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『●Rhapsody in October Carnival 』
古河 甚五郎(ga6412)

「本当に来るんですかねぇ‥‥BGA48」
 いそいそとMSI特製一度貼ったらはがせないという噂の強力ガムテープでコンサート会場を巡るステージ。大きな山車にバミ(立ち位置を示すテープ)をしている古河 甚五郎(ga6412)の向かって溜息を吐くパナ・パストゥージャ(gz0072)。
「来なきゃ困りますね。正式に呼んでいなくても来るっていうからこっちもこうやって準備している訳ですから」
 バミを貼り終わり、ふぅと額の汗を一拭いする甚五郎。

 BGA48──知る人ぞ、知る最近人気上昇中のアイドルユニットである。
 祭り(カーニバル)があると聞けば、いつの間に現れてゲリラライブを上演する。
 メンバー48人。全員が女の子で構成されている。

「最近、戦争続きで大きな祭りがなかったですからね。絶対現れますよ」と力強く言う甚五郎。
 BGA48の活動は、軍やULTは兎も角、芸能業界ではそれなりに注目されていた。
「それにアイドルがステージをすっぽかしたなんてバレたら、即日クビか二軍降格でしょうしね♪」
「‥‥こっちが呼んでいなくても来ないのを『すっぽかす』っていうんでしょうかね?
 それにアイドルとはいえ‥‥バグアなんでしょ?」
「そうですね。アイドルですけどバグアです」
 彼女たちは突然現れ、極めて普通。決して上手いとは言えない歌を一生懸命歌い、踊り──ライブが終わると周辺一帯を徹底的に破壊する。
「彼女らにしてみれば破壊すらライブパフォーマンスなのかもしれませんが、迷惑な話です」

 更に迷惑なのは、その破壊(パフォーマンス)を喜ぶファンがいるという事だ。48人という大所帯ゆえ、つるぺた癒し妹系から巨乳セクシーお姉さま系迄バラエティに富んだ容姿。受けるとあればネギを片手に踊っている姿も確認されていたり、観衆には危険が及ばないよう配慮したりするのでマニアなファンを増やしていた。バグアとの停戦を迎えた今、地球上に存在するバグアはゲリラ化して凶暴さを増している中で異彩を放つ彼女らであった。
「調査によれば実験派らしいですから──流石、あの、ジャッキー・ウォンの置き土産です。常識では測りきれませんが、ステージを台無しにされるのは御免です。こちらもそれなりに『用意』しましたからね。来てもらわないと困ります」と、バンバンとダンボールで飾り付けた特製山車を叩く甚五郎。
 剥がれかけた飾りを見つけ、丁寧にガムテープで直していく甚五郎だったが、ふと見れば周りに甚五郎とパナ以外、スタッフがいない。
 これ幸いと無駄話を続ける。

「ところで最近、どうなんです?」
「どうって?」
「映画ですよ、映画!」
 イベントの演出や企画の仕事が増えたが、パナは元々マサラムービーのプロデューサーである。甚五郎もこうしてULTの傭兵をしているが、映画やTVの美術や大道具。映像で食ってきた人間である。
「このままで行ったら今、プロパガンダ一辺倒の芸能コンテンツは心配で堪りません」と甚五郎。
「まあ‥‥バグアも悪魔並みのお手軽な敵役に成り下がっていますからね」
 甚五郎が言う『対バグア』のプロパガンダはもう必要ない。
 新たに強化人間やキメラを作り出す拠点を潰せば、数年後には自然に淘汰される。そんなものに対して政府も軍も金は、出さないだろう。
「ですが、これからは治安と世情が不安定な時期になりますからね。自分は、ド派手な刑事物の需要が高まると思うんですよ」と甚五郎。
「ド派手な刑事物ですか‥‥正統派というよりも凸凹コンビや常識ハズれな刑事が出るような軽いノリの物は最近人気ですからね。
 ──いいんじゃないんですか?」
 そんなパナの言葉を聞いて、主人公らが滑走路を一列に並んで歩くOPを想像し、むふぅと一気に鼻の穴が広がる甚五郎。
「インドは州単位で法がかなり違いますから都市名を入れるか、逆に組織をでっちあげるとか」
「でっち上げていいんですか?」
「そうですよ。変にリアルに近いと勘違いしちゃう人もいますから少し前までならば宇宙や未来を舞台にしたSFでも良かったんでしょうがね」
「宇宙や未来ですか‥‥ニーズあるんですか?」
 確かに御伽噺であった宇宙人襲来をリアルに体験した今、宇宙や未来というSFの世界もありかもしれない──
「まあ、バグアとの戦いの延長みたいで暫くニーズが薄いでしょう。なので、州や国を越えた国際刑事課とかは、いいような気がしますよ」
「国際刑事課ですか──」
 香港ロケでカラテ対決。熱血主人公と敵の兄貴が同じ孤児院育ちとか、美女刑事が敵美女幹部とサービスカットありの、お色気裏チラり対決──
 バスを飛び越えるたり、カーチェイスの果て線路に入り込み主人公と敵の背後から迫る特急列車などの派手なカースタント──
 迷路のような町を刑事が走ったり、激しい銃撃戦の最中、仲間を庇って殉職の、お涙頂戴──
(10分に1回必ず何かが大破爆発大炎上、EDはパトカー隊列‥‥そうすると火薬総使用量は4.8tぐらいですかね。手続きが面倒そうです)
 甚五郎の脳内にどこかの凶悪コンビの影響を受けたとしか思えない。ある意味惨事な光景が広がる──
「パナさん所はダルダ系列ですからMSIの特殊車両やヘリ、兵装など、大量使用したほうがいいよね!」
「うん。でも甚五郎さんの想像する範疇だと刑事物じゃなく軍だと思いますよ。まあ、どこの国もバグアのおかげで警察もある程度の武装はあると思うけどね」と釘を刺す。
 甚五郎との付き合いもそれなりに長くなっているパナ。甚五郎が何を想像したのか予測したらしい。
「あと、余り凄惨なシーンも駄目ですね。私にしてみれば映画上映においての年齢制限はお色気だけで十分。残酷なのは、纏めて深夜にビデオでいいんです」
 ギラリとパナの目が光る。ふだんのほよよ〜んとしたお父さんキャラとのギャップに、
「やっぱボリウッドは恋愛物ですよねー☆」
 はははっ、と取り繕う甚五郎。
 脳内では、主人公が本命彼女といちゃいちゃしたり、敵のツンデレ幹部に攻撃的に迫られているシーンが駆け巡っていた。


 ふと気がつけば表が騒がしい。どうやらBGA48が現れたらしい。
 さあ、行って来いとトリモチとぬるぬるローションがたっぷりの罠が仕掛けられた山車を送り出す。

「踏んでください。女王様! 死んだヒーローが愛の力で復活──ってのは駄目でしょうね。やっぱり」
「レベルに寄るとは思いますよ」
 さらりと言うパナ。
「いいんですか?!」
「Ko’i bata nahim(コーイー・バート・ナヒーン:対した問題じゃないですよ)。面白ければ映画は、No Problemです」とパナは笑った。
 やはりボリウッドは奥が深い、カオスゾーンだと甚五郎は、思ったのだった。




 了



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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―― Catch the sky 〜地球SOS〜 ――

【ga6412】古河 甚五郎/男性/外見年齢27歳/コガウザー二世
【gz0072】パナ・パストゥージャ/男性/外見年齢38歳/一般人
■イベントシチュエーションノベル■ -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2012年10月23日

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