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『+ 今宵、どんな夢を見る? + 』
工藤・勇太1122



 貴方は、幸せそうに笑うでしょうか。
 それとも悲しみに心を沈めていますか。


 さあ、目を覚まして。
 そして教えて、そこはどんな世界?
 鏡合わせの中に存在する虚像のように、またそこには別の貴方。


 貴方は聖夜の夜にどんな夢を見るか。



■■■■■



「工藤君、あたしと付き合ってくださいっ!!」


 それはクリスマスの告白。
 くしくもクリスマス当日生まれて初めてクラスの女子からとある店にて呼び出しを受け、それはもう賑やかな街のお祭りムードの中で告げられた言葉。目の前にはクラスの女の子の中では結構可愛いと噂されている子が居て、性格面もまた気遣いが出来て気安く喋れるとあって男子達の中での評判は上々。時折告白する男子も居て、俺自身玉砕している姿を他人事のように見ていた。
 でもまさか断っていた理由に自分が含まれているなんてこれっぽっちも思っていなくて、最初呼び出しされた時はてっきり何か相談事だと思っていたくらいだったのに。


「え、えっと」
「だ、駄目かな。工藤君ちょっと前までどこか人との距離に一線置いているところがあったんだけど、今はもう大分そんな事無くって、えっとね、えっと上手く説明出来ないんだけど凄く魅力的に見えたの! だから、その……目で追いかけていたんだけど……」
「う……あ、ありがとう?」


 一線置いていた、という点に少しだけドキリ。
 確かに自分は超能力を保持しているという人間ゆえ、それがばれないように――でもあくまで自然に出来るだけ人の中に身を置こう身を置こうと気を使っていた時期がある。友人達の事は当然大好きだが、能力についてばれないよう必死だった事を思い出す。
 本当ならこの告白も以前ならばそれはもう涙流して喜んでいたが、今目の前で告白してくれている彼女が言ってくれたように、昔よりも大分人との距離が緩和されたというのならばそれは恐らく原因は――『彼』の存在があったからだろうと思うからこそ、俺はくっと唇を甘く噛み締める。


 決して同じ世界を生きる人物ではないけれど、それでも望めば傍に居てくれる――カガミの顔が思い浮かんでしまった事がもう決め手。
 俺は心苦しさもあり、女子にゆっくりと困った表情を浮かべながらこう言った。


「……俺、好きな奴いるから……ごめん」



■■■■■



 そして幾許かの時が過ぎ去り、一人残された店内にて。


「女の子を泣かせてしまった……」


 ぼんやりと俺は去っていった女子が人込みに消えていくのを見送る。
 告白を断った瞬間、彼女は目を見開きそれはもうぽろぽろと小粒の涙を零し始めてしまったのだ。そりゃあもうその後は動揺の嵐。泣かせたかったわけじゃないし、でも本心を誤魔化す事も出来ない俺にはアイツの存在を心の底に追いやりながら他の女の子と付き合うなんて出来ない。
 当の本人はもしかしたら気にせず付き合えとか言い出しそうだけど、俺の方が嫌なんだからこれはもう末期というしかない。ついついテーブルの上に両肘をつけ、頭を抱えてしまう。


「……あー……俺ってホント、駄目なヤツ」
「ですねー。女の子泣かせて上手くフォロー出来なかった駄目な男ですなぁー」
「げっ!」
「あそこはもうちょっと他の言い回ししろって。なんで直球で『俺好きな子いるから』だよ。つーかなになに、お前好きな奴出来たの?」
「お前らいつから居て!?」
「割と最初の方から?」
「あ、かもしんねー。っていうかお前らが後から店に入ってきたんだぜ。俺らが先」


 急に声を掛けられ、ボックス席に「詰めろ詰めろ」と二人の友人が押しかけてきた。
 不意打ちのその声掛けに一瞬身体を跳ねさせ俺は友人らをマジマジと見つめることとなる。しっかり注文書ごと移動してきた二人は更にウェイターのお姉さんに席替えの話を通す徹底振り。これはもう嫌な予感しかしないと自分の本能が危険を訴え始める。


