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『●貴方に贈るおめでとう/クインV・リヒテンシュタイン 』
クインV・リヒテンシュタインja8087

『アランの誕生日パーティに来ないか?』

 従姉弟である七種 戒(ja1267)からのメールに、クインV・リヒテンシュタイン(ja8087)は勿論、と返信を返す。
 アラン……アラン・カートライト(ja8773)は戒の悪友であり、クインとも友人である。
(「それにしても、紳士の誕生日か――手ぶらと言う訳にも行かないし」)
 部活を早々に後にし、街をぶらぶらと歩き回る。
 何かが欲しい、と言う話を聞いたことが無いだけに――無難に。
(「眼鏡……」)
 いや、眼鏡は本人が決める者の筈だ――と心の中の正義(仮)の部分が叫ぶ。
 誰が選んでも一緒じゃないか! と心の中の悪(仮)が訴えた。
 アランが眼鏡をかけたら、更にぞくっとするものがある……つまり、格好よさがあがるかもしれない。
 と言うこじ付けの下、眼鏡に軍配を上げそうになるが――やはり、面白いし楽しい人なので、欲しいと思うものをあげたい。
(「貰って嬉しいものか……。紳士なら妹、と言いたいが――」)

「あ……オリジナルジッポ作ります」

 煙草を吸っている光景が、脳裏に浮かぶ……煙草が好きな紳士だ。
 なら、ジッポライターは喜んで貰えるかもしれない。
 洒落た感じの銀細工を扱う店には、他にもオリジナルのシルバーアクセサリーなどが並んでいた。

「すみません。オリジナルライターって、どの位の値段で……」
「大体――」

 撃退士として生活している自分には、十分に買える金額のプレゼントだ。
 高すぎず、安すぎずこの位で、丁度いいだろう――。
(「後は……妹さんが大好きみたいだから、妹さんの顔でも彫ってもらおう」)
 と思い付いたところで、面識が無い事に気づく……戒に連絡してみるが、初対面らしい。
『でも、清にぃが面識ある筈』
 助言に従って、百々 清世(ja3082)へとメールを送る。
『連絡しておいたから+.゚(*´∀`)b 折り返し、連絡が入ると思う(`・ω・´)』
 頑張れ、と何やら応援を貰いつつ、返信を待つ。
 外で待つのは寒すぎるし、一言店員に告げて、道を引き返そうとした時だった。

『はじめまして……。クイン君?』

 イヴ・カートライト(jb0278)からの返信に、丁寧な文体を意識して返信を送る。

『はじめまして。クインV・リヒテンシュタインです――』



「やあ、君がイヴさんだね。あぁ、眼鏡を掛けてるともっと……」
 眼鏡、と瞬いたイヴに、眼鏡は奥深いよ――そう言って眼鏡の歴史は13世紀、などなど。
 語りはじめようとしたクインは、違う違う、と一人呟いた。
 ついつい、眼鏡に対して熱く語ってしまいそうだが……紳士の為に自重せねば、と息を吐いた。
 小さく笑うイヴに、クインは不思議そうに眼鏡の奥の瞳を瞬かせる。
「君のお兄さんの誕生日祝いに、ジッポを贈ろうと思ってね。君をデッサンをさせて欲しいんだけどいいかな?」
「勿論。態々馬鹿の為に有難うね、わたしに出来る事なら何でもするよ」
 ありがとう、と礼を述べたイヴに、クインはふふふ、と妖しく笑う。
 眼鏡がキラリン、と光った――良く光る眼鏡だなぁ、なんて思われているのは知らない事だ。
「僕は天才だから、デッサンも素晴らしい腕前なのさ」
 自信満々なその言葉に、イヴも少しだけ笑みを零した……言われるがまま、椅子に腰かけてクインの方を向く。
 スケッチブックと、鉛筆を取り出したクインは立ったり座ったり、イヴの顔を確認しながら白い紙に鉛筆を滑らせた。
 あやふやな線が、次第にハッキリとした実線へと変わっていく。

「もう少し、顔を上げてくれるかな?」

 胸を張った姿に、アランさんの兄馬鹿もわかるなぁ、と頷いた。
「固くならなくていいよ。自然なままでさ」
「うん、わかったよ」

 勿論外せないのは、眼鏡だろう――実際にかけていないのが残念だが。
 その内に、アウルで眼鏡を構築出来ないだろうか――などと取りとめのない思考を巡らせる。

「ふふふ……出来た!」
 どうだい? そう言ってクインはイヴへとスケッチブックに描いた似顔絵を差し出した。
 少しだけ強張った表情は、優しく笑みの形に結ばれた口元が和らげている。

