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『夏祭りの夜。〜さきわう日 』
玖堂 柚李葉(ia0859)

 夏祭りという言葉は、佐伯 柚李葉(ia0859)にとって特別な意味を持つ。それは一言では言い表せないくらいに、特別な、特別なもの。
 かつて柚李葉が旅の芸人一座に居た頃は、それは大切な仕事の場所だった。舞台に上がれない頃は姉さん達の舞台の準備を手伝ったり、呼び込みを手伝ったりして、舞台に上がれるようになってからは尚更に、失敗の許されない場所に、なって――
 夜店の煌びやかな灯りも、賑やかな空気も柚李葉にとっては、舞台の向こうにある遠いもの。一座の舞台が終わって後片付けをした後の、ほんの僅かな時間で急いで見て回る、特別な『ご褒美』。
 ――けれども今日、柚李葉が招かれた夏祭りは、違う。婚約者の玖堂 羽郁(ia0862)が招待してくれた、彼の故郷で行われる夏の風物詩でもあるという、夏祭り。
 それは三火祭(ミホマツリ)というらしい。招待してくれた羽郁が語ってくれた所によれば、三本の柱に火を灯すのだそうで――そうして今年のお祭は、それに加えて羽郁の双子の姉であり、柚李葉の親友でもある玖堂 真影(ia0490)が一族の当主となる、就任式も兼ねているのだとか。
 それを聞いた柚李葉の養母は、そうなの? と目を丸くして驚き、そうしてどこか柚李葉よりも幼い少女のように嬉しそうに、じゃあおめかししないとね、と張り切ったものだ。

『お養母さん‥‥あの、式とかで着るお衣装は、あちらでご用意して下さるんです』
『あら、そうなの? せっかく、柚李葉に可愛い服を誂えてあげる、良い機会だと思ったのに‥‥でもそうね、ご用意頂けるのなら、それを着た方が失礼がないわね』
『うん‥‥』
『あ、でもお祭もするんでしょう? じゃあ、そちらに着ていく浴衣は見立てても大丈夫かしら』
『えっと‥‥うん、多分‥‥?』

 そこまでは特に言われて居なかったはず、と曖昧に頷いた柚李葉に、一度はしゅんとした養母が俄然やる気を取り戻したのを、思い出して柚李葉はつい、くすくす笑った。そうして養母が見立ててくれた浴衣は、他の着替えと一緒に全部、大切に風呂敷に包んでちゃあんと、持ってきている。
 前にも訪れた事のある句倶理の本邸は、けれども何度見てもひどく大きく、圧倒的だった。その門前で、やっぱりほんの少し気後れしてしまう自分を叱咤してから、傍らに立つ門衛に「あの」と声をかける。

「ごめんください。羽郁さんにお招きを頂きました、佐伯柚李葉です」
「佐伯様ですね。お待ち申し上げておりました。どうぞ中へ」

 すでに柚李葉の来訪は伝わっていたのだろう、門衛は確認を取るような様子もなく頷くと、恭しい仕草で大門の方を大きく開いた。通常、出入りは当主であっても脇の通用門を使うもの、というのが柚李葉の常識だから、それにびっくりしてしまう。
 とはいえよく考えてみれば、柚李葉は羽郁の婚約者という立場なのだから、そうやって敬われる立場、なのかも知れない。それにどことはない緊張と、恐ろしさにも似た感情を抱きながら、ぺこりと頭を下げて門を潜り抜けた。
 門から本邸の玄関までの、長い道のりをきょろきょろ、辺りを見回しながら、歩く。お邸そのものも恐ろしく広大だけれども、当然ながらそれを擁する敷地も広大で、前庭だけでも見応えがあって、見事なものだ。
 ここまで世界が違ってしまうと、もはや感心するより他はなく、柚李葉は物見遊山の気持ちで歩きながら、玄関へと向かう。前にも訪れた事はあるけれども、季節も違うし、何よりこの広大な庭を簡単に見終ることなど、到底出来はしない。
 辿りついた玄関では、出迎えの女房が待っていて、柚李葉の姿を見ると「ようこそお越し下さいました」と深く頭を下げた。その女房にどこか見覚えがある気がして、記憶を辿った柚李葉は、恐らく前に訪れた時か、安雲の別邸に遊びに行った時に顔を合わせた人だろう、と見当をつける。
 記憶は定かでないにせよ、見知った人が居ると途端に、心強くなるものだ。柚李葉はほっと息を吐き、お邪魔します、と頭を下げた。

