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『☆クリスマスを楽しませましょう☆ 』
彩咲・陽花jb1871

 今日はクリスマス。けれど『あなた』達はクリスマスを楽しむ側ではなく、クリスマスを楽しませる側となりました。つまり働くのです!
 人々の笑顔を見て、幸せになるクリスマスにしましょう♪


☆クリスマスにはアルバイトを!
「いらっしゃいませぇ〜! クリスマスケーキはいかがですか? お持ち帰りもできますよ〜!」
「今日はクリスマス当日スペシャルとしまして、一日中クリスマス料理が食べられまーす! ランチでもディナーでも今日だけはクリスマス一色ですよ〜!」
 駅前の大通りにあるレストランの前で、クリスマスケーキの絵が描かれた看板を持つ葛城縁と、七面鳥の丸焼きの絵が描かれた看板を持つ彩咲陽花がいた。二人はサンタクロースのコスプレをしており、寒いながらも笑顔で白い息と共に声を出している。
 今日は朝から曇っており、ホワイトクリスマスになるだろうとニュースでは天気予報士が笑顔で言っていたが、気温が下がりまくっている中でのバイトは結構きつかった。
 休憩時間となり、二人はレストランの中の休憩室に移動する。そしてコックからあたたかいココアを貰い、飲んで一息つく。
 縁はふと壁にかけてある時計を見て、このバイトのことを思い出した。
「モデル仲間から紹介されたここのアルバイト、短時間でも外で呼び込みをするからって、ずいぶん良いお給料を払ってくれるみたいだね」
「うんうん、しかも帰り際に渡してくれるみたいだしね。でもこういうコスプレも楽しいよね。バイトって演技の練習にもなるし、一石三鳥だね!」
 陽花は自分の格好を見て、ニコニコと嬉しそうに微笑む。劇団に所属しているせいか、あまり抵抗なくコスプレを楽しんでいるらしい。
「あっ、でもあんまりバイトで頑張り過ぎないようにしなきゃ。夜に劇団でクリスマス特別公演があるから、体力は残さないとね!」
「陽花さんの公演、楽しみだよー。演目は何をやるの?」
「えへへ、やっぱりクリスマスだしね。キリスト誕生劇をするんだよ。ちなみに私は聖母マリア役だよ」
 陽花は自慢げに、胸を張って見せる。
「陽花さん、凄いよー! 演劇、楽しみになってきたよ♪」
「うんうん、頑張るよ」
 そこで休憩時間が終わり、二人は再び看板を持って外に出た。


☆クリスマスには緊急事態が発生?
 そして忙しいランチの時間が過ぎ、二人はバイトを終える。後は別のモデル仲間が、ディナーの時間までやってくれることになっていた。
 途中で雪が降り出してよりいっそう寒くなったものの、それでも二人は笑みを崩さず頑張った。タイプは違えど綺麗で可愛い女の子二人が一生懸命に呼び込みをする姿は多くの人目を集めることができ、ランチの時間には店内は満員になるほどだった。
「わふぅ〜、終わったねぇ。陽花さん、お疲れ様〜。この後の公演も大変だろうけど、頑張ってね。私、応援しているから」
「あはっ、ありがとう。クリスマス公演、頑張るよ」
 更衣室で着替えている途中で、陽花の携帯電話が鳴る。
「あっ、劇団の団長からだよ。…もしもーし? えっ? ちょっと団長、落ち着いて話して」
 陽花は慌てている団長の言葉を聞いて、顔をしかめた。
「天使役の女の子が来れなくなったの? …そう、インフルエンザにかかって…」
 陽花の暗くなっていく声を聞いて、縁は着替える手を止めて心配そうに見つめる。
「でも団長、確か女子劇団員はみんな役があるんだよね? 天使役までやるとなるとかなりキツイと思うけど……うん、そうだね。無理があるよ」
 陽花が所属している劇団は小さい為に資金も人もギリギリでやっていると、縁は聞いたことがあった。その為に陽花はアルバイトでモデルをしており、その関係で縁と出会ったワケだが…。
「ええっ!? いくら私がモデルのバイトをしているからって、バイト仲間に代役を頼むなんて急には無理だよ! ただでさえ今日はクリスマスだよ? 私のようにバイトをしたり、遊びに行っているコだって多いよ。そんな時間があるコなんて…」
 そこで陽花と縁の目が、ばっちり合った。
 すると陽花は、にっこり満面の笑顔を浮かべて見せる。
「はっ陽花さん…?」
 その笑みに言い知れぬ不安を感じた縁は、思わず後ろに一歩下がった。
「いたよ、団長。私と同じモデルのバイトをしていて、天使役にピッタリな女の子が」
 電話の向こうから団長の喜ぶ声が、縁にも聞こえてくる。
「…うん、うん。すぐにそっちに行くから、準備だけはしておいてね」
 そう言って電話を切った陽花は、縁に最上級の笑みを見せた。
「と言うことで、縁。一緒に舞台に立とうね!」
「やっやっぱりぃ〜!」


