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『強制お見合い大作戦 〜お見合いの真相〜 』
深山 千草(ia0889)

●運命の出逢い?
 開拓者と呼ばれる人々がいる。
 志体や仙人骨、ジン、テュールなどと地域によって呼称は異なるが、先天的に高い身体能力や精霊との交信能力などの特性を持っている人間が、特定のギルドに所属して得る立場である。
 開拓者達を統括し、請け負う仕事の管理などを行う機関を開拓者ギルドといい、中でも開拓者が居住を義務付けられている神楽に存在するギルドは特に大きい。
 ギルドでは、開拓者達に仕事を斡旋する。仕事には請ける側も募る側、両方が必要だ。請ける開拓者のみならず、ギルドには依頼を持ち込む一般人も多く訪れ、一日中大賑わいであった。
 そう、それはもう種々様々な用事を持ち込む人で賑わって――中にはちょっぴり困った訪問客もいたりする訳なのだが。

 今日も今日とて、ギルドの受付に居座っている常連客がいた。
 昼夜を問わず門戸が開かれているギルドだが、その女性はここ最近ずっと見かける気がする。殊に昼間は確実にいた。
 開拓者であれば求人掲示を確認に連日訪れるというのも珍しくないし、心配性な依頼人が進捗を確認にというのも多少はある。だけどその人は依頼人ではなかったし、まして開拓者でもない。時折いる、押しかけ見習い職員の類でもなさそうだ。
 では何用で開拓者ギルドを訪れているのか。桔梗(ia0439)は元・押しかけ見習いの梨佳(iz0052)に、こそりと問いかけた。
「梨佳、あれ、誰?」
「お見合いおばさんですよ‥‥目を合わせちゃダメです、捕まったら大変な事になるですよ」
 あわわと恐ろしげに耳打ちする梨佳の話によると、連日ギルドを訪れては手当たり次第に見合い話を押し付けようとする、ちょっと傍迷惑な人だそうで。今のところ直接被害を被っているのは職員だけなので出禁にはなっていないのだが、なかなかしつこくて未婚職員達は皆して敬遠しているのだとか。
 何でもこの女性、六月の『じゅーんぶらいど』が大量発生する時期に一組の成婚も仲人できなかったらしく、水無月が過ぎた後も引き続き縁結びに勤しんでいるのだそうな。
 だけど本来、恋愛や結婚は当人同士の気持ち次第だ。見合いは切っ掛けにはなるだろうけれども、そもそも互いに意思がなければ縁は繋がらない。
「哲慈さんのお世話なら喜ぶ人もいるですが‥‥」
 相変わらず身形を気にしない男やもめに目を向けて、梨佳は困った風に首を傾げた。どう上手くいなしたものやら、おばさんは哲慈に付き纏いはしなかった。どうやら彼の再婚は当分期待できそうにないらしい。
「そう言えば。聡志さんと桂夏さんは?」
「聡志さんは夜勤、桂夏さんは応接室に籠もったまんまです」
 話によると、お見合いおばさんとの遭遇を避けた未婚職員達の夜勤希望が続出しているらしい。夜勤を好まない桂夏は個別受付に使う応接室で働いているとかで、梨佳に依頼人の案内や飲食物の運搬を任せて徹底的におばさんを避けているのだとか。
「テキレイキの人は大変ですねー」
「そ、だな」
 一見して当年十六には見えない見習い職員と、あどけなさの残る少年は困惑気味の笑みを交わした。

 この手のお節介、世間には結構あるものだ。本人が良かれと思ってやっていても相手は大層迷惑に感じるもの――お見合い然り、信仰・信念の押し付け然り、とかく喜ばれないものである。
 実際、お見合いおばさんの縁結び成功率は限りなくゼロに近かった。対象者は二十代の未婚男女職員、彼ら彼女らに有難い年長者の訓示と共に誰彼構わず相手を押し付けようとするのだから敬遠されて当然というものか。
 それでもギルド側がおばさんを放置していたのは、今のところ直接被害を被っているのがギルド職員に限られていたからだ。客に手を出して苦情が出たなら厳重注意もできるが、職員が相手ならば愛想笑いで耐えるしかない。
 桔梗に袖を引っ張られた梨佳は彼が示す方向を見た。
「‥‥梨佳、あれ」
「わぁ、お気のどくさまです〜」
 なむなむと合掌する梨佳の先には、不幸にも昼勤にならざるを得なかった男性職員がおばさんに捕まっていた。
「まあまあ貴方、お久し振りねえ。元気にしてた? 彼女はできた? あらまあまだなの!?」
 年齢、出身、家族構成等々、本当に釣書でも作成するのか、おばさんは矢継ぎ早に質問攻めにしている。猛暑で誰もがダレる中、気合が入りまくっているのは大変結構だが、時と場所、相手を選べと誰もが思っていた。まして捕獲されている男性職員は言わずもがなで。
 蒸し暑さと鬱陶しさに、男性職員は遂にキレた。
「どうせ僕には彼女なんていませんよ! 当てだってないですよ!! もうどーでもいいです、次ギルドにやって来た女の人とお付き合いしますよっ!!!」
 泣き声混じりの悲鳴がギルド内に木霊した、その時。

