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『+ ルーアブルーの海賊 + 』
アシャンティ・イントレピッド(ec2152)&クリス・ラインハルト(ea2004)&ユリゼ・ファルアート(ea3502)&エルディン・アトワイト(ec0290)



「海賊?」


 そう言って首を傾げたのはアシャンティ・イントレピッド。ハーフエルフのナイトである。短めの黒髪に和風の髪飾りを付け、装いも和風である彼女は持ちかけられた話を飲み物を口にしつつ聞いていた。
 ここはルーアブルーの酒場。しかし実態は海賊ギルドという場所である。
 今現在ギルドでの会議の議題はとある海賊による被害状況であった。


「そう、掟破りの海賊達のせいでこのまま放置すると国家が動く事になる。しかも退治に向かった海賊が返り討ちにあったんだ」
「悪いがギルドで動かせる人間にも限りがある。そこで冒険者で騎士でもあるアシャンティに討伐をお願いしたい。どうだろうか」
「内容は分かったし、ギルドメンバーが返り討ちにあったなら出よう。――と、言うわけで報酬の話に入ろうか」
「おお、行ってくれるか! それならば船はこちらで用意しよう。そして報酬は――」


 アシャンティはギルドメンバーに即決の返答をすると今までの情報と報酬の話へと入る。
 彼女自身も海賊を生業としており、けれどそれはあくまで国家に許された範囲で行っている。掟破りの海賊達によって自分達の生業が汚される事があってはならない。討伐に動く事はある意味当然とも思えた。
 彼女は渡された情報、それから報酬の高さに一瞬目を丸めるも、それだけ危険だという事を心に刻み込みながらギルドを後にする。


「問題は一緒に行ってくれる冒険者を集める事かな。海賊であるあたしは冒険者ギルドには依頼出来ないし……と、なると」


 冒険者ギルドへと一瞬足を運ぼうかとも考えたが、それはすぐに案から却下する。
 そのような危険をおかすくらいならば、と冒険者が多く集まる酒場へと赴き自ら人材を見定めて密かに声を掛けよう――そう心に決めた。


 場所を移し、パリの酒場シャンゼリゼにて。
 そこには陽気な人々の姿があり、平和な世の中を謳歌している。バードが歌を歌ったり、それに合わせて踊ったりするものの姿も在った。杯をかわし、談笑する人々の中からアシャンティはまず自分の知り合いはいないものかと視線を巡らせる。するとその中で一人のウィザードを発見し彼女は声をかけた。


「あら、こんにちは。アシャンティ」
「ユリゼ。ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど良い?」
「何かしら、急ぎの用?」
「ちょっと厄介な話かな」
「そう、じゃあ何か飲みながら聞くわ」


 彼女の名はユリゼ・ファルアート。
 人間のウィザードで右目が青、左目が澄んだ碧という色違いの瞳を持つ女性だ。彼女に海賊討伐を手伝って欲しい事を切り出すと、そこからそして敵勢にも魔法を使う人物が居る事、そして被害に付いては一般の船舶の被害も多い事、ノルマン王国にとっても良くない事態である事をアシャンティは的確に説明した。
 その説明を聞くと注文したばかりの飲み物を口にしつつ、ユリゼは眉根を思わず寄せてしまう。


「陛下の治世が安定しても完全な平和や安全って無いのね……。勿論手伝うわ、冒険者だもの」
「っ、ありがとう!」
「そうね、私は被害状況や噂話を集めて情報収集するわ。あちらは海を駆けるのだし、時間があればドレスダッドまで渡って聞いてみたいのだけど、どうかしら」
「そこは貴方に任せるよ! あたしは他にも冒険者を集めてくる」
「行ってらっしゃい」


 一人有力な人材を確保出来たとアシャンティはほっと一息を吐くと、他には誰か居ないものかとまた顔を左右に動かし、酒場へと視線を巡らせる。するとあるテーブルにて談笑している一組の男女の姿を見つけ、それが知人である事に気付くと彼女は素早く彼らの元へと挨拶しつつ寄った。


「こんばんは、少し依頼したい事があるんだけどいいかな」
「僕は初めましてかな。こんばんは、お話ってなんでしょう?」
「アシャンティ殿、お久しぶりですね。どうぞ、こちらの椅子をお使い下さい」
「有難う、エルディンさん。で、依頼したい内容なんだけど――」


