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『●貴方に贈るおめでとう/紫ノ宮莉音 』
紫ノ宮莉音ja6473

 紫ノ宮莉音(ja6473)は購買で買ったチョコレートを口に入れる。
 甘い甘い、幸せの味。
「やっぱり、お菓子はいいなぁ――」
 自然とほころぶ口元、まったりとしている時、不意に携帯電話の受信音が鳴って、莉音は小動物のようにピクリ、と身体を震わせた。

『アランのサプライズバースデー☆ 来る人挙手(`・ω・´)』

 差出人には、百々 清世(ja3082)の名前があった――アランこと、アラン・カートライト(ja9773)は時々ビックリするけれど紳士なお兄さん。
 ……自称だけど、と莉音はちょっと笑う。
 発案は、アランの妹であるイヴ・カートライト(jb0278)と言う女性らしい。
「勿論行きます! と――あれれ?」
 二つ目のチョコレートを口に入れた時、仁科 皓一郎(ja8777)からのメールを受信する。

『カートの誕生日プレゼント、一緒に見にいかねェ?』

 皓一郎は格好いい大人のお兄さんだ、楽しくなりそう、と莉音は直ぐに返信を返す。
『勿論、いいですよー』
 今から来れるか、と言う言葉に莉音はOKと軽く応じた……今は学園にいるのだ。
 チョコレートを鞄に詰めて、寮に資金を取りに戻る。
 それから、莉音は待ち合わせの場所へと急いだ。

「でも、プレゼントって何がいいんやろー?」
「さぁ?」

 合流した莉音と皓一郎、二人がショッピング街を歩きまわる。
「うーん。皓一郎さんは何にするんですか?」
「……酒でイイだろ、英国紳士らしいしよ、ワインで。赤が似合う、か」
「じゃあ、まずは酒屋さんですねー」
 莉音が率先し、酒屋へと足を運ぶ……沢山の赤いワイン。
 齢13の子供の姿に、店主は首を傾げたようだが後から続く皓一郎の姿に納得したようだった。
「どうせなら、生まれ年のにしてやっか」
 そう言うワインをお求めなら、と店員にあしらわれ、ワインを取り扱う別のショップへ足を運ぶ。
「皓一郎さんがワインなら、僕はグラスにしよかな? 可愛い切子グラス!」
 イギリスの人だし、と小声で付け足せば、いいんじゃね? と気だるそうに返事が返ってくる。
「赤ワインを入れるなら、やっぱり青かなー?」
 ワインを買った後、食器売り場で切子グラスを見て回りながら、莉音は呟いた。
 赤が似合う――色の付いていない、透明な切子グラスへと手をの伸ばす。
 小さな鼻歌が聞こえてきて、皓一郎はちらりと莉音へ視線を移した。
 随分、機嫌が良さそうだ。
「――早く終わらせて、ゲーセンでも行くかねェ」
「わぁ、楽しみですねー。あ、僕此れにして来ますー」
 走っていく莉音を見ながら、元気なものだ、と煙草を咥える。
 パタパタと戻ってくる莉音と共に、ゲームセンターへと足を踏み入れた。
 音と光の洪水、莉音の鼻歌も掻き消えた。

「ゲームセンター……? プリクラ撮るくらいしか、来た事ないけど」
「じゃあ、手始めに何かやってみるか」

 シューティングゲームにコインを入れ、不思議そうな莉音に皓一郎が説明をする。
 音楽に併せて皓一郎が演奏し、カーレースで勝負、色々と制覇しながら皓一郎の目に留まったのはクレーンゲームだ。
「次、アレやらねェ?」
「クレーンゲームですかー?」
 くく、と笑いながら、皓一郎は茶色い瞳を細める。
「カートのプレゼントに、追加してやろうぜ。渡された時の、カートの顔、想像しただけで楽しくねェ、か?」
「わー、いいですねー。プレゼントも増えるしー」
 あ、と声が上がる。
「これ! これが可愛いです!」
 莉音が選んだのは、何処となくしなびた感じのパンダのぬいぐるみだ。
 爪が凶暴な辺り、お世辞にも可愛くはない……が、かくーんと莉音は首を傾げて口にする。
「可愛いですよねー」
「リオ、お前さんそれ選ぶンか……。相変わらず、面白ェわ」
 コインを投入しながら、皓一郎が狙いを定める――クレーンの爪に引っ掛かってへしゃげた顔は、やっぱり不服そうだった。
 1度目は空振り、2回目で引っ掛かって、3回目でやっと落とす。
「アランさんのとこなんやし、素敵なお嫁さんになれますよー」
 くたびれたパンダに話しかける莉音、嫁……? どう見てもオスだろう、と皓一郎は思ったが喉の奥で笑うだけ。
 かくり、首を傾げて莉音が皓一郎を見る――歩きだす二人、ところが莉音の瞳は一点を見つめていた。

