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『+ たまにはこんな日も + 』
鬼田・朱里8596)&人形屋・英里(8583)&(登場しない)



 本日は四人アイドルグループ「Mist」のアッシュもとい私、鬼田 朱里(きだ しゅり)のオフ日。
 そういう日は大抵私の思い人である人形屋 英里(ひとかたや えいり)と一緒に過ごす事に決めてます。彼女の趣味である家庭菜園を手伝ったり、本業である人形師の手伝いをしたりとそれなりに充実した日常を送っているものです。
 そして今日は買い物に行くと約束をした日。ただし、オフなのでデートという名の買い物ですよ。英里はデートという感覚ではなさそうですが、私にとっては彼女と二人きりで居られる貴重な時間なんです。


「出来た! さあ、鏡を見てみろ!」
「これが私ですか?」
「ふー……ゴシックスーツに軽めのゴシック系の化粧なのだ。よく似合っているぞ!」


 たかがショッピングセンターに買い物に行くだけなのに何故か英里はやる気満々。
 私の為に選んでくれたゴシックスーツを着込み、彼女の十八番であるゴシックメイクを施されれば普段とはまた違う自分の姿が鏡の中に映り込む。ずいぶんと印象が変わるものだと目をぱちくりさせてしまいます。
 彼女が喜ぶなら逆らえるはずがありません。ええ。ええ。本当に。
 髪形もそれなりに変えて、アイドル活動しているアッシュとはまた違う印象を持つ自分の出来上がり。英里がそれはそれは楽しそうにするものですから私もついつい頬が緩んでしまって……まだデートにも出かけていないと言うのに困ったものですね。


 そう言う訳で彼女は変わらずゴシックロリータドレスなので本日は二人揃ってゴシック系衣装でお出かけです。
 先日まで二人きりで住んでいた一見廃屋に見間違われそうな洋館から出発すると、時折自分達の方を振り返る人が居ますが、それはアッシュとしての自分がばれたわけではなく外見によるものだと気付きます。まあ、住居街ではちょっと目立ちますからね。


「しかし二人から四人になってから食材の減りが早いですね」
「今度家庭菜園に植える物は果実だな……」
「英里はその内、肉と魚以外の物は自給自足してしまいそうです」
「うむ、それも有りのような気がしてきた。四人も居ると金も馬鹿にならん」
「金銭面は同居人達も出してますから問題ないでしょう?」
「だが買い物に出かける度に大量の荷物になってしまうのは多少問題だと思う」


 ショッピングセンターへと辿り着き、食材を後回しにしつつ消耗品を買い込んでいく。
 食材は荷物がかさばりますからね。それに私も今日は色々と見て回りたかったので出来るだけ身軽で居たいものです。彼女には彼女の買い物、私にも私の買い物があって、ひと時だけ自由時間を貰って動きます。
 ただ必要最低限のものを買って帰る気なんてありませんよ? 当たり前です! ……しかし英里の様子が多少おかしいのですが……そわそわしているというか、何か気に掛かるような事があるような、そんな雰囲気が見えます。
 まあ、私もちょっとやる事があるので気にしません。頂いた自由時間を貰って素早く動く事に致しましょう。


 それが終わればショッピングセンター内でお手軽デートです。
 英里が好きなゴシックショップへと足を運んで新しく入荷された服や小物を見たり買ったり、本屋へと移動し新しい書籍を買い込んだりと楽しく過ごします。英里の妖力が制御出来たなら映画館やゲームセンター等にも足を運びたいところなのですが、それは彼女が制御出来るまでの我慢。可能になった暁にはまたそれを理由に彼女を連れて行ってあげればいいだけの話なのですから――早くその時がくればいいなと思うだけで結構幸せになれます。
 さてっと。
 なんだかんだと手荷物が増えてきた頃に時間を見れば丁度いい数字を示していて。


「楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますよね」
「そうだな。新しい服も買ったし、私は満足だぞ、うん」
「そろそろ食材を買って帰りますか」
「あ、ちょっと待った、朱里」
「ん?」
「あー……えっと、その……贈り物があってだな」
「贈り物?」
「う、うむ。その、これなんだが……」