「眼鏡? 君の眼鏡を貸してくれたら掛けたのに……素敵な眼鏡だ。今度、わたしにも何か選んでくれる?」
 柔らかなオーバルの眼鏡を掛けた自分、思わず呟いたイヴにクインは直ぐ様反応した。
「それはいい。眼鏡をかける人が増える――それは世界平和への一歩だ。勿論、喜んで選ぼう」
 まだ見ぬ眼鏡が、きみを待っているさ、とクインが自慢げに笑う。
 その瞳、否、眼鏡にはイヴに最適な眼鏡が見えているかのようだった――実際に、見えているのかもしれない。
「さあ、僕はこのデッサンを元に、眼鏡を作って貰いに行って来るよ……眼鏡を選ぶ時は、いつでも言って欲しい」
 携帯電話を振りながら、クインがお邪魔しました――とイヴの部屋を後にする。
 ストラップには、黒ぶちの眼鏡のストラップが光っていた。

「直ぐに取りかかりますね。彼女さんですか?」
 機械彫りと言って、コンピュータで彫り上げるらしい――クインに問いかけた店員は、可愛い方ですね、と付け足した。
「ええ……友人の妹です」
 綺麗な方ですね、と曖昧な笑顔で店員はクインへと告げた。
 流石に、友達の妹だとは思わなかったのだろう……片思いかな、と言いたそうな表情をしていたがクインは気にしない事にする。
 ブラブラとシルバーアクセサリーの陳列棚へと向かう。
 やはり、目立つのはペアアクセサリーの類か。
 ちらりと、ペアアクセサリーでも良かったかな、と思うが……こう言うものは好みの問題もあるので、ジッポライターで良かったと思いなおす。
 店員はコンピュータに入力し終わったのか、暇そうに欠伸を噛み殺していた。
「30分くらいで、彫りあがりますのでー」
「わかりました」

 彫りあがったライターを手にし、クインは一つの箱へとそれを入れた。
 紳士の表情が楽しみだ、とほくそ笑む。



『皆、準備いいー? 今から、アランちゃんの家に乗り込みに行きます(`・ω・´)』

 清世からのメールを受信し、それを確認する。

『ちなみに、俺は七種ちゃんと一緒にバイクに乗ってるから。分からない人は――』

 まるで引率の先生のようだ、と気配りを忘れない清世に感心しつつクインは待ち合わせ場所へと向かう。
 流石に、アランの家までは知らないし、それは他の参加者も一緒だろう。
「やぁ、クインちゃんー」
「久しぶり、戒と一緒だったんだ」
 バイクの後ろに乗った戒が、青いマフラーを巻きなおしながら頷いた。
「清にぃと、バイクデートだ」
「……百々は何時も、戒が迷惑をかけていて済まないね」
「そんなこと無いよー」
 カツカツとヒールの音が響いてくる、そこに顔を覗かせたのは今日も綺麗にメークをしたポラリス(ja8467)だ。
「こんにちは。ポラリスよ、よろしくね」
 楽しみだな……と呟いて、ポラリスが首元のネックレスを弄る。
「はじめまして、クインV・リヒテンシュタインです」
「おー、集まってるな。仁科 皓一郎だ」
 咥え煙草で、長身なのは仁科 皓一郎(ja8777)だ、その隣には、紫ノ宮莉音(ja6473)がこんにちはーと間延びした声で続く。
「にっしーに、りおちゃん、久しぶりー。あ、まっすん」
「俺が最後? 桝本 侑吾、よろしくな」
 ラフな格好で現れた桝本 侑吾(ja8758)が、ポリポリと頭を掻いた。
 その度に、シルバーアクセサリーが揺れる。
「じゃあ、カートん家行くか」
 皓一郎が口を開いた、確かにいつまでも外でいる必要はないだろう。
「おにーさんのバイクに、付いてきてねー」
 清世が先導するようにバイクを押し始める、そのやや後ろをのんびりと一同は付いていくのだった。



 太陽が沈んで、赤と紫と桃色の混じった切ない色に代わる。
 はらはらと降り始めた白い雪は、明日には積もるかもしれない。
「夜くらい、ロマンチックにするか……」
 そう言って立ちあがったアランは、チャイムが鳴って首をひねった。
 ろくにカメラも見ず、返事を返してドアを開ける――そうすれば。

