▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『OHANASHIしようよ☆ 』
御手洗 紘人ja2549


 筧 鷹政さまへ(ハート)
 
 こんにちは☆ミ
 突然のお手紙に、ビックリさせちゃってゴメンナサイ……
 久遠ヶ原の後輩、現役女子高生でっす(ハート)
 時折、学園へ姿を見せる筧センパイ、イケてるなぁーってずーっと思ってました///
 知ってます? もうすぐ、世間はValentineなんですよぉ〜〜(ハート乱舞)
 センパイに、その…… 渡したいものがあって……
 よろしければ当日、学園校舎裏の木の下で、お会いできませんか??
 『あの』木の下です。卒業生のセンパイだったら…… この意味、わかりますよね(ハート)
 待ってます……
 
 P.S.来ないと削りますね(ハート) 




「完璧だよねっ☆」
 かわいらしい白地にピンク柄の封筒を投函し、チェリーは仕事をやり遂げた表情。
 ハートいっぱいの甘甘女子高生風ラブレターの送り主である。
「家はお正月に行ったから知ってるけど……ただ渡したんじゃ、ツマラナイし」
 もうじき、世間はバレンタインデー。
 義理チョコの一つでも渡してあげよっかな、そう考えたときに、ふと、チェリーは思い出したのだ。

 気合を入れたお色気作戦・ガン無視され事件。

(こればっかりは、OHANASHIしておかないとね……)
 お話、ではありません。OHANASHIです。
 チェリーは黒い笑みを浮かべ、ラブレターに釣られてやってくる卒業生を想像しては、対策を考えた。




 届いた手紙に、フリーランス撃退士の鷹政は眉間を押さえた。
「……年末年始で、相当な数が事務所に来たからな」
 匿名のラブ(?)レター。
 差出人に関して、年齢どころか性別さえ不明だな、と考えている。
 心当たりの数が多すぎる。
 額面通りに受け取って舞い上がるほどには、一応、若くはないのである。悲しいけれど。
「行くのは構わないけど……」
 鬼が出るか蛇が出るか、とはまさにこのこと。
 木の下に穴が掘ってあるとか、上からタライが落ちてくるとか、よくわからないが何かしらの形で写真を撮られよくわからないネタにされるとか、
「……疲れてるのかな。疲れてるな」
 ろくな予想が浮かんでこないことに、深く深く嘆息する。
 かわいらしい丸文字の文面を眺め、まぁ悪い気はしないな、と思い直す。
「生徒さんに手を出すつもりはないし、俺さえしっかりしてれば問題はないよな」
 たぶん、ド本命相手だったら、また違う文章になる気はする。
 自分に対して『削る』という単語を用いてくる後輩に、悪い子はいない。(その認識もどうなの)
 極めて楽観的に変換し、鷹政はその手紙を書類の上に重ねた。




 2月14日。伝説の木の下で。
 白シャツに黒のロングコートを羽織った赤毛の男が姿を見せる。手には、白地にピンク柄の封筒。
 ぱっと見た感じ、大学部あたりの生徒だろうか。
 何やら落ち着きなく、上を見たり下を見たり、手にした封筒を眺めて首をひねったり。

(ふふ…… ふふふふ……っ☆ 引っかかってるね、ハマってるね、恋の季節だね★)
 死角から、それを御満悦に見守るのはチェリーである。
 チョコレートは、用意している。
 義理だなんだと言いつつ、きちんと手作り、乙女のたしなみ。
 が、すぐに待ち合わせ場所へ顔を出すのもストレートに手渡すのも、主目的ではない。
(OHANASHIが、先だからね……)
 ミニスカ+二―ハイソックス。自慢の美脚アピール、スタンバイOK。

「あれーっ? どうしたの、鷹政君っ☆」
 何食わぬ顔で姿を見せると、鷹政は大きく目を見開き、それから安心したような笑顔を見せた。
「よ、チェリーちゃん」
「……それだけ?」
「うん?」
「もっと他に……あるんじゃないかなぁ」
「……? あっ、今日の服装、かわいいね」
「そうそ。新春セールで掴んだ最新春物っ☆」
「…………」
「……それだけ?」
 鷹政が、生唾を飲み込む音が聞こえた。ような気がする。
 余裕を絶やさぬ表情が、微かに色を変える。
 なんとなく……察したようである。
「お手紙出したのはチェリーだよっ☆ 鷹政君と、きちーーーんとOHANASHIしたくって……」
 野生の勘、というものがある。
 ここにいたらまずい、恐らく鷹政はそう考えた。
 逃げてどうなるものでもあるまいに――
「やだーっ☆ どこ行くの?」
 踵を返す卒業生の背へ、チェリーは異界の呼び手を放つ!

