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『PearlHappening 』
ファルス・ティレイラ3733)&(登場しない)

●依頼人は魔法少女
 ファルス・ティレイラは、仕事を斡旋してくれた人物が書いてくれたメモを頼りに、翼と尻尾を出現させ、飛翔能力を使い上空から今回の仕事先を探していた。
 その人物が言うには、水族館みたいな建物だからすぐわかるよ、とのこと。
(水族館かあ……どんなところなんだろう?)
 暫くすると、それらしき建物が見えたので近くに着地。
 翼と尻尾を隠し、玄関のドアホンを鳴らす前に改めて家を見る。
 ドームのように丸みを帯びた外観、全体的にガラスのような透明感がある壁。
 プールのような大きな池、水晶玉で作られていると思われる波や水滴、魚のオブジェが広い庭に展示されている。
 たしかに水族館みたいねと思いつつ、門扉付近にあるドアホンを鳴らす。
「ごめんくださーい、なんでも屋でーす」
「はーい、今行きまーす」
 対応した声は、ティレイラと年が近い少女だった。

 待つこと数分。
 ティレイラを出迎えてくれたのは、赤いリボンがついた黒のとんがり帽子、黒いミニスカゴスロリ服に黒いマントを纏い、腕には長い皮手袋、黒のレースアップブーツという黒づくめの魔法少女な格好をした同い年くらいの女の子だった。
「あなたがなんでも屋さんね、待ってたわよ。どうぞ」
「あの……依頼人の方は……」
 この子は依頼人の弟子か家族だろうと思い尋ねる。
「依頼人? 私よ」
「あなたが!?」
 自分と年齢が近い女の子が依頼人と知って驚いた。
「驚くことないじゃない。私、こう見てても魔女なのよ。さ、早速仕事を始めましょう」
 女の子が依頼人ならこれまでのようなことは起きないだろうと思うが、不安は拭いきれない。
(どうか、何事も起こりませんように……)
 そう祈りながら、依頼人に案内され家の中へ。

●奇妙な生物?
 水族館を思わせるのは家の外観だけかと思いきや、中もそれに近い感じのものだった。
(この家の人、水族館が好きなのかな? この子が1人で住んでいるのかしら?)
 あちこち見渡していると、掃除用具を持ってきた女の子が「はいこれ」と手渡した。
「あなたにお願いしたいのは、家の大掃除なの。大事な本や呪具があるから気を付けてね。壊したりしたら、あたし、怒られちゃうから」
 よくよく事情を聞くと彼女は両親と3人暮らしで、父親は魔法蒐集家で世界各国を飛び回り、母親は魔女で普段は占い師として働いているが、現在は休暇を取り海外旅行中なのだとか。
 両親の留守中に家を綺麗にして驚かせたいという話に、そういうことなら頑張らなくちゃと張り切るティレイラだった。

「それじゃ、はじめましょう。頑張って綺麗にしないとね」
 呪具にはいろいろと悲惨な目に遭ったのでなるべくなら触れたくなかったのだが、仕事だから嫌だといっていられないと丁寧に磨き上げ、元にあった場所に戻す。
 呪具を置いた側には大きな水槽があり、そこには顔は人間に近い深海魚のような奇妙な魚が泳いでいた。
 一時気ブームになった人面魚のようなこの魚は魔法生物の類だろうか。
「あの……このお魚、何ですか?」
「それ? 亡くなったお祖父ちゃんがどこかで捕獲した魔法生物。番いだったんだけど、オスのほうはその子に食べられちゃったの」
 魚が共食い!? と内心ビックリだが、魔法生物であればおかしくない行動かもしれない。
「他にもいるけど見る?」
「け、結構です……」
 水族館のような家なので、おそらくこの家にいる魔法生物はすべて魚のような外見だろう。

●閉じこめられた竜族少女
 大掃除も、残すは広い書斎のみとなった。
「ここはお父さんの書斎兼研究室よ。本がたくさんで大変だろうけど頑張りましょうね」
「うん!」
 高いところはティレイラの飛翔能力を活用し、はたきで埃を叩き落としてから雑巾で拭いていく。
(うわぁ……いろんな本があるのね)
 本棚にある書籍見ると、魔法陣の描き方、呪文大全集、未知の生物、世界各地の秘宝等、様々なジャンルの書籍が大量にあった。
 さくさくとこなしていくティレイラに対し、女の子は書籍の山をふらふらしながら運んでいる。
「お手伝いしましょうか?」
「だ、大丈夫……」
 口ではそういうが、今にも山は崩れそうだった。