「二ノ君はこちらに向かっておられる所です。すぐにおいでになりますわ」
「解りました。ありがとうございます」

 その言葉にもう一度ぺこりと頭を下げた柚李葉は、忙しそうな屋敷の中の様子を覗って、自分は1人で大丈夫だから、と女房に断る。きっと真影が当主に就任するに当たって、準備とかで忙しいのだろう。
 そんな時に自分に付き合って待って貰っていては申し訳ないと、告げると女房はほんの少し首をかしげ、それではお言葉に甘えて、と優しく微笑んで奥へと引っ込んでいった。もしかしたら、柚李葉が申し訳ないと思っている気持ちを、察してくれたのかもしれない。
 そんな事を思いながらぽつねんと待っていたら、それほど時間を置かず、女房の言っていた通り羽郁が姿を現した。

「柚李葉! いらっしゃい」
「――羽郁」

 嬉しそうな歓声を上げた羽郁を振り返って、柚李葉はほっと微笑む。1人で大丈夫、と言ったけれども正直なところ、ちょっとだけ心細かったから。
 だがはっと気がついてまずは、お招きありがとう、と丁寧に頭を下げる。そうして着替えを包んだ風呂敷包みとは別に抱えてきた、品の良い黄色の風呂敷で包まれた箱を、どうぞ、と手渡した。

「お養母さんからなの。詰まらない物ですけれどもどうぞ、って」
「そっか。じゃあ、せっかくだからさっそく、一緒に頂こうか?」

 お招きを頂いたのだし、泊めて頂くのだからお礼をお持ちしてね、と言われて渡された包みは恐らく、養母の贔屓の甘味屋のお菓子だろうと思われた。羽郁もそう思ったのだろう、笑って告げられた提案に、こく、とはにかみながら頷く。
 そうして足元に置いた、着替えの入った風呂敷包みを大切に抱き上げるのを待ってくれていた羽郁が、柚李葉、と声をかけた。

「こっち。前に来た時にもオレの部屋、案内したけど‥‥」
「ちょっと‥‥あんまり、覚えてないかも‥‥」

 羽郁の言葉に柚李葉は、困ったような、申し訳ないような気持ちでちょこん、と首をかしげる。何しろ随分前の事だし、この屋敷と来たら本当に広くて部屋も呆れるほどにあるものだから、前にお泊りした時ですら迷わないか、内心ひやひやした位なのだ。
 けれども羽郁は気にした様子もなく、そっか、と柚李葉の手を握って、自室へ向かって歩き始めた。そんな微笑ましく、仲睦まじい様子の恋人達を、家人達がにこにこと微笑んで見守っていた。





 柚李葉の養母からのお菓子は、日持ちのする焼き菓子だった。それを見た柚李葉は、羽郁が用意してくれた円座の上にちょこんと座って、一緒に並んだ葛羊羹と見比べる。
 こちらは、羽郁が作ってくれたという冷たいお菓子だ。葛はあんまり冷やし過ぎたり、時間が経つと硬くなってしまう。けれども焼き菓子は元々、日持ちがするように硬く焼き締めてあるのだから、何も今日でなくても良い。
 だからあの、と声をかけた。

「せっかくだから羽郁のお菓子を先に頂いた方が、お養母さんも喜ぶと思うの。これは、明日また頂けばいいから‥‥」
「‥‥うん、じゃあそうしようか。明日はこの焼き菓子に合う、とっておきのお茶を用意するな!」

 そんな柚李葉に大きく頷いて、羽郁はお菓子の箱を丁寧に仕舞って文机の上に置くと、冷えた葛羊羹に合う濃茶を用意してくれた。それを見ながら柚李葉はふと、養母はこれをも見越してあのお菓子を用意したのかもしれない、と思う。
 柚李葉が訪ねた先で、失礼がないように。そうして彼女が傷つかないように、いつでも養母は当たり前に微笑んで、適切な所に適切に手を差し伸べてくれる。
 ありがとう、と胸の中で呟いて、柚李葉は前に置かれた葛羊羹のお皿を手に取った。そんな柚李葉の隣に並べて置いた円座の上に、羽郁も並んで腰を下ろす。
 2人きりなのだから向かい合って座れば良さそうなものだけれども、こうして隣合って座るのは、なんだか暖かくて、くすぐったい。これはこれでどことなく、羽郁の存在が全身で感じられるように思う。
 それをゆっくりと噛み締めるように、会わなかった間の事を、他愛なく話す。依頼の事。家の事。友人の事――

「――今日の浴衣はね、お養母さんに見立てて貰ったの。お養父さんにも、ちゃんと『行ってきます』って言えて‥‥」
「そっか。良かったな」
「うん」

 柚李葉がそう報告したら、まるで自分の事のように喜んでくれるのが、嬉しかった。柚李葉と養父とは、共に暮らしては居るものの、養母とのように遠慮のない仲とは言い難かったから。
 それが少しずつ、変わっている。実のところ、あの焼き菓子だって選んだのは養母だろうけれど、前日、持って帰ってきたのは養父である事を、偶然柚李葉は見かけて知っていた。
 だからほわり、嬉しさを噛み締めて頷いた柚李葉は、葛羊羹を小さく切って1口、口に運ぶ。その時、部屋の外から「二ノ君」と呼ぶ声がした。

