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『スイート・スウィート・ルーム 』
ラグナ・グラウシードja3538

●スイートホテル

 バレンタイン。
 恋人たちの、この祝日の為に、一つのホテルがその扉を開けました。

 スイートホテル。
 年二日。バレンタイン、そしてホワイトデーにのみ開放されるこのホテルは、全ての恋人たちに無料で開放されます。
 豪華なホテルの一室。多彩なルームサービスは、全ての要求を満足させてくれるでしょう。
 個室に貸切の大温泉。そして望めば、バイキングだって厨房は作ってくれます。

 但し、如何にここが理想的なホテルと言えど、法律は守らなければなりません。
 えっちな事や、犯罪になるような事を考えてる人は‥‥追い出されますよ?
 もちろん、未成年の飲酒やタバコも‥‥

 1年に1日だけの、愛の日。朝から夜まで、恋人と共に過ごして見ませんか?
 無論、脳内恋愛の方も、歓迎しますよ。


●「怒り抱く物、付いて来た物」

「リア充の‥‥リア充の匂いがするぞ‥‥!」
 目を血走らせ、ラグナ・グラウシードは、ゆっくりと、歩みをホテルに向かって進める。
「リア充は‥‥全て、撲滅されなければならんッ‥‥!!」
 いつでも武器を具現化できるよう、準備しながら‥‥彼は、その感覚の元。スイートホテルに向かって、突き進む。
 だが、目の前の「リア充」たちの気配に目が眩んでいたのか。
 「守る」ために、普段張り詰められている彼の神経は。その後ろからゆっくりと追跡してくる影に、気づかなかった。

「‥‥はうぅ‥‥あっちは、恋人たちのためのホテル‥‥?」
 地図を見て、その方角に何があるかを確認しながら。エルレーン・バルハザードは、影からゆっくりとラグナを尾行する。
「まさか‥‥ついに、リア充になる覚悟が‥‥!?」
 そんな事は無論ないのだが。既にその方向への妄想が充満しているエルレーンの脳内に、その可能性が浮かぶ可能性はなかった。
「そんな事なら私に言えばいいのに‥‥」
 そもそも前提が間違っているのだが、気にしてはいけない。
「でも今言うのも無粋‥‥ホテルで驚かすのが、正解なのぉ」
 きゃぴっと軽くウィンク。寒気を感じたのか、ラグナの背中がぶるっと震える。
「むう、リア充たちを前に武者震いか‥‥ッ!」
 何やら色々間違っているだが、気にしてはいけない。
「楽しみなのぉ!」
 ついでにエルレーンが行っている事は、ストーカー行為に分類されるのだが。これも気にしてはいけない。

 今日はバレンタイン。恋の名の下に、殆どの行動が許される日なのである。
 (※法的には許されませんので良い子の皆さんは真似しないでね!)


●「暴れる物、縛る物」

「‥‥ぐっ、呼吸するだけで肺腑が焼け焦げそうだ」
 ここはカップルの密集地、スイートホテルだ。
 リア充に慣れておらず、それに並みならぬ憎悪を抱くラグナにとっては、ここは文字通り「瘴気地帯のど真ん中」と言った感じだろう。呼吸が何時も以上に荒くなり、目の血走りも更に深刻になる。今にも血の涙が流れそうな感じだ。
「くくく‥‥だがまあ、リア充どもに制裁を加えるにはふさわしい場所だな!」

「いらっしゃいませー‥‥?」
 笑顔で出迎えるウェイトレスの女性は、然し襲い来るラグナの血走った目を見て、その笑顔が僅かに固まる。だが、流石にプロ。直ぐに表情を直し、笑顔で聞く。
「お一人様で脳内でお楽しみになりますか?それともお連れ様をお待ちいたしますか?」
「どちらも、違う‥‥!」
 おもむろに『リア充滅殺』と書かれた紙袋を取り出し。頭部にかb‥‥失礼。装着する。

