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『私の自慢の旦那様 』
シーヴ・王(ga5638)

〜新しい門出〜
「お世話になったです」
 看護婦や医者に挨拶をし、病院の待合室までシーヴは降りていった。
「手術上手くいってよかったね」
 流行のアイドル雑誌から目を離し、あどけない笑顔を見せるライディ・王の姿にシーヴも頬を緩ませた。
「これでシーヴも一般人の仲間入りでありやがるですね」
 首筋に手を当てて手術痕をなぞり、シーヴは迎えに来てくれた最愛の人に告げる。
「うん、本当にお疲れ様。じゃあ、うちへ帰ろうか」
「はい……です」
 ライディに近づき腕を組んでシーヴは病院から外へ一歩踏み出した。
 日差しが突き刺すように注ぎ、シーヴは一瞬たじろぐ。
 ぎゅっと組んだ腕に力が篭った。
「大丈夫。日傘もあるし、俺がついてるよ」
 日傘を差して雨も降ってないのに相合傘をして、二人は家へと歩いた。

〜新しい日常〜
 今まで世界の平和のために兵舎へと足を運んでいたシーヴはピアノの講師になるべく知り合いのところへ行く以外は専業主婦だった。
「何もしねぇのは暇でありやがるですね……少し掃除でもしやがるですか」
 主婦らしく掃除に取り掛っていく。
 夫がアイドルマネージャーということもあってか、来客も割りと多い自宅なので掃除は欠かせない。
 床を拭き、テーブルを磨く。
 料理ではまだライディには負ける分、掃除の丁寧さは生来の責任感強さが如実に出てくる。
「時間もありやがるですし、ものを動かしていくですかね」
 昨年の冬にかったピアノに手をかけて、力をこめるがピアノはびくともしない。
 逆に拭いたばかりの床に足がすべり、後ろにのけぞった。
 バランスを崩しながらも、片手をついて体勢を立て直そうととするが、体の反応が鈍い。 
 その結果、間に合わずに床に倒れこんでしまった。
「いたたた……そうでした、エミタがねぇんでしたね」
 しばらく味わったことのない状況にシーヴは苦笑を浮かべてしまう。
 戦闘経験や肉体強化など異星人と戦う力をもたらしてくれたエミタがないこと身をもって知るシーヴだった。
 
 ***
 
「車で迎えに来て貰ってすまねぇです」
「大丈夫だよ、丁度仕事の帰りだったしね」
 運転席のライディに助手席のシーヴは頭を下げる。
 後ろの座席は沢山の買い出した荷物の山で埋まっていた。
「つい、いつもの癖で買出ししてしまったです。力が思ったほどでねぇのは変な感じになるです」
 俯き気味にシーヴが話すと、ライディはその頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ。むしろ、こうして頼ってくれることの方が俺としては嬉しいかも。シーヴは一人で頑張っているところあったからさ」
 優しく頭を撫でられるのは子ども扱いされているようにも見えるが、シーヴは触れられているところから暖かい何かを感じていた。
 だから、大人しく撫でられる。
「これからは時間もあるんだから、まとめ買いも程ほどに回数を多くして一回を少なくしていくか……こうしてドライブがてらに買出ししていこうか」
 撫でるのをやめて前を向いて運転に戻るライディがシーヴに提案をしはじめた。
 こうしてリードする姿を横から見るととても頼もしく見える。
「そうでやがるですね。どうせなら、ドライブしながら買い物してぇです。前後に映画とかコンサートとかいくのもいいです」
「ふふ、そうだね。時間はこれから一杯あるんだから色々やっていこうか」
 車を走らせて家に着くまで、いつも以上にしゃべった気のするシーヴだった。


