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『Frenzy,white X'mas 』
梅ヶ枝 寿ja2303


 それは12月上旬の事。

「スキー旅行しようぜ!!」

 バンバン、と賑やかにテーブルを叩くのは七種 戒。
 いいねいいね、と数名の友人が周囲に集う。
「……あ」
 その中の一人、紫ノ宮 莉音が申し訳なさそうな声を出し、小さく挙手。
「クリスマス前から正月明けまで、実家に帰る、予定ー…… それまでに、スケジュール都合、つくかなー?」
 莉音の故郷は京都。しかしそこは現在『帰ることのできない場所』。本来の場所とは別に、家族たちは生活の場を見つけだしていた。
「2週間あるかどうか、か。このシーズン、なんとかなるだろ。俺はクインが来るっつーなら他は構わねぇし」
 アラン・カートライトがスマホで日取りを確認する。
「他ならぬ莉音だ。この面子じゃ僕の眼鏡の貞操に若干の危機感を抱かざるをえない。是非同行して欲しいね」
「アチッ」
 クインV・リヒテンシュタインが語るその背後から眼鏡へ早速指紋をつけるべく忍び寄った梅ヶ枝 寿は、静電気という名の魔法によって弾かれた。
 これは相当痛い。
「んー」
 旅行。突然のスケジュール。
 戒は考えを巡らせる。
 夏にも、こんなことがあった気がする。


「フリーランスの伝手で、どこかいいスキー場、知りませんか! 格安で宿泊可能、今すぐにでも行ける系!!」
「俺はどこでもドアか何かですか」
 連絡のついた卒業生は、電話越しにもわかる苦笑いで受けあった。
 夏のバカンスに続いて、突発旅行の段取り&筧 鷹政を引率名義の連行+足役確保、成功。
 使えr 否、頼れる先輩である。




 1週間後。面々はスキー場へと到着していた。

 一面の銀世界。はしゃがずにいられようか!
 散々滑って、一息ついて。
「はーーー、スキー超楽しー!!」
 ゴーグルを外し、上気する頬で寿は満面の笑顔。
「ことぶこ、今度は上級コース行ってみようぜ!」
 キャッキャと、戒が提案する。
「えっ、さすがにハードモードじゃん……?」
「それがさぁ」
 ちらり。寿へ耳打ちしながら、戒はアランから滑りを教わるクインへ視線を流す。
「……戒、おぬしも悪よのう」
「ことぶこさまには敵いませぬ……」
 非モテの絆で結ばれる悪友二人は、完全に悪い笑顔でコースへと向かっていった。

「莉音君…… 大丈夫なの、あの二人」
「あの二人、ですからねー……」
 見送る鷹政が不安げに莉音へ訊ねると、莉音はカクリと首を縦に振った。
 イコール『大丈夫ではないが、問題ない』。
「……。とりあえず、休憩しよっか。ココアでも飲む?」
「飲みまーす!!」
 来るべき惨事に備え、体力は温存すべし。
 鷹政の判断に莉音は両手を上げ、揃ってロッジの喫茶コーナーへと向かった。



●転がる石のように
 ――上級者コースの頂上で、雪玉を転がして雪だるまを作ろうぜ!
 戒の提案は、冒険心をくすぐる、実に魅力的なものであった。――と思うのは、恐らく今回のメンバーでも寿くらいであろう。
 他は全員、止めにかかったに違いない。
 しかし、役者は揃ってしまった。
「ひゃーー 見ろよ、ことぶこ! すっごいサラッサラの雪! パウダースノー!!」
「これで雪だるまって難度高くね??」
「ハードルは高い方が燃えるというもの……」
「キリッと言っても、雪だるまだからな?」
 あわよくばここで雪の扱いに慣れ、雪合戦でもしてクインの眼鏡を割 いや、インフィルトレイターとしての威厳をだな、そういうことである。
 青く晴れ渡った空が近い。
 雪玉転がしで雪だるま、なんてマンガのような展開、成功しようがすまいが、ここまで来ただけでよかった……
 寿が、冷たい空気を胸一杯に吸い込み、感慨に浸った時、お約束は起きた。
「ハハッ。戒、なに転んでんd」


