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『緑萌える山荘で〜ドキッ☆男子だらけのサマーメモリー 』
久遠 栄ja2400


『涼やかな山荘で、ひと夏を過ごしませんか』

 目を引いたのは、そんなキャッチフレーズだった。
 豊かな自然、流れる川、川の主に山の神。遭難者の ……なんでもない。
 パンフレットに掲載された美しい写真が、様々な想像を掻き立てた。
 涼やかな高山、ログハウス。
(夏休みって、決まって里帰りをするから…… 中学時代は寂しかったなぁ)
 青空・アルベールは思案する。
(今年の夏は、今までとは違う)
 小さく頷きを、ひとつ。



●クライム・ザ・マウンテン
 よく晴れた早朝。爽やかな風が心地よく吹き渡る。
 大きな荷物から軽装、アウトドアルックで準備万端まで、様々な男子陣が久遠ヶ原学園前に集う。

「アルベールくん、誘ってくれて、ありがとうございますー♪」
「こちらこそ、よろしくなのだ!」
 ペコリとお辞儀をするのは紫ノ宮 莉音。
 保健部の先輩である青空に誘われての、此度の男子会参加である。

「さっ、車はおにーさんが運転するからねー、乗っちゃって乗っちゃってー」
 百々 清世が、参加者を促す。主催の青空とは、英雄部つながり。
 朝に弱い清世だが、今日ばかりはなんとか気合で起きた。
※青空君に起こしてもらいました。

「ほむりんがいるし、食べるもんは心配しなくていいよねー」
「これだけ持ち込みもあるし。現地調達の食材で美味しいもの沢山作るよ〜!」
 期待の声に、星杜 焔が柔らかな笑顔を返し、トランクに大荷物を積んでから車に乗り込んだ。
「プリン超楽しみー」
「え! プリンまで山で作るの!?」
 清世のリクエストに驚いたのは、筧 鷹政だ。
 閑話部で焔の手作りお菓子に餌付けされている身であるが、アウトドアでも変わらぬ技術を聞いて驚きを隠せない。
「おつまみも作るよ〜」
「星杜君無双…… 頼りにしてます」
 成人は2名しか居ないというのに、鷹政の持ち込みはアルコールだけという酷い卒業生である。
 大丈夫、何か事件が起きれば『筧のせい』を受けて立つ覚悟はできている。

「俺は綺麗な水で美味しい珈琲を作る予定。ほむほむのデザートと良く合うかも知れない!」
 喫茶店で鍛えた腕を披露する場に目を輝かせる久遠 栄。

 誰かしらどこかで面識はあるけれど、全員揃ってというのは初めてのメンバー。しかし『初対面』という緊張感はカケラも見当たらない。
 男子6人、夏の山で一泊二日。
 不毛だなんて言わないで。
 きっと楽しいことは、山の上、流れる川の水面に輝いている。



●サマータイム・サバイバル〜お魚を捕ろう
「駐車場から、けっこう歩いたねー。おにーさんクタクター!」
 山荘備え付けのソファへ速攻でダイブする清世に、莉音が慌てて駆け寄る。
「埃だらけ、ですよー? ……けほっ」
「これ、軽く掃除した方がいいな……。俺が済ませておくから、食材調達をお願いしてもいいかな」
 鷹政の提案に反論の声もない。
「削り過ぎには、気を付けてくださいね?」
「山荘掃除で削ることは何もない、大丈夫だ莉音君……」
 見上げる莉音の肩をポンと叩き、鷹政は少年たちを見送った。


「魚が俺を呼んでいる……」
「えーっ 面白そう、ついてってもいいですか? 亀がいたら、ひっくり返すよ♪」
 万全の装備の栄へ、莉音がご機嫌に同行する。
 莉音は、水に濡れても万全の準備である。
「そういえば保健部でも閑話部でも流しそうめんしてたけど……今日は焔くんが、ごはん作るのかな?」
「え、紫ノ宮君、竹筒に魚流すの……?」
「流れないよ、ねー??」
 釣竿を川に放る栄の隣で、莉音は足を水の流れに浸している。
 時折、小魚が素肌を撫でてゆく感触がくすぐったい。
「たぶん、カレーとか 網焼き系とか そんなじゃないかな。魚も釣るし!!」
「主、いるかなー」
「居た!!」
「え!?」
 大物の手ごたえに、栄が思わず立ち上がり、力強く竿を引く。これは、これはもしや――