「一ノ姫のお客人を案内して参りました」
「え、姉ちゃんの‥‥?」

 驚いた様子で応えた羽郁の眼差しを追うように、柚李葉もまた声のした方を見やった。今のはきっと、真影の側近でもあるタカラ・ルフェルバート(ib3236)だ。
 ちょっと待ってて、と言い置いて部屋の外に顔を出した羽郁の背中を、じっと見守る。お客様なら、柚李葉は失礼した方が良いだろうか――?
 そんな事を考えていたら、羽郁の驚いたような大声が耳に入った。

「木原さん!? しじまちゃんに、珊瑚ちゃんも‥‥え、何でタカラと、っていうか姉ちゃんと?」
「え、木原さん達が?」

 それについ柚李葉も、羽郁の横からひょいと顔を出して、驚きの眼差しで『客人』たちを見つめる。だってそれは本来なら、絶対にここには居るはずのない人達だったから。
 木原高晃は、柚李葉の開拓者仲間でもあって、時折羽郁や柚李葉と一緒に依頼にも赴く仲だ。そうして彼と一緒に居る少女2人は、五行は某所に居を構える清月家に修行で身を寄せる、陰陽師見習いの清月珊瑚と清月しじまで――やはり彼女達もまた、とある依頼を通じて知り合った友人で。
 随分会っていなかったのに、なぜ、こんな所に居るのか。驚くしか出来ない柚李葉よりも、先に立ち直った羽郁がぎくしゃくと、「とりあえず、入って下さい」と高晃達を自室に招き入れた。
 すまんね、と笑った高晃が、さして気負った様子もなく部屋に入るとと、並んだ葛羊羹に「をぉ、うまそうだな」と相好を崩す。その後ろから入ってきた珊瑚としじまはと言えば、2人で手を取り合って、どこか不安げな眼差しだったのだけれども。
 珊瑚としじまの気持ちも理解できると、かつての自分を思い出して柚李葉は嬉しくなった。今だって立派なお屋敷はいつでも気後れしてしまうけれども、最初の衝撃はそれはもう、覚悟していたにも拘らずすっかり度肝を抜かれてしまったくらいなのだから。
 3人が羽郁の持ってきた円座に腰を下ろして、薦めた葛羊羹と濃茶に口をつけるのを待ってから、柚李葉は嬉しそうに、にこにこと話しかけた。

「あは、又会えて嬉しいです、元気でしたか?」
「は、はい。その‥‥まだまだ、修行中の身です、けど‥‥」
「私はこの春、御師から1人立ちのお許しを頂きました。今は清月家に居候をさせて頂きながら、近隣のアヤカシ退治などで少しずつ経験を積んでいます」
「そうなんだ‥‥じゃあ、いつか依頼で一緒になるかな?」
「まだ、開拓者登録をするかは考えていなくて‥‥御師は『金剛』に遊びに行けば、などと仰いますが」

 はぁ、と深いため息を吐いた珊瑚に、聞いていた高晃もどこか遠い眼差しになって、あの御師は、と何とも言えない表情を浮かべた。『金剛』とは五行に幾つか存在する、陰陽師だけで構成された自由集団の1つだが、少なくとも『遊びに』行くような場所ではない。
 とはいえ彼の言いそうなことだと、柚李葉はついくすくす笑った。同じことを思ったのだろう、羽郁も苦笑いを浮かべている。
 それからぽろ、ぽろ、と依頼の事などを懐かしく話していたら、廊下をばたばたと走ってくる足音が聞こえて、知らず5人は押し黙った。その足音は真っ直ぐにこちらへと近付いてきて。
 止まった、と思った次の瞬間、ばっと部屋に飛び込んできたのは、簡素な狩衣に腕を通した真影だった。彼女はぐるっと部屋を見回すと、まっすぐ柚李葉へと飛びついてくる。

「柚李葉ちゃん! いらっしゃい」
「真影さん。お招きありがとう」

 そうして満面の笑みでそう言ったのに、柚李葉ははにかんだ笑顔を浮かべてそう、お礼を言った。それにふる、と首を振った真影がぎゅっと、柚李葉に抱きつく腕に力を込める。
 それからまたあれこれと、真影も加わって懐かしい依頼の話や、共通の既知でもある彼らの師匠、高晃の友人であるサムライの話題などに花を咲かせた。あんなにあった葛羊羹も、あっという間になくなってしまう。
 美味しくてつい食べ過ぎてしまったけれども、そろそろちょっと休憩した方が良いかな、とお腹の具合と相談していたら、部屋の外でまたタカラの声がした。

