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『素材ツアーin異世界 』
セレシュ・ウィーラー8538)&(登場しない)

 とある日の事。
「ありゃ、材料が足りない」
 戸棚をあさるセレシュが呟いた。
 これから魔具を作ろうと思っていた矢先の事だった。
 いつも備蓄してあったモノがなくなっているのである。
 割りとよくある事だと思うのだが、買い置きしているものなどは『いつもでもここにある』と言う思考が生まれ、しばしば補給を忘れがちなのである。
 例えば牛乳とか、バターとか、卵とか、納豆とか、そういったいつでも冷蔵庫にあるモノを切らしてしまった! とかそういう状況である。
「あちゃぁ。これじゃあ作れへんわ」
 口の下辺りを人差し指で押さえ、セレシュは少し考える。
 別に今すぐ必要な魔具を作らなければならないわけではないのだが、この機会に必要そうな物を採集するのも良いのではないだろうか、と。
「ふむ、久々に行ってみようかね」
 思い立ったが吉日、善は急げ。
 セレシュはすぐに支度をして、異世界への扉を開けた。

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 やってきたのは自然豊かな土地。
 扉の繋がった場所は目的のモノが産出される場所から多少離れた位置だった。
「ふむぅ、これは山を登らないといかんなぁ。しんどいけど、なんとかなるやろ」
 セレシュのいでたちは世界観を尊重している。
 この世界の文化レベルは例えるなら中世ヨーロッパ。いわゆるファンタジーといわれてパッと思いつくような世界観である。
 故にセレシュも皮鎧や西洋剣を身につけ、冒険者を装ってこの地に立ったというわけだ。
 因みにバックパックも背負っており、そこには野宿用の装備も入っている。少なくとも四日くらいはサバイバルできる程度の装備だ。
 現在地は森の手前、後ろには平野が広がっており、遠くに町の外壁が見えた。
 この辺りはまだ人の行き来もあるようで、近くに街道も通っている。
 街道は森の中を行き、その先がどこに繋がっているのかは知れないが、とりあえず人のいるところには通じているだろう。
「まずはこの道を歩いて行こか」
 土を固めた道を、セレシュはポテポテと歩いていくのだった。

 道の先には小さな村があった。
 森の中に作られた、長閑な雰囲気の村だ。
「目的地は確か、この山の洞窟にある鉱石やったね」
 メモって来た『必要な物』リストを確認する。
 とりあえず、戸棚の中になかったものは鉱石のみ。
 他に足りなくなりそうなモノは幾つかあったが、これは急を要するものでもない。
 補給できればラッキーぐらいの感覚だ。
「まぁ、のんびり進めば、今日中に着くやろ。出発、出発」
 村で適当な休憩を終えた後、セレシュは山道へと入った。

※以下、道中表、イベント表を適当に作って十面ダイスを振り、出た目によって起こったイベントを描写してお送りします。

1 ダイスロール出目1 モンスターに遭遇
 山道を歩いている途中、どこからともなく低い唸り声が聞こえてきた。
 セレシュは素早く剣を構え、辺りを窺う。
 しばらくすると、近くの草むらから獣人が飛び出してきた。
 茶色の毛皮で全身を覆い、手には棍棒を持っている。
 獣人は勢いのままにセレシュに襲い掛かってくる。
 しかし、この程度の下級モンスターならばセレシュの敵ではない。
 振り下ろしてきた棍棒を剣で打ち払い、獣人の身体を蹴り付ける。
 地面を転がった獣人に対し、セレシュは剣の切っ先を向けた。
「無益な殺生は好まん。はよどっか行き」
 セレシュの言葉を理解したのか、獣人はそそくさと草むらの中へと帰っていった。

2 ダイスロール出目3 特に何もなし

3 ダイスロール出目4 抜け道を発見
 セレシュの歩いている道は、恐らくあの村に住んでいる狩人やら、採取に出かけた人が作った道なのであろう。
 歩きやすいように草は刈られ、地面には大きめの石など転がっていない。
 そんな道を歩いている途中、ふと横道に逸れるように足跡が発見された。
「これは……人の物やないな」
 足跡のサイズが人のそれよりも小さい。
 恐らくはこの近くに住んでいる獣かモンスターの物であろう。
 危険を冒してこの道を進む必要もないが、興味に駆られてセレシュはその道を進んでみた。
 しばらくすると、マップに記された道に出る。どうやら近道になったようだった。
「これはもしかしたら、思ったより早く着くかもしれんで」
 思わぬ幸運に気を良くしたセレシュは、足取りも軽く、山の洞窟を目指した。
 