 ――だぱんっ

※お約束です

「栄せんぱい、だいじょうぶですかー?」
「男子会で誰得なのこれ……。 あっ、ポケットに魚が!?」
「主、ゲットー♪」
 足を滑らせ川へ転落し、びしょ濡れになった栄へ、莉音は網を差し出した。いや、とりあえずタオルタオル。



●猫と食事と夏談義
 山菜、魚、新鮮な湧水。
 それぞれが持ち寄ったもので、ワイワイと調理開始。

「手伝う事ないー?」
「あ、じゃあコレの皮むきを」
 清世が、キッチンの主・焔へ声を掛け、仕事を引き受けるも――
「紫ノ宮ちゃん、パス!」
「来ると、思いましたー♪」
 開始5分でバトンパス。
 先を読んでいた莉音が、下ごしらえを終えた食材を焔へ受け渡したところで引き継ぐ。
 まだ付き合いの浅い(性別誤解を解くステップさえあった)清世と莉音だが、人付き合いバリアフリーの清世・気配り上手の莉音であるから、バトンの受け渡しもごくごく自然に。

「手伝う事ないー?」
「清兄ちゃん、こっちこっちーー」
 5分で投げ出さないお仕事中の青空が、リビングで手を振る。
 仮に投げ出しても、いつでも休憩できるソファ付きだ。
 食事は外で網焼きを楽しみつつ、二次会は屋内になるので、グダグダになる前に整備すべし。である。

「さっすがほむほむ。調味料、すごい持ち込み量だな」
 カレーの味付けを担当する栄が、見慣れぬ小瓶を手に取り唸る。
 スパイスばかりは現地調達とはいかない。焔セレクトの数々は、料理が趣味の栄でさえ知らない名前のものが多い。
 と、その途中。
 ツルリと手が滑り、瓶の蓋が開き、中身全部投入されるアクシデント発生!!
※お約束です。
「……だいじょうぶ、だよね?」
 栄は、おタマで蓋を掬いあげて何事もなかったかのように笑顔で瓶を戻す。
 大丈夫。たぶん。だってほら、安心と信頼☆ほむほむの持ちものだし!

 火の用意が出来たよ、と屋外から声がかかる。鷹政だ。
 山菜の天ぷら、美味しい水での朧豆腐、和栗のモンブランプリン。
 手間のかかるものは山荘内の調理台で焔が済ませ、釣りあげた魚や持ち込みの肉・野菜類は山荘前で網焼きのセッティングをしていた。
 ゆっくりと陽が落ちて虫の音が変わり始める頃、いい匂いが山荘周辺に立ち込める。


「この夏は海もお祭りも花火も行ったけど、山は戦闘以外では初めてー♪」
 網の上のトウモロコシを転がしながら、莉音はハシャぐ。
「山はいつでも、ある意味で戦場なのだ」
 辛い過去を持つ青空が神妙な表情をして、焼きあがった肉を皿に取る。
 パチパチと爆ぜる炭火を囲み、肉や野菜、魚を焼きつつ話題は今年の夏へと転がった。

「夏の思い出か〜。部活で行った夏祭りかな。友人達ときゃっきゃと楽しんだよ」

 栄はホコホコの天ぷらに目尻を下げる。
 山菜というと春か秋、という印象があるけれど、季節それぞれにそれなりに色々あるものだ。
「まあ、周りに居るリア充のことは思い出から消したi…… おや、ここにもリア充が」
「栄さん、あ〜ん」
「むぐ ……んぐんぐ……、美味しいなぁ」
 魚のホイル焼きで口をふさがれ、栄は背後のドス黒いオーラを鎮める。
 そんな『リア充』焔は―― しんみりとしていた。

「……浴衣祭りでお誕生日祝ってもらえたの、すごく嬉しかったな」

 祝ってくれた大切な友人・莉音へ向き直る。
「……もう、ないと思ってたから〜……。あの時貰ったアルバムに、今回の旅の思い出も飾るね」
(大切なお友達がいっぱいできて、すごく嬉しいんだ……)
 マイペースを崩さない、いつも穏やかな表情の焔。
 彼の心に残る傷跡の深さは、彼にしか解らない。
 そしてそれが、久遠ヶ原学園に来たことで、どれだけ癒されてきたか。どれだけの変化をもたらした、夏であったか……。
「焔兄ちゃん?」
 焔の、微妙な表情な変化に気づいた青空が、ついと手を伸ばす。その柔らかな髪を、ぽふぽふ撫でる。
 その様子に、トウモロコシに噛り付いていた莉音がふと手を止める。
(最近は、彼女さんとベッタリって、思ってたけど……)
 焔という人が、変わったわけではないのかもしれない。
 『恋愛事は恋人同士の秘密』だと思うから、敢えて深く聞くことはしないけれど。
(……アルバム、喜んで貰えてよかった)
 焔に恋人が出来たことで遊ぶ機会は減ってしまっていたけれど、自分の行動を大切に思っていてくれた。
 それが純粋に嬉しい。

