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『真夏のアバンチュール!? 奪われた諸々 』
エルレーン(ib7455)

●非モテ騎士、本日リア充中?
 暑い夏、輝く太陽、光る海――仁王立ちの男。
「うむ、やはり海はいいな!」
 寄せては返す波音をBGMに、修羅の美丈夫が立っていた。
 小麦色の肌に均整の取れた身体、艶やかにそよぐ淡緑の髪。見せる為でない実用優先で鍛え上げられた筋肉は無駄がなく、男女問わず万人にセクシーさを訴えかけてくる。
「ふっはははは、恐れ多くて近付けんか」
 目のやり場に困って遠巻きに眺める女子陣へ視線を向け、ラグナ・グラウシード(ib8459)は余裕の表情で何ならみんな纏めて相手してやっても良いぞと嘯いた。
 彼を唯一覆うはブーメランタイプの黒ビキニ。極めて布面積の少ないソレは彼のボディラインを嫌が応にも引き立たせ、まるで古の男性神が降臨したか、海辺に名工の彫像が建っているかのようだ。

 ――ドールサイズの麦藁帽を被ったウサギのぬいぐるみを小脇に抱えていなければ、だったが。

「まあ良い。まずはうさみたんの為にパラソルを借りて来なくてはな」
 愛しのうさみたんの腕を持ち、手を繋いだ格好で海の家に向かうラグナの行く手を人混みが割れてゆく。非の打ち所のない肉体美を惜しげもなく晒す青年を密かに眺めて眼福する者もいるにはいたが、多くはウサギのぬいぐるみに話し掛けながら浜辺を歩く青年への憐憫の視線を向けていた。
 しかしラグナは気にしない。だって今日は、うさみたんとのデートの日なのだから!

●砂浜の遭遇
「うみ‥‥なんだか、きもちがわくわくするの」
 少女は控えめに、だけど高揚を隠しきれない様子で呟いた。
 伸びやかかつ健康的な体躯を、フリル飾りが付いた愛らしいビキニに包んでいる。華奢な鎖骨に輝く紅玉の首飾りから視線を下に下げると、トップとボトムの間に覗く白い腰の括れ、ボトムから伸びるしなやかな脚のラインへと続く――そこはかとなく少女期特有の危うい色気も感じさせるエルレーン(ib7455)の姿は、周囲の青少年達の視線を一身に浴びていた。
「いい、天気」
 小手をかざして空を見上げれば、脇のラインにどよめきが起こる。
 どうやらこの娘、連れはいないようだ。どれ声を掛けて一日のバカンスを、あわよくば今後のお付き合いを――と、男共が互いに牽制を掛け始めた、その時。

「ふん‥‥相変わらず棒切れみたいだな、まな板女! 女性らしさの欠片もない!」
「ら‥‥ラグナ!?」

 男達は予定が一瞬で崩壊したのを悟った。
 いささか不躾な台詞だったが知り合いがいたらしい。少女の方を見れば不機嫌を隠そうともせず不穏な空気を醸し出し始めていた。何やら面倒な事になりそうな予感がして、周囲にいた人々が引けてゆく。すっかり局地的引き潮になった浜辺で、二人は睨み合っていた。
「今、何て言った?」
「聞こえなかったか。ならばもう一度言ってやる。フリルなんぞ付けた所で貧乳は貧乳! 無駄な悪足掻きだと!」

 ひんにゅー。ひんにゅー。ひんにゅ――――

 脳裏を延々木霊する禁句。両手で耳を押さえたエルレーンを容赦なく追い詰めるラグナは口端を歪めて畳み込んだ。
「それで女のつもりか。つるっぺたの分際で‥‥女というものはもっとこう‥‥」
 ばいんばいん。
 両手で自分の胸元に豊かな胸を形作って追い討ちを掛ける。鬼だ。二本の角は伊達じゃない、本当に鬼畜の所業だ。
「う‥‥うるさいぃっ! お、お、おんなのこに向かって、ばかあっ‥‥だからモテないんだ、馬鹿ラグナ!」
 エルレーンの叫びに、ラグナの動きが止まった。手ブラの姿勢のまま固まっているが、その表情は強張り始めていた。
 カッと怒気を剥き出しにし、彼は一喝した。

「馬鹿だと‥‥我が師を殺したお前に馬鹿と言われる謂れはない! この貧乳がッ!」

 その瞬間、エルレーンは脱力したかの如く、だらりと腕を下げて立ち尽くした。
 俯いた顔、蒼白になってゆく肌――まるで幽鬼のようだ。前髪に隠れて見えぬ顔からは表情が伺えないが、凄まじいばかりの怒りの念が彼女の全身から立ち上っていた。
 ゆらり、彼女はラグナに一歩近付いた。
「し、しょ‥‥ひん、にゅ‥‥取り消せ、取り消せ取り消せェッ!!!!!」
 次の瞬間、顔を上げたエルレーンにおどおどした少女の面影はない。
 素早くその場に転がっていたスイカ割りの棒切れを取り上げた女剣士エルレーンは、かつて同じ師の下で技を磨きあった兄弟子へ向けて大上段に振り上げた!