「で、好きな子って誰?」
「俺らも知ってる子?」
「う、そ、それは……」
「学校違うとか? つーか、勇太ってば俺らに相談無しとかなんなのー、先にリア充になっちゃうのかよー」
「そうそう、クリスマスに呼び出し喰らって断るくらいなんだからもしかしてその子とこれからデートとか?」
「ん? いや、待てよ。『好きな子がいる』って言ってただけで付き合ってるとは言ってなかったから……デートじゃなくってただの勇太の片思いじゃね」
「あ、そうか。もしくはただの断り文句。――んー、でも勇太『恋人欲しいー』って言ってたからわざわざ女子遠ざけんのおかしいよな。やっぱ好きな子が出来たっていうオチかよ」
「お前らっ……! 人のこと詮索すんなよ!」
「で、結局好きな奴って誰よ」
「――っ」


 こいつら、俺は密かに悩んでいる事を突っ込んできやがる……!
 大体俺だってカガミの事好きだけど、アイツ自身も俺のこと好いてくれていると思いたいけど……そう言えば一度も好きとか言われた事ないんだぞ!!
 ついつい、好きな子がいるって言ったけど相手は同性だし、望めば傍には居てくれるけどカガミの方から傍にいろとか言ってくれた覚えなんて殆どないし――う、考えれば考えるほど落ち込みたくなってきた……。
 実際問題俺たちも関係ってなんだ。
 キスをした事はある。手を繋いだ事もある。抱きしめあった事もある。一緒に夜を過ごした事もある――身体の繋がりだってあるけれど……相手は人間ではない。同じ時間軸を生きているのかも怪しい、虚像の人物だといっても過言ではないのだ。


「お前もしかして見栄張ったとかじゃないだろうな?」
「エアー彼女ほど悲しいもんはないんだぜ。勇太」
「ちょっ! 俺どれだけ寂しい人!? いるってば! 実在してるって!」
「じゃあどんな子だよ!」
「可愛いコだよ!」
「「へぇ〜?」」
「う」


 つい、咄嗟に口から飛び出してきた言葉に俺は慌てて自分の口を押さえる。
 しかし時は既に遅し。友人らは俺の言葉ににやにやと感心の笑みを抱きながらじりじりと顔を寄せてくる。その笑みは明らかに興味津々で、これはもう逃がしてくれない事など明白。俺はがくりと頭を垂れさせるしかない。


「勇太の可愛いコねぇ。まあまあ、俺達にも紹介しようぜ?」
「紹介って!」
「実際いるんだったら逢わせてくれるだろー。ほらほら、連絡取れってば」
「それとも連絡先すらまだ交換してない感じか?」


 ぐいぐい押してくる友人らに俺は焦りを感じざるを得ない。
 逢わせろと言われても相手は男。
 しかも普段の姿は十二歳程度の少年。青年姿の時もあるけれど、どっちの姿で出てきてくれたとしても俺の好きな子には当て嵌まりにくい。というか当て嵌まってしまったら色んな意味で困ってしまうわけで。
 ああ、ぐるぐるする。
 どうにかこの場を潜り抜けるいい方法はないだろうか。好きな奴がいるのは本当だけど、ここでカガミを呼ぶわけにはいかない。だってアイツは――。


「勇太、お待たせ。女の子の呼び出しは終わったか?」
「え」


 カガミは男――だったはず。
 しかし聞き覚えのある声に顔を上げた俺の目の前にはふわふわの淡いピンク色のコートに身を包み、長い黒髪を両側頭部に結わえたいわゆるツインテール姿の『少女』が一人。茶スカートも膝上と丈が短く、その代わり茶のロングブーツと黒フリルの装飾が付いた白ニーハイソックスが可愛らしさを演出している。
 『彼女』はにっこりと微笑む。
 その黒と蒼のヘテロクロミアだけは『彼』そのままの面影を残し、コートの中にポケットを突っ込みながら待ち合わせでもしていたかのようにあくまで自然に俺達の前に現れて。


