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『+ 貴方はどんな年末年始を過ごす?・【 ∞ / Infinity or Mebius ring・2】 + 』
工藤・勇太1122



「<迷い子>は複数の可能性で、<案内人>は未知数の存在。だからこそ彼は過去を失い、あの子は未来を得た。しかしカガミは未来を得たけれど、新たなルールも同時に課せられる」


 とある案内人達のティータイム。
 漆黒の空間の中に建つアンティーク調の屋敷の中で少年少女達は談話を楽しんでいた。少女の濡れ羽色の髪は長く、白いゴシックドレスに流れ落ち多数の線を描く。彼女の目の前には少年が一人、カップに紅茶を注ぎ込みながら淡々と言葉を紡ぐのみ。
 少女は微笑む。
 少年は笑う。
 共通して見えた視界の中、彼らの「案内人」としての性(さが)が語り合わずにはいられない。


「でもそれは誰の為のルールなのかしら」
「君はもう忘れたんだね」


 不完全体なる少女は<迷い子>の姿を視認しながらも既にその存在を記憶から抹消し続け、完全体なる少年は彼女の方へと手を伸ばし髪の毛を一房指先で摘んでそこに口付けを落とす。


「残念ながらこれが誰が為の遊戯なのかは僕にも分からないんだ」


 ただ愛しい存在以外は彼は迷わず、見えた夢の欠片を視界から振り払った。



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「現れにゃい……」


 どうして?
 こんなにも望んでいるのに、こんなにも求めているのに、いつもならば呼べばすぐに現れてくれていたのにどうして今は現れないのか。
 指輪を握り締めてもう一度彼を必死に呼ぶけれど、状況は全く変わらず俺は相変わらず独りきり。指輪は彼がくれた「信頼の証」だ。これを握って願えばカガミに俺の考えている事がいつも以上にはっきりと分かるって説明してもらった事を思い出す。
 でも、今彼は――。


「カガミが現れないにゃら自分で探すにゃ!」


 何か事情があるのかもしれない。
 他の<迷い子>のところで必死なのかもしれないし、単純に動けないのかもしれない。それくらいだったら俺が彼を探して会いに行けば良いだけの話だ。その為にはまず何でもいいからカガミの情報を手に入れる必要がある。
 俺はテレパシー能力を使用し、カガミの思念を探り始める。この空間は無限であると同時に有限。だからきっとカガミの存在は今もここにあると信じて俺は感応能力を開いた。


「あっち?」


 いつも以上に微弱で、自信の無い感知。
 だけど何かを感じ取って俺は駆け出す。だがそれはある一点を通り抜けると多方面へと分かれ、びくりと思わず身体を跳ねさせてしまう。複数の気配が感じられて俺の頭は混乱を起こし、整理をしようと足を止めた。
 だが能力を解放している限りは感じられるカガミの気配が消えない。沢山広がっている存在の軌跡。今までに無い感じ方に俺は何故か鳥肌が立つような感覚に襲われてしまう。
 しかしいつまでも立ち止まってはいられない。俺は一番近くに感じる気配の方角を探し出すとそちらの方へと必死に走り出した。
 やがて明かりが見え、世界が開けてくる。


『さぁさぁ、お待ちかねのすごろく大会だよ!』
『今回は誰が優勝するのか楽しみだね!』


 ……そこは正月商品達が意気揚々と喋り、双六版の上できゃっきゃうふふと動き回っている世界でした。


「こんなところににゃんかカガミ絶対にいにゃいー!!」


 俺はヤバそうな気配を感じ取ると脱兎のごとくその場を離れる。
 一目散に走っていたためその双六大会の中から俺を見ている『彼』の視線にも気付かずに、だ。
 体力も考えずに走りまくるも未だ闇の中。疲れきってしまった俺はやがて歩みが遅くなり、最終的には座り込んでしまう。両手を頭に当ててぐるぐる考え込み始めた俺はやっぱり独りだった。