「御主殿、そろそろ――」
「――もうそんな時間? ごめんなさい、あたしそろそろ、行かなくちゃ」
「気にしないで、真影さん。お仕事、頑張ってね」
「木原さんも、しじまちゃんや珊瑚ちゃんも、ゆっくりしていってね。羽郁、頼んだわよ」

 今度呼ばれたのは真影で、彼女ははっと腰を上げながら皆に頭を下げ、最後に羽郁に釘を刺すと、慌ただしく部屋を後にする。どうやら真影は、忙しい合間を縫って遊びに来てくれたらしい。
 実際、彼女は今夜行われる産火の儀式の主役として、目が回りそうなほど忙しいのだと告げた羽郁に、そう、と柚李葉は顔を曇らせた。真影は強い人だし、そうして多分、身の回りの清濁をそのまま華を咲かせる源にしてしまえる人だ、けれど。

「真影さん、大丈夫かな」
「んー‥‥でも、姉ちゃんの傍にはタカラも居るし、いざとなったらオレもいるしな」
「――うん」

 限界はあるだろうと、心配で呟いたら、羽郁が笑ってそう言った。そんな彼の気遣いに、ほっと息を吐いて柚李葉は笑みを綻ばせる。
 いつでも羽郁はこうやって、柚李葉の揺れた気持ちを包んでくれるのだ。それが素直に、ありがたいと思う。
 だがすぐにそんな柚李葉達も儀式に出席する為にバタバタと慌しくなって、高晃達は戻ってきたタカラが整えた客室へと案内していった。また後で、と手を振って別れた少女達を見送って、柚李葉はほぅ、と息を吐く。
 ――産火の儀式は、祭事神殿という所で行われるらしい。羽郁の婚約者となったからだろうか、彼女にも儀式での役割があって、その儀式で真影が三本の大きな柱のてっぺんの篝火に火を灯す前に、精霊と一族に捧げる舞を舞う羽郁の為に、横笛を奏でるのだ。
 最初にそれを聞いた時には、柚李葉はひどくびっくりして、それから恐縮してしまった。けれどもしばらく考えて、私でも出来るのなら、と頷いた――羽郁を生涯の伴侶に選ぶということは、きっと、こういったこともこれから慣れて行かなければいけない、という事なのだろうと、思ったのだ。
 けれども女房の手を借りて、羽郁と真影が用意してくれたという華やかな衣装に身を包んだ柚李葉は、全身を染め上げる緊張に、ぎゅっとお守りのように横笛を握り締める。これは今まで幾度も踏んだ舞台と同じなのだと言い聞かせても、夏祭りでのそれと、きちんとした儀式でのそれは、明らかに纏う空気が異なった。

「柚李葉、大丈夫? オレがいるから」
「――うん」

 そんな彼女の、笛を握る手に力が篭り過ぎて真っ白になった手を両手で包んで、羽郁が優しく微笑んでくれる。そんな彼を心配させないよう、柚李葉は青ざめた顔を懸命に笑みの形に動かし、頷いた。
 ――こうした場所に出して貰えるのは、嬉しくて。用意してもらった衣装はびっくりするほど華やかで――自分はちゃんと似合っているだろうかと、思わず羽郁の眼差しが心配になってしまったりも、して。

(‥‥うん、大丈夫)

 まだ手は冷たいけれども、包み込まれた羽郁の温もりはいつも以上に暖かいから、きっと大丈夫。ここはいつもの――彼女が幼い頃から目にし、上がって来た舞台と、同じだ。
 祭事神殿にはすでに、多くの人々が顔を揃えていた。とはいえ誰もが出席できる、という儀式ではないらしい。
 少し待っていたら、祭壇に真影の姿が現れて、産火の儀式は始まった。堂々と口上を述べ、儀式を進める真影に伴って、タカラを含む周りの人間も、要所要所で己に割り当てられた役割を、果たす。
 次はいよいよ出番だと、柚李葉を振り返った羽郁にこくり、頷いた。そうしてすっと立ち上がって――瞬間、自分の中の何かが、変わる。
 いつでも蘇ってくる、祭の舞台の緊張感と、うねる様な高揚感。それはここでも変わらない。柚李葉は、柚李葉の舞台を踏むだけだ。
 柚李葉は自分の中から湧き上がってくる何かの衝動に従うように、透明な気持ちで笛に息を通した。幾度も練習してきた曲は、途端、溢れるように夏の夜空に澄んだ音色を響かせる。
 それに合わせて舞を踏む、羽郁の姿をちらり、見た。柚李葉の大事な、愛しい人。彼と一緒に、この祭の主たる人に、称えたる精霊にささやかな花を添えられます様に――紅い花の様なかの人に幸がありますように。そうして柚李葉の胸にいつでも溢れるこの想いが、どうか精霊の前に、永久に続きますように――
 永遠にも思える、僅かの時間。やがて奏でる曲が終わり、それと同時に羽郁の舞も、終わる。
 真影が、儀式神殿の前に据えられた三本の大きな柱のてっぺんの篝火に、同時に火を灯した。――三火祭の語源でもあるという、煌々と燃え立つ三つの炎。
 一気に、里の方から賑やかな気配が押し寄せた。それを感じながら、無事に勤め終えた大役にほっと胸を撫で下ろしていた柚李葉を、戻ってきた羽郁が呼ぶ。

