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『ファミレスな日々 』
川添・久美子6239)&ウェンディ・ベイカー(8349)&(登場しない)

1.割と忙しい日

近所のファミレスで働き始めたウェンディ・ベーカー。
昼間のシフトは、ベテランの川添・久美子と一緒に入って、色々教わる日々が続いている。
「先輩!
 無理です!」
ある日、ウェンディは泣き言を言った。
彼女が働いている、某ファミレスでの出来事である。
「確かに無理ですけど、無理じゃありません。
 がんばってください!」
バイトのリーダー、久美子は泣きながら答えた。
たまに、こういう日がある。
妙に客が多い日だ。
とある平日の昼間、バイトのシフトは、久美子とウェンディの2人だけだった。客は、店内を埋め尽くし、待ち客まで発生している。
平日の昼間としては、不思議な光景である。
「ほら…昨日、雨だったでしょ?
 だから、隣の小学校の運動会が延期になったのよ、多分」
「ええ、それはわかるんですけども…」
久美子の言葉に、ウェンディは泣きながら言葉を続ける。
「お客さん、多すぎです…」
「暇な日もあれば、忙しい日もあるのよ…」
店内の客を見ると、子連れの家族客が多い。ファミレスなんだから当たり前だと言えば当たり前だが、体操服姿の子供が多く、そもそも普通なら子供は学校に行っている時間だ。
確かに、久美子の言う通りだが、ウェンディは、そんな事はどうでも良かった。
ウェンディは、先ほどからテーブルの後片付けに余念が無い。というより、それしかして出来なかった。
テーブルの後片付けをしない事には、次のお客様が入れないので、大事な仕事であるが、切りが無かった。
久美子の方は、さらにそれ所ではなく、その他の仕事を全て行っていた。
注文取りや配送、テーブル待ちの客の案内まで、一人でやっているのだから、大したものである。
…しかし、ほんとに客が多いわね。
家族連れの待ち客を案内しつつ、久美子はため息をついた。
案内している待ち客は、家族連れ。小学生と思われる男の子は、体操服姿で、お父さんとお母さんに連れられていて、いかにも運動会帰りという感じだ。
賑やかな店内を、久美子は笑顔で回っていた。
ガシャーン!
そんな店内に、派手な金属音が響いた。
後片付けの途中、ウェンディが食器をひっくり返したのだ。
食器は落として割れる素材では無いが、さすがに床を掃除しなくてはならない。
「あ、えーとー、、すいません! ごめんなさい!」
「ウェンディちゃん…とりあえず、あわてないで片づけてね」
あわてるウェンディに、久美子は言った。
周りの客の視線も、微妙に集まっている。
「おばちゃん、泣かないで…」
小学生Aが、久美子に言った。
「大丈夫ですよ、泣いてませんから。
 あと、おばちゃんじゃなくて、お姉さんです」
久美子は泣きながら答えた。
忙しい日は、こんなものである。

2.割と暇な日

ウェンディ・ベーカーが近所のファミレスで働き始めてから、少しの時間が過ぎた。
まだまだ、慣れない日々が続いている。
教育担当のような感じになっている川添・久美子も、まだまだ教える事が多いが…
「先輩…暇です。
 仕事下さい…」
ある日、ウェンディは泣き言を言った。
彼女が働いている、某ファミレスでの出来事である。
「仕事はありません…
 あたしも暇です…」
バイトのリーダー、久美子は泣きながら答えた。
平日の昼間は、割と暇な事が多い。
ファミリーレストランの語源とも言える家族連れの客は、平日の昼間には、それ程居るはずが無い。
だが、それにしても、客が来ない日もある。
ウェンディは昼過ぎにシフトに入ってから2時間ほど、まだ客の姿を見ていない。
とりあえず床のモップ掛けをしているが、それもそろそろ飽きてきた。
「忙しい日があれば、暇な日もあるのよ…」
モップ掛けをしているウェンディに、久美子は声をかける。
彼女は彼女で、テーブル磨きに余念が無い。と言うより、他にやる事を思いつかない。
「そりゃ、そーですけど…」
ウェンディは、ため息をつきながら答える。
少なくとも1時間以上は、モップ掛けをしているウェンディだ。
窓の外を見ると微妙な曇り空だ。
もっとも天気が良かろうと悪かろうと、人は道を歩いているわけだが、久美子とウェンディが護るファミレスに入ってくる者は居なかった。
「忙しい日があれば、暇な日もあるのよ…」
「そーですねー…」
久美子の言葉に、ウェンディは、ため息をつくしかなかった。
その後、お客様がやってきたのは、それから30分ほど後の事だった。

3.割と普通の日

ウェンディ・ベーカーがファミレスで働き始めてから、数週間が過ぎた。
忙しい日があったり、暇な日があったりしながら、しばらくの時間が流れた。
数週間もすると、ウェンディもバイトに慣れてきた。
呼び出しのベルに呼ばれて、テーブルへと向かう時にも、店員用にテーブル番号を表示する為の電光掲示板を見なくても、行けるようになってきた。
余裕がある時なら、店内を見回して、誰がベルを押しているのかわかるようになってきたのである。
「ご注文、お決まりでしょうか?」
今日もウェンディは、慣れた口調と手つきで注文を取っている。
「どう、そろそろ、お仕事慣れてきた?」
厨房に注文を伝えに行くウェンディに、久美子が声をかけた。
「はい!
 結構慣れてきたような気もします!」
ウェンディは、元気に頷いた。
そろそろ働き始めてから一ヶ月になり、彼女の最初の給料日も近づいてきた。
忙しい日もあれば、暇な日もあり、普通の日もある。
そんなファミレスのバイトの日々は、まだまだ始まったばかりだ…
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東京怪談
2012年11月05日

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