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『非モテと腐女子のえとせとら 』
ラグナ・グラウシードja3538

 ――夏、それは恋の季節。
 カップル達は海へ行き、楽しいひと時を過ごす。
 海で泳ぎ、彼女の乗る浮き輪を転覆させたりして怒り怒られ。
 砂浜を歩き、貝殻やボトルレターを拾ったり、熱い砂を直に感じ。
 海の家で『伸びきったラーメン、具の無いカレー、不味い焼きそば』や恋人の手作りお弁当を食べ休み。
 夕方には岸辺を2人で歩き見つめ合い……静かに抱き寄せると、甘い甘いキスをする。
 楽しい楽しい、カップル達のひと時。
 そこへ、他とは違う……すれ違った2人は訪れるのだった。

「やはり夏は海だな、うん!」
 小麦色の肌に黒いブーメランパンツに身を包んだラグナ・グラウシード(ja3538)は立っていた。
 サンダルを脱いで素足となった足の裏には陽に焼けた砂の暑さが伝わってくる。
(冬は嫌いだけど、夏はテンションが上がるな!)
 筋肉質の体を曝け出しながら、ラグナはポーズを取る。
 その度に胸の大胸筋がプルプルと振るえ、肉の美学を訴える。
 ただし、それはラグナだけであり、周囲の視線は……真冬のように寒かった。
 しかしその視線もラグナにとっては真夏の太陽と大差ない!
「準備体操も終わったことだし、サンオイルを塗ってから泳ぐとするか!」
 気持ちよく大声で言いながら、ラグナはサンオイルの蓋を開けると……それを頭から被るように塗りたくるのだった。

 そんな彼を海の家の物陰から眺める者が居た……。
 何時もの学生服と違い、夏仕様なのか黄緑色のキャミソールにデニムの短パンという軽い格好をしたエルレーン・バルハザード(ja0889)だ。
 実際には夏だから部屋で休んでいた所、ラグナが海へ行くということを知るや近くにあった服を掴み急いで着た結果がこれだった。
 ラグナからは憎まれてはいる。だがエルレーン自身はそれでも彼を護りたい。護ろうとしている……ストーカーレベルに。
 そんな熱い眼差しを送る中、ラグナはサンオイルで体をテカテカさせながら海へと走り出した。
(……これは見逃せない、のッ)
 物陰に居ても暑い陽気の中、エルレーンは顔から汗を零しながら熱心にラグナを見る。
 ……がやっぱり暑いのか、運良く持ってきていた財布を取り出すと海の家の前で売っていたスポーツドリンクを飲む。
 炎天下だから、水分補給は必須だ。

「ぅあ〜〜! 冷たいーーっ!!」
 砂浜で焼けた足に海水の冷たさが当たると、冷たさが足から上へと進み始めていく。
 更に波が起こる度、指の隙間からは砂が行ったり来たりをして軽いくすぐったさを体に与える。
 そんな中で、ラグナは歩きながら少しずつ海水に体を沈めていく。
 短時間ながら陽に温まった体が海に入って行くにつれて、一気に冷えていく。
 下半身が海に沈む位まで歩くとラグナは立ち止まる。
(さて、ひと泳ぎするかっ!)
 心で呟くと、彼は頭にかけたゴーグルを顔に掛けると……一気に体を海中に沈ませた!
 全身に海の冷たさが侵食すると同時にラグナの足は海中を蹴る。
 その度に、彼の体は前へと進み海中を進んでいく。
「ぷあっ!」
 海上に顔を出すと共に腕を前へ前へと振り上げ、足を動かす。
 水を切るようにしてラグナの体は海を走って行く。
 体力にも自信があるし、こうした方が物凄く体の熱は取れて海の涼しさを思う存分楽しむことが出来るのだ。