「お疲れ様で‥‥す???」
「言ったわね? 来たわよね!? 成立ねおめでとう♪」

 次ギルドにやって来た女の人、偶々ギルドの敷居を跨いでしまった深山 千草(ia0889)が犠牲になってしまった!
「‥‥はい?」
「あなたお独りよね、恋人は? よかったわ今ちょうど良い人がいてね‥‥」
 いきなりおばさんに腕を掴まれ矢継ぎ早に質問攻めにされ。目を白黒させている千草に経緯を飲み込めるはずもない。犠牲者に黙祷するギルドの面々と、説明したり千草を気遣うだけの余裕がないヤケっぱちの男性職員と――それから。
 どさくさに紛れて、おばさんに既婚者でない事だけ確認された千草は何ら説明されないまま、あれよあれよという間に拉致されてしまった!

「わわっ、千草さんが!」
「大変。追いかけなくちゃ」
 すぐに後を追う桔梗、付いて行くか迷った梨佳の逡巡は一瞬で解決した。
「おう、行って来い!」
「はいです! 桔梗さん待ってくださーい!」
 にやにや成り行きを見守っていた哲慈に、やたら威勢よく背を叩かれて梨佳は慌ててギルドを飛び出した。

●お見合いの真相
 世話好きおばさんと被害者の若人達は、料亭が建ち並ぶ通りへ向かって歩いていた。
「こちらは深山 千草さん、開拓者でクラスは志士‥‥と、それは貴方の方が詳しいわね」
 ギルド職員相手に開拓者を紹介するおばさんは酷くご機嫌だ。千草にも職員の紹介を済ませた辺りで到着したのは甘味屋の前。袖で口元を隠してうふふ笑いしたおばさんは二人を店の中へと押し込んだ。
「若い人は若い人同士の方が良いでしょう。さあさ、二人共頑張ってね」
 何を頑張るのか解らないが、おばさんは千草達を残して去ってしまった。
 途方に暮れた二人は互いに顔を見合わせて苦笑した。
「あの、一体何だったのでしょうか」
「すみません‥‥妙な事に巻き込んでしまいまして‥‥ああ、折角ですから冷たいものでも如何ですか。お詫びに御馳走します」
 ギルドに戻る前にカキ氷でも食べて行こうと言って、職員は奥の卓へ千草を誘った。

 とは言え、いきなり会わされた者同士、共通の話題がある訳でもなく何となく居心地が悪い。
 ――あ、ひとつだけ共通項があったと、職員は実に面白みのない事を尋ねた。
「今日は何の御用でギルドへ行かれたのですか?」
 場所が甘味屋でなければ、ギルドの受付卓と何ら変わりない。職員は少しだけ緊張が解けた。
 千草が依頼完遂の報告に行ったのだと返して優しく微笑むと、更に緊張が解けた職員は到着したカキ氷を崩しながら差し障りのない範囲で依頼内容を尋ねる。すっかり出張ギルドと化した甘味屋の一角では和やかな会談が進んでいた。