(「わー、綺麗やねー」)

 集合場所へと向かう途中、華やかなイルミネーション通り。
「綺麗ですねー」
 女の子と一緒なら、見に行く? と言うところだが、皓一郎は興味無いかな……と首を傾げる。
 その様子に気付いていたらしい、皓一郎はくいっと顎でイルミネーションを指し示した。
「イルミネーション、興味あンなら見てく、か? 男二人、つうンがちっと寒いがよ」
「はい!」

 クリスマス・イヴと言う事もあってか、人は多かった。
 サンタクロースにトナカイ、クリスマスツリー、スノーマン。
 子供の夢と大人のロマンを閉じ込めて、解放したような光の洪水。
「いいなぁ――」
 ぽつり、莉音の口から感嘆と、そして憧れの言葉が零れ落ちた。



『皆、準備いいー? 今から、アランちゃんの家に乗り込みに行きます(`・ω・´)』

 清世からのメールを受信し、それを確認する。

『ちなみに、俺は七種ちゃんと一緒にバイクに乗ってるから。分からない人は――』

 まるで引率の先生のようだ、と気配りを忘れない清世に感心しつつ、クインV・リヒテンシュタイン(ja8087)は待ち合わせ場所へと向かう。
 流石に、アランの家までは知らないし、それは他の参加者も一緒だろう。
「やぁ、クインちゃんー」
「久しぶり、戒と一緒だったんだ」
 バイクの後ろに乗った戒が、青いマフラーを巻きなおしながら頷いた。
「清にぃと、バイクデートだ」
「……百々は何時も、戒が迷惑をかけていて済まないね」
「そんなこと無いよー」
 カツカツとヒールの音が響いてくる、そこに顔を覗かせたのは今日も綺麗にメークをしたポラリス(ja8467)だ。
「こんにちは。ポラリスよ、よろしくね」
 楽しみだな……と呟いて、ポラリスが首元のネックレスを弄る。
「はじめまして、クインV・リヒテンシュタインです」
「おー、集まってるな。仁科 皓一郎だ」
 咥え煙草で、長身なのは皓一郎だ、その隣には、莉音がこんにちはーと間延びした声で続く。
「にっしーに、りおちゃん、久しぶりー。あ、まっすん」
「俺が最後? 桝本 侑吾、よろしくな」
 ラフな格好で現れた桝本 侑吾(ja8758)が、ポリポリと頭を掻いた。
 その度に、シルバーアクセサリーが揺れる。
「じゃあ、カートん家行くか」
 皓一郎が口を開いた、確かにいつまでも外でいる必要はないだろう。
「おにーさんのバイクに、付いてきてねー」
 清世が先導するようにバイクを押し始める、そのやや後ろをのんびりと一同は付いていくのだった。



 太陽が沈んで、赤と紫と桃色の混じった切ない色に代わる。
 はらはらと降り始めた白い雪は、明日には積もるかもしれない。
「夜くらい、ロマンチックにするか……」
 そう言って立ちあがったアランは、チャイムが鳴って首をひねった。
 ろくにカメラも見ず、返事を返してドアを開ける――そうすれば。

