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『+ ミッション・お料理教室! + 』
鬼田・朱里8596)&桐生・出流(8626)&久能・瑞希(8627)&(登場しない)



「では参りましょうか」
「瑞希、心の準備は良いか」
「おう、うちはいつでもオッケーやで!」


 そう意気込んで親指をぐっと立てるのは久能 瑞希(くの みずき)。
 別名、アイドルグループ「Mist」のリーダー、バーミリオンである。そしてその彼を取り囲んでいるのが同じメンバー仲間であり、現在同居人でもあるアッシュこと鬼田 朱里(きだ しゅり)とシアンこと桐生 出流 (きりゅう いずる)であった。
 先程まで彼らがいたのは自分達が属するアイドルグループの事務所。
 そこで彼らが与えられた今回のミッションとは『瑞希に料理を教える事』であった。
 元々一人暮らしをしていた瑞希なのだが、その当時は外食、もしくはいわゆる粉物――お好み焼きやたこ焼きなどと酒でなんとか誤魔化して暮らしていたらしい。


 だが今の彼は一人暮らしではない。
 同居人がいるお陰で健康的な生活が送れるようになったとは言え、色々と問題が起こっているのも事実。――と、言うわけで現在彼らは自分達の住居のキッチンにて三人三様のエプロンを着用し、事務所から帰ってくる際に購入した野菜類を前に『瑞希にまともな料理を教えよう』計画を実行に移したのである。
 今回ばかりは喧嘩仲間である朱里と出流も結託し、瑞希に料理の基礎から叩き込む気満々であった。そして当人である瑞希もやる気満々でまな板を敷き、包丁を握ったわけだが――。


「瑞希、包丁の持ち方怖いです」
「え、包丁って持てたらええやん」
「その持ち方はただ『握ってるだけ』だろ!」
「えー、うち今までこれで材料ぶったぎってきたのにー」
「だから今まで瑞希が料理当番の時に出たお好み焼きとかたこ焼きは材料が大きかったんですね!?」
「均等に切るのめんどーやねん」
「まさか持ち方から教えなければいけないとは……、こうだ、こう」


 瑞希は柄の部分を片手で握る形で目の前に置いた人参を切ろうとする。
 しかしそれを朱里が指摘し、出流が呆れたように別の包丁を持ち出しお手本として握り方を教えてやる。しぶしぶと言った感じで瑞希も出流の教えに倣い、持ち方を変えるが今までとは違う感覚に違和感を覚えて仕方がない。だが、ここで躓いていても先には進まないためさっさと皮むきに入ろうとするが……。


「あ、無理。皮剥くとか出来ん。学生んときに使った皮向き用のピーラー出して」
「包丁の使い方の練習をしているので駄目です」
「粉物は確かに皮を剥かない材料ばっかりだな」
「やろ? 超簡単、お手軽やねん!」
「嬉しそうにしてないで、さっさと剥いてください!」
「剥き方はこうだ。こうやって指で野菜を支えて……」
「おー、さすが慣れてる人はちゃうなー」


 手早く出流が手本を見せ、しゅるしゅると人参の皮を剥いていく。
 それを見て両手を合わせようとした瑞希を慌てて朱里は避ける。なんせ今の彼の手には包丁。その事をすっかり忘れて拍手しようとすれば当然周囲の人間が危ないわけで。
 朱里は己の頬の筋肉がひくっと引きつるのを感じる。毒舌を吐きそうになるが相手が相手だ。いつも色々とお世話になっている相手でも有るし、ここはぐっと堪える事にした。
 とりあえず瑞希もまたお手本を参考に皮を剥き始める。
 しかし刃を入れる向きが深すぎたため皮は非常に分厚く剥け始めた。まあ、そこは最初だからと二人は黙って見守っていたのだが。