「この夏は……お盆には少しだけ家族と過ごせたし、色々あったけど、いっぱい踊った、かな?」

 莉音が、停滞した空気を変えるべく自分の思い出を話題に乗せる。
 京都が郷である莉音には、夏どころか、今年全体が波乱だらけだったとも思う。
 色々あったが、過ごせる家族が居る、居てくれることのありがたさも身に染みた。
「御神楽もしたし、ベリーダンスもしたし、ソシアルダンスも…… そういえば、ああやって自分のために踊るのって珍しかったかも」
「莉音君は、ダンスが好きなんだねえ」
「泳ぐのも、好きです♪ 競泳……は機会がなかったなー」
「あぁ、そっか」
 莉音の表情が、少し翳る。鷹政も、深追いはしなかった。
 年齢に関係なく、誰もが何かしらの傷を負っている。事情を抱えている。
 自ら話そうとしないことへ首を突っ込むだけ、野暮というものだ。

「俺はねー、普通に海遊び行ったりバーベキューとかビアガーデン行ったりとかしたよー」

 そして、今まさに同じような状況である。何度やっても楽しいことは楽しいのである。
 栄が仕上げをしたカレーを器によそいながら、清世は既にホロ酔い加減で話を繋いだ。

「そういやお前ら、ちゃんと宿題終わってんの?」

 カレーを一口、缶ビールを一口。
 飲み下してから、清世が爆弾を投下した。

「食べないと、強い子になれないって言われたから……」
 真っ先に答えを濁すのは青空である。未来へ繋がるノートは白紙である。
 現実から目を逸らすのと同じくらい苦い野菜を頑張って頬張る。
 それだけの勇気があれば、残りの日数で宿題もきっと頑張れる!

「進級もかかってくるもんねぇ」

 ――BAAAAN!!!
 焔の何気ない一言へ合わせるように、網の上のトウモロコシが爆発した。
 傍にいた栄の髪が、一層、癖の強い巻き毛になっているように見えるのは、おそらく気のせい。
「百々ちゃんはどうなのさ……」
「俺? 俺は最初から宿題ねーよ、大学部だからな」
 栄に話を振られ、清世はキリッとした表情で胸を張る。
 少年たちの背後から、ゴゴゴゴと黒いオーラが立ち上る。
 そして、そんなオーラと共に――

「「!!!?」」

 猫耳が立ち上った。
 最初に異変が起きたのは、焔。
 向かい合う栄が目を見開き、自分の髪に指を差し入れ―― ガッデム、生えてやがる!

「猫好きー!」
 薄紫色の猫耳が生えた莉音へ、青空がタックルする。そんな彼には濃紺の猫耳がふんわりと立ち、ふさふさ尻尾がゆらゆらしていた。

「え? なにこれ?? 猫耳はえるとか凄くね?」

 展開は全く分からないが、とりあえず焔を写メに収める清世にも、ダークグレーの猫耳猫尻尾。
「俺にも生えんの? て、ちょっと興味ー!」
「順応力すごいね、百々君……」
 男だらけの猫耳大会に引きつつ、頭部の違和を確認しながら鷹政には心当たりがあった。
「星杜君、……もしやと思うんだけど」
「あっ、閑話部の猫化薬が荷物に混ざってた〜 あれ? カラになってる…… 一体誰が!」
※閑話部では、部長が趣味であらゆる薬を研究・開発しており、最近は『猫化薬』が猛威をふるっております。焔君は常連です。

「あ。ごめん、ソレ俺だ」

 小瓶を目にして、栄が冷静にカミングアウト。
 そして、それを責めるでなく誰もが笑い転げる。笑うしかない。恥じらうような相手はいない。
「ふぅ、落ち着けよみんな。猫になるのも…… 悪くないぜ」
 栄には黒猫のような艶のある耳と尻尾、白くピンと張った立派な猫ひげが生えている。
 夜空を見上げ、栄はクールにヒゲをなでた。
※全員猫化の原因は栄君です。

