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『残念な友達へのプレゼント探し 』
星杜 焔ja5378

☆男二人の待ち合わせ
「待ち合わせ時間には間に合ったけれど、まだ彼は来ていないみたいだね〜」
 クリスマス前日の昼前。白い息を吐きながら、星杜焔は駅前の広場に一人で訪れた。広場に飾られている巨大なクリスマスツリーを見上げて、眼を丸くする。
「大きなツリーだな〜。…今度は彼女とここに来るのも良いかも〜」
 今は側にいない愛しい恋人とのデートを思い描いているうちに、背後から声をかけられた。
「ほむりん、ゴメンねー。待った?」
 待ち合わせ時間から少し過ぎた時、百々清世がヘラヘラ笑いながらやって来たのだ。
 そしてようやく、焔は妄想の世界から抜け出す。
「…はっ! 清世さん、早かったね〜」
 清世は焔の返答を聞いて、不思議そうに首を傾げる。
「あれ? ちょっと遅刻しちゃったんだけど…」
「ああ…少し妄想していたから、時間が経っちゃったんだ〜。でも大丈夫、待ち合わせの相手が女の子じゃなければ、遅刻するだろうって予想していたし〜」
 全く悪気がなさそうに微笑む焔を見て、清世の表情が引きつった。
「…それもそれで、複雑な気持ちなんだけど。まあ当たっているけどさ」
「清世さんってホント、しょうがない人だなぁ」
「ぐはっ!? ほっ朗らかな笑顔で言われると、キツイ…!」
 青白い顔で、胸を手で押さえていた清世だが、しばらく深呼吸すると落ち着いた。
「とっとりあえず、繁華街の方に行こうか。いろいろな店があるし」
「そうだね〜」
 こうして二人は、繁華街に向かって歩き出す。
 清世は寒さに首を竦めながら、コートのポケットの中に両手を入れる。
「しっかし毎日寒くて、マジ困るねー。まあ女の子があたためてくれるから、良いんだけど」
「俺も彼女がいるから、いっつもポッカポカ〜。…でもこの事は、彼の前では…」
「ああ、うん…。…禁句だね」
 ほのぼのしていた空気が一変、緊張したものへと変わった。
 二人の顔付きも真剣になるが、ふと清世は先程の会話で思い出したことを問い掛ける。
「そういえば、あの可愛い彼女と仲良くしてる?」
 恋人の話題に変わった途端、焔の顔に赤みがさす。
「彼女とは…うん。今、一緒に住んでる〜。だからクリスマスディナーの仕込みを隠れてするの、大変なんだ〜」
 照れ臭そうに微笑みながら話す焔を見て、清世も笑みを浮かべる。
「そう、良かったね。でも25日に、一緒に過ごせなくて大丈夫?」
「それは前もって言ってあるから大丈夫〜。ちゃんと『大事な友達の誕生日だから祝ってあげたい』って〜。けど彼女も女友達と一緒に過ごすみたいだし、ちょうど良かったかも〜」
「クリスマスは前夜と当日の二日間、あるのが良いよね。恋人と友達と、ちゃんと一日ずつ分けて過ごせるから」
「それには同感〜。…でも彼、俺から誕生日を祝ってもらって、喜んでくれるかな〜? プレゼント、受け取ってくれないかも〜」
 不安そうな焔の言葉に、清世は僅かに眼をつり上げた。
「まーだアイツ、ほむりんに嫌がらせしているの?」
「いや、今は大分減ったけれど…」
 二人の共通の友人で、これから誕生日プレゼントを贈ろうとしている彼は、黙っていればそこそこ良い青年だ。だが口を開けば、残念な青年へと変わる。そのせいで、年齢と彼女いない歴が全く同じであった。
 最初、焔と彼は彼女がいない者同士として、仲が良かった。しかし焔に可愛い恋人ができてから、その関係にヒビが入ったのだ。
「…でも俺、血の涙を流す人ってはじめて見たかも〜」
「俺もだ。…人間、本当に悔しい思いをすると、流せるもんなんだなぁ」
 焔と清世は遠い眼になり、血の涙を流しながら呪いの言葉を吐く彼の姿を思い出す。
 それでも紆余曲折あったものの、今は何とか彼の怒りは静まりつつある。
「この機会に、仲直りしちゃいなよ。プレゼントは彼が捨てられないような物を、買ってあげれば大丈夫でしょ? ほむりんへの好感度が一気に急上昇するような物を探そう」
「良い物、見つかるといいな〜」


