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『懐かしいあの人と… 〜ギィネシアヌ〜 』
ギィネシアヌja5565

 ハロウィンは死者がこの世に戻って来る日――。
 あなたに会う為に仮装して戻って来た亡き人に、あなたはどんなふうに接するのでしょう?


☆楽しもう! ハロウィン祭り♪
 夕暮れ時、ハロウィン祭りが行われている街に、魔女っ子になったギィネシアヌ、海賊になった百々清世、鈴を付けたジプシーになった大狗のとうの三人が訪れた。
「街中がお祭り騒ぎであるな…。よしっ、遊ぼうぜ!」
「遊ぶのは良いけど、あんま走るとコケちゃうよー?」
「ハロウィンだー! みんなでお祭り、楽しいな♪ このチリリッと小さく鳴る鈴付き仮装はお気に入りだし、二人の仮装も…やーん! 素敵すてきっ!」
 ギィネシアヌと清世を見るのとうの瞳がキラキラと輝くのを見て、二人は苦笑する。
 出店を見て歩くうちに、ギィネシアヌが一軒の出店に眼をつけた。
「おっ、あそこにフランケンなおじさんの出店はっけーん! のとちゃん、ももおにーさん、行ってみようぜ!」
「行ってみようなのだ!」
「二人とも、走って行かなくても出店は逃げないよー…って聞いちゃいないか。元気だねー」
 こうして三人はまず、フランケンシュタインの仮装をした中年男性の出店へ向かう。
 売り物はお菓子で美しいものから可愛いもの、またお菓子とは思えないほど変な形と色をしたのまで並んでいる。
 それらを見た三人の顔は引きつり、また顔色も微妙に悪くなった。
「…値段は普通だが、味の説明が一切無いんだな…」
 ギィネシアヌの言うように値札は貼られているものの、何のお菓子なのかパッと見は分からない。他の客が説明を求めても、フランケンシュタインは意味ありげに笑って首を横に振るだけ。どうやら買って食べてのお楽しみらしい。
 その様子を見て、ますます清世の顔色が悪くなる。
「スゴイ形と色のがあるけど……本当にコレ、食べれるの?」
「ぎっギィちゃん、ももちゃん、三人で『いっせーの!』で選ぼうなのだ!」
「よっよし! のとちゃんの言う通りにやってみようぜ。ももおにーさんの奢りで!」
「マジでっ!? …って言うか君ら、ホント勇気あんね」
 アレコレ見た後、三人は「いっせーの!」でそれぞれ一つずつお菓子を選び取る。そして清世が支払いを済ませた後、三人は店の前から離れた。
 ギィネシアヌが選んだのは小さなモンスターの顔をした丸いお菓子。緑色の顔に、紫色のドレッドヘア、赤い両目と口が付いている。
「人間が口にしちゃいけない色合いをしているぜ…。おっ俺は魔族(設定)であるからして、食べても大丈夫なんだ!」
「山田ちゃん、顔色悪いよ? おにーさんは普通に美味しそうなのを選んだ」
 清世の手には、星型のスナック菓子入りの紙コップがあった。しかしスナック菓子には赤い粉がかけられている。
「きっ綺麗なのを選んだにゃ。それじゃあ食べてみようにゃ!」
 のとうは赤い鳥の形をした棒付き飴を、手に持っていた。
 そして三人は一斉に、お菓子を口の中に入れる。
「んっ…おっ、ウマっ!?」
 ギィネシアヌのお菓子の正体はケーキ。緑色の顔は抹茶で、紫色の髪はサツマイモクリームを紫の着色料で色付けしたもの、赤い両目と口は飴細工だった。サツマイモと飴の甘さ、抹茶の渋さが口の中に程よく広がり、ギィネシアヌの表情が自然と笑顔になる。
「俺のは辛いっ! むっむせる! 喋れねぇ!」
 清世のはハバネロパウダーが練りこまれて作られたスナック菓子で、その上にかけられた赤い粉もハバネロパウダーだった。清世の眼と顔がどんどん真っ赤になっていき、吐く息も熱いものへと変わる。
「ぎゃわわわっ! かっらぁ! 辛いーっ! …あっ、眼に浮かんでいるのは涙じゃないよ? なっ泣いてないぞ! うん! コレは汗だから!」
 そしてのとうが食べたお菓子は、唐辛子の飴だった。飴を赤の着色料で色付けし、唐辛子の粉をたっぷり混ぜたもの。強がって見せるのとうだがその顔色は赤く、眼にはしっかり涙が浮かんでいる。
「ふっ二人とも、ちょっと待ってろ! 今、甘い飲み物買ってくるから!」
 あまりに二人が苦しむのを見て、流石に気の毒に思ったギィネシアヌは出店からマロンラテを購入し、二人に飲ませて落ち着かせた。
 結果、見た目が普通な物や綺麗な物ほど辛い味をしており、見た目が悪いお菓子ほど美味しい物であることを、三人は身をもって知ったのだった。