4 ダイスロール出目7 道行く人を発見
  ダイスロール出目1 冒険者
 道を歩いていると、冒険者らしき人物と出くわす。
 セレシュは多少警戒しつつ、様子を窺っていたが、相手の冒険者が両手を挙げて近づいてきた。
「そんなに警戒せんでくれ。こちとら敵意なんかないよ」
 中年ぐらいの年恰好の冒険者は、そう言って笑った。
 見る限り、妙な武装もなさそうだったので、セレシュも警戒を解く。
「堪忍な。この世界は色々な人がいるもんやし」
「アンタみたいな別嬪さんだったら人攫いにでも遭いそうなものだしなぁ、がっはっは」
 豪快に笑った冒険者はその場に腰を下ろした。
「お嬢さんはこの先へ?」
「ええ、山の洞窟に用があんねん」
「なるほど、そのバックパックのピッケルから見るに、採掘ってところですかな」
「必要な石が手に入るとええんやけど」
「ははっ、幸運を祈っとるよ」
 まだ少し休むと言う旅人と別れ、セレシュは先を急いだ。

 しばらく行くと、山の洞窟に辿り着く。
 大きく口を開けたその洞窟からは、風の通り抜ける音が聞こえる。
「やっと着いたなぁ」
 洞窟の手前に荷物を降ろし、セレシュは一息ついた。
 ここに来るまでに色んな物を発見しては採集してきたので、荷物もかなり多くなっている。
 薬草やら木の枝やら、バッグにいっぱいになりそうなほどだった。
「今日はこの辺で野宿かね。さっさとテントを張らんと、日が暮れてまうわ」
 いそいそとバックパックからテントを取り出して野宿の準備を始める。
 焚き火をおこして、近くに持ってきた簡易テーブルとカセットコンロを設置する。
 ああ、便利かな文明の利器。セレシュは鍋なども持参しており、軽いキャンプ気分だった。
「キャンプと言ったら、ご飯はこれやで」
 取り出したのはレトルトカレー。
 飯盒でご飯を炊きつつ、鍋に水を入れてカセットコンロにかけ、お湯を沸かしてレトルトカレーをぶち込む。
 あとは出来上がりを待つばかりだ。
「ああ……ホンマに便利やわぁ」
 あっという間に出来上がる夕食に感激しつつ、セレシュはカレーを口へ運んだ。

 本格的な採集は翌日からである。

***********************************

 未だ暗い森の中。
 時間的には日は昇っているはずだが、うっそうと茂っている木々に阻まれて日の光は届いてこなかった。
 セレシュはカンテラに火を入れると、採集道具を背負った。
「さて、これからが本番や」
 意気込みながら洞窟の大口へと足を踏み入れた。

5 ダイスロール出目6 モンスターに遭遇
 洞窟を進んでしばらくすると、岩陰からゼリー状のモンスターが顔を出す。
 いわゆるスライムというヤツだが、侮ってはいけない。
「強敵出現……気合入れな」
 セレシュは剣を構えてジリと距離をとる。
 ゲームなどでは最弱キャラとして登場するスライムだが、本当のスライムはかなりの強敵である。
 物理的な攻撃はほとんど効果がなく、一度皮膚に付着すると爛れるほどの高温を発する。
 しかもドロドロしているので振り払うのも一筋縄ではいかないと言う、割りと難易度の高い敵キャラであった。
「でもうちは弱点も知ってんねんで」
 セレシュはカンテラをチラチラと振る。
 スライムの弱点はズバリ火。
 身体のほとんどが水で出来ているスライムは、当然のように火に弱いのだ。
「あんまりまともに相手したくないし、ここは逃げるが勝ちやな」
 不幸にも今の防具は皮装備。
 スライムに飛びつかれて服が解け、十八禁な展開になられても困る。
 セレシュはカンテラで威嚇しつつ、スライムから逃げ出した。