「おう、カート。暫くぶりだな」
 煙草を指先で弄びながら、皓一郎がアラン、そしてイヴに視線を移した。
 その後ろから、ひょっこりと顔を出した莉音は、ふにゃり、と相好を崩して笑う。
「おめでとうございますー」
「おめでとうよ」
「僕からはグラスですよー♪」
 皓一郎と莉音が、それぞれ生まれ年のワインとグラスを差し出す。
 アランの生まれ年に作られたワインに、可愛い切子のグラスだ。
 繊細にラッピングされたプレゼントを見、アランは漸く理解した。
 ――もしかしたら、理解していたのだが認識するのが遅れただけかもしれない。
「……デートして来たのか? 素敵なセットだな。早速、今度楽しむとしよう」
「デートじゃないですよ」
 莉音がそんな目で見ないでくださいよー、とやはり、ふにゃり、と言った。
「おたおめー」
「コレ、二人からな!」
 清世と戒が差し出したのは、ロリポップタワーだ。
 ビビットカラーが、宝石のように詰め込まれている。
「パーティにはピッタリでしょ?」
 ドヤ顔の清世に、アランが苦笑する――確かに、パーティにはピッタリだ。
「お前らな……。流石だ、愛してるぜこの野郎」
 早速一つ、と手にしたアランは、イヴへ、ポラリスへ、戒へと女性に渡してから、そして皓一郎へ、莉音、クイン、侑吾へと配っていった。
「ん? ――成程、これは戒だな。愉快な事しやがって、バーカ」
 憎まれ口を叩きつつも、アランの表情は珍しく柔らかなものだった。
 気付いた者も、気付かない者も、何となく彼が浮かれている事を知って笑みを浮かべる。
「君が欲しいものを考えてみたんだ。ケースはいつか、君に合う最高の眼鏡が見つかったら使ってよ」
 クインが堂々たる仕草で、アランへと眼鏡ケースを差し出す。
 ワインレッドの眼鏡ケースを手にしたアランは、中を見、クインへと視線を送る。
「お前、天才か?」
「その通りだよ」
「流石は俺の妹だ、世界一眼鏡が似合う。素晴らしい。毎日持ち歩くわ」
 その通り、の言葉を静かに流されてクインが眼鏡を寂しげに曇らせた――イヴが苦笑して見せる。
「プレゼンとはわ・た・し……が、かけてる眼鏡でーす」
 次は私、と中々タイミングを掴めなかったポラリスが漸く口を開いた。
「お誕生日おめでと! いつも遊んでくれてありがとね……えーと、うふふ!」
「何だよ、遂に嫁に来るかと思ったのに。眼鏡も似合うイケメンだろ?」
 眼鏡をかけて、笑って見せるアラン、その笑みが何処か悪戯っぽいのは彼の持つ悪魔的な雰囲気故か。
 誤魔化した様な笑みを浮かべていたポラリスは、少し照れながら嫁にはいきませーんと微笑えむ。
 そして、ずい、とリボンを付けただけのラッピングの施されていないワイン瓶を差し出したのは侑吾だ。
「お誕生日おめでとう。こういうのでいいのかわかんないけれど、とりあえず」
「そんなに俺はワイン好きな印象か。生まれ年とか洒落てるな、意外だ」
「あぁ、勿論後で俺もそのワイン飲ませてくれ。というか、もうここで開けようぜ」
 誰か振っちゃえ振っちゃえ、と野次が飛ぶ。
「振っても溢れねーよ」
 シャンパンじゃないんだ、とアランが苦笑するが、ならば私がやる! と戒が進みでる。
「味は、変わるのか――?」
「二本あるし、飲み比べしよーぜ」
 侑吾が遠慮など無い、とばかりにアランの持つもう一つのワインへと視線を向ける。
「中に入ってからな。お前らどうせこの後予定ねえだろ? 来いよ、酒でも出してやるさ」
 少しだけ、照れて、バツが悪そうに視線を逸らす。
 勿論そのつもりだ、と言わんばかりに来訪者達はガヤガヤと中に入るのだった。



 中に入れば、イヴが作った料理を披露する。
 クリスマスの飾りなどはなかったが、それでも華やかな雰囲気が満ちていた。
「温めればいいものだけしか、作ってないけど……皆、ゆっくりしていってね」
「可愛こちゃんの、手料理、だと……? 腹がはちきれるまで食べるぞ」
 戒の言葉に照れたように笑いながら、料理を温めていくイヴ。
 アランが人数分のワイングラスを出すと、ワインを注いでいった。
 当然、アラン自身は莉音のプレゼントしたグラスを使っている――それを見た莉音が嬉しそうに笑う。
「気に入って貰ったみたいなんで、良かったです」
「おう、毎日使うわ」
「カート、忘れものだ」
 そう言って皓一郎がいきなり付きつけたぬいぐるみに、アランの手が止まった。
 もふもふとしたぬいぐるみに顔面を押し付けられている為、息が出来ない。
 眼鏡がはずみでずれて、クインが嗚呼、と嘆いた。
「眼鏡が……!」
「クイン、そこかよ」
 受け取ったアランの表情は微妙なものだったが、ぬいぐるみを受け取りありがとう、と礼を述べる。
 ぐったりとくたびれた感じのパンダは、爪が鋭くとがっている。
 それを見て、皓一郎と莉音は悪戯っぽく顔を見合わせた。
「あー、腹減った。もう食っていい?」
 侑吾の言葉に、もう食べていいよ、とイヴが頷いた。
 乾杯の音頭を取るのは清世だ、ワイングラスを掲げる――勿論、未成年にはジュースだ。
「じゃあ、めりくりー。ついでに、アランちゃんおたおめー、乾杯!」
「ついでかよ」
 思わずアランがツッコミを入れるが、そんな言葉は聞いちゃいない。