 自分の分の本棚の掃除と書籍の整頓が終ったので、ティレイラは先程から気になっている部屋の隅に置かれている巨大な二枚貝を見に行くことに。
「ヴィーナスの誕生、って絵にある貝みたい。口が開いたまんまだけど……閉じないのかしら?」
 鎮座してじーっと見ながらそう考えている時だった。
 女の子が積み上げた書籍を本棚の前に持ち運ぼうとしたところよろけてしまい、ティレイラにぶつかってしまった。
「きゃっ!」
 声を上げると同時に二枚貝の中に倒れこんでしまったかと思えば、その拍子に貝が閉じてしまった。
「何とかして、早くここから出ないと……」
 慌てて脱出しようとするが、全身がひんやりしてきたので動きが止まる。
(な、何これ!?)
 いつの間にか、全身が薄膜でパックされたような心地良い感覚で真珠層で包まれていた。
(あ〜気持ち良い〜。このままでいるのもいいかも〜。って、駄目駄目! 早くここから出てお手伝いしないと!)

●真珠と化したティレイラ
 心地良い誘惑に負けそうになりながらも必死にもがいて貝から脱出しようとするティレイラだったが、もがくばもがくほど真珠層が何層にも重なって硬質化していった。
(私、このままずっと貝の中に閉じ込められたまんまなの……)
 泣きたいが、固まってしまっているので泣こうにもなけなかった。
「ごめんなさい! 今、開けるから待ってて!」
 硬質化したものの、依頼人の声はかろうじて聞こえている。

 依頼人が道具を使ってこじ開けたり、魔法を使ったりとあれこれ試した結果、二枚貝が開いたのはティレイラが閉じこめられてから2時間ほど経ってからだった。
 その頃には、両手で貝をこじ開けようとした状態のティレイラの全身は完全に真珠と化していた。
「固まっちゃったのね……」
 両手を掲げ、しゃがんで踏ん張っている姿は誕生したヴィーナスには程遠いが、それでもどことなく美しさが漂っているのは真珠が美しいからだろう。
「お父さんが研究中のこの貝、中に入れたものを真珠化する魔力がある魔法生物だったのね。お祖父ちゃんもこういうもの蒐集すれば良かったのに。あんなグロテスクなものばかり集めて……」
 ブツブツ文句を言う女の子に「呑気なこと言わないで元に戻してください!」と声に出して言いたかったが、完全に真珠化しているので口はおろか、全身が動かない。
「ごめんなさい。私じゃ、その貝の封印は解けそうにないわ。そのうち解けるだろうから我慢してちょうだい。とっても綺麗よ」

 その後、ティレイラは2日後に海外旅行から帰ってきた母親が魔法で元に戻してくれるまで真珠化した状態のままだった。
「ごめんなさいね、この子がドジなせいで」
「い、いえ……」
「ほら、あなたも謝りなさい」
「ごめんなさい……」
 女の子が反省し、元に戻れたので「お邪魔しました」と深々と頭を下げ、大急ぎで水族館な家を出るティレイラだった。

 依頼人の女の子だが、後日、両親にこっぴどく叱られベソをかいたとか。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3733 / ファルス・ティレイラ / 女性 / 15歳 / 配達屋さん(なんでも屋さん)】

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■         ライター通信          ■
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 ファルス・ティレイラ様

 いつもお世話になっております。
 このたびはご発注、ありがとうございました。

 今回の発注内容を見て、咄嗟に「ヴィーナスの誕生」を連想しました。
 ポーズもそれに倣ったものにしようと思ったのですが、貝を開けようとしていたのであのようなポーズになってしまいました。
 様々なティレイラ様を執筆してきましたが、今回のティレイラ様はとても綺麗な状態だと思いました。

 まだ5月ですが、6月の誕生石である真珠ネタはいかがでしたでしょうか?

 それでは、またお会いできることを楽しみにしております。

 氷邑 凍矢 拝
PCシチュエーションノベル(シングル) -
氷邑 凍矢 クリエイターズルームへ
東京怪談
2013年05月30日

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