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『サンタクロースの贈り物 』
クリス・ラインハルト(ea2004)

 クリスマスイヴの夜、眠っているあなたの所へサンタクロースがやって来て、プレゼントを置いていきました。
 プレゼントの中身は『あなたが望む姿になり、思い描いた理想の世界で一日だけ自由に過ごせる』というものです。
 さて、あなたはどんな姿になり、どんな世界で一日を過ごすのでしょう?


☆クリスマスの朝 クリス・ラインハルトの場合
「わあ! サンタさんからのプレゼントです〜!」
 クリスが目覚めた時、枕元には大きなプレゼントの箱が置いてあった。緑色の包装紙は金色の星柄で、赤いリボンで結ばれている。
 クリスは瞳をキラキラ輝かせながらリボンを解き、箱を開けて見た。
「何が入っているのかな〜…って、わあっ!」
 
 ぼわんっ!

 箱の中から白い煙が飛び出てきて、クリスに直撃する。視界が真っ白になる中、クリスは眼を回して倒れた。


「うっう〜ん…」
 唸りながら起き上がったクリスは、ぼんやりしながら手で眼をこすろうとする。しかしその手が、いつもとは違っていることに気付いた。
「あれ? …何、コレ」
 クリスの手は黄色の翼となっている。そこで急激に覚醒したクリスは慌てて立ち上がり、自分の体を見て驚いた。
「なっ何で僕、黄色いあひるさんのぬいぐるみになっているんですかっ!?」
 ――そう、クリスはあひるのぬいぐるみ姿になっていたのだ。黄色の体に、橙色の嘴と足、しかし顔だけはクリスのものだった。
 窓に映る自分の姿を見たクリスは、ギョッとして床から飛び上がる。
「があっ!」
 そして思わず、あひるのように鳴いてしまったのであった。
 呆然としながらも開けたプレゼントの箱を見て、事の起こりを思い出す。
「もしかして…コレがサンタさんからのプレゼント、なんでしょうか?」
 いくら思い返してみても、こんな姿になった原因は他に思い当たらない。まだ夢を見ているかもしれないと思い、自分の頬をつねってみても痛いだけ。
「…コレが聖夜の奇跡、というものなのかな? まさかふわもこのぬいぐるみになるなんて、夢にも思わなかったよ。不思議な事が起きるんですねぇ…」
 まだ変身したショックを抱えながらもペタペタと歩き、外に出てみた。しかしさっき起きた時は朝だったはずなのに、今は夜になっている。
「僕…、そんなに長い間、気絶していたんでしょうか?」
 キョロキョロと周囲を見回すクリスの眼に映ったのは赤い鼻のトナカイと、ソリに白い大きな布袋を一生懸命に載せようとしている老人の姿だ。
「…アレ? あそこにいるのってサンタさん…かな? があがあ」
 鳴きながら近付き、サンタクロースに声をかける。
「サンタさん、何かお困りですか?」
「おや、お嬢さん、こっちの世界に来たのかね? まずはメリークリスマス! わたしの贈り物はどうだね?」
「メリークリスマス! なかなか楽しんでいます。があ♪」
 嬉しそうに翼を上げるクリスを見て、サンタは嬉しそうに微笑んだ。
「それは良かった。…いや、実はこの街にはプレゼントをあげる良い子がたくさんいてね。わたし一人ではもしかしたら朝が来るまでに配り終えないかもしれなくて、ちょっと焦っていたんだよ」
 サンタが困り顔でトナカイに視線を向けると、「そうです!」と言うように首を縦に振る。
「なるほど…、分かりました! あひるのぬいぐるみになったクリスがお手伝いします!」
 クリスは自信ありげに、自分の胸をぽふんっと叩く。
「しかしお嬢さんはこの世界を楽しんだ方が…」
「僕はこの街の子供達が喜ぶ姿を見た方が嬉しいんです!」
 力強く言ったところで、誰かがこちらに近付いて来る気配を察した。
「他にも人がいるなら、手伝ってもらえるように声を…」
 言いつつ振り返ったクリスは眼に映った人物が見知った人であることに気付き、硬直する。
「……もしかして、玄間…さん?」
「あっ、クリスさん。こんばんはなのだぁ」
「玄間さんもぬいぐるみに変身しちゃったのっ!?」
 そこにいたのは、自分と同じくぬいぐるみの姿になった友達の玄間北斗だった。


☆クリスマスの朝 玄間北斗の場合
「おおっ!? サンタさんからのプレゼントがあるのだ! …でもおいら、もう26歳だけどいいのかなぁ?」
 枕元に置かれたプレゼントの箱を前にして喜ぶも、次の瞬間には冷静になる。
 普通は良い子にしていた『子供』達にサンタクロースはプレゼントを贈るものなのだが、何故か今年は成人して大分経つ自分にも贈られた。不思議に思う気持ちはあるものの、やはり開けて中を見てみたい好奇心が上回る。
「とりあえず、開けて見るのだ!」
 ワクワクしながら箱を開けた途端、

 ぼわんっ!

