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『ハロウィンタウンの銃撃戦 〜マジかめんどいな編 』
百々 清世ja3082


 街はハロウィン真っ盛り。
 大きな複合型商業ビルはオレンジと黒に飾り付け、客の呼び込みに余念がない。
 表のカフェは、勿論パンプキンにモンスタースイーツにと目にも楽しく。
 楽しいばかり、鮮やかなばかりの今日は31日。
 街を歩くと、ところどころにどこかのキャンペーンか魔女に扮した女性がキャンディ
を配る。
 その一方で、街の物陰。
 ぞわり、と何かが湧き出しうごめき始めていることに、まだ誰も気付かない――。



「おおー。見事に街はオレンジ色一色なんやな〜」
 ショッピングモールで前のめりになりながらぐうるり、と周りを見回す少年がいた。
「な、清世おにーさん。上映中の映画もやっぱハロウィン関係ちゃうんかなぁ?」
 久遠が原学園高等部2年の小野友真(ja6901)である。
「……」
 その視線の先には、同じく大学部3年の百々 清世 (ja3082)が無言で立っていた。背は高く、目鼻立ちがハッキリした男で、髪の毛は襟足から長く伸び両首筋から鎖骨をなでるところまである。いや、前髪も高い鼻くらいまであり、後ろは軽くまとめて短いポニーテールにしている。
 どことなくチャラいところがあるが、今は無言。
 半ば呆れた視線で、友真を見下ろす形で。
「あっちにシネコンあるからちょい確かめてくるな」
 どっこい、友真は清世の反応なんざ気にも留めずシネコンの方に駆け出そうとする。
 しかし。
「ぐえっ!」
「……おのちん。あんまふらふらすんじゃねーよ」
 清世が友真のパーカーのフード部分に指を引っ掛けて止めた。危険なので真似はしないように。
「俺たちゃ英雄部のハロウィンパーティの飾り付けとか色々買い出しにきたはずじゃねぇ?」
 ひどいことをしてもさらりと言ってのけるのは、友真が大きく踏み出した右足を残しつつも上体を反らしつつ身を捻り転倒することもなかったから。友真も当然のような身のこなしで、もしかしたら日常茶飯事の光景なのかもしれない。
「買出しって何買ったらいいんー?」
「そりゃお前……」
 不満そうに眉を寄せる友真に、年長者らしく胸を張る清世。
 が、しかし。
「おい。おのちん、あれ……。魔女じゃねーか? しかもなかなか美人……」
「マジでか? って、ホンマや」
 突然、清世が真顔になったのは、奇麗な髪のお姉さんが三角帽子の魔女装束で愛嬌を振り撒いていたから。腕に引っ掛けたバスケットからキャンディーを取り出してはチビッ子に配っている。
 次の瞬間、二人はチビッ子に交ざってキャンディーをもらっていた。
「あら。ハロウィンパーティーの飾り付けを買いに来たの? だったら、あっちに行けばいい店そろってるわよ?」
 魔女からキャンディーと情報とにっこりウインクをもらってご満悦の二人。いや、最後のは主に清世が喜んでいたが。
 早速教えられたほうに行く友真だったが……。
「おにーさんこっちこっち、……って何それ面白そうやな」
 またも清世が余計なものを発見してそちらに行っていた。このあたり、年長者としていかがなものか。
「おお。おのちん、見てみろって。特製カボチャプリンだってよ。Cカップから選べるらしいぜ?」
「Aカップは?」
「商品として問題があるのでCカップかららしいです〜」
 ケーキ屋のショーケースにかじりつく清世の背後から、素朴な疑問を口にする友真。これにスタイルの良さそうな女性店員がショーケース越しに答える。
「へえ〜、メガカップサイズもあるんか〜。ところで店員ちゃんは何カップ?」
「ちょい、おにーさん!」
「ギガカップサイズ! ……も、あります」
 一瞬、おお、と色めき立つ清世だったが、どうやら商品の話らしい。やや失礼な話をしてしまった手前、カボチャクッキーを購入して辞す。
「ま、ああいうのは美人に対する礼儀的な、半分お約束な話題だがね〜」
「あ、甘いもの美味しそうなんであれ食べるー」
 カボチャクッキーをさくっ、とやりながら年長者として青少年に伝えておきたいことを話す清世だったが、今度は友真がてててーっと余所に行った。まったく人の話を聞いちゃいない。
 しばらく後。
「うん。おのちんの買ってきた甘栗もうまいな。……それはそれとして、腹減ったしなんか食べよー」
「おやつとご飯は別やしな〜」
 百貨店棟に入ったところにあるベンチに座って、熱心に甘栗に爪を立てて割りながら、出てきた身を口に放りながらそんなことを話し合っていたり。ていうかあんたら今まで食べ物しか買ってないじゃんハロウィンの飾り付け買いに来たんじゃないんかい! とかいう突っ込みを入れる人物は不幸にもここにはいない。
 そしてここでとんでもない事態となるッ!