「なあ、皮むき終わらん」
「一周したら手を止めて下さい!」
「……どうして皮自体は切れずにまだ綺麗に剥けているのに皮むきを止めるタイミングが分からないんだ」
「え? 自然と終わるもんやないの? さっき出流はすっと終わってたやん」
「最後に角度を変えて終わらせたんだ!」
「ほー。じゃあ、ぶちっと切って終わろっと」
「見事に分厚い段差が出来て……」
「……もう既に頭が痛い」


 歪な形をした人参は非常に細くなり、むしろ剥いた皮の方が質量が大きいのではないかというほど。だが、一応剥けたからには妥協点として二人は先に進むことにした。人参は本数で何とかフォローし、材料を刻んでいく。
 続いてジャガイモも同様に皮むきをさせる。流石に人参よりかは皮は目に見えて分かりやすいだろうと二人は考えて見守っていたが――お決まりというかなんと言うか、皮はともかく今度はジャガイモの芽の部分を掘り出すのに包丁の先端で抉ろうとし始めた。


「そこで芽を取るんじゃありません! ここです、ここ!」
「えー、ピーラーん時は専用のちょっとした窪みがあったのにー」
「今はピーラーじゃなくって包丁を使ってるんだ。ここを使って、こう、掘る」
「へー、角使って掘るなんて初めて知ったで」
「料理番組とか見てないんですか……」
「バラエティ番組内の企画やったら見てるけど、どっちかっていうと出来上がった料理の方に記憶力は注がれてんねん。料理中はどうでもええわ」


 瑞希の言葉に二人は脱力しそうになる。
 朱里は肩をおとしてがっくりと。
 出流は額に手を当てて、天井を仰ぐ。
 だが教えればなんとか覚えていくため、二人は根気強く野菜の切り方を教え続けた。本当に包丁で指を切らなかったことだけが唯一の救いである。


「たまねぎってどこまで剥くん? 剥いても剥いても終わらん」
「適度なところで止めてください!」
「う、切ったら涙出てきた……たまねぎ嫌い」
「って放棄しない!」
「やだー。うちこれやんのいややわー」
「たまねぎは素早く切れば目に刺激は来ないんですよ」
「うちがトロいっつーことか」
「きっぱりはっきり言うとそういう事だ」
「即答でばっさり切られたー……めっそー……」


 時間が掛かっているためにたまねぎ切りの際にはえぐえぐと涙を零しながら瑞希は頑張って教えられたとおりに二、三枚皮を剥いてから不要な部分を切り落とし、それを半分に切ってから均等に包丁を入れる。手の添え方も最初は危なかった瑞希だが、この段階になると流石に指先を丸める手――いわゆる『猫の手』と表される形で何とか切る事が出来始めていた。
 だが均等という言葉がやはり難しいらしく、同じ幅で切ろう切ろうとすればするほど時間がかかり、瑞希の目にはもう涙しか浮かばない。視界も悪くなり、手元が震え始める。これには慌てて二人は止めに掛かり、一旦涙を拭わせた。


「材料刻みは一旦止めて、次は米を炊きましょう。それが終わったら材料の続きと言う事で」
「うー、りょうかーい」
「米を炊くだけなら簡単だから、そうそう間違えないだろう。あと少しだ。頑張れ」
「ファイトー、うちー!」


 瑞希は自身の目元を押さえていたタオルを何とか外しながら自分に応援の声を掛ける。
 計量方法だけは朱里と出流二人でしっかりと見張り、やり方にも逐一指示を入れながらまずは直接炊飯器に入れるのではなく、やり易いようにボウルを使わせる事にした。
 だが、ここでまたしても瑞希はとんでもないことをやらかす!!


