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『クリスマスキャロルが終わる頃には side愁也&遥久 』
夜来野 遥久ja6843


 クリスマスは、大切な人と、とっておきのひとときを。
 ……クリスマスだけが特別だなんて、誰が決めた?
 大切な人、イコール恋人だなんて、誰が決めた?


「みんな、来てくれるって。クリスマス外したのは正解だったなー」
 全員からの返信を確認し、笑顔で振り向く愁也へ、遥久も頷く。
 部屋を提供する遥久は準備がてら、出入りの家政婦にちょっとした指示を出していたところだ。
 クリスマス当日を外した、クリスマス会・兼・忘年会。
 気心の知れた仲間内だから、名目は何であれ楽しめることは間違いない。
「どうせだから、それらしくホールケーキも用意しておくか……」
 作れない環境ではないが、野郎だらけで手作りケーキを囲むのも虚しさというスパイスがキツかろう。
「ん、だったら交換用のプレゼントとかも、纏めて買いに行くか」
 ひとり一品、プレゼント交換用のアイテムを持参のこと。
 招待メールの最後には、そう書き添えておいた。
 ユーモア溢れる仲間たちだから、きっと愉快なことになるだろう。
 愁也の提案に遥久も快諾する。
 留守は家政婦に任せ、二人は年の瀬の街へと出ることにした。




 チャイムの音と、賑やかな声。
「メリークリスマース!」
 ドアを開ければ、一臣と友真が紙袋を掲げてご機嫌に登場。
「おう、上がれ上がれ。一番乗りだな」
「ってことは、若様はまだ?」
「いやぁ、それがさー」
 ニヤニヤと、企みを隠しきれない愁也がサプライズを打ち明けようと――

「ハッピークリスマース!!」

「うわっ、筧さん!」
「えっ、筧さん?」
 一臣たちの背後から現れたのは、満身創痍のミイラ男――もどきの、筧 鷹政であった。
 一発で見抜いた一臣が、驚きと笑いの混じった上ずった声を出し、釣られる形で友真が反芻する。
「や、クリスマスぶり? カレーは美味しかったかい?」
「……根に持ってるんですか、自分であんなところに立っててヤダー」
「あそこまで本気で来るとは思わなくてだな……」
 クリスマスシーズン、久遠ヶ原撃退士に向けた、ちょっとしたイベントがあった。
 卒業生の鷹政は有志の一人として参加し、『俺を倒してカレーをゲット』なる無茶な企画を立ててみた結果がkonozamaである。
 生徒達に本気でフルボッコにされた。
「筧の鰹節をふんだんに使用したカレー、大好評でしたね!」
「俺の屍を何度超えたか言ってみろ……!!」
 学園イベントで重体とかないわー、笑いながら鷹政は顔に巻き付けていた包帯をハラリと落とす。
 治癒力はさすがの撃退士、重体と自称しているが、言われなければわからない程度に外傷は回復している。
「ということで、若杉君から誘いをもらったんだけど…… 俺もお邪魔していいのかな?」
「若ちゃんだったか!」
 どういう経緯で鷹政が登場したのか解らなかったが、それなら一臣も納得である。
 学園で顔を合わせることは多いが、連絡先を知るほど深い交友を持ってる相手は限られている。
 今回のメンバーであれば、自分か英斗あたりだろう。
「どうぞどうぞ! 楽しくやりましょう。何かあってもアスヴァン居るんで心配なく!」
「……何かあるような忘年会なん……?」
 愁也の言葉に、友真が不安そうな表情を見せた。




「キッチン借りんぞー?」
 カウンターへ、買いこんできた食材の入った袋を置いて一臣がシャツの袖を捲る。
(へー。器具もスパイスも一通り揃ってるな。こいつら料理するのか……)
 綺麗に手入れされたキッチンを見渡し――
 ガス台の上に鍋、その蓋に貼られた書き置きに気づく。
「……家政婦……だと」
「ニタさんが、なんやてー??」
 ざわっとした一臣の背後から、友真がヒョイと姿を見せた。
「ああ うん、そうね、ニタさん……居る所には居るんだなぁ」
 忘れかけてたが、愁也も遥久もお育ちが良かったんだっけ!!
「おでん用意してるって言うから、洋酒より日本酒かなと思ったけど…… クリスマス会も兼ねてるって言うからチキンは俺が調理しようって思ったけど!!」
 おでん、家政婦任せかYO!
「くそっ、なんか燃えてきた。見てろよ、おでんより美味いハーブチキン作ってやる」
「一臣さん、かっこいー! ほんで、これはいつ使うんー?」
「……友真? いつの間にそんなものをカゴに入れてたの?」
「え、今日は闇鍋やんな? 違うん?」
「ちがいます」
 横入りして来た愁也が、友真の頭を叩いた。
「愁也さん、すぐそうやってばしーする!! ……そんじゃ、これはおやつにするー」
「それがキノコタケノコにも幸せな結末だと思うぜ……」
 愁也に襟首を掴まれる形でリビングへ向かう友真の背を、一臣がそっと見守った。