「ああ、鰹節が恋しい夜だぜ」

「おにいちゃんを、いじめるなー!」
「莉音君、まだ俺、削られてない、削られてない!!」
 栄から鷹政を庇うように、莉音が立ちはだかった。 
 そして、削るとかどうとか以前の会話であることに気づいていない莉音と鷹政である。単語に反応し過ぎである。



●更けゆく夜に
「楽しいけど先に、おやすみなさいー♪」
 健在の猫耳をショボンと垂れながら、目をこすり莉音はベッドにもぐる。
「お布団ふかふかー!」
 階上からキャッキャと声が響く。

「百々ちゃんたちは、これから飲むのか?」
「おー 大人の時間だぜー」
「日中、寝てたもんな…… 明日、ちゃんと起きるんだよ?」
 そんな栄や清世からは猫化効果が消えていた。
 効果には個人差があるらしい。
「帰る前には起きますね!」
「答えになってないっ もう。……おやすみなさーい」
 ペシッと清世の額を軽く叩いて、栄も階段を上がっていった。


「はい、おつまみ〜 残った山菜で焼きそばとか、簡単なものだけど」
 トレイに湯気の上がる料理を乗せて、猫耳健在の焔が登場する。
「ゴチになります」
 リビングのテーブルに広げられる料理に、鷹政が手を合わせた。こちらも、なんとか猫化効果は消えている。
「けどほんと、なんだか悪いね。作ってもらってばかりで」
 未成年の飲酒は禁止です。
 きちんと線引する自分が参加することで、男子会ならではの『ハメ外し』に水を差す形になったんじゃないだろうか。
 危惧する鷹政へ焔が首を振る。
「俺が成人したら、皆一緒に飲んでくれるかな?」
「それはもちろん、喜んで」
 返答へ、嬉しそうに焔は向かいのソファに座る。
 青空と焔はウーロン茶。
 清世と鷹政は焼酎を持ち込みのソフトドリンクで適当に割りながら。
 こうして男子会・夜の部スタート。

「依頼の話とか聴きたいなー」
「はは、物騒なものしかないけど」
 青空の言葉に、鷹政はグラスに氷を足しながら記憶を辿る。
 学園に収めている報告書から始まり、封都でとったフリーランス達の行動。
 青少年集団拉致事件なんてものもある。 
※山村の夏祭りへのご招待です。

「俺も筧ちゃんのお仕事に興味ない事はないんよー?」
 ピリ辛サモサへ手を伸ばしつつ、清世が口を挟む。
 栄や焔は閑話部で鷹政と面識があり、莉音は鷹政持ち込みの依頼に頻繁に参加している。
 そんな中、青空と清世だけが、鷹政とは完全な初対面であった。
「つっても痛いの嫌いだから、絶対選ばんけどねー」
「ぶっは」
 それは酷い理由だ、と鷹政が笑う。
 確かに鷹政の持ち込む依頼は、ややハードな戦闘系が多い。
「俺は臆病だし、表には出んのよ」
 ゆっくりとした口調で、グラスを揺らしながら清世が話を続ける。
「だから表に出て戦ってくれるダチとか、後輩とか、先輩とか。そうゆう奴らが頑張れるようにいたいなー、って」
「うん」
「酔っ払いの妄言だけどねー」
「あはは」
 そんなことない、と鷹政がグラスに焼酎を注ぎ足した。
「勇敢と無謀は違うし。待っててくれる人がいて、約束があって、それが楽しいものだったら、きっと絶対帰ってくるよ」
 カラリ、氷が溶けて、グラスに当たる。涼やかな音が、どこか寂しげな響きを与える。
「筧ちゃんも、帰ってくるー?」
「…………」
「紫ノ宮ちゃんが言ってたよ、最近、削り過ぎだーって」
「…………そう、かな」
 視線を逸らし、頬を掻く。思い当たることが、ないでもない。

「ちょっと飲ませてー」

 そこへ、青空が清世のグラスに手を伸ばしてきた。
「おっと、未成年はだめよー おにーさん、怒られちゃうからねー」
「うう、匂いだけでも!」
「まーだーって、もー」 
 匂いだけでアルコールに当てられた青空が、コテンとソファに丸くなる。ふさふさ猫しっぽが体に沿うよう、おとなしく収まった。
「おとなはいーなー こんなご機嫌なものを飲んでるのだぁ」
「みんなも、もーちょいじゃーん たのしいよー」
 仕方ないな、と清世も肩をすくめるしかない。
 匂いだけでご機嫌になってしまった青空からグラスを取り上げる。
(このメンバーで、飲み会を開けるようになる頃…… 自分たちは、どうなっているのかな)
 今と同じ関係を、保っているだろうか。
 ふと、焔が思いを巡らせる。
 長い間、孤独な生活をしていたから、幸せに慣れていない。友達が増えて嬉しいけれど、失う恐怖が背中合わせに存在している。
 ――などと深刻な思いは、泡のようにプカリと浮かんでは、夜の闇に消えた。
 自分も、アルコールの匂いに当てられただろうか?

