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『〜消えた人々〜 』
白鳥・瑞科8402)&(登場しない)


 任務の指令を受けた白鳥瑞科(しらとり・みずか)は、調査部に事件の最新情報の提供を求める一方、自らは早急に現地へと向かった。
 現場は大きな山を3つほど越えた、非常に辺鄙な場所にあり、人がなかなか訪れないところでもあった。
 そのため、事件が発生してからかなりの間、世間の目をあざむくことが出来ていたのだった。
「確かに調査部の情報通りですわね…」
 ひとつ手前の山の頂上から、その村を見下ろし、瑞科は先ほど聞いた話を頭の中で再度組み立てた。
 ここ最近の一番新しい情報によると、人が消えるのは夕方から夜の時間帯で、夜中から朝方、そして日中ではないらしい。
 そして、毎日ではなく、週に一回程度だそうだ。
 ただ、最近は村人も警戒しているのか、その時間帯に出歩く人間は減っているそうで、めずらしく10日も人が消えていないとか。
「ということは、村人全員が敵の仲間ではない、ということになりますわ」
 警戒して外出を控えるということは、敵を恐れている側の人間がすることだ。
 つまり、その時間帯に歩く人間の中に、敵に精通する者がいる可能性がある。
 日が完全に落ちる前に少し聞き込みをしようと思っていた瑞科だったが、下手に人の間を探り回ると、疑いの目を向けられる恐れもある。
 ならば、今いる場所に潜んでその時間まで様子を見、その上で敵を発見しに行こうと、瑞科は決めた。
 
 
 
 木々の間に隠れ、時をやり過ごすこと2時間、ようやく太陽は山の端に橙色の光を一線残して沈んでしまった。
 瑞科は軽やかな足取りで、険しい山を難なく下り、山あいの村へと到着した。
 小さな木の家々からは、暖かいわずかな光がもれている。
 その光を頼りに周囲を見回すが、今のところ、特に不審な人物はいないようだ。
 山の上から観察している最中、瑞科は数人の人物が、村のはずれの少し大きい建物の中に消えて行くのを見ていた。
 その建物がどんな目的で作られたものかはわからないが、現時点まで、その建物の中から誰かが出て来るのを見ていない。
 それに、なぜかその建物は、全体が黒い瘴気に覆われているように見える。
 瑞科は油断だけはしないように気を引きしめて、その建物へと歩き出した。
 だんだんとそれが近付くにつれ、瑞科の目が鋭い光を帯び始める。
 こういうとき、彼女の繊細で可憐な印象が、がらりと変化する。
 裁きを与える正義の女神のように、容赦のない断罪の清冽さを全身から発するのである。
 耳に聞こえるのは、変調した讃美歌と呪詛のような言葉の羅列――この中で不穏な集いがおこなわれている証しだ。
 両開きの大きな扉を両手で押し開け、彼女は堂々と真正面からその建物の中に乗り込んだ。
 祈りを続けていた者たちが、ぐるうりと不自然な速度で首をこちら側に回し、瑞科をねめつける。
『何者だぁぁぁあああぁぁあああ』
 叫びと同時に、土気色をした顔の人々が、瑞科に一斉に襲い掛かった。
 ひらりと服の裾を翻して、瑞科が大きく後ろに飛んだ。
 見えそうで見えない、スリットごしの脚に、不埒な視線がからみつく。
 ふふ、と小さく笑って、瑞科はその手に剣を携えた。
「すぐに終わらせて差し上げますわ」
 虚空に一閃。
 剣圧が爆風のように人々をなぎ倒す。
 その間を、風の精霊のようにしなやかに駆け抜け、瑞科は先頭で祈りを捧げ続ける人物を狙う。
 おそらくあれが敵の首魁だ。
 案の定、瑞科の剣先が届くかどうかという距離まで近づいたとき、その男は横に跳躍して一刀目を避けた。
 だが、それすらも瑞科の策の内だった。
「甘いですわ」
 静かに宣言した彼女の剣は、男の降り立つところを見越してくり出されていた。
『ぐああっ』
 カエルがつぶれたときのような、汚い声が悲鳴をつむぐ。
 男が倒れたと同時に、背後から襲って来た人々を余裕の表情でかわして、瑞科は一振りで人々を昏倒させる。
 あっという間に動く者のいなくなった建物の中で、瑞科は悠々と首魁のもとへと歩み寄る。
 そして、銀色に輝く剣の刃を、その男の首元に添えて、言った。
「なぜ人々をさらったんですの?」
『生贄だ』
「そんなところですわよね…面白味のない方」
 軽く肩をすくめる仕草をしてみせて、瑞科はあっさりとその刃を横になぎ払った。
 ころん、と敵の首が床に転がり、その傷口から黒い瘴気が立ち昇った。
 これはきっと建物を包み込んでいた瘴気と同じものだろう。
 既にこの男も人間ではなかったのだ。
 瑞科は背後を振り返った。
 そこに倒れている人たちからは特におかしな気配は感じない。
 もしかしたら行方不明だと思われている人も、この中には含まれているかもしれない。
 何にせよ、
「今回もあっさりと終わってしまいましたわね」
 どこかがっかりしたような響きを含んだ台詞を残し、瑞科は薔薇色の吐息をついてから、その村を出て行った。
 
 
 〜END〜
PCシチュエーションノベル(シングル) -
藤沢麗 クリエイターズルームへ
東京怪談
2013年01月04日

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