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『うだるにゃんこ屋台を行く☆ 』
猫宮・千佳(ib0045)


――ジジジ、ミーンミンミン……。
 耳を澄まさなくとも聞こえてくる蝉時雨。神楽の都は今日も暑い。
「うに……」
 猫宮・千佳(ib0045) は、開け放たれた窓に垂れる簾をんしょんしょと巻き上げていた。
 最後は背伸びして、きゅっと結ぶ。そして背後にどさり。
 十畳の部屋に大の字に倒れる。
「うにゃぁ、暑すぎるにゃ〜」
 眉の根を寄せ力なく団扇をぱたぱた扇いでいる。風を求めて簾を上げたのだが、期待は外れたようで。
 いや、ちょっと待て。
 肌が透けそうなほど薄い生地の、ミルク色したぺちこーと姿だったのが、寝転んだ時にだらしなくめくれ上がっているぞ。白い肌はおへそまで丸出しで、ふわふわ真っ白ぱんつ姿をさらしている。胸までまくれ上がってないとはいえ、何というあられもない格好か。
――ねえ、今晩は夏祭りだね〜。
 外からは子供たちの浮かれ声が聞こえてくる。
「夏祭りなんか……どうでもいいにゃ……」
 閉じた目をゆがめ呟く千佳。ぺちこーとの胸元を左手でぐーんと伸ばすと、右手で団扇を仰ぎ風を入れる。涼しいのだろう。眉が幸せそうにわずかに緩んだ。
「どーせ来客なんてないにゃし……いっそ……」
 ああっ!
 千佳、最後の砦たるぺちこーととふわふわパンツに手を掛けたではないか。このままでは本当に素っ裸になってしまうぞ!
 その時だった。


「こんにちは〜。千佳さん、いる?」
 ぱん、と襖が開いて誰かが入ってきた。
 仰向けに寝てぺちこーとの胸元を開けぱんつに手を掛けたまま、顎を上げて来客を見る千佳。逆さに写ったコクリ・コクル(iz0150) を確認すると、後の動きは猫のように素早かった。
「うに? コクリちゃんにゃ〜っ!」
「ちょっと千佳さん、いまぱんつ脱げたよ〜っ!」
 がしーっ、とコクリに抱きついた千佳。受け止めたコクリは千佳の後ろに跳ね上げた足から、ぽーんとぱんつが脱げ飛んだ光景に慌てている。とはいえちゃんと起きたのでしっかりぺちこーとが下がり大切なところは隠れるのだが。
「これだけ暑かったらぱんつくらいいいにゃ」
「そ、そう? それより千佳さん。今晩夏祭りがあるんだって。一緒に行こうよ☆」
 うに〜とすりすりする千佳に話すコクリ。
「夏祭り……そうにゃね。コクリちゃんのお誘いなら即答でオッケーにゃ!」
「あはっ。ありがとっ」
「でも、せっかくにゃから浴衣で行くにゃよ?」
「きゃ〜っ!」
 すとーん、とコクリのスカートを早業で脱がす千佳。思わず内股をすり合わせ腰を引くコクリだがもう遅い。……もっとも、コクリもぺちこーとを着ていたのでさらりん☆と薄い生地が舞っただけだが。
 いや、それだけではない!
 千佳の手はぺちこーと下のぱんつに掛かっていた。
「や、ぱんつまでずり下ろしちゃ……」
「にゅ。でもあたしはそう教えて貰ったにゃよー?」
 確かに、すでに千佳はパンツを脱いでいる。どうしてそうなったか、浴衣の下は履かない付けないが彼女の認識だ。
「分かったからちょっと待って〜っ。外から見えちゃうかもだよ〜っ」
「うに。分かったにゃ」
 聞き分けのいいコクリに千佳はるんるん。ぺちこーとをひらめかすと窓際に行き、巻き上げ結んでいた簾を下ろすのだった。