「そっちは勇太の友人か? 初めまして」
「え、あ、は、初めまして」
「こっちこそ初めまして!」
「勇太、店のセール時間迫ってるから友人らと用事があるなら先に行ってて良いか?」
「待った! 俺も行く! ――じゃあ、俺行くからお前らまたな!」
「お、おう。彼女と楽しめよ!」
「なんだよ、ガチ彼女かよ。今度は名前教えろよー」
「やなこった! お前らからかってくんのわかってんだよ、馬鹿!」


 小首を傾げながら聞いてもいない話を持ち出し、『彼女』は店の外へと視線を向ける。そのまま本当に先に店を出て行ってしまいそうな気配にチャンスとばかりに俺は食いつき、領収書と共にレジへと向かう。
 後ろからは好奇の視線が追いかけてくるが今は仕方ない。店を出れば流石に追ってこないだろう。


「……なあ」
「なに」
「お前、マジでカガミ?」
「可愛いだろ」
「…………」
「可愛くないのか」
「か、カワイイデス」
「ぷっ……! しかしマジでクリスマスセールやなにやらで賑やかだな。なんか奢れよ」
「何かって、なにを?」
「そこはちゃんとエスコートしろって」


 結わえられた髪の毛の先を指でくるくると巻き込んで遊ぶカガミの姿は確かに可愛い。
 自分よりも身長も低く、小柄で、幼い顔付きに心臓が跳ね上がる。スカートとソックスの間の……えーっと『絶対領域』だったっけ。見えそうで見えない肌色の部分もドキドキします、はい。コートを着ているから中がどんな服装をしているのかまで分からないけれど、多分カジュアル系だろうという事は察する事は容易。
 纏う雰囲気はあまり変わらないのに、自分と恋人に見られてもおかしくない年齢の女性であるという事実だけが何故か今日という日を特別な色に飾り立てて仕方がない。


 俺が戸惑っている気配を察したのか、カガミは俺の右横に立ちそのままぽふんっと腕にしがみ付いてくる。
 手がするりと俺の手に絡めばその指の細さと柔らかさに女の子特有のものを感じてより一層心臓は高鳴るわけで……、更に言えばコート越しに微妙に感じるアレが……女の子の胸がぶつかってきて俺は顔が赤くなるのを感じ始めた。


「勇太ー、服見立てて、服。もしくはアクセな」
「俺女の子の服とか分からないんだけど……」
「じゃあアクセ。これだけじゃ寂しすぎるからなんか買ってくれ」


 そう言ってカガミは左手を持ち上げ、その薬指に嵌っている指輪を見せ付ける。
 シンプルなリングは以前俺が『彼』に貰ったものとお揃いで、多分それを考慮してつけてきてくれたんだと思うんだけど……あれ、ちょっと待て。もしかしてこれはペアリングというヤツ!?


「お前気付くの遅くね?」
「――思考読み取るの反則!」
「いーまーさーらー」


 きゃらきゃらという擬音が似合うほどに愛らしい少女。
 普段とはやっぱり違うその容姿に俺はどう対応して良いか分からない。でも多分普段と同じで良いはず。それで良いはず……だけど。


「なあ、カガミ」
「んー?」
「これデート?」
「別にお前が俺に貢ぐ男兼荷物持ちになりたいって言うならそれでも」
「全力でデートがいいっす」
「だろ。ほら、行こう」


 即答で不名誉な言葉を却下すると俺はカガミに引っ張られるままに街中を歩いていく。
 今までにないこの新鮮なクリスマスの光景に俺は心の中でガッツポーズを決めるけれど――これが今後どう響くかは今の俺は知らないままで。









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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1122 / 工藤・勇太 (くどう・ゆうた) / 男 / 17歳 / 超能力高校生】

【NPC / カガミ / 男 / ?? / 案内人】
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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、今回はカガミ女体化設定での発注有難う御座いました!
 普段とは違う少女姿での登場で御座います。
 いわゆるカジュアル系女子。足元が寒いけれど「お洒落には我慢も必要」の心意気でスカートの丈も短く! 髪形はどうしようかと迷いましたがツインテールにしてみました。ほどほどに化粧もしておりますので気に入っていただけますように!
N.Y.E煌きのドリームノベル -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
東京怪談
2012年12月02日

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