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『+ 貴方はどんな年末年始を過ごす? + 』
石神・アリス7348



 さあ、年末年始はどう過ごそうか。


 友人達と年末パーティ?
 年が明けたら恋人としっとり初詣?
 どれでも良いけれどやっぱり皆違って皆良い。


 ―― だから此処に紡がれるのは『自分だけの物語』 ――



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 新しい年の切り替わりには気持ちも新鮮なものに変わるというもの。
 わたくしも自分で見立てた着物姿で今年最初の裏オークションへの参加を決意いたしましたの。でもそこに不似合いな方が二人。正しくは現実世界ではお会いした事のない少年と少女――ミラーさんとフィギュアさんを発見いたしましたの。
 足の悪いフィギュアさんを車椅子に乗せ、ミラーさんがそれを押す。自分と同年代程度の外見年齢を持つ「案内人」達の姿を見つけると、わたくしはすぐにそちらへと挨拶に向かわせて頂きましたわ。


「こんにちは、あけましておめでとうございます。――そして裏オークション会場にようこそ」
「おや、君が僕らを呼んだのだね」
「あら、初めまして可愛いお嬢さん。あけましておめでとう」
「フィギュア、この人は僕達の家に来たことがある人だよ。記憶を渡そうか」
「まあ。それは困ったものね。ミラー、記憶を分けてちょうだい」


 フィギュアさんは物事を長時間記憶出来ない体質だという事は知っておりましたけど、やっぱり「初めまして」と言われてしまうのは少々複雑ですわね。
 ミラーさんが彼女に額をくっつけて記憶を渡している間、わたくしは周囲の賓客へとにっこりと笑顔を振りまく事を忘れませんわ。決して客に対して不躾な態度を取らない――それは商人にとって重要な事ですもの。
 やがて記憶を有したフィギュアさんはわたくしににっこりを微笑みかけ、そして心持ちドレスの裾を持ち上げた。


「――改めまして、こんにちは。やっぱり大人の人が多いのね。あたし達くらいの年齢の人は全然いないわ」
「思い出して頂けたなら結構ですわ。もちろんここは普通のオークションとは違って闇取引で行われるものですからそれなりに色々と暗躍している方々が多いですわね。ゴシックドレス姿のフィギュアさん達はある意味目立ちますわ」
「<迷い子>も目立っていると思うけどね」
「わたくしは裏社会の商人ですもの。顔が売れるのでしたら少しくらい目立っても構いませんわ」


 興味深そうにフィギュアさんは周囲を見渡す。
 忘れ続ける彼女にとって見るもの全てがいつだって新鮮なのではないだろうかとわたくしは思いますの。それはそれで良いのかもしれませんけど、忘れ続けるという事は本人にとってどれくらい負担なのでしょうね。


「あ、そうそう。わたくしお二人に贈り物がありますのよ。こっちに来てくださいませんか」
「まあ、何かしら」
「きっとフィギュアにとって嬉しいものだよ」
「ええ、きっと喜んでいただけると思いますわ。入手するのにとっても苦労致しましたもの」


 こちらへ、と誘導した先はわたくしがいつも使っている控え室。
 スタッフ達の視線がフィギュアさん達に注がれますが、それはわたくしが睨む事で散らせますわ。外見で言えば子供三人が歩いているのですものね。金持ち達が集うこの裏オークション会場では例え年齢など関係ないとは言え「出品側」は珍しいもの。
 やがて部屋に辿り着けば厳重に金庫にて保管しておいた「小人の石像」と「可愛い手鏡」を取り出し、フィギュアさんへと手渡す。これは以前彼女が「欲しい」と口に出したものだ。
 わたくしが石像だけしか用意出来ないと思いまして? 客が望むのであれば出来る限りの注文に応えるのが私の仕事ですのよ。


「小人の石像ですが、流石に小人自体が居ませんでしたので、石化した人間をモデルに私が彫りましたわ」
「ほう。細かな表情とかが良く出ているね。器用なものだ」
「手鏡に関してはフィギュアさんのイメージからシンプルですけど、どこか神秘的な雰囲気を出せるようわたくしがデザインし、最高の技術者に仕立てていただいた一点ものですわ。素材にも拘らせて頂きましたのよ。いかがでしょうか」
「とても可愛らしい手鏡を有難う。ねえ、ミラー。これ私に似合ってるかしら?」
「デザインも使用されている素材も良いね。君のイメージに良く似合ってる」


 小人の石像と手鏡を膝の上に乗せて交互に観察するフィギュアさんをそれはそれは愛おしそうに眺めるミラーさんの雰囲気は非常に穏やかなもの。
 商人として客に喜んでもらえる事は最上の喜び。二人が幸せそうであれば、わたくしもその幸せのお裾分けで嬉しくなるというものですわ。
 やがてわたくしの控え室にスタッフが声を掛けに来て、もうすぐオークション開始であることを告げられる。そこでわたくしは二人に提案を致しましたの。


