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『+ 今宵、どんな夢を見る? + 』
セルフィナ・モルゲンjb3111



 貴方は、幸せそうに笑うでしょうか。
 それとも悲しみに心を沈めていますか。


 さあ、目を覚まして。
 そして教えて、そこはどんな世界?
 鏡合わせの中に存在する虚像のように、またそこには別の貴方。


 貴方は聖夜の夜にどんな夢を見るか。



■■■■■



 それは『もしも』の世界か。
 それともただの願望か。


 彼女――オフェリア=モルゲンシュテルンは魔界の自宅にて煌びやかな黄金台座に乗せた大きな水晶を覗き込む。
 綺麗に磨かれたそれは妖しい光沢を放ち、その中には魔界とは違う世界の姿が映し出されていた。現地人が平和そうに暮らしている世界もあればいがみ合っている世界もある。平行世界を垣間見る事が出来るその魔具を使って彼女は指先を一本揺らしながら鼻歌を歌っていた。


「ンフフ。次はドコにしようかしらぁん」


 椅子に腰を下ろせば身体の殆どが胸と表現して良いほど大きい其れがぷるんっと震えて机の上に乗った。胸の双球に視界が閉ざされないよう気をつけながらも慣れた仕草で次々に世界を変えて面白そうな場所を探し出す。
 身体を纏う服はほぼ下着といっても過言ではない。黒の光沢ある生地に赤で一定の規則性を持った絡み模様が描かれたそれは色気を醸し出すアイテムだ。だが彼女にとってこのファッションはいつものこと。巨乳というには些か言葉が足りず、オフェリアの胸はもはや「魔乳」と呼ぶに相応しい。
 実際その胸こそ彼女の魔力の蓄積場所であり、彼女のそれが膨大であればあるほどオフェリア自身の蓄えている魔力が大きい事を示す。だからこそ彼女は己の胸が巨大であることを誇りに思う。


「きぃめた! ンフフ!」


 やがて彼女はとある一つの世界に目星を付ける。
 そこは平和そうな現地人達が日々穏やかに暮らしている場所で、その平和ボケした顔が彼女の意識に止まったのだ。幸せそうな人達の表情を崩す事こそ至福の時。水晶を一撫ですると彼女は紅の引いた艶のある唇を引き上げて妖艶に微笑んだ。ちろっと舌を出して無意識に唇を舐め、オフェリアは立ち上がる。
 行く先は決まった。
 ならばあとは魔界と其処を繋ぐゲートを作り出すだけ。


「さぁ、愉しませてもらうわよぉ〜」


 手の平に力を込めてゆっくりと目前の空間へと翳す。
 そこには光が収縮した魔方陣のようなものが現れ、ゲート出現を知らした。淡く淡く彼女を誘う魔法のゲートへと近付きやがてオフェリアは潜り抜ける。繋いだ座標は現在彼女がいる世界の平行世界。
 全く同じように日々を暮らしている人間達がいる世界ではあるが、一つ道を違えたまた別の空間である。
 たった一つの選択肢が別々の道を歩ませて生み出す膨大な平行世界。この世界にもきっと『オフェリア』がいるのであろうと考えつつも、彼女は欲望のままに進撃を開始した。


「あれはなんだ!?」
「悪魔だっ! 誰か、撃退士を呼べ!!」


 都市の一番目立つ場所でオフェリアはその巨大な存在を持って浮遊すると恐怖に怯えた人々の表情を心から味わい愉しむ。自分を指差し、恐怖心を煽られているその感情こそ彼女が見たかったものだからこそ愉悦に浸る事が出来た。
 ぞくぞくとした快感が背筋から駆け上がってくる。
 自分を見て、畏怖し、撃退士という存在すら呼ぼうとする人達の愚かさにうっとりとした表情が浮かぶのを止められない。高揚感が次第に頭を満たしていくのが分かる。昂る気持ちが早く早く、と急かし、そして彼女は――。


「ンッフフ!! 魂をいただくわよォ!!!」


 脅威に晒された人達に対して胸に詰まった膨大な魔力を解放し始める。
 彼女の身体からは暗黒のオーラが四方へと飛び、そして都市全体へと広がっていく。明るかった空を暗め、太陽の光すら届かない不安を煽る空間へと変化させていけば人々の悲鳴はより一層狂気的にあがった。


「いやぁああ!! 助けて、助け……」
「く、くるし……誰か、誰かぁ……!」


 喉元を引っ掻きながら肉体も魂も強制的に変化させられていく人達はそれでも最後の希望である撃退士の存在に縋ろうとする。涙を零し、倒れ込んだ手を暴れさせて何かに捕まろうと足掻く姿は醜いゆえに――美しい。
 まさにオフェリアが見たい光景そのものが此処には存在している。


「はぁあん! 怖がらなくてもいいじゃなぁい? さあ、どんどんディアボロ化しちゃいなさぁーい!!」


 もっと、もっと!
 彼女の欲は留まる事を知らぬかのように魔力を使用し続ける。結果的に彼女の魔力の源である胸は次第にしぼみ始めるが、それは大した問題ではない。重要なのは彼女に快楽を与えられるか否かである。
 元々豊満な肉体構造を持っている彼女にとってある程度胸が縮もうが些細な事。それよりもやがては都市全体を包み込むゲートを作成し終えると彼女は己の顔に手をそっと寄せて、恍惚な表情を浮かべた。


「ハァン……! 気持ちいいわぁ! もっと、もっと魂をよこしなさぁーい!」


 悪魔という種族柄もあり、彼女の理性は外れやすく凶暴化が一層進んだ。
 一人、また一人とディアボロ化し自身の支配下へと下っていく様子を見つめながら彼女は快楽に身を震わせる。足りない。もっと多くの魂を、もっと多くの力を寄越せと彼女は無言の圧迫を現地人達にかける。
 駆けつけてきた撃退士達の存在に気付き気を取られるがそれも一瞬の事。


「んふ、貴方たちならもっと大胆に愉しませてくれるかしらぁ? アハハハハハハ!!」


 下界では人が徐々にディアボロへと変わり、都市全体が彼女の支配領域と変化し続ける。
 もうすぐ、もうすぐ完了する。


「アハハハハハ!! 弱いものは私の糧となりなさぁい、それが皆が生まれてきた存在理由よぉ!」


 人にとっては理不尽な、けれど彼女にとってはもっともな理由を口にしながらも女性特有の高笑いが周囲を満たす。
 だけど全身を多大に震わせる快楽にはまだ少し、足りない。





―― to be continue.
N.Y.E煌きのドリームノベル -
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エリュシオン
2012年12月26日

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