 やや遅れて、英斗が到着する。
「すみません、準備に手間取って」
「問題ありません。急な誘いに応じてくださってこちらこそ―― ……それ、は?」
 出迎えた遥久が、英斗の抱える大荷物に視線を移す。
「あ、筧さんが来てくれることになったんで、6人だったらできるかなーと思いまして、持ってきました」
 つまり、ゲームか何かの用意らしい。
「お気遣いありがとうございます。持ちますよ。部屋の中へどうぞ」
「はい、お邪魔します」
 受け取った荷物は、大きさの割に軽かった。
(……?)
 パーティーアイテムとは、得てしてそのようなものか。
 些事として流し、遥久はチキンの焼ける香り漂うリビングへと向かった。




「若様やー!!」
 英斗の登場に、未成年同士の友真が表情を輝かせた。
 料理が苦手であるため一臣の手伝いも満足にできず、皿や他の食べ物のセッティングにとパタパタしているところだったのだ。
 愁也と鷹政は、何やら酒の話で盛り上がっている。おのれ成人め。

「これで揃ったかな、じゃあ着席ー!!」

 チキンの焼き上がり、そして英斗の到着が重なり、愁也が手を鳴らす。
「えー、本日はお日柄もよくー」
「「結婚式か」」
 おでんの鍋をテーブル中央にセッティングしたところで、グダグダにパーティーは始まった。


 おでんとチキン、それに持ち寄りの食べ物がテーブルを飾る。
 大学生たちは一臣がぬる燗にした日本酒を、未成年たちはそれを眺めつつソフトドリンク。
「それにしても、もう今年も終わりかー…… 色々あったなぁ」
 クリスマス何処行った。切り分けたチキンを口に運びながら愁也が2012年を振り返る。
 なんだかんだで目まぐるしい一年だったように思う。
 学園生活、撃退士としての戦い、交友関係、目標……
 自分自身の『軸』はブレていないつもりだが、随所で大きく影響を受け続けてきた。
「色々ありましたが、まぁ変わらないものは変わりませんよね」
 非モテとか非モテとか非モテとか。
 英斗は含んだ言い回しをしてみるも、顔を上げれば恋人持ちばっかりじゃないか!!
「うん、変わらないよね」
「希望を持てない未来を示唆しないでください……」
 見透かした鷹政の同調に、英斗は更に落ち込むこととなる。
「変わるって言えばさぁ」
 気づかぬ愁也が、おでんの玉子を頬張りながら、自分の転機となった依頼を話題にした。
 それを革切りに、互いにこれまで印象深かった戦いの話となってゆく。


 さて。程よくアルコールが回ってきた頃。
「よーし、二人羽織しちゃうぞー!」
 愁也が拳を突き上げた。
「おい、愁也」
「しちゃうぞー!」
 ノンアルコールの友真もノリノリで便乗。
「そんな事もあろうかと」
 キリッとした顔で荷物を取りだすのは英斗。こちらもノンアルコール。
 取り出したるは、大きめの半纏が三着。
 なるほどのボリュームと軽さであった。
 そも、言って止まる幼馴染ではないことは遥久も承知しており、形式ばかりの制止は一度に留め、友人たちの流れに任せる。
「ハハ、負けねェぜ! 面白い事には全力で流される――それが鰹節の心意気」
「加倉君、なぜ俺を見る」
「二大ブランドの一端を担う身として!!」
 加倉の鰹節、筧の鰹節、雌雄を決する時が来た!!
 いいのか、この流れで。
 久遠ヶ原に来て一年と満たないが、遥久が学んだことの一つ。