 乾杯! Cheers!

 日本語と英語の言葉が混ざり、グラスが音を立てる。
「おいしー! ねえ、今度お料理教えて!」
 ポラリスがシェパードパイを食べ、目を輝かせる。
 丁寧にすりつぶされたジャガイモと、チーズ、そして挽き肉がジューシーだ。
「うん、勿論構わないよ。口にあうかな?」
「ええ。とっても美味しい。これ、何と言う料理?」
 料理談義に華を咲かせる二人、イヴの頭をぽん、と撫でて皓一郎が口を開いた。
 鋭い抗議の視線が、アランから浴びせられる。
「イヴは久しぶりだねェ……元気、してたか? 阿呆、睨むんじゃねェよ、カート」
「それにしても、カートライトさんの料理、美味しいな」
 食ったこと無かったけど、と付け足した侑吾に、そんなに頻繁に食っていてたまるか、と返ってくる。
 本日も、シスコンは大いに発揮されているようだ。
「鬱陶しいから黙って」
 その言葉もイヴの一言で沈黙する――先程までポラリスと料理について話していたようだが、今は莉音も混ざっているようだった。
「こんなにたくさんお料理、すごいな――それに、どれも美味しい」
「まあ、兄だからね。頑張ったよ」
 苦笑染みた笑みに首を傾げながら、莉音はローストビーフを口に入れる。
「あ、あちちっ!」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫やけど……」
「お水いる?」
 ポラリスの差し出す水を受け取り、莉音は一息ついた。

 アランが立ちあがった隙に、清世がイヴの頭に手を伸ばした。
「カートが五月蠅せぇんじゃないのか?」
 皓一郎の言葉に、労わりですー、と清世は軽く返す。
「引き止めおつかれー」
「清世も、協力ありがとう」
「へぇ、カートライトさんが企画したのか」
 侑吾が新しいワインを空けながら、口を開いた。
「凄いですねー。僕、こう言うパーティ好きなんです」
 莉音の言葉に、良かった、とばかりにイヴが微笑んだ。
「人が集まらなかったら、どうしようかって……」
「アランさん、愛されているのね――」
 ポラリスがくすくす、と微笑んだ……メークを気にしてか、少食である。

「このワイン、美味しいな……」
「まっすん、ザルだから飲みすぎるなよー」
 水のように飲んでいく侑吾に、清世が釘をさす。
「くぅ、酒が飲めないのが辛い……」
 悔しがる戒に、清世がグレープジュースを注いで差し出しながら。
「成人したら、おにーさんと飲もうねー」
「清にぃ、さすがだ!」
 その言葉に、静かに立ち上がる影が一つ――。
 そうだ、と彼は呟いた。
「この場にいる全員、眼鏡をかけるんだ!」

「断る」

 満場一致の拒否、ぱりん、とクインの眼鏡が砕けた。
「でも、お洒落眼鏡ってありかな」
 ぽつりと零したポラリスに、そうだよ! と再びクインが立ち上がる。
「クイン頑張れ。だが、私は助けない」
 阿呆の子を見るような視線を注ぐ戒の視線も、ものともしない。
 クリスマス・イヴでもクインの眼鏡愛は絶好調だった――やがて、飲み干されたワイン瓶が幾つも出てくる。

「カート、もうないのか?」
 皓一郎に問いかけられて、何だか一人だけアウェーを感じながらアランは首を横に振った。
「いや、まだある」
 祝われている、のは分かるのだが――何だか、何時もの飲み会になっているような、そんな気がしない事もない。
「まあ、いいか」
「ワイン持ってくる。邪魔だから座ってて」
「イヴはいい子だな――」
 直ぐ様、イヴが反応してワインセラーへと足を向けた。
 その背中を追いかけるようにして、アランは声をかける。
「ありがとな。でも、イヴもしっかり食べろよ」
「……セクハラ」
 返ってきた言葉は、やっぱり何時ものように棘のビッシリ付いたものだった。