 ――こうして涙目になりながら嫌がる縁の腕を掴み、陽花は今日の演劇舞台となる教会まで連れて行く。
「団長、みんなっ! 代役のコ、連れてきたよー!」
 教会の裏口から広間に入ってきた陽花と縁を、劇団員達は大喜びで迎えてくれた。
 早速、女性劇団員達が駆け寄ってきて、衣装を合わせてみようと言い出す。
「そうだね。セリフも大事だけど、衣装も直さなきゃいけないし。私もここんとこバイトが忙しくて、衣装合わせなかなかできなかったから一緒に着替えようか」
「ひ〜んっ!」
 縁は陽花にグイグイと腕を引っ張られながら、女性用の更衣室となっている部屋に入って衣装に着替える。しかし陽花はマリアの衣装を、縁は天使の衣装を着て、困惑した表情を浮かべた。
「んん〜。私の衣装、少し胸のサイズが大きいような気がするよ」
「ん〜…。この衣装、少し胸のサイズが小さいような…ひっ! だっ大丈夫そうだよ!」
 言いかけた縁は隣にいる陽花から凄まじい気配を感じ、慌てて撤回する。
 しかし苦笑した劇団員達が手直しすると言うことで衣装を脱ぎ、再び広間に戻った。そして陽花は団長から二冊の台本を受け取り、一冊をまだ戸惑っている縁に渡す。
「えっえーっと…急に言われても、これからセリフを覚えるのは大変で…」
「大丈夫だよ。天使役のセリフを減らして、台本を書き直してもらったから。夜まで時間があるし、それまでみっちり教えてあげるよ!」
「はっ陽花さーん…」
 情けない表情と声を出す縁を無視し、陽花は台本を捲った。


 夕方になり、陽花は団長から声をかけられる。この教会の舞台は広くて大きいものの劇団の知名度がイマイチな為、夜の公演を見に来てくれる人数の心配が出てきたらしい。
 なので急遽クリスマス公演の宣伝看板を二つ作ったので、陽花と縁に教会近くの駅に行って、宣伝をしてほしいとのことだった。
「私は良いけれど、縁が…」
 縁は台本に釘付けになりながら、ブツブツとセリフを繰り返している。保育士を目指している縁は、時々子供達に絵本を読み聞かせしているので何とかなりそうではあった。しかしやはり、舞台に立って人前で演技をするとなるとまた違った問題が出てきており、緊張からか眼を回しつつある。
「…このままじゃ緊張して失敗しそうね。…あっ、そうだ!」
 妙案が浮かんだ陽花は、笑顔で縁に声をかけた。


 そして看板を持って、二人は駅に来た。クリスマスということもあり、駅前にはたくさんの人が訪れている。
 そんな中、陽花と縁は駅員に事情を話し、駅の中で演劇の宣伝をする許可を貰った。
 看板を壁に立てかけ、二人は互いの顔を見て深く頷き合い、深呼吸をする。そして聖母マリアが天使に受胎告知を受けているシーンを演じだした。
 陽花が思いついた妙案とは、縁が出るシーンを実際に人の前で演じてみるということ。練習にもなるし、人の目に慣れる為でもある。
 それに多くの注目を集めることによって興味を持ってもらい、実際に公演を見に来てくれる人を集める為でもあった。
 衣装ではなく私服のままだが、演じ始めると数人が立ち止まって二人の演技を見る。一通り演じ終えると、陽花と縁は看板を手に持って見せながら、演劇の宣伝を明るい声と笑顔で始めた。
「そこ行くお兄さん、お姉さん! 夜に教会でやるキリスト誕生劇、見に来ない? 楽しいクリスマスが、更に盛り上がるよ!」
「今日は楽しいクリスマスだよ! ご家族の方々やお友達同士で見に来てね! お子様達にはジンジャークッキーがプレゼントされるよー!」
 人々に声をかけ、そしてしばらくするとまた演技をする――という行為を繰り返した。


