▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『愛とか恋のトルネードポテト 』
クレアクレイン・クレメンタイン8447)&リサ・アローペクス(8480)&(登場しない)
通称「悪いインターネット」。
良くも悪くも人のホンネが覗ける掲示板に、ひとつの質問スレッドが立った。

タイトル:嫁が怪人になったのですが
本文:
吃驚!
帰ったら嫁が怪人の姿で出迎えるんです! つか怪人なんです!
自慢ですが俺の嫁はかわいいし気も利くしコスプレマニアです。
そんな嫁がよりによって怪人になってしまいました。
どうすれば元のかわいい嫁に戻ってくれるでしょうか?

通りすがり:「ツマンネ」
七氏:「新しいコスプレに目覚めただけじゃねw」
なまえをいれてください:「ひょっとしてとは思いますがその嫁というのはあなたの想像上の(以下略)」

「うぁぁぁぁぁ」
モニターの前でクレアクレイン・クレメンタインは頭を抱えた。
クレアの嫁が怪人になったのは本当なのだ。
広いインターネット上なら自分と同じ悩みを持つものがいるかも、という気持ちから投稿した質問がネタ扱いされている。
クレアは涙目でコメント欄をスクロールする。
「本気と書いてマジと読むくらい本気だってばよ」
クレアの手が一つの書き込みで止まる。
書き込み主の名前に見覚えがあったからだ。
クレアは真剣な表情でその書き込み内容を読み、つぶやいた。
「行くか、ニューヨーク」

ニューヨーク郊外。
高級住宅地にある書き込み主の家の前にタクシーで乗り付けたクレアは、芝生から家に続くアプローチの遠さを見て溜息を漏らした。
(アメリカン……っていうか庭広っ! 家遠っ!)
両手を打ち合わせて気合を入れ、庭に踏み出す。
(ゴールデンレトリバーとか飼ってそうだよな……セントラルパークに毎日散歩に連れてったりしてさ……名前はジョンとかそういう……)
手入れされた芝生は、スプリンクラーで放水されている。
(旧きよきアメリカ黄金時代を踏襲しつつ、革新的な考えも積極的に取り入れる。アルファブロガーとして大事なのはバランス感覚、か)
クレアは玄関のブザーを押した。

柔らかな光が差し込む書斎に通されたクレアを出迎えたのはアルファブロガーにしてクレアの質問に真摯な回答を寄せた人物だ。
落ち着いた表情でクレアに右手を差し出す。
「よく来たね」
クレアは握手に応えながら言う。
「お義父さん……、です、よね……?」
お義父さんと呼ばれた人物はクレアに笑顔を返す。
「君の話は娘から聞いているよ。まあ、掛け給え」
クレアは示されたソファーにそろりと腰を下ろし、向かいの人物を観察する。
すらりとした長身。手入れのよい金髪。柔らかな物腰。
そして、どう見ても、女だ。

(そういう業っつーか、DNA的な何かがあるのかよ……)
クレアクレイン・クレメンタインの精神は鶴橋亀造である。
向かいの義父、リサ・アローペクスも何かの事情があり義父にして女性なのだろう。
(そこに突っ込むと長くなりそうだよな……)
クレアは義父が女性にしか見えないことを追求するのは止めることに決め、口を開く。
「む、娘さんを真人間に戻してくれる方法があるって本当ですか?」
リサはゆっくりと頷く。
「ああ……ただし時間がかかる」
クレアは再び顔を上げたリサを正面から見返す。
「それならば、待ちます」
クレアの発言に、リサは眉根を寄せる。
「どの位?」
「え……」
クレアはリサの質問の意図がわからず、口ごもる。
「例えばバラエティ番組の引きならCM明けまで待てばいいだけだ。カップめんなら3分間待てばもう食べられる。しかし娘はそんなお手軽な状態にいるわけではない。君は待つ、と言った。どのくらいの時間を想定して待つ、と言っているのか。それが知りたい」
(意味わかんねーし、面倒くせー! ネタで返すべきなのか、あくまで真剣だってスタンス貫けばいいのかもわかんねーし!)
クレアは探るようにリサを見る。
リサも黙ったまま、真っ直ぐにクレアを見返す。
そよ風を受けカーテンが小さく揺れている。
芝生用のスプリンクラーが放水している音が小さく聞こえる。
二人はただ、お互いを見ている。

先に沈黙を破ったのはリサの方だった。
突然立ち上がったリサは怯えた表情で後ずさる。
「そこ、そこに!」
リサが指差した先には大型のゴキブリ。
クレアはああ、とゴキブリに近づき、あっさりと仕留める。
「つい殺っちゃいましたけど、これ」
クレアは始末について家主の指示を仰ごうとリサのほうに向き直る。
リサと視線が合った瞬間、クレアの中の肉食系男子の勘が告げる。

今ならリサを落とせるぞ、と。

クレアはその勘に従い、行動することにした。

夕暮れのマンハッタン。
足早に家路に向かう人々と車のラッシュの中、クレアとリサはゆっくりとした足取りで歩いている。
川辺で寄り添うようにベンチに腰掛けた二人の前に、立ちふさがる影があった。
「あんたたち」
リサが目を見開く。
「おまえ」
クレアが驚きの声を上げる。
怪人がクレアの胸倉を掴む。
「亀造! あんた」
「いいえ! 私はクレアクレイン・クレメンタインでぇす!」
クレアは裏声で亀造であることを否定する。
「クレアでも亀造でも、あたしの婿でしょうよ!」
怪人は逆の手を振り上げる。
リサはクレアと怪人を交互に見ながら言う。
「これが私の娘なの?」
怪人はリサを一瞥し、宣言する。
「ええそうよ。あとこの件はお母さんにも伝えといたからね!」
遠くから土ぼこりを上げて突進してくる女性の姿が見えた。

<了>
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
稲庭ちぐら クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年11月12日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.