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『甘く黄色い夜(SIDE-狼男) 』
笹鳴 十一ja0101

 気がつけばハロウィンは目の前だった。街に出れば、かぼちゃやコウモリの装飾が目に入る。ハロウィン当日には子供たちの仮装行列もあると、聞いた。街には夜になるとかぼちゃのランタンが灯り、星や月と相まって街を幻想的な風景にさせていく。
 俺さんも、もう子供ではないけれど、せっかくのハロウィンなのだし、楽しみたいと思った。でも、きっと部活のみんなとよりはリーゼと二人で楽しみたい。仮装なんかして、「トリックオアトリート」と言いあったらきっと素敵な夜になるだろう。一緒にお菓子を交換してもいいし、いたずらと称してふざけあうのも悪くない。そんなことを思っていたら、ハロウィンのグリーティングカードが届いた。
差出人はリーゼ。それだけでも嬉しいのに、二人でお祝いしましょうと書いてある。これは行くしかない。

 料理は任せて欲しいと言われたので、とりあえずパーティグッズ売り場に来てみたものの、
「ハロウィンってこんなに衣装売ってるのな」
 俺さんは唖然とした。ヴァンパイアのマントから、フランケンシュタインのかぶりもの、ヒーローのお面までいろんな衣装が売られていたのだ。さて、困った。目移りしてしまってなかなか決まらない。
 一旦出直してゆっくり考えようと思いその場を離れると、洋服屋に親子のマネキンがハロウィンの衣装が来ているのが目にとまった。俺さんはその服に決めることにした。

 ハロウィン当日の夜。
 狼の顔が書かれたフード付きのツナギのような着ぐるみを着て一応鏡を確認する。自分で言うのもなんだがなかなか可愛いと思う。リーゼも気に入ってくれるだろう。
 ランタンと月明かりの下をリーゼのもとへ急ぐ。約束の時間まであと少し、部屋の前に立つと息を整えフードをかぶる。そしてチャイムを押した。
 扉が開くとそこには美しいナイトドレスの彼女がいた。さながらヴァンパイアクイーンといったところだろうか。
「トリックオアトリート!」
 一瞬その美しさに目を奪われたが笑顔で笑顔でそういうと彼女は微笑んでこういった。
「トリックオアトリート」
「リーゼの衣装素敵だね。俺さんももう少しカッコイイ衣装にすればよかったかな」
「そんなことないわ。その衣装可愛くて、とても素敵よ。さぁ、あがって。久しぶりに貴方に料理を作ったんだし、早く食べてほしいわ」
 こんなことならヴァンパイアの格好とかにすればよかったとちょっと後悔して唇と尖らすと、リーゼが微笑んだまま部屋の中に豆機入れてくれた。
 料理を見た時俺さんは目を見開いた。
そこに並ぶのは黄色いかぼちゃの料理の数々。
「これ、全部リーゼが?」
「そうよ。少し頑張ってみたの」
「大変だっただろ?凄く美味そう。ありがとう」
「十一のためだもの。さあ早く席について。冷めてしまうわ」
「ああ・・・うんうん美味い!」
かぼちゃのスープを一口のむと、さっきよりも笑顔になった。
「よかったわ。お口にあって」
「うん、このニョッキも美味しい。これは手作り?」
「えぇ。初めてだったけれど美味しく出来たならよかったわ」
 一口味わうごとに彼女の愛情が伝わってくるようであっという間に食べたらもったいない気がした。それに、おいしい料理だからこそマナーは守らないとね。そう思って噛み締めながら食べていると
「でも、どうしてそんなに美味しそうに食べてくれるの?」
 ふいにリーゼがそんなことを尋ねてきた。俺さんは手を止めて目をパチパチさせながら彼女の方を見た。
「なんでって?」
「そんなに美味しそうに食べてくれると作ったかいがあったわと思うけれど、そんなに満面の笑みになりながら食べるほど美味しいかしらと思って」
「美味しいよ。凄く美味しい」
「そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるわ」
そう言って俺さん達は笑いあった。それにしても変わったことを聞くなぁ。リーゼのご飯が不味いはず無いのに。
 楽しい食事の時間はあっという間に過ぎていく。結局、最後までリーゼは俺さんの顔をまじまじと眺めながら食事していた。