「この後は、どうする? いつもはこのまま、着替えて里の夜祭に向かうんだけど」
「――うん、じゃあ、行こうかな。お養母さんが見立ててくれた浴衣も、着なくちゃ」

 羽郁の言葉に柚李葉は、ほんの少し考えてから、こくりとそう頷いた。そうして2人、手を繋いで本邸まで戻ると、儀式の為の衣装を脱ぎ捨てて、同じく着替えた真影やタカラ、高晃達とともに、いそいそと里へと下りていったのだった。





 夜祭は盛況だった。里に近付くにつれて、ぽつり、ともる灯りが一つ、二つと増えていき、耳を澄ませば賑やかな祭囃子が聞こえてくる。それにつれて自然、祭へと向かう足取りもうきうきと楽しげなものになってくるのが、自分でも解る。
 だから柚李葉はもちろんの事、みんな、目いっぱい夜祭を楽しんだ。金魚すくいにりんご飴、氷菓子、射的に冷やし胡瓜。
 傍らの羽郁とはぐれないように、しっかりと手を繋いで、そんな1つ1つをじっくりと眺めていたら、ふわぁ、と珊瑚としじまが息を吐くのが聞こえた。ん? と振り返ったら、少女達は顔を見合わせて、ほんのちょっとくすぐったそうに羽郁と柚李葉を見つめている。
 「あ」と気付いた柚李葉は、思わず小さな声を上げて、慌てて手を放そうとした。けれどもいざそうしようとしてみると、なんだか放し難く感じられて、どうしたら良いのか解らなくなってしまう。
 しじまや珊瑚の前では、ちょっと、恥ずかしいし。でも羽郁と手は繋いで、いたいし――知らず顔を赤くしてわたわたする柚李葉を、微笑ましそうに見ていた真影が、しじまと珊瑚をからかうような口調で言った。

「しじまちゃんと珊瑚ちゃんは、誰か、好きな人は居ないの?」
「私はこの春、御師から1人立ちを許されましたけど、まだまだ至らない事ばかりで、とても他の事は考えられません」
「わ、私は、その‥‥清月には御師しか、いらっしゃいませんし‥‥その、早く、1人前の陰陽師に、なりたくて‥‥」
「ふぅん‥‥じゃあ、木原さんはどうなんですか?」
「ん? 俺はまぁ、のんびりと、だな」

 それに少女達は顔を見合わせた後、揃ってふるると首を振る。だがちらりとしじまが高晃を覗ったのに気づいたのだろう、ひょい、と高晃に話題を振った真影に、振られた当の高晃はといえばひょいと肩を竦めると、顔を顰めて「大体、御師の世話が忙しくてそれどころじゃないしな」と妹弟子と似たようなことを嘯いた。
 何となく、この人は決定的にどこかが鈍いのかもしれない、という気が、する。いや、今のはちょっと、気付いてあげても良いんじゃないだろうか。
 だが高晃には高晃の事情が、あるのかもしれない。微妙に気まずくなった空気を払拭するべく、柚李葉はそう1人頷くと、「しじまさん、珊瑚さん」と少女達に声をかけた。

「あっちに細工飴がありますよッ。一緒に食べましょうッ」
「細工、飴‥‥?」
「飴を好きな形に細工してくれる屋台よ。しじまさんは初めて?」
「その、村には、あまり来なかったから‥‥」

 柚李葉の言葉に、きょとん、と首をかしげたしじまを引っ張って、珊瑚がぱっと顔を輝かせて柚李葉と一緒に、細工飴の屋台へ歩き始める。どうやら珊瑚の方は、この年頃の少女に多いように、甘いものが大好きらしい。
 そうして3人で笑い合いながら、どんな細工にして貰うかはしゃいでいたら、後からやってきた真影もそれに加わって、ますます賑やかになった。長の屋敷の一ノ姫のことは誰もが知っているからだろう、真影様、姫様、とそんな彼女に周りから声がかけられる。
 そこに羽郁が加われば、長の屋敷の双子が居ると、ちょっとした騒ぎになってしまったのだけれども。それもまた思い出と、柚李葉は注目されてちょっと顔を赤らめながらも、自然と沸き上がってくる笑みに頬を緩ませる。
 ――賑やかな祭りの喧騒は、翌日になるといや増した。昼間ということもあってだろうか、前夜に増して見渡す限りの屋台が立ち並び、ちょっと進むのにも人混みに困るくらいで。
 今日も柚李葉は、養母が見立ててくれた翠の地に囀る小鳥の柄の浴衣を着ていた。この生地を見た時に柚李葉の瞳を思い出したのよ、とこの夏の為にこっそり仕立てていたのだと教えてくれた養母。
 今日もしっかり手を繋いでいる羽郁は、昨夜の薄青の狩衣とは違って、紺地に蒼藤の刺繍をあしらった浴衣だ。真影やタカラもそれぞれに浴衣を着ていて、とてもお似合いだったのだけれど。
 しっかりと手を握り直した羽郁が、ひょい、と彼の反対側の袖をしっかり掴む少女2人を振り返った。