『流れている時は、流しておけばいい』


 愁也と遥久
 一臣と友真
 英斗と鷹政
 この組み合わせで、何を競うでなく二人羽織deおでん大会がスタートした。



●常に今を生きる
「前と後ろ、どっちがどっちかって重要だよな!!」
 じゃんけんで決めるべく、気合を入れる愁也。
(勝てると思ってるのか……)
 長年の付き合いで、遥久は愁也の手の内を知り尽くしている。
 少なくともここ数年、じゃんけんで愁也が勝ったことがないことに、当人は未だ気づいていないらしい。だから負けるわけだが。
 ――じゃんけん、ぽん。
「……俺が後ろで異論は無いな?」
 愁也は悔しがっている。やはり気づいていないようだ。


「もうちょい右、右!」
「右? これだな」
「だからなんでそれ取るんだよ!」
「暴れるな。危ないだろう」
「危なっ、 だ、ぎゃあああ」
 愁也のナビゲーションと箸の感触で、遥久は餅巾着・こんにゃく・大根など、熱くて食べられない絶妙なチョイスを重ねてゆく。
 じたばた暴れる愁也の体は片腕一つでガッチリホールド。
「全てはじゃんけんで負けたお前が悪い」
「くっ…… じゃんけんの女神さまのツンデレ……ッ」
 半纏から開放され、絶望に打ちひしがれる愁也を横目に、遥久は上機嫌でおでんを味わった。




「クリスマスと言ったら、ケーキですよね」
「更にケーキとか…… 神様か……!」
 英斗の言葉に友真が真顔で震える。

 満身創痍。
 おでんとのバトルの後、数名が遥久によるライトヒールのお世話になりながらデザートへと到着した。
 冷蔵庫で冷やしてあったケーキの御開帳に、英斗や友真のテンションが上がる。
「コーヒー・紅茶、どうするー?」
 キッチンで湯を沸かしながら、カウンター越しに鷹政。
「紅茶、俺、紅茶がいいです」
 迷いなく英斗が挙手する。
「できる男は、紅茶を飲む姿もサマになる……」
 キリッと続けると、友真も釣られて紅茶コール。
「大学生チームは? お酒も良いけど、ちょっと休憩挟まない?」
「そうですね…… 愁也には冷たい物の方が良いでしょう」
 先ほどのおでんで、熱くなりすぎた。
 幼馴染を横目に、遥久が立ち上がる。
「筧殿、私も手伝います」
「あ、助かる。ありがとう、夜来野君。ていうか勝手にキッチン使わせてもらっちゃってるね……」
「あれだよね、筧さんってお茶だの菓子だの変に詳しいけど、なんで?」
「変とか言わない。事務所に秘書なんていないから、来客があれば自分達で淹れるし、茶菓子の情報なんかも色々ね」
「……あー」
 カウンターに肘をつき、紅茶を淹れる様子を眺めていた一臣が得心する。
 忘れがちな設定だが、鷹政は個人で事務所を構えるフリーランスなのだ。
(自分……達、か)
 あたりまえのように発せられた言葉が、過去のものであることを一臣は知っている。
(今は、一人……なんだっけ)
 詳細は聞いていない。
 学園で引き受けた依頼の話題になった時、鷹政はずっと聞き手に回っていた。
「加倉、運んでくれるか」
「あいよっと」
 人数分のカップとグラスの乗ったトレイを遥久から手渡され、一臣は思考を切り替えた。


「じゃあ、ケーキを食べつつプレゼント交換と行きますか」
 氷の入ったオレンジジュースを片手に愁也が一声。
 交換用のプレゼントは、既に全員分、準備したボックスに入れてある。
「時計回りで一つずつ、で良いかな」
 提案に反対も無く、順番に箱が回されていった。

 まず、引きだしたのは英斗。
「えぇと…… シルバーのマネークリップ……うわ、センスいいですね」
「サンキュ、俺からだ。大事にしてね、若ちゃん♪」
「加倉さんですか! はい、大事に…… 籤を挟むのに良さそうだな」
「若ちゃん!!?」
「冗談です、冗談。はい、次は加倉さん、どうぞ」
 真面目とコメディの落差が激しい英斗なだけに、その本心を見抜くのは難しい。