☆贈り物は何にする?
 清世と焔はその後、様々な店を見て回った。しかし『彼が喜びそうな物』となると意外に難しく、難航している。そんな中、シルバーアクセサリーを扱う店に入った。
「おっ、こういうのなら良さげだな。アイツの肌は小麦色だし、銀色がよく映える。…って、アレ? ほむりん、どこ?」
 焔が近くにいないことに気付いた清世は、キョロキョロと周囲を見回す。
 すると焔は、ライラックや藤の花のシルバーアクセサリーに見入っていた。
「こういうの、彼女に似合いそう…」
「んじゃ、買えば?」
「わっ、清世さん! いっいや、今日はいいよ〜。彼の為に来たんだから〜」
 気を引き締め、焔はその場から離れる。
 そして清世と焔は店内を見て歩き、ネックレス、リング、ブレスレットの三点セットを購入した。
「クリスマス特別販売ってことで、そこそこの値段で買えたな」
「う〜ん…。でもコレだけじゃあちょっと味気ないかも〜」
 焔の呟きを聞いて、清世は先程購入したアクセサリーを思い出す。確かに色気がない。銀色一色では、見た目にも少し寂しい。
 しかし他に彼が喜ぶ物は…と考え始めた清世の眼に、本屋が映った。妙案を思いついた清世はニヤっと笑い、焔に本屋を指さして見せる。
「じゃあカラーな物を買おうか」
「本屋で?」
 首を傾げる焔と共に、清世は本屋に入った。そして雑誌売り場へと向かう。
「アイツの好みの女の子って、清楚系だっけ? それとも金髪巨乳だっけ? 前に聞いた時には『わっかりやすいなー』って思った記憶はあるんだけど…」
 ブツブツ呟きながら、清世はいろいろなグラビア雑誌を手に取る。
「結構真剣に悩むんだね〜」
「そりゃあ後で、貸してもらうかもしれないしね」
「ふぅん…。俺はあんまりこういう雑誌には興味ないんだけどね〜」
 焔はそう言いながらも雑誌売り場を一通り見て、外国人の美女が水着姿の雑誌を指さした。
「彼だったら、こういう金髪の外国のオネーサンで、胸が大きくて優しそうなのが良いんじゃない?」
「アイツだったら、巨乳ならどこの国のオネーサンでも良いだろう」
「…それ、女の子が聞いたら、冷たい眼になりそうだね〜」
 少なくとも自分の恋人は眼をつり上げそうだと、焔は思う。


☆買い物後はまったりと
「三点セットのシルバーアクセサリーと、数冊の巨乳系グラビア雑誌でオッケーだな。アクサセリーは俺の方から渡すから、ほむりんは雑誌を渡すと良いよ。その方が、アイツの好感度が上がる」
「…まあ確実に、V字回復するね〜」
 複雑な表情になりながらも、焔は雑誌が入った袋を受け取った。
「でも家に帰ったら、彼女に見つからない所に隠しとかなきゃな〜」
 うっかり見つかれば、実家に帰ってしまう可能性が非常に高い。クリスマスどころの話じゃなくなることは、容易に想像できるのが恐ろしかった。
 そんな焔の心配をよそに、清世は唸りながら大きく伸びをする。
「はあ〜…。歩き回った上に頭使ったから、甘い物が食べたくなったな。ほむりん、プリンが美味しい喫茶店、この近くにない?」
「プリンなら、明日作って持って行くよ〜?」
「ヤダっ! 今すぐ食いたい!」
 駄々をこねる清世を見る焔の眼が、冷たくなった。
「…清世さんって、俺より年上だったよね〜?」
「それが何か?」
 真剣な表情で言い返されては、何も言えなくなる。
 結局、焔は折れることにした。
「はあ…、分かったよ〜。クリスマス特製のプリンを出している喫茶店が、近くにあるから行こうか〜」
「よっしゃ! やっぱり頼りになる後輩ってのは、良いもんだなぁ」
 上機嫌で肩を組んでくる清世を見て、焔は苦笑するしかなかった。


