小鳥のさえずりを聞いていた。
「ここから戻ったら、また戦いの日々だからな。今日くらいはゆっくりさせてもらおう」
月影も薄く微笑みながら呟いた。
「そう言えば今日は満月だし、夜に温泉入った時にでもみんなで月見酒といかない?」
「いいな、もちろん女将が許してくれれば――の話だが‥‥」
ロッテの言葉にアロンソが賛同する。
「それじゃ戻ってから聞いてみましょ」


「月見酒‥‥ですか?」
旅館に戻り、さっそく5人は月見酒の事を女将に聞いてみる事にした。
もちろんお酒が飲めない年齢の能力者たちはジュースという事になるのだけれど。
「‥‥む、無理ならいいんですぅ‥‥どうしてもというわけじゃありませんからぁ‥‥」
おどおどとした口調で幸臼が言葉を付け加えると、女将は苦笑しながら「構いませんよ」と言葉を返してきた。
「本当に大丈夫なのか? すぐに返事をもらえなかったから駄目だと思っていたんだが‥‥」
アロンソが女将に問い掛ける。
「もちろん普段はお断りしています。ですが今日は皆様の他にお客様もいらっしゃいませんし、男湯の件でご不便をおかけしていますから多少の事は‥‥」
苦笑しながら答える女将に感謝しながら、能力者たちはまた1つ温泉での楽しみが出来たのだった。


それから能力者たちは少し早い昼ご飯を食べた後、温泉に入る事になった。
「わかっているでしょうけど、覗かないでよ? 覗いた時は‥‥覚悟する事ね」
ロッテが冷笑を浮かべながらアロンソと月影の2人へと言葉を投げかける。
「俺たちを見損なうな、そんな事をするはずがないだろうが‥‥」
呆れたようにアロンソが呟き、隣では月影もうんうんと頷いている。
「‥‥俺だってまだ命は惜しいからな、そんな無謀な事をするわけないだろう」
ぼそり、と月影が呟いた後、微笑んだ表情のままロッテが「‥‥何か言った?」と問いかけてくる。
「‥‥‥‥何でもない」
氷のように冷たく感じる微笑みを見て、月影は早くも身の危険を感じる。
(だが、小鳥がいる以上どうあってもこの旅行が無事に終わるはずがない)
月影は心の中で呟きながら幸臼を見る。ドジッ子世界選手権があれば間違いなく上位入賞――いや、優勝を狙えるくらいのドジ体質の持ち主だろう。
そんな彼女がいて、温泉で何もないはずがないのだ。
(とりあえずパッと入ってパッとあがる事にしよう。それが巻き込まれないための最善の策だ)
まるでこれから戦いにでも行くかのような決意を胸に秘め、月影は戦場――もとい温泉へとみんなで向かい始めたのだった。


「さすがに更衣室までは仕切られておらんみたいやなぁ」
更衣室に入った所で相沢が苦笑しながら呟く。
「それじゃ、私たちから先に入らせてもらいましょ」
ロッテは相沢、幸臼の手を引いて先に更衣室へと入る。
「私たちが『いいわよ』って言うまで入って来ちゃダメだからね」
「わかってるよ」
ロッテの言葉にアロンソが呆れたように言葉を返す。
それから10分近くが経過した頃、男性2人がようやく更衣室に入る事が出来た。
「手前の棚にはうちらの衣類が入ってるさかい、2人は別の所に入れてや」
温泉の方から相沢の声が聞こえ、アロンソと月影は女性陣の衣類が入っている棚からは遠く離れた場所へと自分たちの衣類を入れ始めた。