 英里がポケットの中から手の平程度の包装された何かを取り出し私へと差し出してくれます。
 おや、この包装には見覚えが……。
 私は私で先程の自由時間で購入したある物を取り出し、英里へと手渡しますよ。彼女もまたそれを見て目を丸め、そして嬉しそうな表情を浮かべてくれました。もうお気付きでしょうが彼女と私が贈り合ったものの包装は全く同じものだったのです。つまり、同じ店――アクセサリーショップで購入したものである事は一目瞭然。
 私も一体何が彼女から贈られたのかとほぼ同時にそれらを解きます。


「おや」
「ほう」
「これはこれは」
「お揃いだな。指輪」
「しかも私の方だと左の薬指しか入りませんね。右の方だと太くて無理ですし、中指だともっときつい」
「そ、それは普段色々と朱里の手を見ておるから……って私も左の薬指しか入らない」
「ふふ」


 私の方はそれはもう研究しましたからね!
 英里が私に贈ってくれた物も、私が英里に贈った物も指輪。しかもデザインが全く同じで、色違いと言う結果に思わず表情が綻んでしまいます。ですが、英里は普段こういう事を考えるタイプではないのですが……一体誰が入れ知恵したのでしょうね?


「店の人にアドバイスを貰って買ってみたのだが、お揃いとは嬉しいものだな」
「はい、私も英里とお揃いで嬉しいです。むしろ英里からの贈り物という事だけでお腹がいっぱいになれます」
「え、満腹になれるのか?」
「物の例えですよ、物の例え。実際にはお腹が空きましたし、同居人達も居る事ですから食材を買って帰りましょうか」


 無邪気に笑って喜んでくれる彼女の右手を取って私は移動を始める。
 英里は左の薬指を上へと翳しながらそれはそれは幸せそうにしているものですから、私だってついつい今は繋いでしまった左手に嵌めたばかりの指輪を意識してしまうものです。
 なるほど、だから英里の様子が可笑しかったわけですね。理解しました。ははは、同じ事を考える人が居たわけですか。そうですか。


「ですが取りあえず、私達の後を付けていた人はあとで覚えていなさい」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も?」


 それなりに小さく呟いた私の言葉ですが、耳のいい片方の人はきっと聞こえるでしょう。
 邪魔しないと言ったからには表には出てこなかっただけマシ。そう考えればいいのです。なんだかんだと二人きりの時間は楽しかったわけですし、入れ知恵されたとはいえ英里から指輪の贈り物というのは大きい意味を私に齎してくれたわけですからね。


「ねえ、英里。私今日は幸せです」
「私も幸せだぞ」
「きっとそれ以上に」


 二人で帰る道程。
 手を繋ぎながらただ家路を歩くだけの幸せ。けれど今日は互いの指に指輪という幸福の付加価値が付いていればより一層今日と言う日が特別になる。
 少しずつ少しずつ。


「私達は私達なりにゆっくり歩けばいいのです」
「うむ、急ぎ足は足に負担が掛かるだけだ」
「おっと、つい心の声が」


 零れてしまった言葉に英里が反応して首を傾げる。
 そんな彼女を愛おしく思う日々が――もっともっと続けばいい。今はただそれだけが私の願いです。












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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【8583 / 人形屋・英里 (ひとかたや・えいり) / 女 / 990歳 / 人形師】
【8596 / 鬼田・朱里 (きだ・しゅり) / 男 / 990歳 / 人形師手伝い・アイドル】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、いつもお世話になっております!
 今回は二人でお買い物デート! 朱里様視点でのプレイングでしたので朱里様の視点から書かせて頂きました。非常に幸せ満載な内容となり、こっちも心がほこほこです。
 指輪の詳細が無かったため、曖昧にさせて頂きました。もし別の機会に詳細が必要になればその時は発注文に記載して頂ければなっと。

 ではでは幸せのお裾分けを有難う御座いました!!
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年10月29日

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