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『次の殲滅へ 』
白鳥・瑞科8402)&(登場しない)

1.新調

戦闘シスターの日々は、わずかな休日を挟み、訓練と任務の繰り返しが果てしなく続いている。
今までもそうだったし、これからも、そうであり続けるのだろう。
瑞科にとっては、それが日常となっていたし、特に苦痛と思う事も無くなっていた。
そんな瑞科のささやかな楽しみの一つは、新しい仕事着…戦闘服の新調だった。
…まあ、スカートは難しいですわよね、常識的に考えて。
前回の休日、ブティックで見かけたスカートをイメージした戦闘服の新作を頼んでみたのだが、残念ながら却下されてしまった。
少し失意の瑞科に届いた戦闘服は、相変わらずのボディスーツだった。
体にピッタリと張り付くように寸法が計算されていて、腰下まで深くスリットが入ったデザインは嫌いではない。
瑞科の豊かな胸の上半分が露わになるコルセットも、動きやすくて良い。
結局、いつもと全く同じデザインなわけだが、機能と見た目を追求した完成されたデザインなので、仕方ないと言えば仕方ない。
…素材は変えてくれたみたいですわね。
明らかに軽くなった事が、着た瞬間から感じられた。
少し触った感じ、素材の強度も増しているようである。
これについては瑞科は満足だった。
休日も終わり、教会の一室で新しい戦闘服に身を包む瑞科には、次の訓練までの訓練の日々が待っていた。

2.訓練

ボディスーツに身を包んだ若い女が数人、広い部屋に居た。
教会の空き部屋…よく訓練に使われる一室だ。
彼女たちは二組…というか、瑞科とそれ以外全員に分かれている。
戦闘シスターたちの訓練会場だ。
特に任務に向けたテーマも無いので、今日は仲良く乱取りで反射神経その他の基礎トレーニングである。
室内に居るのは瑞科を含めて四人。いずれも任務待ち中の戦闘シスターばかりだ。
単純に一対一の乱取りだと、瑞科と他の者たちで能力に差がありすぎるので、乱取りの際には数人がかりというのが、いつものやり方である。
常に一人で任務をこなす瑞科は例外として、戦闘シスターたちはチームで任務をこなす場合もあるので、そういう意味では何人かで組んで乱取りをするのも良い訓練となる。
…任務より、皆様と訓練をする方が、余程退屈しのぎになりますわね。
左右から微かにタイミングをずらして襲いかかる、二人のシスターの拳を避けながら、瑞科は微笑んだ。
名前だけの悪の組織やら、見栄えだけの魑魅魍魎よりは、同僚の戦闘シスター達の方が余程手強い相手だ。
何より彼女たちは、じゃんけんだったらたまには瑞科に勝てる程の反応速度をしている。それ位の手応えが任務にも欲しいものだと、瑞科は思っている。
とはいえ、じゃんけんでたまに勝てる位の反応速度では、乱取りで瑞科に触れるのは数人がかりでも不可能に近かった。
逆に瑞科からしてみると、それでも同僚の戦闘シスターたちの動きはスローモーションのように見えるので、瑞科から攻撃を仕掛けても訓練にはならない。なので、専ら訓練の間中、瑞科は避けに回っていた。
軽く、小一時間ほど、瑞科は攻撃を避け続けるだけという一方的な乱取りは続いた。
瑞科は手足を使って受ける事も無く、三人の同僚の技を避け続けた。
「それでは、そろそろ休憩になさいますか? 皆様、お疲れのご様子ですし」
涼しげに振る舞う戦闘シスターたちの頬にもうっすらと汗がにじみ、疲れが顔が出ていた。
瑞科の言葉に、同僚の戦闘シスターたちは、やれやれと動きを止めた。
教会内にこっそり設けられた売店で飲み物を買って、戦闘シスターたちは一休みである。
「瑞科さんには、なかなか触れませんわね…」
「やっぱり、瑞科さんは何かの強化人間やサイボーグなのではありませんか?」
などとぼやいている戦闘シスター達も、小さな組織位なら一人で壊滅させる事が出来るような娘たちではある。
「いえいえ、そんな事はありませんわ。
 この前もじゃんけんで負けましたし、皆様とそれ程違わないと思いますわよ?」
特に悪気も無く、瑞科は涼しげに答えた。
任務の合間…いや、これも任務の一環とも言える訓練の日々は、戦闘シスターたちのありふれた日常だった。

3.そして次の任務へ…

数日後の夜。
戦闘服姿の瑞科は膝を曲げて、軽く屈伸をした。
柔らかいが破壊兵器でもある彼女の肉体が、ボディスーツの感触を確かめるようにうごめいていた。
闇に紛れて、次の殲滅任務へと向かうのだ。
世界で一番強いと、うぬぼれているわけではない。
だが、不思議と任務へ向かう時には、失敗するというイメージは全く無かった。
実際に今までも、苦も無く任務をこなし、虫けら程の手応えしかない魑魅魍魎達の屍の上に腰を降ろして、勝利の優越感に浸ってきた瑞科である。
…今日の魑魅魍魎も、わたくしの椅子位にはなってくださるかしら?
せめて、それくらいの原型は留めてくれる相手である事を願いつつ、瑞科は任務へと旅立った。
その顔に浮かぶ微笑みからは、自分の圧倒的な力に対する余裕しか感じられない。


(あとがき)
連作での発注をありがとうございます。
お待たせしてすいません。
また、機会がありましたら、宜しくお願い致します。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
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東京怪談
2012年11月15日

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