 ――ぎゃああぁぁぁ……



●押しつぶされそうな思い
「眼鏡の上にゴーグルを掛けるのはあくまで眼鏡が割れることを護るためであって、決して上に来るゴーグルが眼鏡より性能が上回っているわけでは」
「お前が行くって言うから釣られてクソ寒い中雪山に来たんだ、堪能させろ。ほら、コッチ向けって。足の角度が違ぇ」
 手取り足とり、アランがクインへとスキー指南をしている。
 口では寒い寒いと悪態をつきながら、どことなく楽しそうな表情のアラン。
 時折、不必要なスキンシップがあるような気もしなくはないが、クインもアランの憎みきれないキャラクターに甘える形で、新雪を楽しんでいた。
 アランはなんだかんだで、教え方が上手い。
 最初は恐る恐るだったクインも、これなら眼鏡が割れる心配もなさそうだ、と笑顔を覗かせ――
「クイン、おまえ、ちょ」
 超かわいいな、アランが素で口にしようとした時、お約束は起きた。


 ――ぎゃああぁぁぁ……



●計算通り
「鷹政さんは、もう、滑らないんですかー?」
 生クリームを浮かべたココアを飲みながら、莉音が見上げる。
「んー? なんか、戒さん達を見てたらお腹いっぱいになってさ」
 コーヒーに付いてきたクッキーをかじり、窓の向こうのゲレンデを眺め、鷹政。
「お腹がいっぱいというか胸が苦しいというか心配d あ、言っちゃった」
 笑うしかない。
「莉音君は? せっかくスキー場まで来たのに、あんまり滑ってなかったよね」
「あ、えーと」
 高いところが得意ではない―― それは到着し、リフトに乗ってから気づいた。
 大好きな皆とワイワイすることは嬉しいから、下手に空気を壊したくなかった。
 などと……言えるはずもなく。


 ――ぎゃああぁぁぁ……


「まぁ、こういうこともあるかな、って」
「……だね」
 聞き覚えのある絶叫が遥かから響くのを合図に、二人はカップの中身を飲みほした。




 ぽかぽかと、暖炉がロッジ全体を暖めている。
 日が暮れる前に、貸切のログハウスへと移動していた。
 折よく、到着してから外は吹雪始め、少しでも遅ければ道に迷ったかもしれない。

「すみませんすみませんすみません」
「けど、筧っちだってこういうの好きそじゃn すみません」
 山頂で転び、自ら雪ダルマと化して麓のクインへアタックを仕掛けた戒と寿は、大した怪我を負うこともなくただひたすら正座で鷹政から説教を受けている。
 鷹政とてアウルに目覚める前から一通りのヤンチャはこなしており、人の事を言える身ではないにしろ、心配なものは心配だし危険なものは危険である。
 そも、激突相手がクインだったからよかったようなもので(※あまりよくない)、一般人だったらと思えば小言もでるというものだ。
「はい、バスタオルですよー」
 そこへ、莉音が体を暖めるようバスタオルを持ってきた。
「莉音ーー!!!」
 泣きつかんばかりの勢いで、受け取る戒。
「疲れたけど、楽しかったよー♪」
「くっ……」
 明らかに行動を見抜かれていたことに、寿は涙を飲みつつぬくもりを受け取る。
(……、あれ?)
 ふかふかバスタオルに寿が顔をうずめ、上げた時――
「ん? どうかした、梅ヶ枝君?」
 後ろに何かあるだろうかと、鷹政も釣られ振り向くが、何もない。
「あー なんか光っ…… いや、気のせいね。そーね」
 言っても信じてはもらえまい。
 寿は自分の目に嘘をつき、クルリとバスタオルで身を包んだ。




 一方。
(膝枕でクインを介抱出来る日が訪れるとは、ついに来たか俺の時代!)
 紳士としては、あのピンチからクインを護り抜いてこそ時代が来るというものかもしれないが、防御力に圧倒的大差があった。許して欲しい。
 広間のソファで、気絶しているクインの頭を膝に乗せ、アランはそのあどけない寝顔に見入る。
 柔らかな頬に触れても、喘ぎ ちがう 呻き声もあげない。
 いつまでもこうしていたいが、アランには残念ながら『足の痺れ』という回避不可能のバッドステータスが近づいていた。