 女性の方はクリス・ラインハルト。人間のバードだ。
 彼女は親友である神父――エルディン・アトワイトと話に花を咲かせていたが、アシャンティの登場に一旦話題を止め、依頼内容へと耳を傾ける。内容は先程ユリゼにも説明した通りで、海賊の被害によるものをアシャンティは口にした。報酬の高さにも二人はびっくりするが、まずはクリスがにっこりと笑みを浮かべた。


「子育てでギルドをお休み中の身です……が、面白そう♪」
「手伝ってくれるのか。助かる!」


 即決、という言葉が良く似合う返答っぷりである。
 クリスが参加するという言葉を聞くとエルディンもまた首を頷かせた。


「アシャンティ殿の妹とは顔見知り。クリス殿とは付き合いの長い友人。そんな二人が行くというのに私が行かないという選択肢はありえませんね。普段は教会で司祭を務めているが冒険者を引退したわけではありません。久しぶりに出かけるか」
「なんだかはりきってますね!」
「そりゃあもう、久しぶりに腕がなるというものですよ」


 エルディンはエルフの神聖騎士だ。
 彼の齎す加護はきっと戦闘時において好機を生み出してくれるに違いない。
 アシャンティはこの二人の協力を得られた事を感謝しつつ、更に話を進めた。決行日と船の手配について、それから捜索など様々な方法を伝え、時を待つ。


 まだ少し人が足りない。
 四人では流石に危険すぎると考えた彼女はもう少し人手が欲しいと考え、吟遊詩人と神父の元を離れるとまた人材探しへと足を運ぶ。なんせ海賊ギルドの人材を返り討ちにした海賊達を相手にするのだ――油断は出来ない。
 そしてその後、酒場では他にも名の通った冒険者達に声を掛け彼女は船の手配をする。
 ユリゼが集めてくれた情報や皆が収集した噂話などを元にどこに大体海賊達が出現するのか予想し、待ち伏せを決行することにした。



■■■■■



 味方はアシャンティの属する海賊ギルドの面々、そして彼女が声を掛けた冒険者達。
 彼女達はギルド管理の船に乗り込み、問題の海賊がよく出没しているという地域にて潜伏を開始した。


「油断しないようにね、向こうにも魔法を使ってくるやつがいるわけだし遠方から討たれたら厳しい」
「そうね、油断しないようにしましょう。あと私が集めた情報によるとどうやら敵の中にテビルがいるようなの」
「それは……油断したら死ねます〜!!」
「デビルですか、相手には不足はありませんが少々やっかいですね」


 船内、会議室にて四人は集い話をする。
 皆で情報を交換し合い、必要そうな道具やマジックアイテムなども積んだがそれでも気を緩める事は出来ない。甲板には海賊達が交代で見張りをし、緊急事態になれば鐘を鳴らす手配を整えてあるためすぐに対応出来るが彼らに出来るだけ被害が及ばないよう皆決心する。
 皆冒険者の装いではあるものの、クリスだけは竪琴と羽根付き帽子付きの旅装束で、荒くれ達相手でも人当たりよく楽しそうに振舞った。


「そうですねぇ。あとはドクロのバンダナとアイパッチそれにラム酒があれば完璧です?」
「クリス殿は海賊になるおつもりで?」
「あくまで僕は吟遊詩人ですよ〜♪」
「ふふ、クリスさんったら」


 他愛のない時間を過ごし、時折クリスやエルディンの陽気な言葉に皆笑わされながら時を待つ。敵の船は昼には現れなかった。やはり夜の方が色々と動きやすいのだろう。
 皆の読みが当たれば今夜この付近に敵は現れる――そう信じて戦闘の準備を開始する。特にユリゼは月龍――ムーンドラゴンのフロージュを付近の岩場に待機させ、呼んだら直ぐに来るようお願いしておく。
 そして時の神は自分達に微笑み。


「敵だー!! 出たぞ、やつらだ!!」
「応戦しろ! 油断するな!!」


 甲板から声が上がり鐘が鳴り響けば船員達が一斉に駆け出す。
 それはアシャンティ達にも届き、彼女達も各々の武器などを所持しながら外へと飛び出した。だがそこで見た光景は彼女達の予想を遥かに超えているもので。


「なっ、インプだと!?」
「ひぃっ、ムーンフィールドを張りますっ!」


 アシャンティの言葉に素早くクリスが防御専念を開始する。
 船を取り巻く大量のインプ達。幾ら小さな悪魔とは言え、数で押されればまずい。実際船員達が討っても討ってもインプ達に惑わされ武器を奪われたり、海へと落とされ始めていた。
 目の前には敵の船。そこには指示を下しているネルガルが存在する事は間違いない。


