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『クリスマスを愛しいあなたと共に… 』
ユリア・ソル(ia9996)

「二人っきりでクリスマスを過ごすのならば、『あなた』は誰とどんな風に過ごしますか?」


☆二人っきりの晩餐
 もし問いかけられたら、ニクスとユリア・ヴァルは「愛しい恋人と共に、家の中でゆっくり過ごす」と答えるだろう。
 実際に今、ニクスの家にユリアが訪れていた。
 自分の家に招いたニクスは、客であるユリアを持て成す為に料理を作っている。真剣な表情で調理をしている途中、ユリアがクスクス笑いながら後ろから手を回して、ニクスがかけているサングラスを取ってしまう。
「…おい」
 不機嫌な顔で振り返るニクスを見て、ユリアは不思議そうに首を傾げた。
「あら、何でそんな顔をするのかしら? 調理中は包丁や火を使うんだし、サングラスをしていると危ないわよ」
「俺はサングラスをしている方が落ち着くんだ」
「はいはい。しょうがない人ね」
 楽しそうに笑いながら、ユリアはサングラスをかけてあげる。そしてニクスの背に抱き着きながら、調理中の料理を見た。
「今日はクリスマス特製ディナーかと思ったんだけど…。私好みの料理ばかり、作っているように見えるわ」
「ユリアの料理の好みは熟知しているからな。特別な日には好きな物を食べた方が嬉しいだろう?」
「ふふっ、そうね。…でも私達の付き合いも長いものね。小さい頃は幼馴染として過ごして、二年前からは恋人となって…。幼い頃はあなたとこういう関係になるなんて思わなかったわ」
「そうだな」
 そこでふと、ユリアは何かを思い出したように遠い眼をする。
「でもあなたって苦労性よね。幼馴染だからずっと見てきたけれど、特に恋愛に関してはかなりのヘタレで、とことん女心が分からない鈍い人よ。だから私がいろいろと教える立場になるんだわ。本来なら男性が女性をリードしなきゃいけないのにね」
 一通り呟くと、疲れたようにユリアは深く息を吐いた。
 一方で、呟きを背中越しに全部聞かされていたニクスの調理をする手は止まっている。ニクス自身、気付いていた自分の短所をズバズバと言われ、身も心も硬直してしまったのだ。
「けれど恋人になって、もう二年が過ぎたのよね。私が今まで付き合った男性の中で、ニクスが一番長いのよ。恋人継続記録が最長で、現在も更新中よ。スゴイわよね」
「そっそうか…」
 とりあえずユリアが嬉しそうなので、ニクスは調理を再開する。
 ホワイトシチューを作っている時、不意にユリアがイタズラを思いついたようにニヤッと笑った。そしてニクスの肩に手を置くと、背伸びをして頬に軽くキスをする。
「おっおい! 今は調理中だ! 火を使っているから危ないぞっ!」
「ごめんなさい。急にしたくなっちゃったの」
「なあっ…!」
 アタフタし始めるニクスを見て、満足そうにユリアは微笑んだ。


「はあ…。何とか無事に完成した」
「ニクスで遊んだから、私、もうお腹ペコペコよ」
「調理中に俺で遊ぶなよ…」
 グッタリしているニクスと、テーブルに置かれた豪華な料理を見て眼を輝かせるユリアは向かい合わせのイスに座る。
 そしてユリアは持ってきた【希儀】宝栓葡萄酒の瓶を、自慢げにニクスに見せた。
「お招きいただいたお礼に、私のとっておきのお酒を持ってきたの。クリスマスと言ったら、やっぱり葡萄酒よね」
「そうだな」
 二人はお互いのワイングラスに葡萄酒を注ぎ合い、グラスを手に持つ。

「「メリークリスマス」」

 軽くグラスを合わせて音を鳴らし、葡萄酒を一口飲んだ。熟成された深い味と、芳醇な香りが口の中に広がる。
「…うん、やっぱり美味しいわ」
「ああ、美味い葡萄酒だ。しかしいくら酒に酔わない体質とはいえ、あまり飲み過ぎるなよ」
「聖なる夜に、そんなみっともない真似はしません」
 軽くむくれたユリアだが、料理を一口食べてふと真顔になった。
 その様子を見て、ニクスは恐る恐る声をかけてみる。
「味はどうかな? 結構上手く作れたと思うんだが…」
「…美味しいっ! 私も料理はある程度できるけど、やっぱりニクスの方が美味しいわね。家庭の味って言うのかしら? 食べるとあたたかい気持ちになるの」
「ぐほっ!?」
 正直な感想を言ったのに、何故かニクスは動揺した。少しの間、激しく咳き込んだ後、葡萄酒を飲んで何とか落ち着く。
「どっどうしたの? …あっ、まさか私が素直に褒めたから、驚いたんじゃないでしょうね?」
「いっいや、違う…。ただ、喉に物が詰まっただけだ」
「…そう? なら良いけど」
 眼に涙が浮かぶほど苦しんだニクスだが、本当の事を言うワケにはいかない。
 ニクスを動揺させたのは、ユリアが言った『家庭の味』という言葉だった。ユリアは深く考えずに口に出しただけだろうが、ニクスにはまるで『結婚』を望んでいるかのように聞こえたのだ。
 しかし今のユリアの様子を見ても、彼女にそういう気はなかったのだと分かる。少し残念なようで、ほっとするような複雑な気持ちで、ニクスは新たに葡萄酒をグラスに注ぐ。
 その後は楽しく話をしながら食事を続け、最後のデザートを食べる前に、改めてユリアはワイングラスを持ち上げた。
「楽しかった晩餐も、コレでおしまいでしょう? 最後の乾杯をしましょうよ」
「では何に乾杯する?」
「それはもちろん聖夜の奇跡と、私達が過ごした甘い時間に。そしてこれからも一緒に過ごせることを願って」
 柔らかな笑みを浮かべるユリアを見て、ニクスも微笑みながらグラスを持つ。