「きゃーっ!」
 女性の悲鳴が百貨店奥から響いてきた。がた、と横で立ち上がる音がする。ぼろりと甘栗が転がり落ちるが友真はまったく気にしない。
「おにーさん、行くでー!」
(マジでか?)
 内心呟くが口にはしていない。
 清世、自分が誰だか分かっている。
 撃退士だ。
 しかし、面倒くさい。
 状況を眺めるに、百貨店の一般客を相手に、ハロウィンのジャック・オ・ランタンの頭部をした骸骨が棍棒を持って暴れているようだった。
(めんどくさいことするなー。んなことして何が楽しいんだ、こいつら)
 そんなことも思う。
 が、気付いた。
「……行くで?」
 にこーっ、と友真が駆け出した姿勢のまま振り返っている。
「土下座しなくちゃ」
 という声も聞こえたが、これは友真がしゃべったわけではない。
 清世の脳裏で、遠い記憶の誰かが寂しそうな声で言っていたのだ。果たして、女遊びをした時のいつかの女性の声だったかもしれないし、遠い昔の自分の声だったのかもしれない。
「土下座しなくちゃ、か……」
 ぽつりと呟いて立ち上がった。大きな溜息を一つ吐いて。
「てーか……こんなでかいビルなら撃退士の警備員くらい、雇っとけよ……」
 遠くを見ていたのは、わずか一瞬。すぐに我に返る。ポケットから愛用のクーゲルシュライバーを取り出し指の間でキリリと回したのはすでに癖と言っていいかもしれない。それだけ手に付いた、武器にもなるボールペンだった。
「あそこやね。……おにーさん、これ使ぅてや〜」
 友真はこの様子を見て安心したようににこり。黒い自動式拳銃「ヒポグリフォK46」を投げてきた。自分も魔法陣のようなものが描かれた銀色の拳銃「シルバーマグWE」を手にして、改めて騒ぎに突っ込んでいく。
(つまり、前に出る必要はない、かー)
 躍動する背中とパーカーのフードを見つつ、後輩というか年下の友人を頼もしく思う。自分も銃を持っていたのだが、それは使わないことにした。
「しっかし、どういうこった?」
 入り組む百貨店の内部を確認し、距離を置いて友真を追いつつ思う。
 敵のカボチャ頭の骸骨どもは、派手にショーケースを割ったりマネキンを倒して騒ぎを大きくしつつ一般客を追っているのだが、いまだ犠牲者はいないのだ。
(奴らの運動能力からいって、もう誰かを殺そうと思えば殺せるはずだが……)
「えーと、とにかく一般人には絶対傷つけさせへんよーに!」
 前線では友真がそういいつつクイックショットで威嚇射撃して、横に逃げていた。
 この動きに敵は反応し、友真を狙い始めた。
 やや、敵の運動能力が上がったような気がした。
 あるいは、本気を出し始めたというところか?
「まさかな」
 考えすぎじゃねーの、と額に手をやり戦闘に集中する。



 この時、友真はここぞとばかりに両手構えでストライクショットを放っていた。手堅く放ったのは敵の体が骸骨だから。弾丸がすり抜けたら笑い話にもならない。
――ガボッ!
 弾丸は頭部に命中し、カボチャ頭が炸裂した。一撃討伐である。
「次はどついや〜」
 会心の結果に顔を輝かせて周りを見る友真。
 が、彼は気付いているか。
 すでに次の敵に狙われていることをッ!
「あっ!」
 ここで察知したようで、体を捻って投げ出しつつ銃を構える姿が見て取れた。
 もちろん、この動きは後に控える清世には手に取るように分かっていた。
「おのちん、やるね〜。……おっと。ざーんねん、近づかせねぇよ?」
 めんどくさいの一言もなく、ヘッドショットでぶっ放す。
――ガボッ!
 頭部を狙った一撃は、それだけでカボチャ男の頭を粉々にふっ飛ばす。
「ちょっとー! お前怪我したら怒られんの俺なんだから!」
 無事か、とは聞かない。今のタイミングはそう聞くだけ野暮だし、そう聞いて安易に頭を上げられても困る。
「まだ敵は近寄ってんでねぇ」
 ぶっ放す・ぶっ放す。
 これでさらに来ていたカボチャ男は粉砕だ。
 ここで、友真がショーケースの谷間から顔を上げた。こっちを見て笑っている。
「おにーさんにありがとー!」
「いーから前見ろって! サボってるなって!」
 まさか本当に顔を上げてこっちを見られるとは思わなかった。
 慌てて真面目な風をやめた。
「ほな、ガンガン倒すでー」
 ひらりとショーケースを越えて前進する友真の姿は喜々としたものだ。
 清世も援護すべく続く。
 友真が移動砲台であるなら、自分は極力動かない固定砲台と心得る。
――ガゥン!
「おのちんの邪魔はさせねー」
 横合いから近付く敵を倒し、呟く。
 戦いはもうしばらく続きそうだ。



