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『only one? 』
アーレイ・バーグja0276


 街へ出れば、クリスマス一色。
 テンションの高いBGM、浮かれた格好の売り子、幸せそうに手を繋ぎ歩く親子、恋人、etc...
 チキンの香りが漂い、ワインのボトルを抱える姿も見える。
 嗚呼
 誰を恨むではないけれど


 何故、私はひとりなのか。
 大丈夫、知ってる。




 アーレイ・バーグのクリスマスの予定は、ぼっちであった。
 美人でスタイルの良いアーレイだが、ぼっちであった!!
「恋人が入院中ですもの、仕方ありませんね……」
 通りを歩き、掛けられる声にホイホイ応じるほど、アーレイの尻は軽くない。甘く見ないでほしい。
 あまりにもしつこいナンパ男数名へ魔力を込めた裏拳をお見舞いしながら、アーレイの表情は晴れない。
※久遠ヶ原なので相手も撃退士だろう、大丈夫、峰打ちじゃ。

「リア充、爆発しませんかね」
「はい?」
「あ、いえ、こちらのクリスマスケーキを一つ、24cmで」
「ありがとうございます。ご家族でクリスマス過ごされるんですか? 良いですね」

「ひとりですけど、何か?」

「  」
 アニメ・コミックは日本の素晴らしい文化だとアーレイは思う。
 それをクリスマスケーキにまでアレンジするなど、なんて素敵な!!
 ……そんなアーレイの日本賛歌も、当の日本では認識が低いのだろうか。
 理解の無いコンビニ店員に水を差されてしまった。
「ぺぷちにポテチに…… ここまで出てきたのですから、ピザも店頭で注文していきましょうか」
 細腕に、パーティ用と思われるほどのお菓子や食料を抱え(※独り分)、アーレイはテレフォンオーダーで馴染みのピザ屋にも顔を覗かせた。

 ――クリスマスキャンペーン、実施中! カップル向けの限定メn

「お客様?」
「あっ、手が滑って……。失礼しました」
 思わずカウンターのメニューを爆破したアーレイが、テヘッ★と笑ってごまかす。
 カウンターの一部が熱で溶けているが、男性スタッフは笑顔にコロリと乗せられ、スルーして注文を受けている。大丈夫か、この店。
「アーレイ・バーグさん…… ああ、いつもの!」
「はい、お世話になってます。今日は近くまで来たものですからー」
 大量発注に何事かと思ったスタッフも、注文書の名前を見て納得。
「いつも通り、ですねー 30分後にはお届けにあがります」
「よろしくお願いします」
 『いつも通り、独りで食べる』知ってる相手は有り難い。




 ピザが届くまでの間、寮の自室に戻ったアーレイは独りクリスマスパーティの準備を始めた。
 鼻歌交じりで、手持ちのコスプレコレクションからミニスカサンタを取りだす。
「ずいぶん、衣装も増えましたねー♪」
 メイドだけでも複数あるし、愛と魔法の戦士もある。コレクションを眺めるうちに、ついついひとりファッションショーなど孤独感最高潮に持っていくイベントまで思いつく。
 指を鳴らしてステップを踏み、リズムに合わせて揺れる乳、薄い布地をひらりと返し、
「さぁ、出でよ、俺の嫁!!」
 上がったテンションそのままで、くるりとターン、魔法のステッキで自室に設置してある三面モニタに嫁・召喚!!

 ――ピン・ポーン……

「……聞こえました?」
「聞こえてません、聞いてません」
 馴染みのピザ配達のお兄さんが、引き攣った笑顔で首を横に振った。
 聞かれたな、これは。
 仄暗い中学二年生の思い出というのはこういうものか。
 まあ、だからといって失うモノは何もなし!
 ぼっちだし!
 …………。
 胸を張るだけむなしい気がしなくもない。

「ぱーりぃといきましょうか……」
 気を取り直し、アーレイは食料をデスクに広げ、着席。
 ホールケーキに直接フォークを刺す贅沢・弾けるぺぷちを堪能しながら、日課となっているネトゲにログインする。
『メリークリスマース 例の計画の進捗状況、いかがでしょうか大天使殿』
『うむ、滞りなく進んでおるぞ。クリスマス・年末年始の繁忙期に休みを申請する不届き者、サービス残業を押し付ける無能な上司への粛清計画は着々と』
『大天使殿、会話はログに残ります、不用意な発言は控えますよう…… というよりも、私情がダダ漏れでございます』
 タイピングしながら、ああ、このギメル・ツァダイのアイコンの背後は中間管理職系シュトラッサー・米倉だな、とアーレイは看破した。
 そういえば、年末年始に関係なく斡旋所にも『奪還せよ、京都』の貼り紙があった。
 苦労しているのだろう。
 想像するだけで胸熱である。がんばれシュトラッサー。最後には人間が勝つけどな!?
 実際の戦闘はさておき、二次元であればこんな交流も可能なのだ。二次元万歳。
 ホクホクと画面相手に笑顔となり、クリスマス限定ピザに手を伸ばす――そこで、スマホが震えた。

 ――Merry Christmas !!

 アメリカからの両親だ!


 素敵なお友達に囲まれ、華やかなパーティを楽しんでおります。
 日本、久遠ヶ原はとてもいいところ。お友達もたっくさん出来ました!
 アーレイは元気にしています。

 アーメン。
 心の中で十字を切りつつ、メール送信ボタンぽち。
 聖なる夜に嘘をつく、アーレイの罪をおゆるしください。
 祈る神は、特に持たないけれど。




 このまま、独り寝だと思ったか!!
「今年の冬祭では、新しい子を迎えられますかねー?」
 アーレイはベッドへ寝ころぶと、愛用のギャルゲキャラ抱き枕を引き寄せる。
 アーレイの身体にフィットするよう、教育された従順な抱き枕が、寂しい体を慰めてくれる。
 そうだ。クリスマスなど、この先に待ちうける大規模祭典のための、ちょっとした障害に過ぎない。
 寂しくなんか、なァあああい!
 目を閉じて、開く頃、きっと次の戦場に向けての視察(パンフレットチェック)で大忙しに違いない。
 ああ、早く明日が来ないかな。


 
 『いつも』より、ほんの少し多めのピザやケーキ。綺麗に平らげられた形跡が、夢の残骸のように。
 ぼっちだけど、ぼっちだって、クリスマスを楽しく過ごせるのだ。
 どや!!




【only one? 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja0276 / アーレイ・バーグ / 女 / 17歳 / ダアト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございました!
ぼっち満喫クリスマス、お届けいたします。
丸投げOKに震えつつ、堪能いただければ幸いです。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年12月30日

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