「もしかして<迷い子>じゃにゃくにゃったからカガミとは逢えない?」


 至る、結論。
 手の中の指輪を眺め見ながら彼に逢う方法を必死に探した。だけどテレパシーで探せないならば一体どういう方法で探せばいいのかさっぱり分からない。
 もしかして逢わない方が理に適っている?
 その方がカガミの為になる?
 深く深く沈んでいくマイナス思考はずずんっと俺の気分を暗めて、目じりに涙が浮かび始めた。


「だって<迷い子>というお荷物ひとつ減ったんだもんにゃ……カガミは俺だけのカガミじゃにゃかったんだにゃ」


 指輪をぎゅっと握り締めながら零れ落ちてくる涙を懸命に拭う。
 この姿の時は精神年齢まで逆行してしまうから困る。高校生の時には簡単には泣かないけど、子供姿の時はちょっとした刺激でぼろぼろ涙が溢れ出てしまって止まらない。あんなにも傍に居たのに今はどこにも姿は見えず、応えてもくれない存在。
 それはまるで夢の中の子供のようで――。


―― ……さん、工藤さん!?
―― 先生、血圧が急速に下がってます!
―― すぐに処置室へ運べ!


 誰。
 その声は俺が欲しい声じゃない。
 だけど分かるのは『戻らなくてはいけない』という事。故に『どこに?』という問いは非常に愚問だ。


「……戻らなきゃ」


 だってこれは『夢』。
 現実じゃない世界では何でも出来るなんて誰が決めたのか。夢見たままじゃ生きられない事を俺は身に染みるほどに知っている。だからこそ自分が生きるべき場所は――目を覚ました先の未来。
 だが立ち上がり、足を一歩進めたそこに地面は無くて。


「――にぎゃああ!!?」


 すかっと地面を踏み外したかのように身体は傾き、風を切るように俺は落ちていく。
 浮遊感が襲い、絶叫系アトラクションに乗った時のような気持ち悪さが胸元にせりあがって来た。ひゅるるるるる、と、それはもうどこかのアリスかと突っ込みたくなるほどに俺は落ちていく。でも景色は相変わらずの漆黒で、本当に俺は『落ちているのか』も分からなくなった。次第に速度が緩やかになるのが分かり、いつの間にか目を閉じていた俺はそぅっと瞼を持ち上げる。とんっと足先を地面に下ろしつつも目の前の光景に驚きを隠せず、大きく目を見開いた。
 辿り着いた先にあったのは――新しい道。


『きっとあれは全部夢だったんだ。そう考える事にしよう』
『え。この指輪俺のじゃないっすよ。誰かのが紛れ込んだんじゃねーっすかね?』
『――……カガミが見つからない。見つからない。見つからない。見つからない。見つからない。見つからない。何で? どうして? 俺の傍に居てくれるって言ったのに、なんでなんでなんで』
『はぁ? 俺に高校の時に彼女がいたって? 馬鹿言うなよ。居たら俺がクリスマスに独りでなんか……う、泣けてきた』
『母さん、迎えに来たよ。家も用意したからこれからは二人で幸せになろうな』
『あれー。俺の貯金なんでこんなに減って――ああああ!! 俺夏に旅行に行ったんじゃん! 一人旅行!』


 それは別った未来。
 様々な選択をした『俺』が描く映像の数々。沢山の俺が笑ったり、泣いたり、怒ったり、幸せそうだったり――壊れていたりする世界。白んだ空間に多重の人格達が集まったそこは異常な光景で、背筋に寒いものが走る。


「にゃんだ、これ」


 ついぽろりと零した声。
 その瞬間、沢山の『俺』が合図も無いのにザッと俺へと一斉に顔を向け、彼らは唇を開く。


『お前は俺を選ぶのか?』


 多くの俺が発したそれは多重音声のはずなのに、まるで一人の声のように聞こえた。









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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1122 / 工藤・勇太 (くどう・ゆうた) / 男 / 17歳 / 超能力高校生】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、続きの発注有難う御座いました!
 最後のプレイングが『勇太劇場』だということに吹き出しつつ、書き出してみたらちょっと恐怖光景に……。そして完結が新春ノベル期間中に間に合いますように!
N.Y.E新春のドリームノベル -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
東京怪談
2013年01月11日

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