「「乾杯」」


☆二人っきりの甘い時間
 暖炉の前に置かれた二人掛け用のソファーに、ニクスとユリアは寄り添うように座った。
「食事は満足できたか?」
「ええ、もちろん。そして食事を終えたら、次はプレゼント交換ね」
 ユリアはニクスに、綺麗にラッピングされた長方形の箱を差し出す。
「私からニクスへのクリスマスプレゼントよ。開けて見て」
「ああ」
 箱を開けて中を見てみると、黒いサングラスが入っていた。ニクスが普段身に付けている物よりもデザインが良く、また高そうに見える。ユリアの趣味の良さが出ている品だ。
「さっきイタズラしたお詫びもかねて。ニクスの好きなサングラスを贈るわ」
 そう言いつつニクスがつけているサングラスを外し、箱の中から新しいサングラスを手に持ってつけてあげる。
 ニクスはサングラスの位置を軽く調整した後、真っ直ぐにユリアを見つめた。
「どうだ?」
「思った通り、よく似合っているわ。…そのサングラスは私からの贈り物だということ、忘れないでね。あげたのは私なんだから、外すのも私だけよ?」
 意味ありげに微笑むユリア。
 そんな彼女を見て、ニクスは苦笑する。
「ああ、分かった。このサングラス、俺にピッタリだ。ありがとう、大事にするよ」
「ええ、もちろん」
 今度はニクスが手のひらサイズの箱を、ユリアに差し出す。
「コレは俺からのクリスマスプレゼントだ」
「まあ、嬉しい。何かしら?」
 期待に胸をふくらませながら開けると、中には赤い薔薇のブローチが入っていた。葡萄酒のように紫色を帯びた赤い薔薇は、ユリアの白い肌に映えそうだ。
「綺麗なブローチ…!」
「いろいろな物を見て回ったんだが、それにしたんだ。ユリアは赤い服や薔薇を好むからな。きみに似合いそうだ」
 真正面から褒められたユリアは、薔薇のように顔を赤く染める。そして戸惑ったのか、ニクスから視線をそらしてしまう。
「…前言撤回した方がいいかしら? 女心に鈍いはずのニクスから、まさかこんな言葉が出てくるとは思わなかったわ」
「それこそクリスマスの奇跡だと?」
「そうかもしれないわ。…でもありがとう。とても気に入ったわ」
 照れ臭そうに笑うユリアを見て、胸がいっぱいになったニクスは力強く抱き締め、その唇にキスをした。
「…愛している、ユリア。決して離さない」
「私も愛しているわ、ニクス。いつでも、どこにいても、どんな事をしていても、あなたの事だけを思い、ずっと愛している」
 熱っぽい口調で愛の言葉を囁いたユリアは、今度は自分からニクスにキスをする。
「ユリアの唇、葡萄酒の味がするな」
「それはニクスの唇も同じよ。…でもこんなに甘かったかしら?」
 艶やかに微笑みながら、ユリアはニクスの唇を指で撫でた。
「もっと味わってみるか?」
「ええ、ぜひ」
 二人は互いの唇の甘さを、心ゆくまで味わう。葡萄酒を飲んだ時よりも、体が熱くなっていくのを感じた。


 その後はしばらくの間、抱きしめ合いながら互いの鼓動を感じていた。
 暖炉の中で燃える薪の音と香り、炎のあたたかさが部屋に満ちる中、胸元に薔薇のブローチをつけて幸せそうな表情になっているユリアは呟く。
「…ニクスがこんなに積極的になるなんて、本当に奇跡としか言い様がないわ」
「そんなに不思議か?」
「ええ。だって幼馴染で気心が知れているはずなのにニクスったら鈍くって、ケンカになることもあるでしょう?」
「まあ…確かに、そういう時もあるが…」
 イマイチ女心が理解できないニクスはそのせいで、しょっちゅうユリアの怒りを買っている。後からただたんに思い違いやすれ違いがあっただけだと分かっても、ユリアの中でニクスの『ヘタレで鈍い人』という評価は変わらなかった。
「だっだが俺にとってきみは、誰よりも大切で大事な存在だ。もちろん幼馴染としても、一人の女性としてもだ」
 思わず必死になるニクスを見て、ユリアは一瞬きょとんとしたものの、次の瞬間には破顔する。
「…分かっているわ。私は鈍い方じゃないから」
 そう言って、ニクスに寄りかかった。
「これからも山あり谷ありでしょうけど、それでも私はずっといつまでもニクスと一緒にいたいと思っているわ」
「それには俺も同感だ」
 二人は顔を見合わせてクスッと笑うと、どちらかともなく唇を合わせるのだった。


<終わり>



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ia9996/ユリア・ヴァル/女/21/泰拳士】
【ib0444/ニクス/男/21/志士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 はじめまして。
 このたびはご依頼していただき、ありがとうございました。
 二人の甘い感じを、精一杯書かせていただきました。
 思わずニヤニヤしながら読んでいただければと思います。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
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舵天照 -DTS-
2013年01月18日

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