「わっ!? 何事なのだぁ〜!」
 クリスの時と同じく箱の中から白い煙が飛び出てきて、北斗に直撃した。視界が真っ白になり、北斗は意識を手放して倒れる。


 しばらくして目覚めた時、北斗の姿・形は変わっていた。タヌキがのほほ〜んと垂れている癒し系のぬいぐるみに変身していたのだ。ちなみに顔は北斗で、目の周りと鼻はタヌキのように黒い。
 窓に映る自分の姿を見て、北斗は驚いて眼を丸くする。
「こっこのふわもこのぬいぐるみは、おいらのトレードマークのたれたぬきさん! いつもの着ぐるみではなく、とうとう本物になれたのだ! 聖夜に奇跡が起こったのだぁ!」
 北斗は喜びのあまり、部屋の中で踊りだす。
 『たれたぬきさん』とは北斗が自らをそう称しているのだが、いつの頃かそうなるよう行動するようになった為に、本物になれたことを心から嬉しく思っているのだ。
「ハッ!? もしかしたらおいらの他にも、ぬいぐるみさんになった人がいるかもなのだ。外に出てみるのだぁ〜!」
 張り切って外に出た北斗は、あひるのぬいぐるみになったクリスと出会うのであった。


☆サンタクロースのお手伝い
「…ふむふむ。クリスさんはサンタさんのお手伝いをする人を探しているんだな。それはステキなのだぁ! おいらも喜んでお手伝いするのだ! たれたぬきさんは千変万化、忍法忍術でぽてぽてお手伝いなのだぁ〜」
「と、玄間さんも言っていますし、ぜひお手伝いさせてください!」
 北斗とクリスに真剣にお願いされ、サンタはトナカイと顔を見合わせた後、深く頷く。
「分かった。キミ達がそうしたいと願うのならば、叶えさせてもらおう。ではソリに一緒に乗りたまえ」
「はい!」
「分かったなのだ!」
 こうしてソリはサンタ、クリス、北斗を乗せて宙を走り出した。
「うわぁ! スゴイ良い景色です!」
「夜景がキレイなのだぁ」
 今夜はクリスマスということもあり、街は大盛り上りを見せている。夜でも楽しそうにはしゃぐ人々の姿を見て、クリスと北斗は優しく微笑む。
「クリスマスって素敵な日ですよね。誰もが幸せな気持ちになれる、素晴らしい日です」
「うん、おいらもそう思うのだ。だからこそみんな、クリスマスが好きなのだ〜」
「ほっほっほ。そう言ってもらえると嬉しいね」
 サンタは手綱を操り、住宅街へと向かう。街中とは違ってすでに明かりが消えている家が多く、寝静まっていた。トナカイは一軒の家の屋根の上に降り立つ。
「まずはキミ達に、この袋を与えよう」
 そう言ってサンタは白い袋の中に両手を入れて、同じ大きさの白いプレゼント袋を二つ取り出した。
「ええっ! 同じ大きさのプレゼント袋が三つ!?」
「どっどうやって入っていたのだ?」
「それは秘密だよ。キミ達はこの袋に入っているプレゼントを配ってくれたまえ。子供がいる家は屋根にトナカイの足跡をつけていくから、それを目印にしておくれ」
 トナカイは前足の一本を上げて、裏を二人に見せる。足裏はまるで蛍光塗料を塗ったかのように、光り輝いていた。
「プレゼントを置けば、この足跡は消える。置き忘れのないように注意するのだぞ」
「了解です!」
「頑張るのだぁ! …あっ、でもたれたぬきさんのままでは、クリスマスの雰囲気が出ないのだぁ…」
 北斗の呟きを聞いて、クリスは改めて自分の体を見る。二人とも可愛いぬいぐるみの姿になっているが、クリスマスという感じではない。
「それではコレをキミ達にプレゼントしよう」
 サンタは袋の中から二つの箱を取り出し、二人に渡す。
「何でしょう…あっ!」
「サンタさんの衣装なのだぁ!」
 クリスには白い毛糸のボンボンがついた布の赤い三角帽に、赤い生地に白いリボンがついたケープ。
 北斗にも同じ三角帽に赤と白のベストが、それぞれ箱の中に入っていた。
 どちらもサンタ風で、ぬいぐるみとなった二人に良く似合っている。
「コレを身に付ければ、キミ達も立派なサンタクロースだ。後は頼むよ。わたしとトナカイは他の子供達にプレゼントを配ってくる。後で合流しよう」
 そう言ってサンタは再びソリに乗って、違う家に向かって行った。
「クリスさん、煙突から入ると下が危ない時があるのだ。だからおいらが先に行くのだ」
「そうですか? 玄間さんも気をつけてくださいね」
「任せるのだ!」
 北斗は頼もしげに胸をぽんっと叩くと、袋を担いで煙突の中に入る。
「…中はちゃんと掃除してあるのだ。サンタさんを迎える準備をしていたのだな」
 ぽてんっと無事に着地した北斗は、心配そうに上から覗き込んでいるクリスに、微笑んで手を振って見せた。
「よしっ…! あひるサンタさん、行きます!」
 小さく呟くとクリスは袋を担いで、煙突の中に飛び込む。
「わわっ!?」
 しかし落下の途中で体勢を崩し、両手足をバタバタっと動かす。
「あっ危ないのだっ!」