 そして、随分時間が経過した。
「やれやれ、終わったな〜」
 友真が一息ついた。
 だが、戦闘だけの疲れではない。
 あらかた敵を片付けて、駆けつけてきた援軍に撃退士であることと事情を説明して、現場調査につきあってそれがすべて終わって……とにかく、諸手続きでも疲れた。
「疲れたー」
 清世も同じで、その場にへたり込む。
「いや、おにーさんここで座ってたら通行人の迷惑ちゃうん?」
「頑張ったんだからなんか奢れよ、アイスがいい」
 清世、無茶言った!
 しかも突っ込む友真に銃を返すと、煙草を取り出すという始末。
「えっ、俺が奢るん? ていうか、ここ禁煙や。……しゃーなしなー」
 友真はあまりにぐだぐだな展開に慌てて周囲に視線をやる。すでに強請りに近い。
 ともかく、近くにちょうど喫茶店があった。先の騒動の被害はなく通常営業している。
 悪くない、と感じる清世。だが簡単には立たない。何せ疲れているのだ。友真より働いてないのは明らかだが。
 はあっ、と溜息吐きつつ友真は清世の腕をつかんで立たせ、「とにかく入ろ」と喫茶店を指差す。これでようやっと、移動。
「よーやく一服できるわけか。……んで、アイスは、と」
 喫茶店に入りメニューを手にする清世。しかし、それは遅かった。
「何がいいかな、店員のお姉さーん、おすすめのんお願いしまっす」
 勢いに乗ったらもう手遅れ。友真が店員に一任してしまっていた。
「特製カボチャアイスが期間限定でおススメです。Cカップサイズから大きさが選べますよ?」
「またそのネタかい〜!」
「へえ〜、メガカップサイズもあるんか〜。ところで店員ちゃんは何カップ?」
 なんか聞いたことあるような展開が繰り返されたり。
 結局、注文はギガカップサイズの注文には至らずメガカップで落ち着いた。
「ふぅ〜っ」
「ん? どないしたん、おにーさん?」
 注文後の一瞬の静寂。
 友真が清世の様子に気付いた。
「もしかしたらさっきの、騒ぎを大きくするだけの陽動で別の場所が本命だったのかもな〜」
 と、清世は言おうとしたが、やめた。面倒くさいのだ。
「いや。結局、飯がアイスになったな〜、と」
 くしゃっ、と細いピアニッシモ・ヴィヴを灰皿に押し付けながら笑っておいた。
「そっかー。それじゃ、あとでご飯やな〜」
 などと笑う友真だが、気付いているのだろうか。
 ハロウィンパーティーの飾りをまったく買ってないことを。
 ともかく、二人はそんなことは露とも気付かずやがて運ばれてくる特製カボチャアイスメガカップサイズ一人前ずつを笑顔で堪能するのだった。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ja3082/百々 清世/男/21/インフィルトレイター
ja6901/小野友真/男/17/インフィルトレイター

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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百々 清世 様

 初めまして。OMCライターの瀬川潮です。
 ちょっとおにーさんしっかりしてくださいよ〜っ(笑)、と内心突っ込みつつ楽しませていただきました。おのちんとの楽しい日常が目に浮かんでくるようです。
 おにーさんの方は、クレバーな活躍を。裏設定ではやはりこちらは陽動で、どこかで騒動があったという設定ですがお気になさらず。スイーツはこちらのアレンジ。白い目で見られたら、ライターが全て悪い、で(笑)。

 この度はご発注、ありがとうございました♪
ハロウィントリッキーノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年01月07日

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