 すでに神社までの参道には多くの人が集まっていた。
 道の両脇に連なる屋台に、遠くから聞こえる心躍らす笛の音。「わっしょい」の掛け声は、神幸祭の神輿が出御した証し。道行きたむろする人の多さが、祭のたけなわを伝えていた。
「コクリちゃん、あっちでくじ引きしてみるにゃ」
「うんっ。いいの当てよう?」
 かろんころんと履物を鳴らし、小さな浴衣少女二人が手をつないで走っている。くじ引き屋台に到着すると、早速好きな紐を選ぶ。
「うにゅ〜、団扇にゃ。……コクリちゃんはどうにゃ?」
「あっ。見て見て。ボクは扇子だ」
 選んだ紐を引っ張って、先についていた紙を広げ見せあいこする二人。千佳はもう団扇を持っていたため困っている。
「それじゃこうしよう。ちょっと貸して」
 ひらめいたコクリが千佳から団扇を受け取る。
 すると、千佳の肩を持って回れ右させる。白黒の猫の顔が可愛らしく散りばめられている黄色い浴衣姿が翻り、千佳は何をするのか不安になって金髪のポニーテールを揺らして必死に背中越しに見る。ねこ耳カチューシャ付きなのがチャームポイントだ。
「はい。帯に挟んでおいたから、また手ぶらで動けるよ」
「にゃっ! コクリちゃんと手を繋げるにゃ」
 歓喜に抱き付く千佳。受け止めるコクリの浴衣は、千佳の去年の浴衣だ。こちらは紫地に白い猫が跳ねたり丸くなったりしている柄。黄色い浴衣の千佳の姿がとても引き立っていた。
「にゅ?」
 と、ここで千佳の楽しいことに敏感な大きな青い瞳が見開かれた。
「コクリちゃん、輪投げがあるにゃ! 次はあそこにゃ」
 コクリの首根っこに抱きついたまま指差しはしゃぐ千佳。
「まず降りて、千佳さん〜っ」
 というわけで、輪投げ。「コクリちゃん支えといてにゃ」、「そこまでしなくても〜」と言う感じで思いっきり身体を前に出して見事に賞品を大量獲得したり。
「にゃっ、梯子落としがあるにゃ。カタカタいってるにゃ〜」
「うんっ、行こう」
 手を繋いで背後の帯の結びを揺らし走る二人。今度は木工玩具の屋台で梯子落としをしたりけん玉で遊んでみたり。
「次は……」
「あっ! リンゴ飴だ。あれを食べよう」
 きょろ、と次を探す千佳の手を、今度はコクリが引いて走り出した。「キレーだよね」、「これとこれが大きいにゃ」とか、ここでも楽しく盛り上がり。
「千佳さん、見てっ。神輿が行くよ?」
「にゅ?」
 屈んで小物を見ていた千佳がコクリを見上げ立ち上がる。
 やがて、とぉん、とぉんなど鼓や笙の音とともに、神輿がやって来た。
 そしてちょうど演奏の切れ目に。
「よっしゃ。わっしょい、わっしょい」
 跳ねる神輿と勇ましい担ぎ手の姿に、道を開けた人々から大きな拍手が巻き起こる。
「すごいね〜。やっぱり大きな人が神輿を担ぐんだ……あっ!」
「コクリちゃん♪」
 羨ましそうに見惚れていたコクリが驚いたのは、千佳が彼女の頭に両手を伸ばしていたから。
「はい、これプレゼントにゃ♪」
 ん、と小首を傾けて微笑んだ千佳。コクリは自分の髪に手をやり赤くなっている。
「奇麗な花の髪留めにゃけど、あたしにはこの大きな猫の髪留めがあるにゃしね。……椿の赤色がとっても映えてるにゃ」
「ありがと、千佳さん」
「あたしらは神輿を担ぐ必要ないにゃ。あたしは、コクリちゃんを支えるにゃし、コクリちゃんはあたしを支えてくれたらいいにゃ」
「うんっ! そうだねっ」
 満面の笑顔を咲かせたコクリ。そっと千佳の手を取る。すると――。
「にゃあああああっ! コクリちゃんどこ行くにゃか〜っ!」
「あははっ。次はどこがいい?」
 かろんころんと履物の音を響かせ、喜びのまま風になるコクリ。
「き、金魚掬いにゃ。まだ金魚掬いしてないにゃよ?」
 あはは、という笑い声と共に行き着く先を探す二人だった。