 そしてあたたかい喫茶店に入り、二人はオススメのプリンを食べる。
「…うん、やっぱり美味しかったな〜。クリスマス向けに味や飾り付けが変わっていたし、今度家で作ろうっと」
「相変わらず、ほむりんは料理熱心だな。あっ、タバコ良い?」
 清世は赤マルのタバコの箱を焔に見せるも、少し顔をしかめられた。
「ゴメン。彼女がタバコの匂い、苦手で…」
「おっと、そうだった。一緒に暮らしている女の子への気配りは、忘れちゃいけないね」
 そう言って嫌な顔せず、清世はタバコをしまう。
 その仕草を見て、焔は不思議そうに首を傾げる。
「でも未だに不思議なんだよね〜。清世さんは以前、俺と一緒にホストクラブで働いて、人気があったよね〜。普通に生活してても女の子にモテるし…。まあそこを彼に眼をつけられて、例の友の会では女性の心を掴む為の方法を教える情報源役になっているんだよね〜? 清世さんの性格からすると断りそうなのに、何で付き合っているの〜?」
「それは楽しいからだよ」
 即答した清世は、清々しいほど良い笑みを浮かべていた。
「正直言って、真剣に活動しているわけじゃない。ただ楽しいから、参加しているだけ。ああ、でもアイツらのことは別に嫌いじゃないよ。変に敵視してくるよりは、利用できる者として尊敬してくれるだけでもありがたいから」
 清世の答えを聞いた焔の表情が、強ばった笑みに変わる。
「清世さんって……かなーり、ひねくれているよね〜」
「それはほむりんにだけは、言われたくないな」
 二人の間で、目に見えない火花が飛び散った。


 そして日が暮れる前に、二人は駅前に戻って来た。
「とりあえず、また明日。アイツの誕生日パーティー、遅れないようにね? ほむりんの料理、アイツも俺も楽しみにしているんだしさ」
「はいはい。清世さんも今からナンパしないで、真っ直ぐ家に帰ってよ〜」
「…何で分かったの?」
 今からしようとしていた行動を言い当てられて、清世の笑みが引きつる。
 対照的に、焔は得意げに微笑む。
「明日は遅刻しないように、釘を刺しておこうと思って〜」
「遅れないよ。…というか、遅れたらアイツにキレられるし」
 明日はクリスマスパーティーをする為ではなく、今日購入したプレゼントを贈る彼の誕生日パーティーをする為に集まるのだ。遅刻したら、彼の恨み言を聞きながら年を越すことになるだろう。
「ほむりんこそ家に帰って、彼女とイチャイチャし過ぎには注意。明日、幸せオーラを出しすぎないようにね?」
「…気をつけるよ〜」
「それじゃあバイバイ」
「うん、また明日〜」
 二人は手を振り合い、別々の帰り道を歩き出す。
 ふとそこで、焔は何かに気付いたように呟く。
「友達との買い物って、こんな感じなのかな〜?」
 今日一日清世と過ごして、その時間がとても新鮮で、嬉しく感じた。この気持ちを、焔は大切にしたいと思う。
「…まっ、清世さんには言わないけどね〜。言ったら絶対、調子に乗るから〜」
 そういう焔の表情は、明るいものであった。


<終わり>


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja3082/百々 清世/男/大学部3年/インフィルトレイター】
【ja5378/星杜 焔/男/大学部2年/ディバインナイト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご指名していただき、ありがとうございました。
 男二人での買い物シーンは真面目に書くほどに、何故か笑えてしまいます。
 きっと次の日の彼の誕生日パーティーは、さぞかし盛り上がったでしょうね(笑)。
 
N.Y.E煌きのドリームノベル -
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エリュシオン
2013年01月22日

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