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『お饅頭を作ろう! 〜饅頭兵士ズ、正月の受難?〜 』
弓亜 石榴(ga0468)

 正月だというのに彼女はキッチンに立っていた。
 ごろごろだらだら寝正月の予定が、何故か懸命に粉を捏ねていたりする。
 それと言うのも――

●饅頭兵士−饅頭=?
 世間は正月な冬休み。
 寮の自室で、高城 ソニア(gz0347)はのんびりまったり過ごしていた。
 一人用の炬燵にはミカンが入った籠と文庫本、膝には編みかけのマフラーが乗っている。代わり映えしないテレビの正月番組を流しっ放しにして、編み物をしたり短編小説を1話だけ読んだり。小腹が空けばミカンを剥いて――
「わっ、ミカンの汁が目に!」
 突然上がった悲鳴はソニアのものではない。炬燵の天板にしがみついている小さな人が発した声だ。
 大丈夫ですかとソニアが覗き込んだ相手は、饅頭頭の小さな人達。

「ソニアさん、ひどいですよぅ」
「顔が黄色くなったらどうしてくれるんですか!」
「その時は、超ミニの改造振袖で、ぱんちらしてくださいよ!!」

 口々に言う彼らは饅頭兵士。不思議の国のお城で働く兵隊達だ。なお、みんな同じ顔をしているので纏めて『饅頭兵士』と呼ぶのが慣例である。
 お城の女王様が正月休みをくれたのか、とにかく饅頭兵士達はこちらの世界にやって来ていた。しかもちゃっかり馴染んでソニアの部屋で寛いでいる。ソニアとて一人で正月を過ごすのも虚しいから、この珍客を快く迎えて一緒にのんびりと過ごしていた。
 饅頭兵士達の軽いセクハラを慣れた様子で「しません」と返したソニアは、それでも彼らの顔が黄色く染まっていやしないか気になって覗き込んだ。何せ彼らの頭は饅頭で出来ている、ミカンの汁は体に悪かろう。
「ちょっと見せてくださいね‥‥?」
 わらわらいるのを順番に観察して、みんな大丈夫ですねと安堵する。最後に、炬燵で寝こけていた一匹をつまみ出し、ソニアは悲鳴を上げた。

「どうしました、ソニアさん?」
「黄色くなっていましたか?」
「「「ぱんちら、ぱんちら!!」」」

「しませんっ!!」
 少し語気が強くなったのには理由がある。
 何故なら――つまみ出した一匹には頭が、饅頭頭が付いていなかったのだ!
 慌てて炬燵の中を捜索したものの、饅頭は見つからない。まさか茶菓子に混ざっていたのを食べてしまったとか!?
「あたまがなくて‥‥ちからが‥‥でない‥‥」
「‥‥ど、どうしましょ‥‥」
 喉を押さえて微妙な面持ちのソニアの周りで、饅頭兵士達も困っているようだった。

「困りましたねー」
「わたしたちの頭は、お城の料理人が作ってくれるのですが」
「料理人は、お節料理を残して正月休暇を取っているのです!」
「不在です! いないんです!!」

 こまったーこまったーと、わらわら勝手に騒ぎ出す饅頭兵士達。
 ちなみに、当の一匹は、へにゃりと力が抜けているものの、命に別状はないらしい。頭がないまま、ずりずり天板の上を這い回っている――ちょっと怖い。