 ――ぐしゃ。

「おお、危ない危ない」
 逃げた誰かが転がしていたスイカを身代わりに粉砕させて、避けたラグナは素早く周囲を見渡した。手頃な棒切れを握り締める。大剣使いの自分には軽過ぎる代物だが、あの女の相手にはなるだろう。
「フリルの代わりにスイカでも入れておけ、まな板女!」
 ぶんッと一振りしたラグナ、妹弟子の太刀筋を軽々と見切り――損ねた。
「黙れ、黙れ馬鹿ラグナーっ!!」
「がはッ!?」
 実にあっさりと、気付いた時にはラグナは熱い砂地にうつ伏せに転がされていたのだ。

●失った、もの
「あちッ! 上に乗るなこらッ!」
 焼けた砂に肌を押し付けられてラグナは悲鳴を上げた。うつ伏せたラグナの背に馬乗りになったエルレーンは、彼の両腕の自由をも奪った上で顎の下へ手を掛ける。
「ぐ‥‥っ‥‥」
 一瞬で息が詰まった。
 だが頭部を持ち上げられたラグナは必死で耐えた。この女の前で無様な悲鳴など上げるなど、ラグナ・ラクス・エル・グラウシードの名が廃る。
「へぇ‥‥結構耐えるんだぁ」
 頭越しに神経を逆撫でする声がする。愉しそうな、どこか嫌な予感のする声音だ。
 有利な体勢で余裕もあるのだろう、うふふと笑い声を立てたエルレーンは、拘束した体勢のままラグナの頭を抱え込んだ。

「ぐ、うう‥‥ふ、ふぁああっ!?」
「うふふ‥‥ラグナはここを触られるのが弱いんだよねぇ‥‥?」

 抱えた頭の頭頂部にちょこんと生えている二本の角へ、そっと指を這わせる――優しく、愛おしげに。
 その途端、ラグナの矜持は脆くも崩壊を始めた。
「‥‥や、あ、やめろ‥‥あうっ、そこは‥‥っ、はぁうっ」
 ラグナの一番純粋で敏感な場所が、よりによってエルレーンの手で翻弄されていた。
 焦らすように、いたぶるように。緩急付けて弄られる角から快感が伝わって来る――抗う術を全て絶たれ、快楽の海へと放り出される。だんだんと、ラグナは考える事を放棄し始めた。
「あぁん‥‥うさみたーん!」
 人目も、相手も憚らず嬌声を上げる修羅の剣士――嗚呼、見ていられない光景だ!

 やがて存分に嬲り倒して愉しんだエルレーンは、放心状態のラグナを開放した。ぐったりと力尽きたラグナはだらしなく砂浜に伸びている。戦意喪失どころか精気喪失といった風情だ。
 余韻に浸りまくりのラグナが何ともだらしない。エルレーンは彼の背から降りると正面に回り込み、彼の顎にそっと手を添えた。
「‥‥あはぁ」
 紅潮して間抜けな喘ぎ声を未だ上げている兄弟子の顔を、エルレーンはじっと見つめた。
 かつて同じ女性に師事した兄妹弟子同士、それがあの日を境に彼に憎まれるようになって、どのくらい経つだろう。エルレーンは一瞬哀しげに瞳を伏せたが、次の瞬間勝気な表情に戻ってラグナの顔を覗き込んだ。

「‥‥じゃあね、おばかさんのラグナ」
「え」

 その瞬間、ラグナには何が起こったのか解らなかった。
 目の前にあるエルレーンの顔、近付いて、おばかさん呼ばわりされて――唇を、奪われたァッ!?
 真っ赤になって呆然としているラグナを他所に、エルレーンは悠々と去って行ったのだった。もうひとつ、お土産を貰って。
「‥‥ラグナのばか」
 彼女の呟きは、誰にも聞こえなかった。

 然る後、我に返ったラグナは失ったものの多さを知る。
 勝利、威厳、矜持、唇――そして連れて来たはずの彼女。
「う、うさみたーーーーーーん!!!!!」


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ib7455 / エルレーン / 女 / 18 / (゚∀゚) 】
【 ib8459 / ラグナ・グラウシード / 男 / 19 / ( ゚д゚ ) 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 周利でございます。
 わわ、私で良いの!? と慄きつつ‥‥ご発注ありがとうございました!
 各世界におられるエルレーンさんとラグナさんですが、師匠はD世界にはおられないのですね。
 亡き師を巡るちょっと切ない二人の関係を‥‥描いていたはずが、どうしてこうなったのかは私にも判りません! きっとキャメルクラッチの魔法ですね☆
常夏のドリームノベル -
周利 芽乃香 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2012年07月30日

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