 さすが若ちゃん、と笑いをこらえながら一臣はボックスを受け取り、右手を突っ込んだ瞬間に諦めの表情へと変わる。
「これを回避したあたり、さすが若ちゃんだと思う」
 取りだしたるは、トイレ掃除用品のセット。
「愁也、おまえな……!?」
「ストップストップ、それだけじゃないから! ほら、ちゃんと開けてよ、加倉さん」
「開けてって……」
 ニット帽と手袋もセットになっていた。
 ちなみにトイレ掃除セットとデザインは統一されている。
「俺…… 時々、お前が解らなくなるよ、愁也」
「深みのあるイイ男、って受け取っておきますね!」

 肩を振るわせる一臣から、友真がボックスを受け取る。
「うーん…… ……うーんと」
 一瞬、指先に嫌な感触を覚え……回避し、小さな封筒を引き当てた。
「鍵?」
「あ、それ俺」
 鷹政が挙手。
「俺の事務所の合い鍵。色気がないけどさ、まぁ社会見学の場所の一つとして参考になれば。いつでも遊びにおいで」
「筧さん…… そうゆうんは、女の子に渡すもんやと思う……」
「渡す相手がいればな……」
「「すんませんでした!」」
 なぜか一臣まで揃って頭を下げる。
「けど、俺らインフィルだから、解錠スキルあるしなー?」
「そういって俺の相棒も鍵を持たなかったよ……。心臓に悪いから正当な手段で入っていただきたく」
「で、これ量産すれば良いってことですか」
「……愁也」
 悪乗りする愁也を、遥久が咎める。
「残念、そこらじゃ合い鍵作れない仕様の物だよ。それは持ち歩かなかった相棒の分」
「「重いわ」」

 続いて、遥久。
「……」
 先ほど友真が回避した異物を持ちあげる。
 包装紙に包まれた、何やらデコボコした……置物? サイズの割に、重い。
 首を傾げながら包装を解くと、出てきたのは――
「「すげぇ!!」」
 覗きこんだ友人たちが、異口同音に声を発する。
 久遠ヶ原学園のジオラマ、それも精巧に作られた。
「あ、それ、俺のです。よくできてるでしょう」
 周囲の反応に頬を染めながら、英斗が小さく挙手をした。
「若杉殿が作ったのですか?」
「はい。既成のパーツにアレンジ加えて……。自分でも結構、気に入ってたんで。学園内の依頼を受けた時とか、シミュレーションに使えるんですよ」
 立体的なマップだ。
 英斗の言葉に、遥久が感心する。
「愁也さんをドツくアイテムではないんやなー」
「素手で充分だからな!」
 ばしー
「なんで俺を殴るん!!?」
「……愁也」
「はい。すみません」
 早速ジオラマを振りかざされ、愁也は正座した。

 姿勢をただし、愁也がボックスへ腕を突っ込む。
 残るプレゼントは二個。
 さて…… どちらを取るか。
「こっち! ――コーヒーカップセット、か」
 二人用、対になった洒落たデザインだ。
「俺からや。遥久さんと一緒に使ってくださいー」
 鷹政か英斗に当たっていたら、笑えなかったかもしれない――などとは口にできない。
 心の中で安心しながら、友真が手を振る。
「おう、大事に使わせてもらうな。さんきゅ、友真!」
 つい先ほど、ばしーしたその手で、愁也は友真の髪を揉みくちゃに撫でる。
 体当たり兄弟系な二人である。

「――ということ、は」
 ラスト。鷹政は――必然的に。
「私からですね」
 遥久セレクト、本革製の財布とキーケース。
「シンプルですけど、使い勝手が良い物を選んだつもりです」
「……俺からのプレゼントが鍵で、俺がもらったものがキーケースか」
 偶然のめぐりあわせに、鷹政が思わず笑みをこぼす。
「ありがとう。大事に……長く、使わせてもらうよ。せっかくだから事務所の鍵も新調しようかな」
「筧さん、それじゃ俺がもらった鍵、意味なくしてしまう……!」
「そういえば」
 ごめんごめん。鷹政が友真の髪を更に揉みくちゃにした。




 夜も更け。
「――客間もありますが」
 寝落ちしてしまった未成年二人の様子に、遥久が腰を浮かせるも、
「ま、雑魚寝も良いんじゃないかな。下手に動かして起こすのも可哀そうよ」
 酌をしながら一臣が片目を瞑る。
 酔っ払いに負けない勢いではしゃいだ友真も英斗も、テーブルに突っ伏しながら幸せそうな顔をしている。
 それを見れば、確かに……と思う節はある。
「せめて毛布を持って来ましょう」
「俺も手伝うわ」
 愁也が立ち上がり、その間に一臣と鷹政とで、眠りに入った二人をテーブルから引きはがし、横たえる。