●兵士+饅頭=?
 そんな経緯があって、結局ソニアが料理人の代わりに饅頭を作る事になってしまったのだ。
「頑張ってくださいね、ソニアさん!」
「ソニアさんなら、できますよ!」
「できなくても、せくしー写真と引き換えに料理人を呼び出すので安心してください!」
 皆、口々に勝手な事を言っているが、料理人召喚云々以前に、頭がないままうぞうぞ動き回っている兵士を何とかしてやりたくて、ソニアは生地を捏ねていた。
 幸い、家庭でできる饅頭の作り方は容易く見つかったし、年末の慌しい雰囲気に乗せられて材料も買い込んである。多少いびつになっても無いよりはマシだろう、きっと。
 こねこねこね。
「そう言えば‥‥皆さんの中身は、何が入っているんですか?」
 饅頭というだけに小豆の餡だろうか。いやいや、白餡に芋餡、もしかすると不思議の森で手に入れたカボチャ餡かも?
 そんな事を考えながら捏ねている内に、段々キッチンは生地だらけになっていった。いくつもの生地を捏ねているソニアを、饅頭兵士達は興味深く覗き込んでいる。
「どんな頭ができるのかなあ」
「いいなあ、楽しみだなあ」
 彼らの期待に応えなければとソニアは益々張り切って――その結果。

「できました! 鬼饅頭兵士さん!」

 角切りサツマイモがごろごろ入った鬼饅頭を乗せた兵士が、バランスを取れずにフラフラしていた。
「美味しそうでしょう?」
 確かに美味しそうではあるが、少々頭が重そうだ。
 ほかにもありますよとソニアは蒸し器の蓋を開けると、トングで掴んだ熱々の黒糖饅頭に挿げ替えた。
「あち、熱っ!!」
 急に顔が高温になって、兵士は転げまわっている。黒砂糖を使ったので顔が黒いのが特徴だ。
 まだまだありますよと、今度は冷蔵庫から取り出した水饅頭を載せてやる。
「冷たっ、頭が痛い〜!!」
 頭全体がキーンと冷えているからか、兵士は頭を抑えてのた打ち回っている。適温はなかなか見つかりそうになかった。

 その後も続く、兵士さんの饅頭頭コレクション2013。
 酒粕入りでほろ酔い加減の酒饅頭。栗きんとんを有効利用した栗饅頭。白生地と赤生地で相方募集中の紅白饅頭。生地を色付けるのに食紅を用いたついでに白饅頭に目鼻口を描いたへのへのもへ饅頭、等々。
 肉まん餡まんカレーまん。ピザまんチョコまんプリンまん――取っ替え引っ替えされて、疲れ切った兵士はヘロヘロだ。仲間の饅頭兵士がソニアを見上げて言った。
「‥‥実は楽しんでるでしょ、ソニアさん」
「ふふ、判ります?」
 当分お茶請けには困りませんねなどと言いながら兎の形を作っている。既に頭の形を成してない。
 何やら造形魂に火が点いたらしいソニアの創作意欲は、まだまだ途絶えそうになかった――

 結局、大量に饅頭を作った末に出来たのは、何処ぞのアンパンを思わせる丸い形の愛嬌ある顔だった。
 会心の出来なのか、ソニアは至極ご機嫌だ。
「とっても似合ってますよ♪ 折角ですから赤い端切れでマントも作りましょうか?」
「結構です!」
 あら残念とソニアはあっさり引き下がり――そのままギャラリーへと爽やかな笑顔を向けた。

「で‥‥皆さんの分もありますけど‥‥いかがです?」



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ga0468 / 弓亜 石榴 / 女 / 16 / 饅頭兵士の皆さん 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 ご発注ありがとうございました。周利でございます。
 あのサンプルからこんなお話になるとは‥‥と、いつも感心させていただくのですが、今回もまた個性的なお題を頂戴しまして楽しく書かせていただきましたv
 福笑い状態の顔ではなくて、顔(頭)が丸ごとなくなったら‥‥という発想、饅頭頭の小人さん達だからできるシチュエーションですよね!
 落としどころをどうするか少々迷った末に、こんな形に。
 普段は饅頭兵士さん達に狙われて貞操の危機に晒されているソニア、ちょっとした意趣返しの巻でした。
 被害者(!?)は何だか可哀想でしたが‥‥偶にはこんなお遊びも如何でしょう?
N.Y.E新春のドリームノベル -
周利 芽乃香 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2013年01月30日

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