「後ろ暗いことがなければ、逃げ出す必要なんてないと思うの…… ネ?」




 議題:正月の、乙女の決死の色気作戦をガン無視した事について

「ナイと思うんだよね」
 木にもたれかかり、スラリとした脚を交差させながらチェリーは唇を尖らせる。
「記憶になくって、そればっかりは」
「ウソ」
「え?」
「プロのフリーランスが、あれだけのお酒で記憶なくすって、ウソでしょ? どうして逃げるの?」
「……意識失うレベルの衝撃もあったからな??」
 当時、大学部男子によるお色気作戦も同時展開されていたので。
「ソレだって、珍しくないよね? 鷹政君だってイイ年してるもん、掘ったり掘られたりの一度や二度なんて日常茶飯事じゃない!!」
「人はそれを確定ロールって言います!!」
 どこからその設定きましたか!!
「ちなみに、右と左ドッチ? チェリー的には右固定だと思うんだけどヘタレ左も捨てがたいよねっ☆」
「なんの話!?」
※腐敗系女子のお話です
「……もしかして、鷹政君って…… ホントにソッチなの?」
 やだなにそれこわいちかよらないで! あっ、チェリーは偏見ないよ? ないけど、自分に魔の手が伸ばされたらって思うと、ちょっとね!?
「よし、落ち着いて話をしよう」
 突っ走る乙女の顔の横に手をつき、そのまま木に縫いとめて鷹政は疲れ切った表情を見せた。
「そういうんじゃないから。俺は――」
「…………ッッ」
 貞操の危機!?
 近づく距離に、チェリーは瞬時に光纏するとともに最大火力の魔法を放った。




 保健室にて。
「へへー 大丈夫、鷹政君? 受け防御できないって不便だね」
「それ以前の問題だと思うんです」
 一発気絶判定まで持ち込まれ、ベッドにて意識を回復した卒業生は、傍らの少女に頭痛の追撃を受けていた。
「チェリーちゃんのことは、可愛いって思ってるよ。一緒にいて楽しいしね。だから、その―― なんていうか」

「ヘ タ レ」

「!?」
「鷹政君はヘタレ。オッケー、チェリー覚えた!」
 鷹政は反論しかけ、止める。何を言っても無駄と思ったのだろうか。
「じゃ、御褒美に、……はいっ」
 ぽすん、手渡されたのは、可愛らしくラッピングされた手作りチョコレート。
「彼の為にチョコ作ってたら余ったから、『ついで』で作ってあげたよ〜☆」
「……バレンタイン?」
「いい? ついでなんだからね! 勘違いしないでよ!!」
 中を覗くと、野球のグローブとボールのチョコレートが可愛らしく箱におさまっている。
「……ついで、ね。すっげぇ偶然!!」
(ホントについでだと思ってるのかなぁ、この鈍感)
 満面の笑みを浮かべる眼前の男に、チェリーは心の中で呆れて笑った。




 子供扱いは嫌。
 かといって、彼氏はいるから『そういう対象』とされたって困る。
 思春期は、かくも複雑なものだ。
「ね、それよりも鷹政君☆」
「ん?」
「今日のチェリーのコーディネート、他に何か言うことなーい?」
「あー。……ちょっと大人っぽい色合いだよね」
「よし、OHANASHIもう1ラウンド行こうか」
「!?」



【OHANASHIしようよ☆ 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja2549 / 御手洗 紘人 / 男 / 15歳 / ダアト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました!
ありがとう……ございました(震え声)
熱烈ラブレター(仮)から手作りチョコレート、受け取った結果がアレソレな卒業生です(正座)。
お気持ちは、ありがたく受け取っております、大丈夫!
すれ違いの様式美、お届けできていればと思います!



ラブリー&スイートノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年03月18日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.