「めっちゃ楽しい、幸せやでー…… ありがとなー」

 ころん、と寝返りを打って、友真。実に平和な笑顔だ。無意識だろうが、キュ、と甘えるように一臣の袖を掴む。
「そういうところが、良かったの?」
「ぶは」
 鷹政の一言に、一臣が咽こんだ。
「いや、見ててなんとなく」
「まぁえぇ、多くは語りません」
 珍しい一臣の一面に、鷹政がカラカラと笑った。
「鍵―― 小野君に受け取ってもらえてよかったよ」
「……って言いますと?」
「もれなく加倉君も付いてくるだろ」
「人を付属品みたいに」
 そうこうしているうちに、愁也と遥久が人数分の毛布を抱えて戻ってきた。
「何? なんの話??」
 飾り棚からワインのボトルを取り出しながら愁也が会話に入る。
「…………筧さんは」
「うん」
 一臣が言葉を選びながら訊ねる。
「この先、ずっと独りなんですか?」
「えっ いつかは可愛いお嫁さん欲しいけど」
「またそんなヌルイ夢を!! いや、そうじゃなく」
「月居君と夜来野君もだけど…… 大事にしてほしい、って思う」
 噛み合っているような、噛み合わないような会話。
 それでも、なんとなくは伝わる。
 鷹政は、久遠ヶ原入学以来の相棒を失っている。そのことだろう。
 学園で出会って、卒業して、一緒に事務所を立ち上げて――そんな、腐れ縁の相手。
 替えの効かない戦友。
 一臣は友真を、愁也と遥久は互いの顔を見合わせる。そして穏やかな寝顔の英斗。
 他にも、この学園で出会った大事な仲間達がいる。この先にも多く、出会うのだろう。

「……学園は楽しいです」

 ほろ酔いで、愁也は胸に浮かぶ幾つもの大切な顔を思う。
 友がいて、大事なものがある幸せ。
 噛みしめるように顔を伏せ――
 注いだワインを一気飲み。
「「色々、台無しだな!!?」」
「そういう男ですので……」
 酔いつぶれた愁也の肩に、遥久が毛布を掛けながら。
「けど、たしかに…… 家を出て、学園へ来たことから広がった交友には、私も感謝の思いが強い。――こいつのお陰か」
 愁也が久遠ヶ原へ来なければ、『お目付役』として遥久がやってくることもなかった。
 気がつけば、『夜来野 遥久』としての居場所が――『愁也の保護者』ではなく――きちんと出来ていた。
 自分のための、自分の人生。誰かと共に歩み、進むこと。
 誰かの人生の中に、自分がしっかりと存在していること。
 そんな縁が、広がってゆくこと――
「はるひーは苦労性だもんなー そんなんだから老け なんでもないです」
 酔った勢いで気が緩み口も滑った一臣が、冷ややかな視線を受け慌てて姿勢を正す。

「えー。じゃあ、新たな出会いと、これからの未来に 乾杯?」
「あっ、筧さんズルイ、上手いこと纏めようとしてる!!」
「乾杯」

 深紅の液体を湛えたグラス達が、心地よい音を鳴らした。
 眠りに落ちた者たちには、タイミング遅れのクリスマスの鈴のように聞こえているだろうか。
 この先も、どうか大事な仲間たちと歩んでゆけるように。
 もう少し、もう少し、夜明けが来るまで、他愛も無い会話は続いた。




【クリスマスキャロルが終わる頃には side愁也&遥久 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja4230 / 若杉 英斗  / 男 / 18歳 / ディバインナイト】
【ja5823 / 加倉 一臣 / 男 / 25歳 / インフィルトレイター】
【ja6901 / 小野友真  / 男 / 17歳 / インフィルトレイター】
【ja6843 / 夜来野 遥久/ 男 / 27歳 / アストラルヴァンガード】
【ja6837 / 月居 愁也 / 男 / 23歳 / 阿修羅】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました!
クリスマスイブ・当日を外しての、クリスマス会・兼・忘年会、お届け致します。
筧もお誘いいただきまして、ありがとうございました。
二人羽織りの組み合わせで、少々視点を差し替えて3パターンとしています。
お言葉に甘え、プレゼント交換はガチダイス判定で行ないました。
意外にも意外な結果は素敵な未来に続いていると信じて。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年01月07日

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