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『甘く黄色い夜(SIDE-ヴァンパイアクイーン) 』
アンネリーゼ カルナップja5393
 気がつけばハロウィンは目の前だった。街に出れば、かぼちゃやコウモリの装飾が目に入る。ハロウィン当日には子供たちの仮装行列もあると、聞いた。街には夜になるとかぼちゃのランタンが灯り、星や月と相まって街を幻想的な風景にさせていく。
 私は、もう子供ではないけれど、せっかくのハロウィンなのだし、楽しみたいと思った。でも、きっと部活のみんなとよりは十一と二人で楽しみたい。仮装なんかして、「トリックオアトリート」と言いあったらきっと素敵な夜になるだろう。一緒にお菓子を交換してもいいし、いたずらと称してふざけあうのも悪くない。そんなことを思ってハロウィンの日に部屋に十一を招くことにした。もちろんハロウィンのグリーティングカードで。


 いつも料理も彼に任せてしまっているから、せっかく部屋に招くのだし、たまには私が手料理を振る舞うのも悪くない。二人で作るのも楽しいけれで時間がかかってしまうし、次の日は学校。あまり遅くまで起きていて支障が出ては困る。というわけで放課後、買い物に出かけた。食材を買い込んだ帰り道、ふと見た洋服屋のマネキンに私は目を奪われた。足が止まり考える。そして、私は洋服屋に入っていった。

その夜。
「かぼちゃのスープにかぼちゃのグラタン、かぼちゃのニョッキ、デザートはかぼちゃのプリン…かぼちゃ過ぎたかな」
テーブルの上に並ぶ黄色い料理たちに苦笑する。時計を見ると彼が来る予定の時間にはまだ時間がある。
 せっかくのハロウィンだし、ほかの機会にも使えるかもしれないと思って思い切って今日買ったヴァンパイアクイーン風のゴシックなナイトドレスをクローゼットから取り出す。
 今日の帰りにマネキンが着ていて一目惚れしたものだ。試着はしていたが、いざ着替えてみると大人っぽいデザインに、なかなかに恥ずかしいものがあるなぁと思いながら全身鏡の前で一度回ってみる。髪を整えもう一度鏡の前にたってみる。恥ずかしいけれどヴァンパイアクイーンっぽく見えるといえば見える。仮装としては問題ない。そ思ったとき、タイミングよくチャイムが鳴った。十一が来たのだと思うと自然と笑みがこぼれる。
 扉を開けるとそこには可愛らしいオオカミの着ぐるみを来た彼が立っていた。
「トリックオアトリート!」
 笑顔でそういう彼に微笑み返す。
「トリックオアトリート」
「リーゼの衣装素敵だね。俺さんももう少しカッコイイ衣装にすればよかったかな」
チェッとすねた素振りをみせる十一に私は、
「そんなことないわ。その衣装可愛くて、とても素敵よ。さぁ、あがって。久しぶりに貴方に料理を作ったんだし、早く食べてほしいわ」
 そう言って部屋の中に招き入れた。
 料理を見た彼は少し驚いたように
「これ、全部リーゼが?」
「そうよ。少し頑張ってみたの」
「大変だっただろ?凄く美味そう。ありがとう」
「十一のためだもの。さあ早く席について。冷めてしまうわ」
「ああ・・・うんうん美味い!」
かぼちゃのスープを一口のんだ十一はそう言って笑みを深めた。
「よかったわ。お口にあって」
「うん、このニョッキも美味しい。これは手作り?」
「えぇ。初めてだったけれど美味しく出来たならよかったわ」
 いつみても十一の食べ方は綺麗だと思う。たまにガツガツ食べる人を美味しそうに食べる人だと評する人がいるけれど、私はそんな風食べる人だけが美味しそうに食べる人だとは思わない。こうやってマナーを守って上品に食べていても美味しそうに食べてくれる人はいる。そう、目の前に。
「でも、どうしてそんなに美味しそうに食べてくれるの?」
 少し気になって私が尋ねると、十一は手を止めキョトンとしたような表情を見せた。
「なんでって?」
「そんなに美味しそうに食べてくれると作ったかいがあったわと思うけれど、そんなに満面の笑みになりながら食べるほど美味しいかしらと思って」
「美味しいよ。凄く美味しい」
「そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるわ」
そう言って私達は笑いあった。楽しい食事の時間はあっという間に過ぎていく。結局、最後まで十一は美味しいと言いながら笑顔で料理を全部食べてくれた。

