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『●夢にひきこまれて 』
野乃原・那美(ia5377)&川那辺 由愛(ia0068)
 はらり、はらりと紅葉が舞い落ちる。
 季節は初冬に入り、肌寒い日が続いている――だが、今日は日差しも暖かく、急ぎ足で春が訪れたかのようだった。
 猫のように目を細め、うっとりと日差しの暖かさを堪能しながら、野乃原・那美(ia5377)は目を閉じる。
 温かな川那辺 由愛(ia0068)の膝に頭を置き、まどろむ。
「ふわぁ、由愛さん眠いよ……」
 最早、半分以上夢の中に引き込まれているであろう那美。
 由愛が風邪ひくわよ、と告げるがこの日差しの前では無力――縁側には惜しみなく太陽の愛が注がれ、二人を温めている。
 ――たしなめる由愛の方こそ、目がとろりとして眠そうだ。

 二人が、夢の中に引き込まれるまで然程、時は掛からなかった。


「由愛お姉ちゃんあーそぼー♪」
 元気な声が聞こえてくる、何時も来る、近所に住んでいる可愛い妹分だ。
 慌てて、由愛はセミロングの髪を靡かせ家の中から出てくると、途端に抱きついてくる那美を抱きしめた。
 日差しは暖かいが、その小さな体は少しだけ冷たくなってしまっている。
 慌てて襟巻を持ってくると、その華奢な身体にかけた。
「もう。ちゃんと襟巻をしないと、風邪ひいちゃうわ」
 那美の方は5歳、由愛の方は14歳……今より10年も昔の事である。
 少し怒ったような口調に、那美は嬉しそうに笑うと襟巻を抱きしめた――綺麗な刺繍の施されたそれは、那美には少しだけ大人っぽい。
「うん、えへへ。ねぇ、由愛お姉ちゃん、今日は何して遊んでくれるー?」
「うーん、何をしましょうか? 那美は何がしたい?」
 首を傾げて微笑む由愛に、那美は少しだけ考えて……鬼ごっこ! と口にした。
「由愛お姉ちゃんが鬼だよ、僕、速いからね! でも、ちゃんと10数えてね!」
 パタパタと走っていく那美に、そんなに走ると危ないわよ、と由愛は声をかけた。
「へーきへーき!」
 仕方が無いわねぇ、と由愛が息を吐く……少しもじっとしていないこの妹分は、とても可愛らしいのだ。
「ひとーつ、ふたーつ、みっつー」
 大きな声で数を数える由愛、那美は四方を見回す……何処に逃げよう。
 真っ赤に燃える紅葉と、黄色く輝く銀杏、まだ緑が美しいのはツツジだろうか。
 遠くでは、由愛が『十』を数える声が聞こえてくる。
 その声に弾かれるようにして、那美は一気に赤い紅葉の群れへと駆けだした。

 由愛はパタパタと走っていく音を聞きながら、ゆっくりと紅葉の美しい場所へと足を向ける。
「那美は、どこかなー?」
 少しずつ、少しずつ距離を詰める……一気に見つけてしまえば、きっと那美は拗ねた表情で頬を膨らませるのだろう。
 かといって、見つけずにいればこれもまた、那美は拗ねてしまう。
(「ふふ、本当に可愛い――」)
 小さく笑みを零す……積もった枯れ葉を踏みしめながら、由愛はキョロキョロと視線を移す。
 ――ひょこ、と此方を見ている赤い瞳が二つ、那美だ。
 二人の瞳が、視線がぶつかった刹那――動いたのは那美、子供ながらの俊敏さで駆けていく。
「えへへ、負けないよ!」
「那美ってば、速いわ……!」
 直ぐに転ばないだろうか、などと心配してしまう由愛、そんな彼女の心も知らず、那美は紅葉を散らし、銀杏の葉を踏みしめ、駆ける。
(「あまり、遠くへ行くと危険よね……」)
 村から出ると、ケモノやアヤカシの類が出るかもしれない……そう思った由愛は、少しだけ足に力を込め、那美の後ろから優しく抱きしめた。
「捕まえたわ」
「あーあ、捕まっちゃった。由愛お姉ちゃん、速いよぉ」
 少しだけ意気消沈した那美の頭を撫でれば、すぐにきゃぁきゃぁと笑いながら那美は笑みを向けた。
 そして、思い付いたかのように手を差し伸べる。
「由愛お姉ちゃん、少し座って」
「……?」
 首を傾げる由愛に、那美が燃えるように赤い紅葉を由愛の髪に飾った。
 綺麗な漆黒の髪に、赤い紅葉が映える。
「由愛お姉ちゃん、大好きだから。あげる!」
 一番綺麗な紅葉なんだよ、と自慢げに笑う那美の頭を撫でながら、ありがとう、と由愛は微笑んだ。
 周囲を見回せば、木々は赤く、黄色く燃えている。
 少しだけ緑が残り、赤と黄色と、そして緑の色合いがとても美しい。
 ほんの少し、家より離れてしまったけれど……。
「今日は、此処で遊ぼうか」
「うん、わかった!」
 沢山の落ち葉から、綺麗な紅葉を拾ったり、銀杏の葉を那美の髪に付けたり。
 落ち葉をかき集めて、一気にばら撒いてみたり……。
 赤と黄色と緑がハラハラと落ちる様に、二人は目を輝かせて釘づけになった。