「支配人、どうしますか?セキュリティに排除させますか?」
 フロントカウンターを見渡せる、二階、支配人室。フロアマネージャーらしき者が、支配人らしき若い男に聞く。
「ふむ‥‥いや、もう少し様子を見よう。意外な事が起こるかも知れん」
 ここはスイートホテル。愛の名の下に、さまざまな奇跡が起こる場所なのだ。

「さぁ、今こそ、リア充共を撲殺してくれよう‥‥ッ!」
 チャキ、と、ラグナが愛用の大剣を取り出し‥‥振り上げようとした瞬間!
「ラグナっ、悪いことめっなのぉ!」
 黒い影が、ホテル入り口の、植木の陰から飛び出す。
「!?」
 とっさに反応して大剣を振り上げる。だが、振り下ろした瞬間、彼は後悔する。
 若しもこれが一般人であったのならば、この一撃によって肉片と化す事間違いなし。「守る」事を信条とする彼にとって、それは避けるべき事態であったのだ。だが、既に振り下ろされた剣を、引き戻すことは不可能で‥‥‥

「何するのよぉ、危ないの!」
 彼にとっては幸い‥‥いや、寧ろこの場合不幸と言うべきか。
 彼が大剣を振り下ろした相手は、仇敵、エルレーン。
 鬼道忍軍の撃退士である彼女は、素早く外に着た上着を脱ぎ捨てるような形で身代わりにし、神速とも言える身のこなしでラグナの横に回りこむ!
 ドン。
 強烈な一撃がラグナの腹部に叩き込まれ、彼は、一瞬意識を失った。

 ――次に目を覚ました時。ラグナは、色々と何ともいえない形で、ロープに縛られていた。
「もう‥‥女の子と一緒にいきたいのなら、言ってくれればいいのに」
 笑顔のエルレーン。
「くそおっ、放せ、放せこの貧乳女ッ!」
 ピシッ。
 あ、禁句を言った音。

 ドドドドドドドドドン。

 打撃音の後、ぐったりとしたラグナを引きずるように、エルレーンは笑顔でカウンターに歩み寄る。
「二人だよ!ルームを開けてくださいー!」
「あの、お連れの方は大丈夫ですか?」
 ぐったりしたラグナを見やり‥‥
「だいじょぶなの、この人見られて喜ぶへんたいなのぉ」
 フロント、受付の顔色は僅かにひきつり‥‥
 「少々お待ちください」と言って後ろの部屋に入る。そして、そこから、支配人室へ電話する。

「如何致しましょうか?」
 そう聞いたフロントの女性に対し、支配人は笑って答える。
「受け入れましょう」
「しかし‥‥!」
 まだ何か言おうとする女性に、支配人はため息一つ。
「先程彼の剣の一撃を見ましたか? ‥‥アレから考えれば、彼が全力を出せば、恐らくロープ程度は軽く引きちぎって脱出できたはずです。それをしなかった、と言う事は‥‥女性の方が言っているのは、いくばくか真実が含まれているのだろう」
「は、はぁ‥‥分かりました」
 がちゃっと電話が切られる。

「大変お待たせいたしました。こちらがルームの鍵となります。十八階ですので、右のエレベーターをお使いください。‥‥荷物の方、代わりにお持ち致しましょうか?」
 チラッとラグナの方を見やる。既にこの受付嬢の眼中では、ラグナは「荷物」と言う扱いになっているようだ。
「いいよ、私が自分で引っ張っていくからぁ!」
 笑顔でキーを受け取り、エルレーンはラグナを引きずったまま、エレベーターに乗り込んだ。