 料理がどんどん消費されて、ワインが飲み干される。
「十分、堪能した感じだな……」
 戒が一息ついて、最後のフライドチキンに齧りついた。
「イヴちゃんの料理、美味しいよね」
「ありがとう」
「あ、そうそう、僕……カード持ってきたんだった」
 莉音が差し出したのは、白いクリスマスツリーの描かれた可愛らしいカード。
「メリークリスマス!」
 一人一人に渡していく……。
「お、ありがとう。やっぱり莉音は可愛いな!」
 戒が笑顔で其れを受け取り、清世が軽くカードを撫でる。
「めりくりー」
「可愛いカードね」
「うん、素敵」
 ポラリスとイヴが顔を見合わせ、クインが思わず呟いた。
「僕なら、此処に眼鏡を付け足すね――」
「……うん、クイン君なら言うと思ったから」
 メッセージ欄に描き込まれた眼鏡に、クインも笑みを堪え切れない。
「あ、カードか」
 皓一郎がカードを受け取り、ふぅん、と呟いた。
「洒落ているな」
 と一言だけ、返ってくる。
「ああ、大切にするぜ」
 アランも受け取る、癖のある丸文字で『Merry Christmas&Happy Birthday!』の文字が書かれていた。

「盛り上がっているところ悪いけど、そろそろお開きにしまーす。女の子は帰って寝ないとね!」

 お肌に悪いよ、と清世が笑いかける。
「うん、そろそろ帰るか……ああ、おめでとう」
 面と向かって言うのは恥ずかしいから、戒が去り際にアランへと声をかける。
 瞬いて、そして微笑を浮かべ、アランが言った。
「バーカ」
「この一年も色々遊ぼうな! あと妹さんください、すげえ美人だな!」
 いきなりキリッ、とした戒に『断る』とばかりにイヴの前に立ちふさがるアラン。
 いつもこんな調子だろうな――と侑吾が、静かに笑う。
 飲み干されたワイン、空っぽの皿。
 それでも心の中に、温かいものが残っているのは――人の温かさ、と言うものか。
(「戒さん、やっぱり変わらんなぁ――」)
 莉音が苦笑を浮かべる、アランがイヴの肩に手を回すが、それをイヴが弾いた。
 きっと、自分には判らない絆と言うものがあるのだろう。
「帰るか」
「はいー」
 上機嫌で鼻歌を歌う莉音を見、やっぱ面白いわ、と皓一郎が呟いた。
「七種ちゃん、行くよー」
「じゃあ、次は妹さん貰いに行くわ!」
「来るな、渡さん」
 一人二人、帰っていくパーティ客――莉音は皓一郎と並びながら、アランの家を後にする。
 クリスマスカード、買って良かったなぁ、と思いながら。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【jb0278 / イヴ・カートライト / 女性 / 19 / インフィルトレイター】
【ja8758 / 桝本 侑吾 / 男性 / 21 / ルインズブレイド】
【ja8773 / アラン・カートライト / 男性 / 24 / 阿修羅】
【ja8087 / クインV・リヒテンシュタイン / 男性 / 16 / ダアト】
【ja6473 / 紫ノ宮莉音 / 男性 / 13 / アストラルヴァンガード】
【ja8467 / ポラリス / 女性 / 16 / インフィルトレイター】
【ja3082 / 百々 清世 / 男性 / 21 / インフィルトレイター】
【ja1267 / 七種 戒 / 女性 / 18 / インフィルトレイター】
【ja8777 / 仁科 皓一郎 / 男性 / 26 / ディバインナイト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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紫ノ宮莉音様。
この度は、発注ありがとうございました、白銀 紅夜です。

関西弁混じりの標準語、と言う事で台詞は口語調にしてあります。
どこか、関西弁が強すぎる部分がありましたら、お申し付け下さいませ。
皆様と異なった部分も多いので、そちらもお楽しみください。
9名様それぞれが、生き生きしているノベルになっている事を祈って――。

では、太陽と月、巡る縁に感謝して、良い夢を。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
白銀 紅夜 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年01月17日

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