「ひーん、数が多すぎますよー。僕防御で手いっぱいです〜っ!!」
「コアギュレイトで動きを止めますっ!! しかし、相手がインプであるなら白魔法の方が有効でしょうね。」
「数が多くてやりきれない気持ちは分かるわ。――アイスブリザード!!」


 エルディンがインプ達の動きを止め、ユリゼが広範囲魔法のアイスブリザードでインプを落とす。消滅していく悪魔達の姿をみながら聖職者であるエルディンは次なる対策を考え始めていた。
 海賊達の正体は「デビル」。ならば対人間ではなく、対デビル用に戦略を考えるべきである。苦戦する味方勢の姿にアシャンティは歯噛みし始めた。するとクリスがぴくっと何かに反応し、耳を済ませる。


―― 汝らに我の力を貸そう。

「アズール!」

―― 消えよ、禍々しい魂を持つものよ。我は彼らに勝利を与えしもの。


 突如現れた精霊、アズールが猛烈なアイスブリザードをインプ郡へと叩きつけ一掃する。インプ達が完全に消滅しきった事により視界が開け、一気に士気が上がった。アズールは昔クリスが冒険した時にも力を貸してくれた精霊だ。アシャンティ達は顔を見合わせると今度は敵勢の船へとロープを渡し、乗り込みを開始する。


「ありがとう、アズール。あいつらはあたし達がやっつける」

―― 幸運を祈る。

「僕は此処に残るよ。メロディーを使って皆の勇気を振るい起こすからね!」
「クリスさん、気をつけて」
「クリス殿は身の安全を第一に考えて下さいね」
「うん、いってらっしゃい!」


 クリスは皆を見送ると竪琴の弦へと指を引っ掛け、そしてポロン……、と音色を奏で始める。アズールによる援軍とクリスの歌により一層戦闘意欲を高めた海賊達は一気に残りの敵を叩きに掛かった。
 飛び交う矢、響き渡る剣と剣がぶつかり合う音。ここは海の上の戦場なのだと改めて思い知らされる。


 一方、敵側の船へと乗り込んだアシャンティ達は、出てきた冒険者崩れだと思われる幹部達と対面する事となる。屈強な身体を持つ戦士とその後ろに控える弓士、更にその奥には親玉であるネルガルが悠々とした姿で彼らを待ち受けていた。


「あんた達が掟破りの海賊か!」
「ここまで辿り着けた事を褒めてやろう。そして死ね!」


 ネルガルが指示を出すと、手下達が一斉にアシャンティ達に襲い掛かる。
 大降りの両手剣を振り回しなぎ払う戦士、それに合わせる様な弓兵からの攻撃に足場が取られそうになり、前に出ていたアシャンティは慌てて足を後方へとさげる。エルディンが神への祈りを捧げ、そしてレジストデビルを使用した。これにより味方へのダメージは軽減されるはずだ。


「私はフロージュに乗るわ。サポートするからアシャンティさんは親玉の敵を狙ってちょうだい」
「了解した!」
「私もサポートへ回りましょう。対デビルに特化した白魔法使いとしての本領発揮です」


 ユリゼは待機させていたムーンドラゴンのフロージュを呼び出し、美しいドラゴンへと飛び乗る。そして上空から攻撃を開始した。彼女は敵を直接狙う事は止め、今は船へとダメージを与えようと考える。ライトニングサンダーボルトを帆に向けて撃ち、船体を落としにかかった。


 エルディンはというとリカバーを超越レベルで使用し始める。
 彼の能力により悪魔によって傷付いた船員達の傷が癒され、失いかけていた戦闘力がまた復活し雑魚に当たる者達は海賊達が次々と倒していく。次第に敵が押され、数を減らしていく様子にエルディンはふっと微笑んだ。


「この船に私が乗っていたことが運の尽きでしたね」


 その言葉にデビル達や冒険者崩れの戦士達はぞっと背筋を凍らした。


 そして周囲のサポートもあり、親玉であるネルガルを追い詰め始めたアシャンティ。修羅の槍の力を借りて、薙ぎ払い続ける彼女の姿はまるで舞を踊るかのよう。美しいその戦闘の姿に見惚れつつ、ネルガルは不気味な笑みを浮かべて魔法を飛ばす。避けるために彼女は板張りの床を飛んだ。


「アシャンティ殿! 回復は私が引き受けます。どうかそいつを落としてください!」
「お願いする!」
「雑魚は一掃するわ。――そちらへは向かわせない」
「ネルガルッ!! あたしの全力の力を喰らえぇぇ!!」