「……目を覚まさない眠り姫は、キスで起こすべきだよな?」
 
 クインの背に、そっと右腕を滑り込ませ、上身を起こす。
 麗しの姫へ、さぁ


「眼 鏡 光 線 ッ ! 」


 炸裂した。
 意識が浮上したクインの起き上がりによる強烈な頭突きである。
 その威力たるや眼鏡から光線が放たれたが如し――

 ぱりんっ

 光線の強度に、眼鏡が負けた!!?
「「目が、目がぁっ!!」」
 光線を直撃したアラン、力の源である眼鏡の割れたクイン、互いに痛みに悶え苦しむ様は惨状としか表現が出来なかった。
「眼鏡、眼鏡……」
 こんな時の、非常用スペアは常備してある、問題ない。




 とりあえず切って煮込めばいいんだろう、そんな大雑把なシチューを囲みつつ、広間にてクリスマスにはちょっと早いプレゼント交換会が始まった。

「じゃあ、僕から紹介、行きますねー」
 莉音が笑顔で立ち上がる。
「金色の星型チェーンにスワロのついたストラップが、僕からでーす。ツリーのオーナメントみたいでしょー♪
赤いチャームは戒さん、青はブッキー、紫はクインくん、緑はアランさん、ピンクは鷹政さん!
クイン君には、眼鏡チェーンのがよかったかな……」
「いや、眼鏡ケースにつけさせてもらうよ、ありがとう、大事にする」
「……俺、ピンク?」
「あっ、消去法?」
 動揺を隠せずにストラップを眺める鷹政へ、莉音が笑ってごまかす。
「来年も、よろしくお願いします♪」
 ペコリ。お辞儀をして、つぎのひと。

「ん、私かな」
 座る順から察し、戒がコホンと咳払い。
「それぞれに似あうモノをチョイスしてみた!
アランは瞳の色のカフスボタン、クインは眼鏡拭き、ことぶこは柊のヘアピン、莉音は藤色のピアス、筧先輩は高級鰹節。どうだ!」
「どうなの!!」
 崩れ落ちる鷹政。
「なるほど…… 噂には聞いていましたが、これが『鰹節の人』ですか」
「クイン君、色んな意味でどういう意味なの……」
「俺も今日が初顔合わせだけど、わかったぜ。あれだろ、オチ担当なんだろ?」
「これは見事な鰹節……」
 アラン、寿の追撃弾に、筧節はしばらく立ち上がることが出来なかった(精神的に)。
「戒さん、ありがとー♪ ピアス、新しく開けようかな?」
 莉音にとっては見慣れた光景。大丈夫、鷹政はあの程度で完全に削れたりなどしない。気にせず、輝きを放つピアスを耳に当てて見せた。

「俺は公平に、全員おんなじ。シアバター保湿クリーム。唇とか手とか塗りたくれし!」
「ぐぬっ なんだ、その女子力高いプレゼントは!!」
 寿のプレゼントに、戒が反応する。
 しかも、それぞれ違う柄のカード添えだと!? 乙女か! 清純派乙女か!!?
「ふっ、俺が女子力において戒に負けるわけがないだろう」
「くぅーーーーっ」
「シチュー美味しいね、莉音君」
「大根入れるの、必死に止めましたー*」
「あったのか、大根……」
 戒と寿、見慣れた掛け合いをよそにひとまず腹でも満たそうか。

「もちろん僕も持ってきたさ。戒にはサングラス、紳士には片眼鏡、梅さんには伊達眼鏡、莉音には虫眼鏡。お似合いだろう?」
「最後、なにかおかしいですクイン君」
「わぁ、すごいや、雪の結晶も見れるー!」
 鷹政が異を唱えるが、当の莉音が喜んでいるようなので、まぁ良いか。

「俺からのプレゼントは――」
「「ストップストップーーーーー!」」
 もれなく全員の頬へキスをしようとした紳士へ、猛抗議が入る。
「なんでだよ、俺は紳士だぜ?」
「関係ない、紳士関係ない」
「仕方ない…… 戒、唯一のレディであるお前には」
「お、なになに、アランー?」
「瞳と同じ色のピアスだ」
 さすが紳士、ブレないところだけは、ブレない。