「大丈夫か? もっと、はぐれないようにしっかり捕まっても良いよ」
「だ、大丈夫、です‥‥」
「ご迷惑をおかけしてすみません‥‥」

 そんな言葉に恐縮しきりで、少女達はつつましく羽郁の浴衣の袖を握りながら、手を取り合って必死に後をついて来る。そうして真影とタカラ、高晃の姿は、どこにもない。
 どうやらこの人混みのせいで、いつの間にか、彼らと離れてしまったようだった。気付けば周りに居たのはこの4人だけで、これ以上はぐれるのはまずいだろうと、こんな格好で出店を回ることになったのである。
 押し合いへしあいしながら、ゆっくり、昨日よりも遥かに数の多くなった出店を、見た。今でも見入ってしまうのが、艶々のりんご飴や飴細工、ひらひらと泳ぐ鮮やかな金魚。
 あの頃は限られたお小遣いを手のひらに握り締めて、どれにしようか真剣に迷ったものだけれども、今の柚李葉は何でも手に出来る。それは嬉しくて、ほんの少し、切なくて。
 繋いだ手を少しぎゅっとしてしまったら、羽郁はぎゅっと握り返してくれる。そうしてまたじりじりと進むうち、なんだかおかしくなってきて、ふふ、と笑い声が零れた。
 しじまと珊瑚も同じだったのか、それとも別のおかしい事があったのか、反対側で顔を見合わせて、くすくす肩を揺らして笑っている。それを見ていた羽郁も、やがて釣られたように笑い出した。

「うーん‥‥この調子じゃ姉ちゃん達と合流するのは難しそうだし、とりあえず、そこの店で氷菓子でも買って食べようか?」
「はい‥‥!」
「氷菓子って初めてです」
「そうなんですか? 町のほうだとあまり、珍しくはなくなってきたんですけど‥‥」

 そうして笑い合いながら、柚李葉達は氷菓子屋を覗き込み、それぞれ別の味の氷蜜をかけて食べ比べた。なんだかひどく、美味しかった。





 香木の森は、一歩足を踏み入れると柔らかな良い香りが、森いっぱいに漂っているような心地がした。それはもしかしたら、ここで愛しい人とこれから逢うのだ、という気持ちが、柚李葉にそう感じさせているからなのかもしれないけれども。
 夜も更けた今となっては、祭の喧騒は静まり返り、虫の声だけが聞こえている。時々、森の中を吹き抜ける夏の夜風が森の木の葉を揺らして、さやさやと耳障りの良い音を立てた。
 かさ、と草を踏み分ける音が、静かな森に響く。迷わないよう慎重に足を進めた柚李葉は、その先に愛しい人の姿を見つけ、ほっと息を吐き出した。
 彼が笑顔で、彼女を呼ぶ。

「柚李葉」
「ご、ごめん、羽郁‥‥遅れちゃった?」

 これでも急いだんだけど、と柚李葉は肩を落として頭を下げる。前にも訪れた事はあったし、羽郁に改めて説明もされたけれども、夜るの森は昼間のそれとは印象が違って、思ったより時間がかかってしまったのだ。
 ――今夜、香木の森で2人きりで会おうと、誘ったのは羽郁だった。屋敷でも羽郁の部屋で2人で過ごす事は出来るけれども、いつ人が訪れるとも限らないし、仰々しく人払いするのもなんだか、気まずい気がするから、と。
 それは柚李葉も納得のいく気持ちだった。それにこうして、こっそりと2人で秘密を共有するように、特別を重ねるのはひどく、心が躍ってどきどきとするもので。
 ひとしきり謝り終わると、途端にそれがじわりと気持ちの底から沸きあがってきて、柚李葉はそわそわと落ち着きなく辺りを見回したり、羽郁をじっと見上げたりした。そんな彼女を羽郁の腕が、優しくそっと抱き寄せる。
 羽郁の腕の中にすっぽりと納まって、そっと、身を寄せるように柚李葉は遠慮がちに、羽郁の胸に頬を寄せた。ただそれだけの仕草でも心臓が飛び出しそうなほどどきどきして、もしかしたら顔が真っ赤になっているのも、羽郁には見えてしまったかもしれない。
 それが恥ずかしくてますますぎゅっと、羽郁の胸に顔をうずめる。そんな柚李葉に、羽郁の吐息のようなささやきが柔らかく、響いた。