★三人、離れ離れになり…
「…アレ? 二人とも、どこに行った?」
 気付けば一人になっていたギィネシアヌは、キョロキョロと周囲を見回す。そんなギィネシアヌの背中を、ポンッと叩く者がいた。
 はぐれた二人かと思って振り返ったギィネシアヌの眼に映ったのは、猫の仮面に猫の尻尾を身に付け、浴衣を着ている五歳ぐらいの少女の姿。クセのある金髪を見て、どこからか漂ってきた地中海の香りを嗅いで、ギィネシアヌの古い記憶が一瞬にして蘇る。
「きみは…!」
「もしかして一人になっちゃったの? 一緒に来ている人が見つかるまで、わたしが一緒にいてあげる。だから泣かないで」
 差し伸べられた小さな手を、ギィネシアヌは溢れ出しそうな涙を堪えつつ握り締めた。――その手の小ささと冷たさに、少女と自分の『差』を嫌でも感じてしまう。
「…うん。じゃあせっかくだから、あたしの楽しい思い出話を話すね。…きみとお別れしてからの日々のことを」


「おー…。コレはヤバイ、か?」
 一人になった清世は気まずそうに頭をかく。
 少し前まで二人を後ろから見ていたのだが、ふとすれ違った可愛い女の子に視線を向けた後、再び前を見ると二人の姿は消えていた。
「まっ、二人とも迷子って歳でもねーし、女の子だけで楽しめる所にでも行ったのかもな」
 自分に言い聞かせるように呟き、清世は人ごみから出て静かな場所へと移動する。そしてタバコを一本吸って落ち着くと、再び祭り会場へと向かって歩き出した。
「まあ遠くには行ってねぇだろう。…多分」
 二人を捜す為に歩く清世の横を、猫の仮面をかぶった五歳ぐらいの少女が通り過ぎる。
 しかしキョロキョロと周囲を見回していた清世は、少女の存在に気付かなかった。


「ねぇ、ギィちゃん、ももちゃん。このパンプキンクッキー、美味しそう…って、アレ?」
 出店のお菓子を見ていたのとうはふと、二人の姿が見えないことに気付く。
「…はぐれちゃったのかにゃ? 何てこったなのだ! 迷子になった二人を、急いで捜さないとなのだっ!」
 慌ててのとうは人ごみの中に戻る。二人の姿を捜している途中で、浴衣姿の五歳ぐらいの少女とすれ違い、ふと足を止めて振り返った。
「今のコ……何か懐かしい感じがしたのだ」
 しかし懐かしさの原因が分からない。のとうは少女を追いかけず、ただその場に立ち尽くしていた。