※女性Side※
「へぇ、結構広い温泉なんやなぁ」
身体にタオルすらも巻かず、腰に手を置きながら温泉を眺めるのは相沢だった。
「広いお風呂ですねぇ‥‥こんな広いお風呂なんて、嬉しいですぅ‥‥」
相沢と同じくタオルを巻かないまま、幸臼も広い温泉を見て感動しながら呟いている。
「仁奈も小鳥もタオルくらい巻きなさいよ‥‥」
2人の後ろから呆れたようにロッテが声を投げかける。
「衝立があるから大丈夫ですよぉ‥‥」
幸臼がふんわりとした笑顔を見せながら言葉を返すが、衝立とはいっても、少し押せば倒れてしまう程度のものである。
「本当に急いで用意しました、的な衝立よね……」
苦笑しながらロッテが呟き「それじゃ、男性陣を呼ぶわよ」と2人に言葉を投げかける。

※男性Side※
「そろそろ入って来てもいいわよ」
温泉の方からロッテの声が聞こえ、月影とアロンソは温泉へと入っていく。
「へぇ、仕切りがしてあるのにこの広さなのか‥‥」
「夜にも温泉に入るし、月見酒が楽しみになって来たな」
アロンソが呟き「確かに、この大自然の中で飲む酒は格別なんだろうな」と月影が言葉を返した。