「柚李葉、綺麗だ‥‥愛してる」

 そうしてそっと頬に落ちてきた、口付けが優しい。それにますます、眩暈がしそうなほど真っ赤になりながら、柚李葉はありがとう、と消え入りそうな声で呟いた。
 ありがとう、と万感の思いをこめた、言葉。傍に居てくれて、愛してると言ってくれて、本当に全身で全力で愛してくれて――いつも支えてくれて、ありがとう。
 羽郁に、届いたかどうかは解らなかった。ただ、ぎゅっと抱かれる腕に強く力がこもって、それがひどく心地良かった。





 翌日は、真影の当主就任式だった。とはいえ柚李葉は今日は、先日のようにお役目があるわけではないから、気持ちはのんびりとしたものだ。
 羽郁は何かお役目があるようだけれども、それも僅かなものらしい。実際、ほんの少し打ち合わせに行って来ると席を外したくらいで、後はまた部屋に戻ってきて、のんびりと高晃や珊瑚、しじまを相手に、養母から持たされたお菓子を出したり、それに合わせて果物を漬けて冷やしたお茶を出したり。
 けれども主役である真影とタカラを始めとする家臣団の面々は、今日は目も回る忙しさらしい。実際、午後になってやっと準備の隙間が出来た、と顔を出した真影は、ひどく疲れた様子だった。けれどもその合間にと、珊瑚としじまに昔使っていた陰陽術の教本を渡していったから、優しい人だな、と思う。
 タカラの方はといえば、やはり忙しそうだったけれども、表情にはそれを出すこともなく、何くれと様子を伺いにきてくれて。それを聞いた真影が、どこにそんなヒマがあったのよ、と怒りながら心配をしていたけれど。
 そう言いながらも、ゆっくりと腰を落ち着ける間もなく、慌しくまた部屋を飛び出していった真影に、柚李葉達は心配そうに顔を見合わせた。あんなに忙しく動き回っていたのでは、明日は倒れてしまうのではないか。
 1人、焼き菓子をのんびり齧りながら、高晃が羽郁に声をかけた。

「あんたの姉さんも大変そうだな」
「そうですね。今日を過ぎたらちょっと、マシになると思うんですけど」

 それに羽郁は苦笑して、空になった茶碗にお茶を注ぎ足す。本当にそうなら良いけれど、と柚李葉はまた、真影が去っていった方をじっと見つめた。
 ――やがて夕刻が近付くと、女房達が柚李葉の着替えを、と部屋まで迎えに来た。彼女は今日は、羽郁の婚約者として真影の当主就任式に、一緒に出席する事になっていて、そのためのお衣装もやっぱり、用意してくれているのだ。
 はい、と頷いて立ち上がった柚李葉は、けれどもふと羽郁を振り返った。

「どうした? 大丈夫だよ、柚李葉」
「う、ん‥‥あのね、羽郁、もし時間がかかったら、先に行っててくれる? お役目が、あるんでしょう?」

 そうして、笑いながら首を傾げた羽郁に、柚李葉はそう言葉を紡ぐ。きっと羽郁のことだから、柚李葉を案じて一緒に行こうと待っていてくれるだろうけれども、それで羽郁が遅れてしまっては申し訳なくなってしまう。
 そんな柚李葉の気持ちを、羽郁は察してくれた様だった。解った、と頷きが返ったのに、ほっとして柚李葉は今度こそ、女房達に従って部屋を出る。
 着替えに迎えに来てくれたのは、辿りついた時にも柚李葉を出迎えてくれた、あの見覚えのある女房だった。もし誰も知らない人ばかりだったら、いくら羽郁には申し訳ないと思っても、あんな事は言えなかったかもしれない。
 だから無言でぺこり、彼女に頭を下げると、不思議そうに首を傾げてから、何かを察したようににっこりと微笑んだ。

「二ノ君様もあっと驚くような、お美しい姫君にして見せますから、ご安心下さいませ。――あとで二ノ君様が、柚李葉様を見てどんな表情をなさったか、お教え下さいませね」
「は、はい。あの、よろしくお願いします」