「おう、カート。暫くぶりだな」
 煙草を指先で弄びながら、皓一郎がアラン、そしてイヴに視線を移した。
 その後ろから、ひょっこりと顔を出した莉音は、ふにゃり、と相好を崩して笑う。
「おめでとうございますー」
「おめでとうよ」
「僕からはグラスですよー♪」
 皓一郎と莉音が、それぞれ生まれ年のワインとグラスを差し出す。
 アランの生まれ年に作られたワインに、可愛い切子のグラスだ。
 繊細にラッピングされたプレゼントを見、アランは漸く理解した。
 ――もしかしたら、理解していたのだが認識するのが遅れただけかもしれない。
「……デートして来たのか? 素敵なセットだな。早速、今度楽しむとしよう」
「デートじゃないですよ」
 莉音がそんな目で見ないでくださいよー、とやはり、ふにゃり、と言った。
「おたおめー」
「コレ、二人からな!」
 清世と戒が差し出したのは、ロリポップタワーだ。
 ビビットカラーが、宝石のように詰め込まれている。
「パーティにはピッタリでしょ?」
 ドヤ顔の清世に、アランが苦笑する――確かに、パーティにはピッタリだ。
「お前らな……。流石だ、愛してるぜこの野郎」
 早速一つ、と手にしたアランは、イヴへ、ポラリスへ、戒へと女性に渡してから、そして皓一郎へ、莉音、クイン、侑吾へと配っていった。
「ん? ――成程、これは戒だな。愉快な事しやがって、バーカ」
 憎まれ口を叩きつつも、アランの表情は珍しく柔らかなものだった。
 気付いた者も、気付かない者も、何となく彼が浮かれている事を知って笑みを浮かべる。
「君が欲しいものを考えてみたんだ。ケースはいつか、君に合う最高の眼鏡が見つかったら使ってよ」
 クインが堂々たる仕草で、アランへと眼鏡ケースを差し出す。
 ワインレッドの眼鏡ケースを手にしたアランは、中を見、クインへと視線を送る。
「お前、天才か?」
「その通りだよ」
「流石は俺の妹だ、世界一眼鏡が似合う。素晴らしい。毎日持ち歩くわ」
 その通り、の言葉を静かに流されてクインが眼鏡を寂しげに曇らせた――イヴが苦笑して見せる。
「プレゼンとはわ・た・し……が、かけてる眼鏡でーす」
 次は私、と中々タイミングを掴めなかったポラリスが漸く口を開いた。
「お誕生日おめでと! いつも遊んでくれてありがとね……えーと、うふふ!」
「何だよ、遂に嫁に来るかと思ったのに。眼鏡も似合うイケメンだろ?」
 眼鏡をかけて、笑って見せるアラン、その笑みが何処か悪戯っぽいのは彼の持つ悪魔的な雰囲気故か。
 誤魔化した様な笑みを浮かべていたポラリスは、少し照れながら嫁にはいきませーんと微笑えむ。
 そして、ずい、とリボンを付けただけのラッピングの施されていないワイン瓶を差し出したのは侑吾だ。
「お誕生日おめでとう。こういうのでいいのかわかんないけれど、とりあえず」
「そんなに俺はワイン好きな印象か。生まれ年とか洒落てるな、意外だ」
「あぁ、勿論後で俺もそのワイン飲ませてくれ。というか、もうここで開けようぜ」
 誰か振っちゃえ振っちゃえ、と野次が飛ぶ。
「振っても溢れねーよ」
 シャンパンじゃないんだ、とアランが苦笑するが、ならば私がやる! と戒が進みでる。
「味は、変わるのか――?」
「二本あるし、飲み比べしよーぜ」
 侑吾が遠慮など無い、とばかりにアランの持つもう一つのワインへと視線を向ける。
「中に入ってからな。お前らどうせこの後予定ねえだろ? 来いよ、酒でも出してやるさ」
 少しだけ、照れて、バツが悪そうに視線を逸らす。
 勿論そのつもりだ、と言わんばかりに来訪者達はガヤガヤと中に入るのだった。