 食事が終わり、2人でくっつきながらまったりしていると、十一が思い出したように口を開いた。
「そういや、こうやって誰かに作ってもらった料理食べんの久々だなぁ」
「そうなの?」
「うちは早くに両親が逝っちまったから料理は俺さんがしてたからなぁ。妹がたまに料理したがるんだけど、ひどいのしか出てこなくてさ。目玉焼きも半分位炭なんだぜ。ゆでたまご作らせれば白身半分以上カラにくっついてて食べるとこほとんどなかったりとか。米すら炊けなくてさ。とにかく酷くて。あれで嫁にいけるのか今から心配だぜ」
 笑顔で懐かしそうに話す十一。きっとすごく大変な思いをしてきたんだろうと思う。と同時に、その苦労をこうやって笑顔で話せるのはすごく羨ましいことだと思った。そして、私は自分の家族のことを思い出した。
「・・・私の家族は幸せに暮らしていたわ。今は父しかいないけれど、母がいた頃私達はすごく幸せだった。でもあの者たちが・・・母を・・・!私は絶対に許さない。母を亡きものにしただけでなく父を私にその汚名を着せ、のうのうと生きているあの者たちが許せない!」
 俯き、拳を握りしめ、気がつくと初めて私は家族のことを話していた。誰にも話すつもりはなかった。今までもこれからも。それなのに私は話すのをやめられなかった。
 いろいろな気持ちが自分の中に渦巻いてちゃんと日本語に、文章になっているのかもわからなかった。今の自分はまるで目の前にいる恋人に支えて欲しいのかもしれない。だから自分は可哀想だなんてそんな風に話をしているのかもしれない。そんな考えも頭をよぎった。でも、止まらなかった。
「でもね、今私が笑っていられるのは十一のおかげなの。亡き母との約束や、あの者たちに対する憎しみに縛られている私が、今こうしていられるのは十一のおかげなのよ…」
 全て吐き出し終わってひどく後悔した。自分の過去を話したりなんかして、彼にしたら重荷にしかならないと思ったからだ。
「ごめんなさい・・・私変なことを言って。」
「ありがとう」
 ずっと口を閉ざしていた彼が口を開いた。驚いた私は彼の目を見た。彼の目は穏やかで、けして同情や哀れみの目ではなかった。すごく暖かな優しい目だった。
「…辛かったコト、話してくれてありがとう。本当にありがとう」
 私は戸惑った。あんな話をしてそんなこと言われると思っていなかったから。
「過去は無かったことにできないし忘れるのもいけないと思う…でも俺さんは、そういうの全部噛み締めて、乗り越えて、リーゼと未来を作っていきたいなって…そう、思うんだ」
 私の目をまっすぐ見て十一はそう言うと、ぎゅっと私を抱きしめて耳元で囁いた。
「隣に、いてもいいかな?」
 その言葉に私は嬉しさがこみ上げてきて、目尻が熱くなるのを感じながら何度も頷いた。
「ありがとうリーゼ。愛してる、世界で誰よりもリーゼを幸せにしたい」
「私の方こそありがとう」
「泣いてる」
目尻に溜まった涙を十一がそっと拭ってくれた。そして私の目をまっすぐ見て囁くように言った。
「キス、してもいい?」
真っ赤になった頬と涙に濡れた瞳で私は頷き、私達は深い口づけを交わした。

その数十分後。
「そういえば、俺さんまだお菓子もらってないんだけど、いたずらしていい?」
十一が後ろから抱きしめながら私に尋ねる。
「いたずらって?」
「例えばさ」
そう言うと首筋にチュッと音を立ててキスがおとされた。
「こういうのとか?」
「それは私もしていいのかしら?」
「当然」
そうして二人で笑い合う。

こうして、狼とヴァンパイアクイーンの砂糖より甘い夜はふけていった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja5393/アンネリーゼ カルナップ/女性/18/ディバインナイト】
【ja0101/笹鳴 十一/男性/18/阿修羅】

※上記の並びでここに物語に登場した全てのPCのデータを記載してください。
※PCのデータの掲載方法はライター各員でアレンジしてもかまいせん。
※アクスディアの場合は整理番号>ウェブIDとなります。

※以下の方式で、ライターとしてのコメントを入れても構いません。

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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アンネリーゼ カルナップ様>
はじめまして。今回執筆させていただきました、川知真です。
今回はご発注いただきありがとうございました。
お二人とも結構自由に動かさせていただきましたが、お気に召すものになっていれば幸いです。
これからもお幸せに。

今回はご発注本当にありがとうございました。
ハロウィントリッキーノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年10月10日

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