「瑞希、何で米研ぐのにハンドミキサーを使う!?」
「なんでって、かきまぜて洗うって言われたからやけど」
「手で洗うんですよ、手で」
「やーん、手ぇ荒れるやん」
「男の手で何を言うか。女性でもやっていることだぞ?」
「しゃーない。じゃあ洗うか。洗うにはこの洗剤を使ってー、っと」
「「 待てー!! 」」


 ハンドミキサーを持ち出してきたかと思えば次は台所用洗剤を手にする瑞希に朱里と出流の制止の声が掛かる。
 止められた瑞希に至ってはきょとんっと目を丸めて二人を見返すばかり。
 彼の視線は「なんで? 洗うんやったら洗剤やろ?」と無言の訴えをしてくるが、二人はそれはもう普段の喧嘩っぷりを忘れるほどの勢いでそれに対して強く「NO!」の意思を示した。意気投合な二人を見て瑞希は嬉しそうに微笑むが、その笑顔がまた二人を脱力させてしまうわけで……。


「こんな調子で一体今までどうやって一人暮らししてきたんですか……」
「基本外食。どうしても作らなあかん時だけ粉物、もしくは適当に買っておいた酒のツマミとかで頑張ったんや! どや!」
「いい顔で言われても誰も褒めないぞ」
「えーなんでーな。頑張った事には褒めてーな」
「褒める要素がどこにもありません」
「朱里に同意」
「ちえー」


 料理の腕が悪い事は今までの流れでそれなりに自覚した瑞希は唇を尖らせて拗ね始める。
 感情豊かなのは瑞希の特徴でもある。それが彼の売りでもあり、ムードメーカーでもあるのだから。
 だが、しかし現状それを受け入れて甘く接する事は今後の食生活に関わってくる事なので、二人はぐっと堪えて厳しく指導に当たる事にする。
 朱里は残り一人の同居人に粉物以外を食べさせたら危険と考え、出流は瑞希を純粋に心配しているという理由から更に料理指導は続く。
 米の研ぎ方、水の量り方、炊飯器の扱い方諸々……それはもう二人は頑張った。瑞希がなにか変な方向に脱線しようとすれば素早く突っ込み軌道修正に入る。


 ―― そして幾許かの時間が経ち。


「よっしゃ! 初めて粉物(コナモン)以外の料理が出来たでー!!」
「初心者にありがちな間違いは多々ありましたけどね」
「わたくしと朱里は疲れと……奇妙な友情が生まれましたよ」
「仲良い事はええことやん」
「「 出来れば遠慮したかった(です) 」」


 ゆげを立て炊き上がりを示す炊飯器と良い匂いが漂う鍋を前に瑞希は両手を振って大喜び。
 作ったものは初心者向けの定番料理、カレーである。味付けだけは流石に怖かったため市販のカレールーを使うという事で危険を回避したが、それでも初めてまともに作れた料理に瑞希ははしゃぐ。


「学生時代にグループメンバーにみーんな押し付けてたツケが回ってきたって感じやったわ。ありがとな」
「いえいえ、これでなんとか形になったなら良いです」
「これで事務所に言われていた料理バラエティ番組に出てもいきなり包丁を振り下ろしたりはしないだろう。良かった」
「ホンマにおつかれさーん!」


 瑞希は片手を挙げて礼の意思を述べる。
 やれやれというように二人は顔を見合わせ、肩を竦めた。


『 ミズキの料理スキルが上がった
  ミズキはレベルアップした
  イズルとシュリの友情がアップした 』


「で、これ今日の夕飯になんの?」


 初めて作った料理を食べてもらえるかどうかそわそわと瑞希は心を揺らしながら――今はただ純粋に犬のような目を二人に向け、その返答をただただ待っていた。







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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【8596 / 鬼田・朱里 (きだ・しゅり) / 男 / 990歳 / 人形師手伝い・アイドル】
【8626 / 桐生・出流 (きりゅう・いずる) / 男 / 23歳 / アイドル・俳優】
【8627 / 久能・瑞希 (くの・みずき) / 男 / 24歳 / アイドル・アクション俳優】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、三人での発注有難う御座いました!

 今回はお料理教室と言う事で、こんな感じで。
 瑞希様のまさかの料理下手設定にびっくり。意外と男の料理的なものを作るとばかり思っておりました。
 朱里様と出流様の友情もアップしたようで何よりです(笑)ではでは!
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年11月08日

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