 そんな元気なコクリ、金魚掬いの屋台でもじもじと太股をすり合わせていた。
「そうそう。元気なのはいいけど、女の子が裾の合わせから白い足が見えてるまましゃがんじゃダメだよ?」「うん。おじさん、ありがと」
 コクリが真っ赤になっているのは、千佳に下着を取られたまま浴衣姿になっていることを思い出したから。
「じゃ、コクリちゃん。一緒にたくさん掬うにゃよ〜っ」
 千佳の方は下着無しが普通と教えられていたのでまったく動揺することも無し。袂を捲くった手でポイを掲げ、眼下をすいすい泳いでいる金魚を狙う。きら〜んと瞳が輝いているあたりがもうたまらなく猫的で。
「いくにゃ〜っ!」
 すすっと運ぶポイ。要所で猫のようにくねらす手首。次々と掬っていく。
「よしっ、ボクも」
 コクリはしっかり手首を固めて手堅く。やはり次々掬っていく。
「これが小手鞠隊の実力にゃ!」
 にゃふんと胸を張る千佳。小さな金魚鉢にたくさんの金魚が泳いでいた。
 周囲からは「おお〜」という賞賛の声。コクリは勝ち誇る千佳の横でぺこぺこと拍手に応えていた。

 そして夜も更けた。
「たっのしかったね〜」
「やっぱりコクリちゃんと一緒だと楽しいにゃ」
 あれもやった、これも満喫したと思い出話に花を咲かせながら家路に就いているコクリと千佳。手を繋いでないのは、美味しいものとかおもちゃとか金魚鉢とか、とにかくたくさんの戦利品を両手に持っていたから。
 と、コクリが立ち止まったぞ?
「その、千佳さん」
「にゅ?」
 右足を前に出して、左足のかかとを上げたまま振り向く千佳。ポニーテールが踊り、普段は見せないうなじが白い。大きな瞳には「どうしたかにゃ」と見開かれている。
「……その、なんでもない」
 照れ隠しするように歩き始めるコクリ。
 なんとなく、微妙な間が流れつつ道を行く。
 そして今度は。
――ぎゅっ。
「え?」
 不意に手を握られ、コクリがびっくりした。二人とも両手は塞がっていたはずである。
「もっとコ クリちゃんと一緒にいたいにゃ。……ダメかにゃ?」
 見ると、千佳が上目遣いで訴えていた。リンゴ飴もけん玉も孫の手も、挟めるものは全て帯に挟んで片手を開けていた。おかげで浴衣はだらりと緩み始めている。
「……金魚、たくさん取りすぎて一つの鉢にまとめてもらったしね」
 コクリ、自分の梯子落としもべっ甲飴も木刀も、挟めるものは全て帯に挟んで片手を開けると、解け崩れそうな千佳の浴衣を優しく直しながら頷いた。自分の浴衣が乱れるのもいとわず。
 千佳、明るく笑顔を見せるが戸惑った。二人が帯にいろいろ挟んだ状態では抱きつけないのだ。
「とにかく、あたしの棲家に行くにゃ」
「うんっ。そうしよう」
 浴衣は緩んだが、片手と片手が空いた。
 ぎゅっと繋いで微笑み合って、急ぐ――。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib0045/猫宮・千佳/女/15/魔術師
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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猫宮・千佳 様

 いつもお世話様になっております。
 今度は二人で祭りの屋台。納品のあった千佳さんの浴衣の姿絵を拝見しながら、楽しいことてんこ盛りでお送りします。この後、千佳さんの部屋で楽しく過ごしたに違いありません。翌日、コクリが何かを履き忘れて帰るくらい。

 この度はありがとうございました♪
常夏のドリームノベル -
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舵天照 -DTS-
2012年08月22日

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