 ぽっふん!

 クリスは受け止めようとした北斗の腹の上に直撃して跳ねて、そのまま部屋の中にゴロゴロっと転がった。
「ぬっぬいぐるみで、良かったです…」
「…なのだ」
 中身が綿なので、お互い衝撃はあってもダメージは全く無い。
 二人は起き上がり、子供の部屋をこっそり探していく。そしてとある部屋で、クリスは見覚えのある子供が眠っているのを見つけた。
「あれ? このコは近所でよく見かけるわんぱく君?」
 いつも元気でイタズラばかりしている男の子だが、今は穏やかな寝顔で眠っている。
「ふふっ、寝ている姿は無垢な子供って感じですねー」
 軽く笑いながらクリスは袋からプレゼントを取り出し、枕元にこっそり置く。
「これからも元気で過ごすのですよ? けれどイタズラはほどほどに」
 翼の手で頭を撫でると、男の子は気持ち良さそうに微笑んだ。


「たれたぬ忍法、瞬間移動!」
 小さな声で鋭く呟くと、北斗の体は廊下から子供がいる部屋に移動する。クリスがいる部屋とは別の子供部屋には、男の子の妹が眠っていた。枕元にぽふんっと到着すると、袋の中からプレゼントを取り出してそっと置く。
「静かにお届け、サンタさんの基本なのだ」


 プレゼントを置き終えた後は、煙突から外に出る。
 ――こうして一晩中、サンタと共に二人は子供達にプレゼントを配っていった。


☆アレは夢? それとも…
「んっんん…」
 朝日の眩しさで眼が覚めたクリスは、自分がいつもの布団の中で眠っていたことに気付く。起き上がって周囲を見ても、あのプレゼント箱はどこにもない。
「…夢、だったんでしょうか?」
 窓に映る自分の姿も、見慣れた人間の姿だった。しかし一部だけ、寝る前と変わっているところがある。
「あれ? この帽子とケープは…」
 クリスの頭には赤い三角帽が、肩にはケープがかかっていた。


「こういうクリスマスプレゼントも、良いものなのだぁ」
 北斗は窓から外を見て、微笑む。昨日まではなかった真っ白な雪が、街に降り積もっていたのだ。また北斗の頭にも三角帽が、体にはベストがあった。
「さて、今日はクリスマス! みんなと楽しむのだぁ!」
 そしてたれたぬきさんの着ぐるみを着る為に、窓に背を向ける。


 住宅街では眼を覚ました子供達が、サンタクロースからのクリスマスプレゼントに大喜びしていた。
 ……しかし一部の子供達からは『サンタさんはあひるさんだった!』、『違うよぉ。変なたぬきさんだったよ』…などという意見が飛び交ったのだった。


<終わり>



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ea2004/クリス・ラインハルト/女性/25歳/バード】
【eb2905/玄間 北斗/男性/26歳/忍者】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご指名していただき、ありがとうございました。
 ほのぼのしたストーリーを書かせていただき、とても楽しかったです。
 お二人にも楽しんで読んでいただければと思います。
N.Y.E煌きのドリームノベル -
hosimure クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2013年01月21日

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