「急に誘ってもらった形だから、俺からは気の効いた物、贈れなくって悪いんだけど」
「あ、カレーなら充分です」
「うん、知ってる」
 戒の言葉に、鷹政は苦笑いで応じた。
「商売繁盛のお守り。斡旋所で、たくさん依頼を取って、無事に帰ってこれますように。無茶はしないようにね」
「「商売て」」
「稼いでナンボのお仕事です」
 フリーランス撃退士からのプレゼントは、世知辛かった。




 温かなもので空腹を満たし、穏やかな空気でプレゼント交換を終え、のんびりティータイム。
 スキーでハシャいだ体にも、じんわり疲れが出てくる頃。
 ちょっとした時間の隙間に、ビュウと風がロッジを揺らした。
「んー、吹雪が強くなってきたな…… アレ、電話が通じないんですけど!?」
 久遠ヶ原の友人たちへ、実況中継でもしてやろうかとスマホを取りだした戒が青ざめる。
 いやいや、山奥なのだ、元から圏外かもしれない。

 ――ガタンッ

 どこ、と判別のつかない物音。
 風で、何かが倒れたか―― あるいは他の、何か? 何?


「えーと、鷹政さん?」
 莉音が、夏の記憶を手繰り寄せる。
「格安で、ここのロッジ見つけた言うてたけど……」
 夏にもあった、こんなこと。
 あの時は、何も起こらなかった、けれど。
「あ、うん。知らぬが仏物件」
 ――いわゆるひとつの、心霊スポット。
「筧先輩ぃいいいいいい!!!!?」
 精密殺撃を繰り出さん勢いで、戒が詰め寄る。
「ははは、まったく怖がりだな、え、僕の紅茶と眼鏡がカチャカチャ言ってるのはあれだよ、寒いんだ」
 ソファから微動だにせず、クイン。
「放っておけば直るだろ」
 アランは感心なさげに、傍らのクインの髪へ指をさし込み、その質感を楽しむ――が、戒の怯えぶりについぞ折れる。
 レディが怖いってんなら、仕方がない。
「もてかわインテリ名探偵の出来上がり☆」
 寿は、ヘアピンや伊達眼鏡など、プレゼントをさっそく装備して探索準備完ッ了。
「じゃ、俺はロッジ内を確認してくるわ」
 かったるそうに、アランが腰を上げる。
「僕は外を確認してくるよ」
((それはフラグだ!!))
 眼鏡の位置を直すクインへ誰もが思い、寿が同行を申し出る。
「変な人なら捕まえなくちゃ! お化けだったらカメラに写るかな……!?」
 莉音もキャッキャと付いて行き、鷹政はロフトになっている二階部分の探索を受け持った。

「おー、みんな、気をつけてなー!!」

 笑顔で見送った戒が、静まり返った広間で気づく。
(私、一人じゃね……?)
 最後に行き先希望を告げるのを忘れてしまってな。
「フラグがどうとか気のせいだ、物音とか幻聴だ振り返らんからなっ」
 ぼふっ、勢いよくソファに身を沈めて。
 ――カチ、コチ、カチ
 古い壁掛け時計の秒針が、うるさい。
 外の吹雪の音が、うるさい。
 かさ、かさ、
 何かが忍び寄る足音が、うるさい――
「……あ、わかったクインだろ、全く阿呆の子なんだからハハ、は」
 背中への衝撃、視界に影…… こいつは、そうか、おまえが



「キャー寒い……!」
 ロッジのドアを押しあけて、莉音が悲鳴を上げる。
 吹き込む風は、思いのほかに強かった。
「ってグイグイ盾にしよーとすんな、寒ィって!」
「えへー☆」
 先頭を行く寿がわめく。
「一瞬フラグだとか何とか聞こえた気がしたけれど別に何もな……」
 クインが強がりを見せ、雪に濡れた眼鏡を拭こうとした時だ。

 ――戒の悲鳴。

「そういえば……。こんなTVゲームしたことあるけど、犯人は誰だっけ……?」
 あわててロッジ内へ戻り、広間へ向かいながら莉音が呟く。
 雪に閉じ込められた山荘。繋がらない連絡。第一の悲鳴、事件、殺人、思いもかけない結果は――
「そっちは大丈夫か」
「アラン! 外は異変なしだった」
「奥もだ。筧はロフトだから――」
(普段は変態紳士だけど、こういう時の判断力は頼れるよな、普段はry)
 情報を交換しながら、寿はアランの横顔を見る。
 そして、広間へ……