※共通Side※
「はぁ、温泉が気持ちいいですねぇ‥‥このまま出たくない感じですぅ」
首だけを出した状態で温泉に入り、この世の至福を味わっているような表情で幸臼が呟く。
「周りの景色も良いし、自然の空気も感じられるし、おまけに貸切状態だし――で本当に至れり尽くせりの状態よね」
ロッテが身体を洗いながら呟く。普段は結われている髪を下しているせいか、それとも濡れているせいかやけにロッテが妖艶に見えるような気がして、幸臼はドキドキしていた。
(ロッテさんや仁奈さんみたいにナイスバディになりたいですぅ‥‥)
自分の身体とロッテや相沢の身体を見比べ、幸臼は小さくため息を吐いた。
「はー、でもこうしてると今が戦争中やなんて全然思えへんなぁ。平和ってこういう事を言うんやろねぇ‥‥」
浴槽の淵に腕を置き、相沢が外の景色を眺めながら呟く。
「おい、悪いんだが洗面器を取ってくれ。多分そっち側に纏められていてこっち側にないんだ」
月影が衝立の向こう側にいる女性たちへと言葉を投げかけ、相沢が「ほな、いくで」と衝立の向こうに洗面器を投げ渡した。
――ガコン
「いっ‥‥」
小気味よい音が響いた後、月影の呻く声が聞こえる。
「‥‥何で洗面器が上から降ってくるんだ」
てっきり洗面器を滑らせて渡してくるだろうと思っていた月影は、見事に不意を突かれ、洗面器が頭にぶつかってしまった。
「‥‥大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。いかなる時でも油断はするなという良い教訓になった」
ズキズキと痛む頭を押さえながら月影が言葉を返し、アロンソはそれを見て苦笑していた。
「そういえば、アロンソは気になる相手とかいるのか?」
身体を洗いながら、月影がさらりとアロンソに問い掛ける。
「‥‥‥‥お前、そういうやつだったっけ」
突然の質問に驚いたのかアロンソはぱちぱちと何度も瞬きをしながら月影に言葉を返す。
「いや、意外と近くにいるんじゃないのかなとか思っただけで、特に他意はない」
だが、と月影は一度言葉を区切った後、アロンソを真剣な表情で見ながら言葉を続けた。
「‥‥ケジメはつけろよ?」
「‥‥‥‥そういうお前の方こそどうなんだ?」
「別に俺の話はしていない」
さらりとアロンソの質問を避けて、月影は再び身体を洗う作業に戻る。
「私もそろそろ身体を洗わなくちゃいけないですぅ‥‥」
男性2人がそんな話をしていたなど気づかない幸臼は、お湯に浸かりすぎて少しのぼせかけていた。
「あれ? えらくふらふらしてるけど大丈夫なん?」
「ずっと浸かってるからのぼせたんじゃない? 本当に大丈夫?」
ふらふらと歩く幸臼を心配してロッテと相沢が幸臼に駆け寄る。
「あれ? 何か向こうの方が騒がしいけど何かあったのかな」
アロンソが向こう側を見ながら呟く。
「覗くつもりなら覚悟しておけよ? それと俺を巻き込むな」
「誰も覗くなんて言ってないだろ‥‥」
(‥‥そろそろ小鳥がやるな)
月影は何時ものパターンと化しているこの状況をいち早く読み、腰にタオルを巻いて更衣室へと向かう。
「あ? もう上がるのか?」
「あぁ、どうせまた夜には月見酒だろ? その時にゆっくり浸かる事にする」
「ふぅん、それじゃ俺ももう少ししたら出ようかな」
月影が更衣室へ入り、アロンソが呟いた時――。
――バターンッ!
「はぁっ!?」
ふらふらとしていた幸臼が衝立へと頭突きをしてしまい、そのまま衝立が倒れてしまう。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
衝立が倒れた後、アロンソ、ロッテ、相沢の3名の視線が絡まる。
「‥‥はぅ、また転んでしまい‥‥まし‥‥た? ふぇ? ア、アロンソさん?」
ふみゃー! と幸臼の甲高い悲鳴が響き渡り「うわぁぁぁぁっ!」とアロンソの悲鳴じみた声も更衣室へと届く。
(やっぱりやったか)
服を着ながら避難しておいて良かったと月影は心から思っていた。
「‥‥小鳥、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですぅ‥‥でも、は、裸を見られてしまいましたぁ‥‥これは、アロンソさんに‥‥責任‥‥とってもらわないと‥‥ですぅ」
顔を真っ赤にして幸臼がちらりとアロンソを見て呟く。
「アロンソ、遺言は聞いてあげるわ‥‥言いたい事があるなら、今のうちに言いなさい?」
 静かな怒りを湛えたロッテがアロンソへと言葉を投げかける。
「い、今のは俺のせいじゃない! 今のは事故だろ? 俺がわざと覗いたわけじゃない!」
「いや〜ん、うちもお嫁にいけへんようになったぁ!」
「おい! 言っている言葉と行動が真逆だろう!」
 相沢は泣き真似をしながらも、自分の身体を見せつけるようにポーズを取っている。
「別にええやん、うちのFカップのバストなんか結構自慢なんやで?」
「それは確かに良いもん持ってる――って違うだろう! 俺に見せるな近づくな!」
「アロンソ、安らかに眠りなさい!」
「アロンソさん‥‥私を傷物にした責任‥‥取ってくださいぃ‥‥」
 怒り震えるロッテ、責任を取れと潤んだ目で迫ってくる幸臼、そして『見ろ!』とばかりにアロンソに近づく相沢の姿に、アロンソはどうすればいいのかわからずにいた。
「あ、あいつ‥‥まさかこうなる事がわかっていて逃げたんじゃ‥‥!?」
 足早に温泉から出て行った月影の事を思い出し、アロンソが「裏切者ォォォォ!」と叫んでいた。
 その後、部屋に戻ったアロンソはなぜか傷だらけであり、身体を休めるためにやってきた温泉で彼だけが休息を得る事が出来なかったのだとか‥‥。


END

――――
登場人物
――――

ga0067/幸臼・小鳥/12歳/女性/イェーガー

ga0066/ロッテ・ヴァステル/22歳/女性/ペネトレーター

ga0099/相沢 仁奈/18歳/女性/ペネトレーター

ga1806/月影・透夜/22歳/男性/エースアサルト

gz0061/アロンソ・ビエル/28歳/男性/イェーガー

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>ご発注下さった皆様へ

こんにちは、いつもお世話になっております。
今回は『WTアナザーストーリーノベル(特別編)』のご発注をありがとうございました!
話の内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入っていただけるものに仕上がっていれば幸いです。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!


―水貴透子


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CATCH THE SKY 地球SOS
2012年06月19日

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