 食事が終わり、2人でくっつきながらまったりしていた時、ふと気がついたことがあった。
「そういや、こうやって誰かに作ってもらった料理食べんの久々だなぁ」
「そうなの?」
「うちは早くに両親が逝っちまったから料理は俺さんがしてたからなぁ。妹がたまに料理したがるんだけど、ひどいのしか出てこなくてさ。目玉焼きも半分位炭なんだぜ。ゆでたまご作らせれば白身半分以上カラにくっついてて食べるとこほとんどなかったりとか。米すら炊けなくてさ。とにかく酷くて。あれで嫁にいけるのか今から心配だぜ」
 本当に妹の料理はすごい。そういえば今は誰がご飯を作っているんだろう。そんなことがふと思われたがまあ、最近はスーパーやコンビニのご飯も美味しくなっているし、さすがの妹も野菜くらい切れるように…なったかなぁと苦笑しながら思っているとリーゼが俯いて拳を膝の上で握りしめていた。
「・・・私の家族は幸せに暮らしていたの。今は父しかいないけれど、母がいた頃私達はすごく幸せだった。でもあの者たちが・・・母を・・・!私は絶対に許さない。母を亡きものにしただけでなく父を私にその汚名を着せ、のうのうと生きているあの者たちが許せない!」
俺さんは彼女を見つめ彼女の言葉に耳を傾けていた。痛いくらいの悲しみ、悔しさ、恨み、憎しみ…そんな感情が流れてくる気がした。でも、きっと俺の感じている痛くらいの感情なんて彼女の痛みから比べたらほんのひと握りにも満たないんだろうなと感じていた。
「でもね、今私が笑っていられるのは十一のおかげなの。亡き母との約束や、あの者たちに対する憎しみに縛られている私が、今こうしていられるのは十一のおかげなのよ…ごめんなさい・・・私変なことを言って。」
「ありがとう」
 話が終わり、俺さんはずっと口を閉ざしていた口を開いた。やっとリーゼと目があった。彼女の目は後悔と自己嫌悪にに満ちていた。自分を責めている目だった。
「…辛かったコト、話してくれてありがとう。本当にありがとう」
俺さんは彼女の目から視線をそらさずにそう言った。それに嘘はなかったから。それを伝えたかった。
「過去は無かったことにできないし忘れるのもいけないと思う…でも俺さんは、そういうの全部噛み締めて、乗り越えて、リーゼと未来を作っていきたいなって…そう、思うんだ」
 俺さんはそのまま彼女の瞳を覗き込んだままそう言うと、ぎゅっと抱きしめて耳元で囁いた。
「隣に、いてもいいかな?」
 俺さんの腕の中で何度も彼女が頷いてくれていた。そんな彼女が愛おしくてずっと抱きしめていたかった。
「ありがとうリーゼ。愛してる、世界で誰よりもリーゼを幸せにしたい」
「私の方こそありがとう」
「泣いてる」
リーゼの目尻に溜まった涙をそっと拭う。そして私の目をまっすぐ見て囁くように言った。
「キス、してもいい?」
真っ赤になった頬と涙に濡れた瞳でリーゼは頷き、僕さん達は深い口づけを交わした。

その数十分後。
「そういえば、俺さんまだお菓子もらってないんだけど、いたずらしていい?」
リーゼを後ろから抱きしめながら尋ねる。
「いたずらって?」
「例えばさ」
そう言うと首筋にチュッと音を立ててキスがおとしてみた。キスマークを付けようと思ったけど、流石にそれはやめておいた。位置が位置だったし怒られそうだったから。
「こういうのとか?」
「それは私もしていいのかしら?」
「当然」
そうして二人で笑い合う。

こうして、狼とヴァンパイアクイーンの砂糖より甘い夜はふけていった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja0101/笹鳴 十一/男性/18/阿修羅】
【ja5393/アンネリーゼ カルナップ/女性/18/ディバインナイト】

※上記の並びでここに物語に登場した全てのPCのデータを記載してください。
※PCのデータの掲載方法はライター各員でアレンジしてもかまいせん。
※アクスディアの場合は整理番号>ウェブIDとなります。

※以下の方式で、ライターとしてのコメントを入れても構いません。

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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笹鳴 十一様>
はじめまして。今回執筆させていただきました、川知真です。
今回はご発注いただきありがとうございました。
お二人とも結構自由に動かさせていただきましたが、お気に召すものになっていれば幸いです。
これからもお幸せに。

今回はご発注本当にありがとうございました。
ハロウィントリッキーノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年10月10日

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