「そーいやさー」

 清世がガラリと話題を変え、アレコレと話が飛んでゆく。
 焔の膝で青空が寝息を立て始めても、話の種が尽きることはなかった。
 


●昇る朝陽
 栄が、朝一番で汲んできた湧水で珈琲を淹れる。
 豊かな香りが山荘内に広がり、ひとり、またひとりと目を覚まし、階下へ降りてくる。

「清兄ちゃん、いつまで寝てるのー?」
 超早起きっ子の青空が、太陽とともに朝を告げる。
 男子会もキリの良いところを見計らい、焔が青空を連れて二階へ撤退していたおかげでグッスリ熟睡、今日も元気。
 ソファで崩れるように眠っている清世を、ゆさゆさ起こす。
「無理…… 朝、弱いし…… 皆、おにーさんの事良いから、遊んできー……」
 がくり。片手を挙げ、そして落ちる清世に、尚もアタックする青空。完全に遊び感覚である。
「清兄ちゃーん!」
「えーい 起こす奴は布団引きずり込んでおにーさんと一緒に寝る刑なー」
「やだー あははは!」
 ころりと抱きかかえられ、ソファに引きずり込まれる青空。の、下で違和感。

「……重い!!」

「どうして、そのソファに、大人二人が収まってたんですかー……?」
 洗顔を済ませた莉音が、清世の下敷きになっていた鷹政の手をつついて首を傾げた。
 酔いが高じると、こんなこともある。
 未成年の諸君、要注意である。時として取り返しのつかない事件が起きることもある。
※今回はセーフでした。


「おかげですごく楽しい夏休みになったのだ。皆ありがとーね」
「こちらこそ、誘ってくれてありがと、うううう……」
「鷹政さん、無理しないでー?」
 完全二日酔いの鷹政の背を、莉音がさする。さすがにこればかりはアストラルヴァンガードといえどどうにもできない。
「寮に戻ったら、宿題頑張れなー?」
「「うっ」」
 清世の呑気かつクリティカル発言に、思い当たる節のある数名が心臓を抑える。
「また……来年も来れるかな」
「来年は、違う場所で遊びたいねぇ」
「はーい! 僕、泳ぎたーい♪」
「男だらけの海水浴か……」
 ぽつりとつぶやいた焔へ、賑々しく提案が積み重なる。
 
 夏にしかできない体験。
 交わした約束。
 それら全てを車のトランクに積め込んで。


「しっかし、健全な男子会だったねー」
「猫化は……健全なの……?」
「コイバナとかさ…… 初体験とかさ……」
「肝試しもなかったね。知ってた? あの山荘、心霊スポットだったんだよ」
「「  」」
「だから格安レンタルって…… え、青空君も知らなかった?? まぁ、うん、知らぬが仏ってことだね」
「「だれがうまいこと言えと!」」
「わっ、ハンドル、ハンドル!!!」

 おうちに帰るまでが、男子会です。
 鷹政による余計なカミングアウトも詰め込んで、車は帰途を辿った。

 また来年も、きっと皆で楽しく!!



【緑萌える山荘で〜ドキッ☆男子だらけのサマーメモリー 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja0732 / 青空・アルベール / 男 / 16歳 / インフィルトレイター】
【ja5378 / 星杜 焔    / 男 / 17歳 / ディバインナイト】
【ja3082 / 百々 清世  / 男 / 21歳 / インフィルトレイター】
【ja6473 / 紫ノ宮莉音 / 男 / 13歳 / アストラルヴァンガード】
【ja2400 / 久遠 栄 / 男 / 19歳 / インフィルトレイター】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました!
PC5名様+NPC1名による、山荘での男子会をお送りいたします。
こんな健全な男子達でいいのか……!? と思いつつ、とても楽しく執筆させていただきました。
筧も呼んでいただき、ありがとうございます。
皆様にとって、良い思い出となりましたら幸いです。
常夏のドリームノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年09月18日

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