●ルーム・オブ‥‥

「放せ、放せぇぇぇ!」
 ソファーに括り付けられたままでありながら、じたばたと暴れるラグナ。
「えーと‥‥はい、ケーキ一つなのぉ」
 それを尻目に、ルームサービスを注文しているエルレーン。
 電話を置くと、すぐさまぎゅっとラグナに全身を目一杯使って抱きつく。
「っ‥‥」
 微かに感じる胸の感触に(エルレーンは貧乳ではあるが、無乳ではない)、女性経験が皆無であったラグナの顔がさっと赤くなる。
(「惑わされてはいかん‥‥コイツは、師匠の敵だッ!!」)
 それだけを脳内で念じ、何とか平静を保とうとする。
「‥‥うーん、なら、これはどうかな?」
「‥‥何ッ?」
 ラグナがエルレーンの企みを察せる前に。何か柔らかな感触が、彼の頬に触る。
 ――それが、エルレーンの唇だと気づくのに、彼は一定の時間を要した。さっと、顔が茹でタコのように赤くなる。
「うわぁぁ!」
 次の瞬間、終に許容度を越えたのか、ラグナが再度猛烈に暴れだす。
「くそおっ、放せ、放せこの貧乳女ッ!」
 ピキッ。
 あ、禁句を言った音(二回目)。
 ドカッ グキッ ピンポーン

「あ、はい、今あけるんだよ」
 またもぐったりしたラグナを放置したまま、エルレーンがドアを開ける。
「ルームサービスのショートケーキ、チーズケーキ、一つずつです」
「はーい、ありがとうなの」
 バタン。ドアが閉じられる。

「一緒に食べようねー」
 満面の笑みを浮かべ、ケーキを持って近づいてきたエルレーンに、本能的な恐怖を覚える。
「いやだぁぁぁ!」
 歯を食いしばり、脱出しようとするラグナだが‥‥膝の上を跨ぐようにして馬乗りにされ、至近距離まで近づくエルレーンの顔に、思わずどきりとする。
 それもそのはず。彼女の表情は、今までラグナが見た事のない物だったからだ。
(「はっ、思わず可愛いと‥‥コイツは師匠の仇‥‥仇だッ!」)
 そう自分に言い聞かせるが、心臓のドクン、ドクンと言う音は早まるばかり。
 ケーキを一切れ取り。エルレーンが自分の口へと入れる。そして艶かしく指に付いたクリームを舐め‥‥口移しでラグナに食べさせようと‥‥口移し!?
(「それってキ、キスじゃないかッ!?」)
 限界まで赤い顔をとっさに横にずらし、唇に当たるのは避ける。
 が、頬に柔らかい唇と、僅かに差し出された舌の感触を感じ‥‥終にラグナの精神は、限界を迎えてしまった。
「っ‥‥  ‥‥‥‥‥‥」
「‥‥ラグナ、ラグナ?」
 揺らしてみるが、返事はない。
 どうやら精神的にオーバーロードしてしまい、気絶したようだ。

「んー、なら、動けないこの隙に、だよ」
 素早く、ルームサービスでカメラを送ってもらう。それを自動撮影モードにセットし、
「はい、チーズ!」
 頬をすり寄せ抱きついた瞬間。フラッシュがその場を照らす。


 ――後日。その後開放されたラグナは、エルレーンから送られた写真を見て、悶絶する。
 彼の受難は、まだまだ続きそうだ‥‥‥



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
ja3538/ラグナ・グラウシード/男/20/ディバインナイト
ja0889/エルレーン・バルハザード/女/17/鬼道忍軍

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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※本件はパラレルワールドです。実際に発生した事では御座いません‥‥当人たちの名誉の為にも
※また終盤、砂糖大量の描写です。何とかギャグで中和しておりますが、用法用量を守って、お使いください

以上、注意書き()です。
さて、今回は発注文がそこまで細かくはなく、尚且つ「砂糖分を入れられるものなら入れて見やがれ!」的な挑戦状が含まれておりましたので、やや拡大解釈に致しましたが、如何だったでしょうか。
ご満足いただけたなら幸いです。
剣崎でした。
ラブリー&スイートノベル -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年02月07日

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