〜新しい問題〜
「ふぅ、こんなところでありやがるですかね」
 夕日が落ちる頃、洗濯物を取り込んだシーヴは汗をぬぐい一息つく。
 簡単にこなせていた生活も実はハードなロードワークだったということもエミタがなくなってから気づいた。
「そろそろ出かける準備しねぇとです。ライディと食事でありやがるです」
 パタパタと二階のベランダから部屋に戻り着替える。
「ゆっくり外食できるのも平和になった分、回数が増えたですね」
 おしゃれに着飾り外へで出た。
 外は雲もかかり、暑さはそれほどでもなくなっている。
「待ち合わせ場所は確かショッピングモールでしたね」
 傘を持ちつつ繁華街の方へと歩いていく、 夕方ごろということもあってか人通りがあった。
「あれは……ナンパでありやがるですかね」
 小さい少女を茶髪、金髪、スキンヘッドの3人の男が囲み、なにやら言い合っているところへとシーヴは出くわす。
「まぁ、いいじゃんかよ。ちょーっとくらいお茶してもさぁ?」
「そーそー、悪いようにはしないから」
「いえ、でも……その……」
 気の弱そうな少女はしどろもどろに話し、怯えているように見えた。
 そこへ傘の一撃が後頭部へとたたき付けられ男の一人がひるむ。
 一瞬の合間にシーヴは少女と男達の間に入り守るように立った。
「ナンパにしては強引すぎやしねぇですか? だからもてねぇんですよ」
「いってぇなぁ、ねぇちゃんもさぁ。乱暴しちゃもてねぇぜ?」
(……今のでノセていたはずですが。力加減がいつもとちげぇです……ね)
 後頭部をさすり少女からシーヴへと目標を変えた男たちはシーヴを見下ろし、にらみつける。
「逃げるです」
 シーヴは少女にそういいながら男達を睨み返して傘を剣のように構えなおした。
 少女「」
が逃げていくのを追いかけようと茶髪が動く。
 伸びた手をシーヴの傘が叩き落とした。
「いってぇ、いちいちイラつくことをする女だなぁ!」
 茶髪の顔が赤くなり、目が血走りだす。
「ビィビィ泣いたってゆるさねぇぞ、こらぁ!」
 金髪が頭の悪い文句をいいだし、シーヴへと腕が伸びる。
(はやいっ!)
 離れようと思ったが、腕を掴まれてしまった。
 万力のように締め付ける男の握力に腕が悲鳴を上げる。
「い、いたいです……」
 能力者でなくなったがために、チンピラ相手でもシーヴには強敵だった。
「よく見ればいい顔してるじゃねぇか、何ならお前が俺たちの相手をしてもらったっていいんだぜ?」
「おう、それがいいや。たっぷりとオトナの世界を教えてやらなきゃなぁ」
 下衆な笑みを3人は浮かべ、シーヴへと近寄ってくる。
「その子の手を離せ!」
「あぁん? また、変なやつ……ごはっ!?」
 スキンヘッドが振り返ると打撃音が二発ほど響き、倒れる。
「おい、どうした? うわぁ!?」
 続いて茶髪が横からけり倒されるように転ぶ。
 2人の男が倒れたことで、助けに来た人の姿がシーヴの目に入った。
 やさしそうな目をキリリと尖らせ、武術らしい構えをとるライディの姿である。
「ライディ!」
「正義の味方みたいにかっこつけやがって、そういう奴が俺は一番嫌いなんだよぉっ!」
 シーヴの手を離し、ライディへと金髪は殴りかかった。
 拳の勢いを逸らし、カウンター気味に掌を相手の胸部へと足を踏み込みながら叩き込む。
 流れるような動きはカンフー映画でも見ているようだ。
 そうこうしていると、騒ぎが大きくなってきたのか少女が通報してくれたのかパトカーのサイレンが近づいてくる。
「ちっ、覚えてやがれ」
 金髪は他二人を連れて、そこから逃げるように去っていった。
「僕らもちょっと逃げようか、事情徴収されると面倒だしね」
 凛々しい表情を崩し、笑みを浮かべる夫の姿にシーヴはしばらく見とれていたが、近づくサイレンの音に気づくと共にその場から離れていく。
 
〜新しい関係〜
 暗かった空から雨が降り始め、シーヴの持っていた傘で二人は相合傘をしながら、外食予定のお店へと遠回りに向かっている。
「さっきのライディかっこよかったです」
「ははは、一応これからは俺がシーヴを守るれるようにちょっとずつね」
 照れくさそうに答えたライディはシーヴから目を逸らす。
「頼りになる旦那様でシーヴはすごく幸せです」
 腕を組み、ぐっと寄り添った。
 今までとは違うけれど、新しい生活に慣れていこう。
 そうシーヴは心の中で誓うのだった。

Fin
 
 
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名      / 性別 / 年齢 / クラス  】
 ga5638  / シーヴ・王    / 女  / 22 / エースアサルト

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、お久しぶりです橘真斗です。
ノベルの完成が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
久しぶりに書いてみましたが、リア充っぷりが少しでも伝われば幸いです。
書き方に関しては未だに模索している部分が多いですが、こうしてキャラクターを愛していただけたことが何よりもうれしく思います。

長い間のご愛好ありがとうございます。

それでは、どこかで運命の交錯する時まで、ごきげんよう。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2013年07月16日

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