 中に入れば、イヴが作った料理を披露する。
 クリスマスの飾りなどはなかったが、それでも華やかな雰囲気が満ちていた。
「温めればいいものだけしか、作ってないけど……皆、ゆっくりしていってね」
「可愛こちゃんの、手料理、だと……? 腹がはちきれるまで食べるぞ」
 戒の言葉に照れたように笑いながら、料理を温めていくイヴ。
 アランが人数分のワイングラスを出すと、ワインを注いでいった。
 当然、アラン自身は莉音のプレゼントしたグラスを使っている――それを見た莉音が嬉しそうに笑う。
「気に入って貰ったみたいなんで、良かったです」
「おう、毎日使うわ」
「カート、忘れものだ」
 そう言って皓一郎がいきなり付きつけたぬいぐるみに、アランの手が止まった。
 もふもふとしたぬいぐるみに顔面を押し付けられている為、息が出来ない。
 眼鏡がはずみでずれて、クインが嗚呼、と嘆いた。
「眼鏡が……!」
「クイン、そこかよ」
 受け取ったアランの表情は微妙なものだったが、ぬいぐるみを受け取りありがとう、と礼を述べる。
 ぐったりとくたびれた感じのパンダは、爪が鋭くとがっている。
 それを見て、皓一郎と莉音は悪戯っぽく顔を見合わせた。
「あー、腹減った。もう食っていい?」
 侑吾の言葉に、もう食べていいよ、とイヴが頷いた。
 乾杯の音頭を取るのは清世だ、ワイングラスを掲げる――勿論、未成年にはジュースだ。
「じゃあ、めりくりー。ついでに、アランちゃんおたおめー、乾杯!」
「ついでかよ」
 思わずアランがツッコミを入れるが、そんな言葉は聞いちゃいない。

 乾杯! Cheers!

 日本語と英語の言葉が混ざり、グラスが音を立てる。
「おいしー! ねえ、今度お料理教えて!」
 ポラリスがシェパードパイを食べ、目を輝かせる。
 丁寧にすりつぶされたジャガイモと、チーズ、そして挽き肉がジューシーだ。
「うん、勿論構わないよ。口にあうかな?」
「ええ。とっても美味しい。これ、何と言う料理?」
 料理談義に華を咲かせる二人、イヴの頭をぽん、と撫でて皓一郎が口を開いた。
 鋭い抗議の視線が、アランから浴びせられる。
「イヴは久しぶりだねェ……元気、してたか? 阿呆、睨むんじゃねェよ、カート」
「それにしても、カートライトさんの料理、美味しいな」
 食ったこと無かったけど、と付け足した侑吾に、そんなに頻繁に食っていてたまるか、と返ってくる。
 本日も、シスコンは大いに発揮されているようだ。
「鬱陶しいから黙って」
 その言葉もイヴの一言で沈黙する――先程までポラリスと料理について話していたようだが、今は莉音も混ざっているようだった。
「こんなにたくさんお料理、すごいな――それに、どれも美味しい」
「まあ、兄だからね。頑張ったよ」
 苦笑染みた笑みに首を傾げながら、莉音はローストビーフを口に入れる。
「あ、あちちっ!」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫やけど……」
「お水いる?」
 ポラリスの差し出す水を受け取り、莉音は一息ついた。

 アランが立ちあがった隙に、清世がイヴの頭に手を伸ばした。
「カートが五月蠅せぇんじゃないのか?」
 皓一郎の言葉に、労わりですー、と清世は軽く返す。
「引き止めおつかれー」
「清世も、協力ありがとう」
「へぇ、カートライトさんが企画したのか」
 侑吾が新しいワインを空けながら、口を開いた。
「凄いですねー。僕、こう言うパーティ好きなんです」
 莉音の言葉に、良かった、とばかりにイヴが微笑んだ。
「人が集まらなかったら、どうしようかって……」
「アランさん、愛されているのね――」
 ポラリスがくすくす、と微笑んだ……メークを気にしてか、少食である。

「このワイン、美味しいな……」
「まっすん、ザルだから飲みすぎるなよー」
 水のように飲んでいく侑吾に、清世が釘をさす。
「くぅ、酒が飲めないのが辛い……」
 悔しがる戒に、清世がグレープジュースを注いで差し出しながら。
「成人したら、おにーさんと飲もうねー」
「清にぃ、さすがだ!」
 その言葉に、静かに立ち上がる影が一つ――。
 そうだ、と彼は呟いた。
「この場にいる全員、眼鏡をかけるんだ!」

「断る」

 満場一致の拒否、ぱりん、とクインの眼鏡が砕けた。
「でも、お洒落眼鏡ってありかな」
 ぽつりと零したポラリスに、そうだよ! と再びクインが立ち上がる。
「クイン頑張れ。だが、私は助けない」
 阿呆の子を見るような視線を注ぐ戒の視線も、ものともしない。
 クリスマス・イヴでもクインの眼鏡愛は絶好調だった――やがて、飲み干されたワイン瓶が幾つも出てくる。