 そのおかげで、何とか縁は舞台で天使・ガブリエルを演じることができた。少し緊張したものの、それでも一生懸命な演技は見ていて好感が持てる。
 陽花も見事に聖母マリア役を演じて見せ、最後は大きな拍手と歓声が起こった。
二人が駅中で宣伝してくれたおかげで、立ち見までできるほどの大勢の見物人が集まった。
 演劇が終わると劇団員達と共に縁は衣装のまま、ジンジャークッキー入りの袋を子供達に渡していく。
 こうして舞台は大成功で終わった。


☆クリスマスには笑顔を
 着替え終えた後、劇団員達は教会関係者から笑顔でお礼を言われた。そして広間に簡単ながらもクリスマスパーティーを用意してくれていたので、劇団員達は喜んで参加する。
 縁と陽花はレストランで給料と共に貰ったクリスマスケーキを二つ、テーブルの上に置いた。
寒い外で一生懸命に呼び込みをしてくれたので、レストラン側からの厚意で大きなワンホールケーキを一人一つずつくれたのだ。劇団員達は大喜びで切り分け、二人も食べる。
 しばらくすると熱くなった縁は一人でこっそり広間から抜け出し、外に出た。
「わあ…! 大分、雪が積もったよー」
 外はすでに暗かったものの街灯の光に照らされて、降り積もった白い雪が輝いて見える。
「明日はここで雪遊びする子供がいそうだね」
「陽花さん」
 縁が出て行くところを見かけた陽花が、追いかけてきた。そして縁の隣に立ち、空を見上げる。
「今日は充実した一日だったね。…でも今回の演劇の収入は無いんだよ。『クリスマスに、教会でキリスト誕生劇をした』ということが、報酬みたいなものなんだって」
「うふふっ、そうだね。でもたくさんの人達が演劇を見て、喜んでいたよ。それが一番の報酬じゃないかな?」
「…団長もそう言ってたよ」
 しかし陽花はイマイチ納得できないと言った表情で、ため息を吐く。
「でもまあ私達の演劇を見て、幸せな気分になってくれた人がたくさんいるなら良いか。クリスマスケーキも美味しいのを食べられたしね」
「うんうん」
 笑顔になる陽花を見て、縁も微笑みを浮かべる。
「まっ、レストランの呼び込みのお給料は良かったし、今度は年末年始に向けてアルバイトを頑張るよ!」
「そっそうだね…。私達はイベントを楽しむよりも、稼がなきゃね」
 張り切る陽花とは対照的に、浪費癖のある縁の表情は暗いものになった。
 確かにこれから書き入れ時になる為、時給も上がり、稼ぐのには良い時だ。しかしイベントを楽しんでいる人の中で、労働しまくるというのもちょっと寂しい気持ちもある。
 そんな縁の気持ちを感じ取ったのか、陽花が突然抱き着いてきた。
「きゃっ! はっ陽花さん!?」
「年末年始のアルバイトも、一緒に頑張ろうね!」
「一緒に……うんっ、そうだね!」
 そこで陽花は目をキラーン☆と光らせる。
「元旦から三が日まで、巫女衣装を着て神社でバイトだよ! いっちばん楽しみだよぉ!」
 元々陽花は神社の巫女で、私服代わりに巫女服を着ていた。そのせいか正月のバイトを一番楽しみにしている。
「うっうん…。そうだね」
 燃え上がる陽花を見て、縁はさっき言った言葉を少々後悔するのであった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb1871/彩咲・陽花/女/大学部1年/バハムートテイマー】
【jb1826/葛城 縁/女/大学部1年/インフェルトレイター】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 はじめまして。このたびはご依頼していただき、ありがとうございました(ペコリ)。
 クリスマスをテーマにした、ほのぼの作品に仕上げてみました。
 ですが弾けた部分も書きまして、コメディ風味にもなりましたね。
 良きクリスマスをお過ごしください。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
hosimure クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年12月25日

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