▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『+ たまにはこんな日も―出流と瑞希編― + 』
桐生・出流8626)&久能・瑞希(8627)&(登場しない)



 今日は四人アイドルグループ「Mist」のオフ日。
 先日、廃屋に勘違いされそうなほどちょっと古い洋館に引っ越してきたのはシアンこと桐生 出流(きりゅう いずる)。そしてリーダーであるバーミリオンこと久能 瑞希(くの みずき)である。そんな彼らはと言うと一緒に暮らしているメンバーの一人とその思い人がショッピングセンターへと買い物に出かけていくのを手を振って見送っていたが――。


「行ったな……」
「なあ、ほんとにやるん?」


 何かを企んだような笑みの出流。
 それに対して瑞希はと言うと出て行った二人の内一人の住人に「二人きりの時間の邪魔をしない」と約束した手前、ちょっと二の足を踏んでしまう。しかし目の前の『黙って座ってさえいれば』それはもうどこか儚げさえ感じる金髪男はむしろ嬉々として外出の準備を始めていた。アイドルであるからにはそれなりに変装も必要。……と、言うわけで本日の衣装?は出流がなんちゃって英国紳士に瑞希がなんちゃってストリート系+伊達眼鏡付きであった。


「さあ、張り切って尾行するぞ」
「すまん……止められなかったわ」


 本当に小さな声で尾行対象のメンバーに謝罪の言葉を口にしつつ、瑞希は出流に引き摺られていく。誰もいなくなった洋館は留守番としてダンピールである出流の眷属的な蝙蝠に任せて二人は後を付けていく。
 道中、幸せそうな二人――主に少年の方を見つつ、自分達も出来るだけ隠れたりしないよう距離を取りつつ尾行した。それはもうこっそりこっそり。気配を極力消し、人混みに紛れながら二人を見守り続けた。


「しかし、手も繋がないとか何考えてるんでしょうね、彼は」
「ええやん。別にー」
「もっと積極的に自分をアピールして押せばいいのに」
「恋愛事にはまだまだ経験値が足りひんのやろ。別に二人は二人の速度で進めばええやん。なんでそないに突っかかるんよ」
「そんな事していたらあんな可愛い女の子あっという間に他の男に持っていかれますよ! 後でめそめそ泣いたらそれこそ笑い話です」
「はいはい、そんなもしも話しててもしゃーないって。アイツかて頑張ってんのに」
「わたくしだったらもっとスマートかつ確実にお持ち帰りを――!」
「駄目な大人の見本か、お前は――ん?」


 ショッピングセンターにて日常品やらを買い込む二人をそれはもう優しく……出流はじれったく感じつつも追いかけ続ければ、ふと尾行対象である少女の方が自分達の方へと視線を向けた。それも見事に勘違いとは思えないほどばちっと音がなるほどの一致さで。
 相手は術への反応が感受が強いため、人外である二人の気配には敏感。
 よって隠れていたとはいえ二人がずっと付いてきていることに違和感を覚えたのかとうとうこちらを見てしまった――ようである。
 しかしそこは静かに唇の上に人差し指を一本立てて「黙ってて」のジェスチャー。
 少年の方はまだ自分達の存在には気付いていないようで、他の店へと行こうか迷っている素振りを見せていた。そしてジェスチャーが見事通じたのか、少女は一旦頷くと多少ぎこちなくなってしまったものの少年の元へと戻っていった。


「何か見逃されたようだな」
「いつかばれるわ。うち、本気でばれた時が怖い」
「半殺し程度で済みますよ。でもその場合は応戦しますが」
「それや! それがいやなんや! 二人はうちの為に争わんといてー!!」
「何馬鹿な事を言ってるんですか。誰が瑞希の為に争いますか。面倒な」
「ホンマしょんぼりやわー、ノリ悪いわー」
「ほら、二人が移動を始めましたよ。行くぞ」
「あいー」


 ノリが悪いのは出流の性格。しかし色々と首を突っ込みたがるのも彼の性格。どこか噛み合わないように感じるが好奇心が強いのだろうなと瑞希は思うわけで。
 さて、その後も延々と二人の後を追いかけ続けた出流と瑞希だが、途中彼らが別行動を取る事になり、どうするべきか相談し始める。結果としては互いに一人ずつ付くという形で収まったわけだが……。