6 ダイスロール出目3 特に何もなし

7 ダイスロール出目7 道行く人を発見
  ダイスロール出目6 盗賊
 洞窟の中を歩いていると、足元にチラリと何かを見つける。
 カンテラの光を反射したのは細い糸だった。
「なんやろ、これ」
 触らないように近付くと、その糸はどこかに繋がっているらしい。
 先をずっと目で追うと、なんと鳴子に繋がっていた。
「まずいやん……」
 セレシュはすぐに剣の柄を握って辺りを窺う。
 カンテラを高く掲げて視界を確保するが、周りに人影は見当たらない。
「気付かれてへんのやろか……」
 糸に鳴子となれば、これは侵入者を察知するための罠。
 つまり、近くには誰かがいるという事だ。
 こんな罠を作るとなれば、モンスターではない事がわかる。
 恐らく人が、この近くにいる。
 セレシュは策敵魔法を使って、近くにいる人を探ってみた。
 すると近くに反応する影が幾つか。
 人が三人ほど集まって、一所に固まっている。
「三人か……あんまり関わりたくはないなぁ」
 盗賊であった場合は、この近くを縄張りにしているのであろう。
 麓にあった村も被害にあっているかもしれない。
 だが、セレシュが異世界に介入して解決してしまうのも何か違う気がして、ここは回避を選ぶのが賢い判断だ、とスルーする事にした。

8 ダイスロール出目2 アイテム発見
  ダイスロール出目8 水
 洞窟の壁から滾々と湧き出る水を発見した。
「おお、ラッキー」
 セレシュは自宅から持ってきたペットボトルを取り出して、それを汲む。
 昨晩の夕餉に水を消費してしまったので、どこかで補給しておかなければ多少不安だったのだ。
 セレシュは多めに水を手に入れた後、そのまま目的地を目指した。

9 ダイスロール出目5 お宝発見
 洞窟には稀に高位のモンスターが住み着く事がある。
 高位のモンスターは収集癖を持つモノが多く、住処となった洞窟には幾つか、宝箱が落ちている事があるのだ。
「こ、これは……」
 セレシュの目の前に転がる箱。
 決して華美な装飾はなく、一見すると単なる汚い木箱に見えるが、これは紛れもなくトレジャーボックスである。
「素敵! これだから採集の旅は止められへんッ!!」
 思い切り飛びついて中を確認すると、少しの金貨袋と鉄のナイフが一本。
「ちっ、なんやしけてるなぁ!」
 中身に不満を漏らしつつ、まぁ大概はこういったハズレである事を知っているセレシュは、特にそれ以上あさる事もなく先を進んだ。

10 ダイスロール出目7 道行く人を発見
   ダイスロール出目1 敵対
 ふっと、前方に灯っていた明かりが消えた。
「まずい」
 セレシュも慌ててカンテラの火を消す。
 そしてすぐに物陰に身を隠した。
 カツっと何かがぶつかる音。恐らくは敵の放った投擲武器の何かが地面の石に当たった音だろう。
「やっぱりかいな!」
 剣を抜きつつ、セレシュは舌打ちした。
 暗視魔法を操りつつ、様子を窺う。
 相手が明かりを消したのは恐らく、セレシュに気付いたからだろう。
 そして明かりを消すという事は、セレシュには気付かれたくなかったという事。即ち、道すがら出会ったおじさんのような好意的な人間でないということだ。
 更にそれを決定付けるかのように、相手の投擲武器である。完全に敵対者だ。
 こうなってしまっては今後の展開は逃げるか、それとも戦うか、どちらか一つである。
 ここまで安全に来れたのに、最後の最後でこんな事になってしまうとは計算外である。
 逃げようにも、相手も明かりを消したという事は暗がりでの戦闘にも多少の自信があるということだろう。追跡もお手の物のはずだ。
 どうしようかと悩んでいると、先に相手が動く。
 近くに隠されてあった魔法陣が一斉に発動する。
「しまったッ!」
 セレシュは大慌てでその場から逃げ出し、魔法陣から距離をとる。
 間もなく、洞窟に大爆発が起こった。
 壁や天井に貼り付けられた魔法陣すべてに爆発の魔法が込められており、それが一気に爆発したのだ。
 当然、壁や天井は崩れ、その先へ行く事は出来なくなった。
 煙が晴れた後、セレシュは落ち着いてカンテラに火を灯した。
「こりゃ……酷いな」
 完全に行く道は塞がっている。幸いかな、戻る道には一切影響していないらしい。
 しかし、この出来上がった壁の奥に、先ほどの敵対者がいる。あの人物はどうやって洞窟から出るつもりなのだろうか?
 ……気にしていても仕方がない、とセレシュは目的の鉱石を探し始めた。

 洞窟での採集も終え、セレシュはやっとお天道様の下に戻ってくる。
 目的の鉱石も手に入れ、更に副産物として色んな薬草やきのこなんかも手に入れた。
「ふむぅ、採集ツアーとしては大満足やね」
 いっぱいになったバッグを見て、セレシュは足取りも軽く、下山を始めるのだった。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
ピコかめ クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年09月13日

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