 あの人なんだか凄くない? えー、私はパスだなー。ねーねー、声を掛けてみなよー。
 そんな海水浴に着た女性たちが話している声がエルレーンの耳に入る。
 彼女達の視線の先にはラグナの泳ぐ姿が見えた。
 が、しばらくして泳ぎ終えたのかラグナが海から上がってくるのが見えた。
 緑色の髪からは海水がポタポタと零れ、掻き揚げるようにして彼は髪を整える。
 しかも、ゴーグルを外すと何処に持っていたのかサングラスをかける。
 チャラ男必須のアイテムだ。
(あれ……でも、何してるのかな……?)
 ウロウロし始めたラグナを見て、エルレーンは首を傾げる……がすぐに結論に至った。
「!? ……も、もしかして!」
 彼女が至った結論、それは真夏の海水浴場でのナンパだ。
 事実サングラス越しのラグナの視線の先はすべて女性に注がれていた。
 更にラグナの心の中では……。
(大丈夫だ……ふ、ふふん、そこらの男どもより、私の方がずっとたくましくて魅力的なのだから!)
 と、自信たっぷりのナルシストの心があった。
 長年ラグナを見ていたエルレーンにはそんな彼の心境は丸分かりだったりする。
 それと同時にエルレーンは慌てる。
 何故なら、非モテと言われながら健康的な肉体と髪を掻き揚げる仕草、さらにはチャラ男必須のサングラス装備のラグナに興味を持っているのか数人ほどの女性が声をかけようかと思っているのだ。
(ど、どうしよう……!)
 何故だか分からない。分からないけど、エルレーンの心はぐるぐると回る。
 その原因が良く分からない。だけど、ラグナが何処かの女と一緒に砂浜を歩いたり、海を泳いだり、海の家でご飯食べたり……そんなことをするイメージが浮かぶにつれよく分からない感情が渦巻く。
「だけど、何か絶対嫌だ!」
 ラグナと一緒に歩く女性が可哀想だからなのか、ラグナが別の女性と歩くのが嫌なのかは分からない。
 だけどエルレーンは迷った末、変化の術を使用した。
 自分を包む煙が消える頃、エルレーンは砂浜へと歩き出した。
(あっちの女性も良いし、あそこの女の子も捨てがたい……ううむ、迷――)
 腕を組んでいたラグナの動きが止まる。何故なら彼の前を1人の女性に目を留めたからだ。
 迷彩柄のビキニに身を包み、背中まで伸びたロングヘア、顔立ちは整っており、くびれた腰に魅惑的なお尻、白磁のように白い肌。
 そして……歩く度に揺れ動く素敵で豊満なおっぱい!
(あ、あれは……Fはある! しかも、好みにどストライク!!)
 ゴクリと唾を飲み込み、ラグナは意を決するとぎこちなく歩き、目に留まった女性へと近づいていく。
 乾いた口を開いて、女性に向けて手を上げる。
「お……おじょ、お嬢さ……ん! あ、ぁの……」
「…………」
 振り返る女性がジッと黒い瞳でラグナを見詰める。その瞳にラグナはますます緊張する。
 しかし、彼は勇気を振り絞る。
「よっ、よよ……よければ私と、その……あの、そっ、そこの海の家でお茶で――むもぉっ!?」
 瞬間、ラグナの頬に激しい衝撃が来たと思ったら、体は宙を舞い3回ほど回転してから……地面に突き刺さった。
 所謂トリプルアクセルビンタというレベルでだ。
「――はぅぅ!?」
 ピクピクと震えるラグナへと女性は見下ろし……すぐに逃げるようにその場を去って行った。
 そんなラグナを周囲の人たちは哀れな瞳で見て、声をかけようかと思っていた女性たちは自ら退いていった。
 と言うよりも逆に気色悪かったからビンタされたというイメージを持たれたから、近づかないのだろう。
 少しして、彼は起き上がると……静かに涙を零した。
「やはり非モテは……非モテなのか……ふふっ」
 その涙は……物凄く切なかった。

 ラグナが切ない涙を流しているのを……変化を解いたエルレーンは海の家の物陰で見る。
(ごめんね……。ラグナにナンパとか、してほしくないの……ッ!)
 どうしてそう思ったかは知らない。だけど、エルレーンの心には罪悪感と共に何処か安心した心があった。
 そんな気持ちだからだろうか、涙を流すラグナへとエルレーンは声を掛けて一緒に遊ばないかと言ってしまいそうな気になってしまう。
「だけど、それは……駄目、なんだ」
 エルレーンとラグナは顔を合わせてはいけない。合わしたら彼はきっと自分に襲い掛かるだろう。
 だから、ごめんね……ラグナ。切なそうに呟きながらエルレーンはその場を立ち去るのだった。

 そんな夏の海の1日……。
 -終-

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja3538 / ラグナ・グラウシード / 男 / 20 / ディバインナイト】
【ja0889 / エルレーン・バルハザード / 女 / 17 / 鬼道忍軍】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 今回ノベルを担当させていただいた清水裕です。
 この度は私を選んでくださってありがとうございました。

 初めてのノベル執筆だったので上手に書けているかは心配です。
 ですが、楽しんで頂ければうれしく思います。
常夏のドリームノベル -
清水裕 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年07月24日

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