「じゃあ、うちはあっちな」
「わたくしは彼女を」
「――あんな、言いたい事あんねんけど、ええ?」
「なんだよ」
「これってうちらまでデートみたいやな。待ち合わせはここでね、きゃっ! みたいな」
「何、冗談を言っている」
「いて!」


 瑞希の頭をぽかっと殴りつつも顔を赤らめる出流。
 彼らが移動してしまいそうになるのを見ると慌てて瑞希を引き摺りながらもほんのりとその肌に赤みが差しているのを瑞希は見逃さない。ついついニヨニヨとした笑顔を浮かべてしまう。どうやらデートという言葉への反応は悪くないらしい。本気で嫌なら尾行すら止めて機嫌を悪くし、そのまま帰ってしまうのが出流なのだから。


 というわけで、少女の方には出流。
 少年の方には瑞希が付く事となり、二人もまた別行動を始める。しかしそうは言ってもやることは何か変化があったら携帯で連絡する事くらいで基本は尾行だ。瑞希の方は尾行相手の少年が自分の存在に気付かない事を祈るばかり。
 途中アクセサリーショップに入った時には「おっ」と少しだけ表情が緩んでしまう。なんせ購入している物のは確実に自分用ではなくプレゼント用。
 瑞希はなんだかんだ言ってデートを楽しんでいる少年にほんわかしてみたり、「青春ってええなぁ」とそれはもうメンバー内では弟分にあたる彼に心の中で応援を飛ばす。


 やがて尾行対象の男女が待ち合わせ場所に移動し、尾行していた自分達も合流を果たす。
 少女の方の結果を聞くと彼女もまたアクセサリーショップに入ったと言う事で――その入れ知恵は確実に出流だろうなと瑞希は思った。
 現在、距離はあるものの目の前では二人が買ったばかりの指輪を交換し合っているばかり。『偶然にも』『お揃い』だったという単語が聞こえてきて、瑞希の表情は緩む一方である。


「ああ、かわええわぁ。初々しいわー。なにあれ、うちの青春時代もあんなんやったかな」
「そもそも青春してたんですか」
「えー、アクション俳優目指している今もある意味熱血青春中やで!」
「そう言えば腐ってもアクション俳優だったな」
「腐らさんといてー!! うちホンマに頑張ってんねん! アイドルと兼任で頑張ってんやん!」
「喧嘩の仲裁が瑞希の仕事だろ」
「ちゃうわー!!」


 物陰に隠れながらの漫才風味な会話に人々が少しだけ奇妙な視線を向ける。
 しかしそれはアイドルである事がばれたわけではないので二人は気にしない事にした。やがて交換し終えた二人は食材コーナーの方へと足を運んでいく。その手はしっかりと繋ぎあって。


―― 取りあえず、私達の後を付けていた人はあとで覚えていなさい。


「っ!!」


 不意打ちで聞こえてきた少年の声。
 それは大した音量ではなかったが、正体が人狼である瑞希の耳にはばっちりと聞こえておりぎくりと身体を固めてしまう。それはもう石のように。


「瑞希どうした。おい、二人が移動してしまうぞ」
「……」
「おい、瑞希ってば!」
「……で」
「ん?」
「なんでうちまで巻き込まれてんねんやろ。主犯は出流やでー!!」
「ちょ、騒ぐな! 馬鹿!」


 瑞希の口を押さえながら、出流はもう一発頭をぽかり。
 くすんくすんっと瑞希は嘘泣きの真似をしつつ、新たに二人は尾行を開始する。
 なんだかんだと幸せそうな少年少女のデートを見守る目的は果たせているわけだが、それで後々大事件に発展しないと良い――出流に腕を引っ張られながらも瑞希は遠い目をしつつ、何も起こらない事だけを祈り続けた。









□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【8626 / 桐生・出流 (きりゅう・いずる) / 男 / 23歳 / アイドル・俳優】
【8627 / 久能・瑞希 (くの・みずき) / 男 / 24歳 / アイドル・アクション俳優】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 こんにちは、今回は某ノベルの別視線発注有難う御座いました!
 某PC様の恋路を見守るお二人がほんわかと幸せそうでなによりです(笑)そして出流様は本当にアクティブですよね。やろうと思ったら一直線で素晴らしいです!
 なんだかんだと瑞希様への反応も悪くないようで、大人組は大人組で楽しそうでこちらも書いててほんわかさせて頂きました。
 ではでは!
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年10月30日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.