「そうかお前か、この鼠野郎がーー!!」
 泣き叫びながら死闘を繰り広げる戒の姿が、そこにあった。

「って鼠か! まー何事もねーならいーか……」
 消耗した。
 あー消耗した。
 髪をかきむしりながら寿が肩を落とす。
「はは、お疲れさんだったな。よし、気を取り直してココアでも淹れてやろう」
 笑い、アランがキッチンへ向かう。
 鷹政が苦笑して退治された大型鼠を追いやり、皆で暖炉を囲む。
「ふぅ、驚かせるんだから。まあ、眼鏡が曇ってて何にも見えなかったんだけどね」
 強がるクインは、両手で抱えるマグカップから立ち上る湯気に、再び眼鏡を曇らせる。
「ココアありがてーわ、美味ぇー」
 こんなに染みる飲み物だっけ!? 寿は涙を流す勢いである。
「あ、そういや、寝る時の部屋割って決まってたっけ?」
 落ち着きを取り戻した戒が、素朴な疑問を暖炉にくべた。
「……」
「………」
 男5人に女1人。
 なにかおかしい。
「お部屋は戒さんとアランさん以外なら誰とでも……」
「ちょ、莉音!?」
「クインと相部屋が良い、大丈夫何もしない、ちょっと同じベッドで眠るだけだ」
「ブレないな、紳士!?」
「自分の身は自分で守らなくちゃいけないから…… クインくん、がんばってね♪ あれ?」
 クインからもらった虫眼鏡で、面白おかしくあちこちを見まわしていた莉音が手を止めた。
「ソファーの裏に、お札貼ってあるー……」
 一枚は、剥がれている。
(ま、いっか)
「よくない、よくない。莉音たん? どうしてソレを見付けてしまったの……?」
 微笑む戒が、力を込めて莉音の肩を掴む。
「えっ…… お札って。何でこんなところにあるんだろう」
 ぺりり。
 自分が座っていた椅子の裏にも発見したクインは、躊躇なく剥がす。
「うぉおいクイン! 何で剥がしてんの! ジャパニーズオフダ、イズ、剥がさない! だろ!!」
「僕の眼鏡が曇ってるというのか!!」
「盛大に真っ白じゃ!!!」
 剥がしたお札片手に息巻くクインへ、寿もどう返せばいいかわからない。

「雑魚寝推ッ奨ーーー!!!」

 二人でも三人でも何が起きるか分からない。
 戒の叫びに、誰もが首を縦に振らざるを得ない状況となった。




「結局、雑魚寝かよ。俺クインと梅の間な。俺がお前ら纏めて護ってやるよ」
「や、アラン、俺ホラ、隣にいるとお邪魔でしょ? な? 俺は莉音と一緒に寝るって約束しt」
「鷹政さーん、そっち、毛布、足りてます?」
「ん? あー、だいじょぶだけど。こっち来る?」
「ちょ、やめて裏切りやめて!」
「紳士と一緒……なんだこの悪寒は……。光線の準備が必要かな」
「クイン、知ってっか、眼鏡光線は一日一度しか使えない。それ以上は眼鏡の寿命を縮めることとなる」
「えっ、なんだって!?」

(おかしい、逆ハーレムなハズなのに、ちっともそんな気がしないのは何故だ……!!!)


 暖炉の炎が爆ぜる音。
 訪れた静かな闇、窓の外は猛吹雪。
 大騒ぎして、怒られて、はしゃいで、熱狂で包まれた一日が心地よい疲労とともに終わろうとしていた。


 来年もまた、楽しく騒げますように。




【Frenzy,white X'mas 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja1267 / 七種 戒  / 女 / 18歳 / インフィルトレイター】
【ja2303 / 梅ヶ枝 寿 / 男 / 18歳 / 阿修羅】
【ja6473 / 紫ノ宮莉音 / 男 / 13歳 / アストラルヴァンガード】
【ja8087 / クインV・リヒテンシュタイン / 男 / 16歳 / ダアト】
【ja8773 / アラン・カートライト    / 男 / 24歳 / 阿修羅】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました!
筧を交えての酷i ひどく楽しい、クリスマス前の小旅行。
お楽しみいただけましたら幸いです。

N.Y.E煌きのドリームノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2012年12月30日

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