「まあまあ、これはなかなか‥‥」
 店内を覗き見たお見合いおばさんは大層ご機嫌だ。
 やはり私の目は正しかった。この私が見込んだ女性とあの職員は、あんなに仲良さげではないか。
 偶々千草がギルドの敷居を跨いだだけという事実をまるっと無視して自分の手柄だとご満悦。様子を見に来た弟妹達にも心配ないと安心させたおばさんは、意気揚々と開拓者ギルドへ戻って行った。
 ギルドでは昼勤と夕勤の交代時間の頃で、少し早めに出勤していた夜勤組の聡志は、お見合いおばさんの姿を見て露骨に顔を顰めた。
「ちょっと、ちょっと‥‥イイ感じなのよ!」
 いつになくご機嫌のおばさんは、尋ねもしないのに世話した見合いが上手く行きそうなのだと喋った。守秘義務などあったものではないなと思う聡志を他所に、応接室から出て来た桂夏が会話に混ざる。
「誰か、引っかかったんですか?」
「人聞きの悪い事を。運命のお引き合わせよ」
 えー、と不審な顔をする桂夏と端から不審顔の聡志に、一部始終を見ていた哲慈が事の経緯を説明してやった。
「‥‥という事は、彼は午後の間ずっと仕事放棄している訳ですか」
 渋い顔して聡志が言った。それはよろしくない。早く連れ戻さなければ。
 聡志の苛々は別にして、仕事上がりの哲慈と桂夏は別の興味を抱いていた。温和で家庭的な千草と独り身の職員、一体どんな話をしているのだろうか。
「そりゃ尤もだ、俺らも行かなきゃなァ。丁度昼勤も終わった所だしよォ」
「私も行きます! 梨佳ちゃんは私の見習いですから!」
 尤もらしい理由を付けて、三人は様子を伺いに甘味屋へ向かった――人はこれを出歯亀と言うに違いない。

 さて、甘味屋へ到着した三人は普通に入店して席に着いた。
「白玉餡蜜ください」
「俺は茶だけでいい、冷茶な」
「私は団子と温かいお茶を」
 一見、三人揃っての休憩を装ってはいたが、皆して二人の動向を観察していた。注文の品が運ばれて来た後も、手を付けているのは桂夏だけで男二人は耳をそばだてている。

「普段のお姿からは、戦う様子が想像もできませんね。あ、いえ弱そうとかそういう意味ではなくて‥‥」
「似合いませんか?」
 真っ赤になった職員が、何やら口篭っている。双方砕けた様子で、何だか良い雰囲気だ。
 何を聞いたか、くすくす笑った千草が職員に何か言って、彼は「喜んで!」がたんと立ち上がって店内の注目を浴びた。

「何をやっているのだか‥‥」
 溜息吐いて、聡志は茶を啜る。几帳面に団子を串から外し、一個口に放り込んだ。
 今ので気付いた振りをした哲慈が千草達の卓へ近付くと、職員はすっかり千草と打ち解けた様子で哲慈を迎えた。
「おう、いい雰囲気じゃねェか」
「お見合いかどうかはともかく、有意義な時間を過ごさせていただきました。ね、深山さん」
「ふふ、私も楽しかったわ」
 顔見合わせて微笑み合う二人は何とも良い雰囲気で。
 一体何の話で盛り上がったのかと問い詰めてみると何の事はない、報告に向かう千種の依頼話から始まって昨今の世情やアヤカシ事情などを話していたのだそうな。
「深山さんが今度、私が担当する依頼を請けてくださるそうなんです!」
「ええ、よろしくお願いします」
 さっき急に立ち上がったのは、それか。
「なぁんだ、残念」
「‥‥ま、こんなコトだろうとは思ったけどな」
「とにかく始末書か残業か、選んで貰いますよ」
 拍子抜けした同僚達に連れられて、職員はギルドへ戻って行った。勿論ここの払いは全部彼の奢りである。

 千草が甘味屋を出てみると、桔梗と梨佳が待っていた。
 夕焼けを背景に立つ桔梗は不安げで、消え入りそうに儚げで――千草は思わず彼の黒髪に手を添えた。
 人に触れられる事に一瞬の躊躇いを見せる桔梗がいじらしく、千草はふふりと微笑んで言った。
「心配しないで、ね? 一緒にカキ氷を食べただけですもの‥‥ね?」

 その後暫く、お見合いおばさんは成果を華々しく吹聴して回ったが、詳細を当人達が語る事はなかったらしい。
 まあそっとしておくのが良いだろうというのがギルド関係者筋の見解である――


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ia0889 / 深山 千草 / 女 / 26 / 依頼を請けていた開拓者 】
【 ia0439 / 桔梗 / 男 / 16 / 拉致られたお姉さんを案じる弟分 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもありがとうございますv 周利でございます。
 こちらは千草さんサイドになります。前半同じ展開で真相のみ別個にさせていただきました。
 彼とは‥‥今後どうなりますやら♪ ご申請ありがとうございましたv
常夏のドリームノベル -
周利 芽乃香 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2012年08月10日

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