 魔法でダメージを受けても彼女は突き進む。そんな彼女が傷付く度にエルディンはリカバーを飛ばし続け彼女を回復させ、ユリゼは彼女を止めようとする雑魚達を魔法で潰していく。駆ける駆けるアシャンティ。その速度は決して揺るがない彼女の精神を表すかのように勢いを増す。
 竪琴を弾いていたクリスも一瞬だけその時を見るため視線を向けて――。


「この、小娘がぁぁぁぁ!!!」


 食い込む槍の先。
 切り裂かれるネルガルの体。最後の足掻きとばかりに彼女と相打ちを狙い、ネルガルもまた攻撃の手を向かわせるが――そこは仲間達が素早く攻撃魔法を飛ばし集中攻撃を浴びせてアシャンティをサポートした。崩れる身体は白魔法の効果を受けた事もあり、不気味な煙を纏わせながら船へと沈む。
 それを見たクリスは竪琴の調べを止め、船体の縁へと寄って勝利の様子を目に入れた。


「やったー! アシャンティさん仕留めたんですね!」
「お前達はまだやるか!?」


 残っている冒険者崩れの者達へとアシャンティは声を掛ける。
 優劣はもはや明白。自分達の命が惜しい者達は武器を捨て、海賊達に囲まれながらその手を持ち上げて降伏宣言し、自ら拘束を望んだ。



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 無事、ルーアブルーを騒がしていた海賊達を捕らえたアシャンティはギルドへと報告し約束通り報酬を受け取った。
 それを協力してくれた仲間達に分配するためにパリの酒場シャンゼリゼに足を運ぶ。待ち合わせていた面々に報酬が詰まった小さな袋を手渡すと、彼らはそれを確認したあと懐の中に仕舞い込んだ。


「いやー、それにしても助かったよ。皆ありがとう!」
「皆が無事でよかったわ。結構海賊の人達が怪我をしていたみたいだけどそこはエルディンさんが回復してなんとかなっていたみたいだし」
「ふふーん、僕だって皆の士気を高めたり、色々頑張ったんだよ〜♪」
「まあ神に仕える者として当然の行いです。死者が居なかった事だけが唯一の救いですね」
「皆、逃げる事だけは慣れているからな。自分の命が惜しければ致命傷を喰らう前にすぐ海に飛び込む」


 アシャンティの言葉に、三人はぷっと息を噴出し笑いあう。
 報酬も入ったということで食事もそれなりに豪華なものを注文し腹を満たしていく。談笑し、過ごす時間も穏やかである。
 さて、結果としては例の海賊達を退治したと言う事で、商船がむやみやたらと襲われることは無くなった。噂もやがて鎮火し、また平和な時が戻ってくるだろう。
 残った掟破りの海賊達は法によって裁かれるのみ。


「では私はまたこの国の平穏の為に神に祈りを捧げましょうか」


 冒険者から再び神父の顔へと戻ったエルディンがそう宣言し、笑顔を浮かべながら両手を組んで祈る。
 運ばれてきた料理の数々に手を付けながら、残りの三人もそっと微笑んだ。









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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【ec2152 / アシャンティ・イントレピッド / 女性 / 29歳(実年齢58歳)/ ナイト / 海賊】
【ea2004 / クリス・ラインハルト / 女性 / 25歳 / バード / 吟遊詩人】
【ea3502 / ユリゼ・ファルアート / 女性 / 27歳 / ウィザード / 薬草師】
【ec0290 / エルディン・アトワイト / 男性 / 33歳 (実年齢99歳) / 神聖騎士 / 神父】


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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、冒険発注有難う御座います!
 今回はイベント発注と言う事で嬉しく思います。


■アシャンティ様
 こんにちは、発注有難う御座いました!
 海賊討伐のお話と言う事で最後のボスとはやはり戦って頂かないと! とリーダーをお任せ。そのままトドメをさして頂きました。


■クリス様
 いつもながらサポート有難う御座います!
 バードで士気上げるって実は凄く重要ですよね。あとは育児の件とか懐かしくおもいながらプレイングを読ませて頂きました^^


■ユリゼ様
 今回はメイン戦闘+サポート有難う御座います。
 ドラゴンに乗って魔法を飛ばす姿はさぞかし麗しいだろうなとほっこりしつつ。範囲魔法怖い怖いと内心思っていたり(笑)


■エルディン様
 お疲れ様でした! さすが司祭。支援系が強いです。
 対デビルということでしたので、皆の回復・補助担当となり、決め台詞も格好良く……出来ていたらなと思ってます!
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2012年11月02日

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