「カート、もうないのか?」
 皓一郎に問いかけられて、何だか一人だけアウェーを感じながらアランは首を横に振った。
「いや、まだある」
 祝われている、のは分かるのだが――何だか、何時もの飲み会になっているような、そんな気がしない事もない。
「まあ、いいか」
「ワイン持ってくる。邪魔だから座ってて」
「イヴはいい子だな――」
 直ぐ様、イヴが反応してワインセラーへと足を向けた。
 その背中を追いかけるようにして、アランは声をかける。
「ありがとな。でも、イヴもしっかり食べろよ」
「……セクハラ」
 返ってきた言葉は、やっぱり何時ものように棘のビッシリ付いたものだった。

 料理がどんどん消費されて、ワインが飲み干される。
「十分、堪能した感じだな……」
 戒が一息ついて、最後のフライドチキンに齧りついた。
「イヴちゃんの料理、美味しいよね」
「ありがとう」
「あ、そうそう、僕……カード持ってきたんだった」
 莉音が差し出したのは、白いクリスマスツリーの描かれた可愛らしいカード。
「メリークリスマス!」
 一人一人に渡していく……。
「お、ありがとう。やっぱり莉音は可愛いな!」
 戒が笑顔で其れを受け取り、清世が軽くカードを撫でる。
「めりくりー」
「可愛いカードね」
「うん、素敵」
 ポラリスとイヴが顔を見合わせ、クインが思わず呟いた。
「僕なら、此処に眼鏡を付け足すね――」
「……うん、クイン君なら言うと思ったから」
 メッセージ欄に描き込まれた眼鏡に、クインも笑みを堪え切れない。
「あ、カードか」
 皓一郎がカードを受け取り、ふぅん、と呟いた。
「洒落ているな」
 と一言だけ、返ってくる。
「ああ、大切にするぜ」
 アランも受け取る、癖のある丸文字で『Merry Christmas&Happy Birthday!』の文字が書かれていた。

「盛り上がっているところ悪いけど、そろそろお開きにしまーす。女の子は帰って寝ないとね!」

 お肌に悪いよ、と清世が笑いかける。
「うん、そろそろ帰るか……ああ、おめでとう」
 面と向かって言うのは恥ずかしいから、戒が去り際にアランへと声をかける。
 瞬いて、そして微笑を浮かべ、アランが言った。
「バーカ」
「この一年も色々遊ぼうな! あと妹さんください、すげえ美人だな!」
 いきなりキリッ、とした戒に『断る』とばかりにイヴの前に立ちふさがるアラン。
 いつもこんな調子だろうな――と侑吾が、静かに笑う。
 飲み干されたワイン、空っぽの皿。
 それでも心の中に、温かいものが残っているのは――人の温かさ、と言うものか。
(「戒さん、やっぱり変わらんなぁ――」)
 莉音が苦笑を浮かべる、アランがイヴの肩に手を回すが、それをイヴが弾いた。
 きっと、自分には判らない絆と言うものがあるのだろう。
「帰るか」
「はいー」
 上機嫌で鼻歌を歌う莉音を見、やっぱ面白いわ、と皓一郎が呟いた。
「七種ちゃん、行くよー」
「じゃあ、次は妹さん貰いに行くわ!」
「来るな、渡さん」
 一人二人、帰っていくパーティ客――クインもその中に混じりながら、少し振り返る。
 カートライト兄妹がまだ、見送ってくれている。
 心のフィルターで眼鏡を装着させながら、クインは一人頷いたのだった。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【jb0278 / イヴ・カートライト / 女性 / 19 / インフィルトレイター】
【ja8758 / 桝本 侑吾 / 男性 / 21 / ルインズブレイド】
【ja8773 / アラン・カートライト / 男性 / 24 / 阿修羅】
【ja8087 / クインV・リヒテンシュタイン / 男性 / 16 / ダアト】
【ja6473 / 紫ノ宮莉音 / 男性 / 13 / アストラルヴァンガード】
【ja8467 / ポラリス / 女性 / 16 / インフィルトレイター】
【ja3082 / 百々 清世 / 男性 / 21 / インフィルトレイター】
【ja1267 / 七種 戒 / 女性 / 18 / インフィルトレイター】
【ja8777 / 仁科 皓一郎 / 男性 / 26 / ディバインナイト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

クインV・リヒテンシュタイン様。
この度は、発注ありがとうございました、白銀 紅夜です。

ほのぼのギャグ、に眼鏡最高! の気持ちを……との事で、随所に眼鏡を散りばめてみました。
眼鏡フィルターONの方が、OFFより可愛かったのでそちらを採用しています。
皆様と異なった部分も多いので、そちらもお楽しみください。
9名様それぞれが、生き生きしているノベルになっている事を祈って――。

では、太陽と月、巡る縁に感謝して、良い夢を。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
白銀 紅夜 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年01月17日

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