 初冬とは言え、動きまわれば温かくもなる。
 那美と由愛の二人は、襟巻を外し、木に凭れて少しだけ休憩を取った。
「由愛お姉ちゃん、空が青いよー! ほら、あの雲、鳥に見える」
「本当。那美は、素敵なものを見つける天才ね」
 くすくすと笑みを零す由愛に、首を傾げる那美。
「どうしたのー?」
「いいえ。那美があまりに可愛いから」
 頭を撫でて、慈しむ――愛おしい妹分は、目を細めて嬉しそうだ。
「うん、僕も由愛お姉ちゃん、大好き!」
 偽りない想いに、当然とばかりに那美も返す――満面の笑顔で。
 穏やかな時間が流れる中――くぅ、と可愛らしい音が那美のお腹から鳴った。
「由愛お姉ちゃん、お腹すいたー」
 お腹を押さえながら、お菓子食べたいなぁ、と呟く那美――上目遣いで見られた由愛は、仕方が無いなぁ、とばかりに微笑んだ。
 そして、冷たくなってしまった那美の手を取る。
「じゃあ、帰りましょう。美味しいお菓子があるの」
「わぁ、何かなぁ!」
 行きと同じく、帰りもかけ足で。
 家に向かって――由愛は本当は、家はあまり好きではないのだけれど。
 那美のような妹分がいれば、楽しい。
 無邪気に慕ってくる那美に、随分と救われている事に気づく。
 その手をぎゅ、と握り締め――二人は、由愛の家へと急いだ。


 由愛の家に戻り、縁側に二人は座った。
 日差しはポカポカとして、暖かくそして、何処か優しい。
 もふらの絵の描かれた焼き饅頭を頬張りながら、那美は満面の笑顔。
「このお菓子、美味しい〜」
「石鏡でも、有名なお菓子なんですって」
 緑茶を淹れながら、由愛が口にする。
 石鏡のお菓子と言えば、美味しいと評判のものだ。
「石鏡? 僕、石鏡のお菓子屋さんになりたいなぁ」
「ふふ、那美は食べる方じゃないの?」
 食べてばかりじゃ、お菓子屋さんにはなれないわよ、とからかうような由愛の言葉に、那美は頬を膨らませた。
「だって、美味しいんだもん」
「ふふふ。美味しい? もっと食べても良いのよ?」
「わーい、由愛お姉ちゃん、優しいから大好き!」
 両手に饅頭を持って、那美はパクパクと食べる――小さな身体の何処に、それだけ入るのか。
「本当、喜んでくれて良かった」
 由愛も一口、饅頭を口にする――しっとりとした生地と、餡子の甘さが丁度良い。
 自然と笑顔になる……でも、那美の食べる姿を見ている方が、ずっと好きだな、なんて思う。
(「だって、本当に美味しそうに食べてくれるんだもの……」)
 次は、手作りに挑戦してみようか……などと考え、由愛は微笑んだ。
 その様子を見て、首を傾げる那美。
 どうしたのー? と間延びした声が返って来る。
 それに首を横に振り、ただ、由愛は微笑んだ。

「お腹一杯……僕、眠くなっちゃった」
 お腹が膨れれば、眠くなる。
 こしこしと目を擦りながら呟いた那美に、こらこら、と由愛はその手を掴んだ。
「目を擦っちゃダメよ。腫れちゃうから……」
「うん、だけど眠くて――僕、少し寝るー」
「じゃあ、ほら、此処に……」
 膝を叩いて、那美を引き寄せる。
 其れに抗う事も無く、那美は由愛の膝に頭を置いた。
 とろん、とした瞳が由愛を見つめている。
「どうしたの?」
「また、明日も遊んでくれるよねー?」
「ええ、勿論。安心して、眠って」
「うん……」
 すやすやと寝息を立てる那美、その寝顔を見ながら――やがて、由愛も眠りに落ちていった。


 ――何か、懐かしい夢を見た気がする。
 でも、其れが何なのか、思い出せない。

「ふぁ〜……あぁ〜。私もつられて寝ちゃったみたいね」
 欠伸を噛み殺しながら、呟く由愛――遅れて、目を覚ましたのか那美がそっと手を伸ばした。
 由愛の一本括りにした髪に触れ、そしてぐぐっと伸びをする。
「んー、よく寝たのだ♪ でも何かとっても懐かしい夢を見たような……?」
 那美の呟きに由愛も頷いた、とても、懐かしくて――そして、大切な夢。
 なのに、思い出せない。
「何かしらねぇ〜。あたしも何か夢を見たような……」
 思い出せないのは、二人とも同じ。
「あ、由愛さんも? むふふ、実は僕と同じ夢を見てたとか……なんて流石にないかな♪」
 由愛の膝から起きあがると、那美は冬特有の少しだけ鉛を溶かしたような、青空に視線を向けた。
 縁側からは、真っ赤な紅葉が見える――懐かしい、何故、そう感じたのだろうか?

 ――二人、強い縁に縛られながらも、思い出す事あたわず。
 あれ程、仲の良かった二人……なのに、何故。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ia5377 / 野乃原・那美 / 女性 / 15 / シノビ】
【ia0068 / 川那辺 由愛 / 女性 / 24 / 陰陽師】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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野乃原・那美様、川那辺 由愛様。
この度は、発注ありがとうございました、白銀 紅夜です。

二人の、懐かしく大切な過去、そして現在のすれ違い。
それを描写出来ていれば、幸いに御座います。
初冬の美しい、紅葉や自然にも、ご注目下さいませ。

では、太陽と月、巡る縁に感謝して、良い夢を。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
白銀 紅夜 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2012年11月28日

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