★過去の友との別れ
 少女と手をつなぎ、様々なことを話しながら歩いていたギィネシアヌの眼に、自分達と同じように手をつないで歩く清世とのとうの姿が映る。二人とも心配そうな顔付きで、ギィネシアヌの姿を捜していた。
「あっ…二人とも、あたしを捜しているみたい」
「そっか。じゃあもうわたしがいなくても大丈夫だね」
 そして少女はスルッと手を離し、一歩後ろに下がる。
「ギィネは泣き虫だったから心配だったけど、もう平気?」
 ギィネシアヌは泣きそうになるのを必死に堪え、安心させるように笑みを浮かべて見せた。
「うん、もう平気。大事な人、いっぱいいるから。そしてあたしも誰かの大切な人になれていると思うから。大丈夫だよ」
「そっか…。ちょっと寂しいけれど…元気なギィネを見れて良かった。じゃあね」
 少女は手を振るとギィネシアヌに背を向け、走り出す。
「…バイバイ。あたしの最初のおともだち」
 そしてギィネシアヌも少女に背を向け、二人の元へと向かう。


☆そして再会
「おーいっ! のとちゃん、ももおにーさん!」
「おっ、見っけた」
「ギィちゃん、見ぃーつけたっ!」
 のとうは清世の手を離し、ギィネシアヌに駆け寄って涙ぐみながら抱き着く。
「ギィちゃんがいなくて、心配で不安だったのにゃ!」
「…ああ、悪かったな」
「もー、あんま心配させないでよ。……ん?」
 清世はそこで、ギィネシアヌがいつもとは違った雰囲気なことに気付いた。
 いつものギィネシアヌは強い自分を演じ、弱い自分を押し隠す。表では平気なフリをしながらも裏では必死になっていることを、清世ものとうも気付き、そして心配していた。
 三人がはぐれていた時間は短かったものの、ギィネシアヌの眼がわずかに赤く染まるような何かが彼女の身に起きた事は確かだ。しかし尋ねることは、ギィネシアヌも清世も望まなかった為に聞かないことにする。
 のとうは安堵の涙をギィネシアヌのハンカチでぬぐってもらった後、ようやく満面の笑みを浮かべた。
「さて、三人そろったことだし、手を繋いで行こうなのだ!」
「だな。二人の姿が見えなくなるとか、心臓に悪いし。人も多いから離れないよう手を繋ごうかー」
 ギィネシアヌはのとうと清世の間にはさまれ、それぞれ手を繋がれる。二人の手のぬくもりで、先程の少女のことを思い出す。
 少女はギィネシアヌがまだ自分のことを『俺』ではなく、『あたし』と言っていた幼い頃の友達だった。昔のギィネシアヌはとても泣き虫で、幼馴染であった少女は優しくてお茶面な女の子だった。
 二人はとても仲が良かったけれど、少女は病気で亡くなってしまう。凄く悲しくて寂しくて、ギィネシアヌは泣く日々を過ごした。だけど今は……。
「…紹介したいと思える友達がいる。そして元気でやっているからな」
 俯き、二人に聞こえないほどの小さな声で呟く。その顔に、穏やかな笑みを浮かべながら。
「とりあえず遊ぶかー。まだまだ出店はいっぱいあるしね」
「みんなにお土産を買わないとなのだ!」
「ああ、ハロウィンを楽しもうぜ!」
 ハロウィン祭りはまだ始まったばかり。出店もお菓子だけじゃなく、おもちゃやゲームのものもある。そしてパレードも行われ、明るい楽器の演奏や歌が会場をよりいっそう盛り上げた。
 はしゃぐ清世、のとう、ギィネシアヌの後ろ姿を見つめながら、少女は仮面の中で微笑み、天国へと戻って行った。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja5565/ギィネシアヌ/女/高等部2年/インフィルトレイター】
【ja3082/百々 清世/男/大学部3年/インフィルトレイター】
【ja3056/大狗 のとう/女/大学部1年/ルインズブレイド】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご依頼していただき、ありがとうございました(ペコリ)。
 三人のほのぼのしたストーリーを書かせていただき、楽しかったです。
 ほんの少し切ない部分もありますが、前に進む三人には力強さを感じました。
 三人の友情が末永く続くよう、祈っております。
ハロウィントリッキーノベル -
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エリュシオン
2012年11月21日

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