 そんな彼女にもう一度ぺこりと頷いて、柚李葉は大人しく彼女に従い、言われるがままに腕を上げたり下ろしたり、くるりと回ったりする。句倶理の伝統装束だという、青緑色を貴重とした巫女風の衣装は、けれども紐があちこちにたくさんついていて、1人出来るのはちょっと大変そうだ。
 これもいつか覚えなきゃいけないのかな、と思いながら着替えを済ませて、髪を梳ってもらう。飾るのは銀の額冠で、これも衣装と同じく、句倶理に伝わるものだということだった。
 どうにかすべての着替えを終えて、式場に向かおうとする柚李葉に、すでに羽郁は先に向かったと家人の1人が教えてくれる。ありがとうございます、とお礼を言って柚李葉は、教えられた特設櫓へと急ぎ、足を進めた。
 会場には、産火の儀式の時とは比べ物にならないほど、たくさんの人が集まっている。柚李葉に用意された席は櫓舞台が良く見える正面の席だけれども、後ろの方には立っている人もいて、それらはすべて里の民だということだった。
 すでに席についている人達に、頭を下げながらどうにか自分の席にたどり着き、ちょこん、と座る。どうにか、間に合ったようだ。舞台の脇のほうに羽郁が見えて、柚李葉はちょっと嬉しくなって、じっとそちらを見つめた。
 だがふいに、式場に満ちる空気が変わる。それを敏感に感じ取り、櫓舞台を見やったのと、そこから真影が姿を現したのは、同時。
 一歩、踏み出してきた真影の姿に、様子を見守っていた里人達がシーン、と静まり返った。羽郁が教えてくれたところによれば、真影が今身に纏っているこの衣装は、初代の姫長が正装としていた、と伝えられいる物だという。鮮やかな紅と黄金色、そうして輝く夜闇を思わせる漆黒が品良くあしらわれた、長い年月を経たとは思えないほど美しい衣装。
 高貴で、艶やか。清楚で、華やか。
 そんな衣装に身を包んだ真影は、親友ながらまるで遠い世界の人のように、思えた。いつもの、柚李葉ちゃん、と満面の笑顔をくれる彼女からは、想像も出来ないというか。
 そんな人が親友で、そうして将来は義理の姉となるのが嬉しかった。その喜びを噛み締めながら、真影が櫓舞台の中央に立つのを、見守り。
 一拍を置いた後、羽郁が舞台の脇から力強く宣言した。

「我らの新たな句倶理王・真影姫である!」

 それに呼応するように、真影が大きな声で宣言する。

「我は第13代句倶理王である!」

 ――その宣言に、一瞬の静寂の後、歓声が響き渡った。新たな王の誕生を寿ぎ、祝う民達の声。句倶理の新たな時代の幕開けを喜ぶ、人々の喜びの声。
 やがて鼓の音が響いて、ゆっくりと真影が舞台の上で舞い始めた。羽郁のそれとはまたタイプが違うようで居て、この2人はやはり双子というべきなのか、印象の良く似た舞を踏む。
 思わず、艶やかに、華やかに舞う姿に見惚れていたら、いつの間にか戻ってきていた羽郁が、傍らの空いていた席にさりげない仕草で着席した。欠けていた何かが埋まったような心地がして、ほっ、と柚李葉は息を吐き、笑みを浮かべる。

「羽郁。――お疲れ様」
「お待たせ、柚李葉。その衣装、よく似合ってる」
「あ、ありがと‥‥」

 そうしていつものようにぎゅっと手を握り、囁かれる言葉に頬を赤らめてお礼を言いながら、柚李葉は舞台の上で舞う真影をじっと、見守った。もしかしたらこれからもずっと、こうして2人寄り添って見守っていくことになるのかもしれない、光景。
 鼓の音が、聞こえる。その響きと舞を感じながら、柚李葉は手の中の羽郁の温もりを、ぎゅっと大切に抱き締めた。





 今年の句倶理の三火祭は、こうして更けていったのだった。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 /     PC名     / 性別 / 年齢 /  職業 】
 ia0859  /    佐伯 柚李葉   / 女  / 17  / 巫女
 ia0490  /    玖堂 真影    / 女  / 19  / 陰陽師
 ia0862  /    玖堂 羽郁    / 男  / 19  / サムライ
 ib3236  / タカラ・ルフェルバート / 男  / 29  / 陰陽師

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、蓮華・水無月でございます。
この度はご発注頂きましてありがとうございました。
そうしていつもながら、お届けが遅くなってしまって、申し訳ございません‥‥orz

お嬢様の、また一歩階段を上られた祭の物語、如何でしたでしょうか。
なんというか、想像とか、アレンジの部分がやや、多くなってしまったやも知れません、が‥‥ッ(汗
何か、イメージしていたものと違う、というようなところが在られましたら、いつでもお気軽にリテイク頂ければ幸いです(かくり

お嬢様のイメージ通りの、精霊に祝福された、幸いなるノベルになっていれば良いのですけれども。

それでは、これにて失礼致します(深々と
常夏のドリームノベル -
蓮華・水無月 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2012年09月28日

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