「せっかくだから裏オークションの方にも参加しない? いい体験になると思うわ」
「競り落としの方にかい?」
「舞台に上がられるのでしたらそれも一興ですわね」
「あたしは見ている方が良いわ。舞台に上がっても情報を忘れてしまったら駄目ですもの」
「それは言えているね。じゃあ僕らは折角だから競り落としの方に行こう。ただの客としてね」
「――この場所に居る時点で『ただの客』とは誰も思ってくれません事よ」


 人々は欲望を抱く。
 それは単純な物欲であれば良い。けれど禁忌的な行為であればあるほど人は裏の世界へと足を踏み入れたがるもの。人が人を貶め、人が人を売買し、人が人の物を奪い取る。それが許されて当然の世界――ここは表舞台では決して手に入らない物が流れ込んでくる裏社会。
 ただそこにいるだけで彼らもまた「同類」とみなされ、時として目を付けられるでしょう。愛らしい容姿をしていれば、それを愛玩したい者も居て誘拐する事もしばしば。それが警察沙汰にならないくらいの権力を有している方々が此処には大勢いらっしゃる。


「けれど僕がそれを許しはしないだろう」
「いつもながら心を読むのは困りますわ」
「プライバシーの侵害? フィギュアに対して安全であれば僕は問題ないよ」
「相変わらず彼女第一主義ですこと」


 わたくしは着物の袖を口元に当ててくすっと微笑む。
 ここでわたくしがフィギュアさんの石像を相変わらず望んでいるのでしたらきっとミラーさんに容赦ない攻撃をされるのでしょうね。それがどんな方法であれ、少なくとも現状維持は難しそうですから、もちろんしませんけれど。
 ミラーさん達を会場まで案内し、念のためにと顔隠し用のマスクを手渡す。これで少しは危険度も低くなるでしょうというちょっとした心遣いですわ。顔の上半分を隠すそれは付けていても問題ない。だって此処は誰もが平等な空間。世間体を気にしなければいけない身分の方々も、ただのコレクターも皆平等。素性を明かさなくても良い事が暗黙のルール。


 わたくしは彼らを送った後、そっと舞台裏へと立つ。
 自分より前のオークションの競りが終わり、次はわたくしの番。信頼の置けるスタッフに指示をして運ばれてくるわたくしの商品。
 どよめきが会場内を満たす――この瞬間こそが至福。マイクを手に、新年の挨拶と共にわたくしは舞台の真ん中、出品の隣へと立つ。


『皆様、今回もお集まりいただきましてまことに有難う御座います。わたくしからの出品物は新年と言う事でこの巫女の石像を差し出させて頂きますわ』


 隣に立つのは美しい巫女の石像。
 手には破魔矢が持たれ、清らかな笑顔を向ける美女の姿にざわめきが止まらない。年末年始、神社にて働く巫女を見定めて己の魔眼の能力を使用して作り上げた一点物の石像。
 彼女は既に社会から存在を滅され、つい数日前は人として動いていた物が売買される――これこそ裏オークションの醍醐味。


『表情や仕草には巫女特有の清廉さを保たせたまま、ベストタイミングで石像に仕立て上げる事には本当に苦労致しましたわ。――さあ、皆様の手でこの麗しい巫女にどうか価値を付けてあげてくださいませ』


 巫女服の皺一筋にまで気を使った石像に多くの声が上がる。
 競りあがっていく値段。常識などでは計れないその値段にわたくしはほくそ笑む。ミラーさん、フィギュアさん、これが裏オークションですわ。人が一般的に定めるものなど容易く破られるこの空間をどうか堪能あれ。


「ふふ、彼女はとても幸せそうね」
「それはきっとこの道を行く事に迷いがないからさ」


 舞台から見える二人の姿を見てわたくしは笑む。
 やがて落札された値段は――人の命。それが適切かどうかなど落とした人次第。
 ここは裏オークション。
 裏社会の一片が見える場所。わたくしがこれからも身を置く決して表社会には関わりの無い世界。


『今宵もよい値段を付けて頂きまして有難う御座います。それでは皆様、今年も宜しくお願いいたしますわ』


 深々と礼をしてから舞台から降りるわたくしは、今年もこの世界で生きるでしょう。










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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7348 / 石神・アリス (いしがみ・ありす) / 女 / 15歳 / 学生(裏社会の商人)】

【NPC / ミラー / 男 / ?? / 案内人兼情報屋】
【NPC / フィギュア / 女 / ?? / 案内人兼情報屋】
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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、新春ノベルに参加有難う御座いました!

 前回こちらが要求したものを用意して下さって有難う御座います。部屋に飾らせていただきますね^^
 そして裏オークションですが、発注文からではNPCは出品側参加なのか、競り側参加なのか分かりませんでしたのでこちら(NPC)の判断で競り側にいかせて頂きました。どうかご理解下さいませ。

 では今年も宜しくお願いいたします。
N.Y.E新春のドリームノベル -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
東京怪談
2013年01月15日

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