▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『例えば、こんな休日の過ごし方 』
ポラリスja8467

 雨雲が天を覆い月も見えな真っ暗な宵の空。
 消灯時間もとっくに過ぎた部屋の中、唯一漏れ出す光は携帯ゲーム機の光。
 イヤフォンから流れるBGMに割って入ったのはスマートフォンのメール受信音。
 ゲームを一時中断して、メールを開いてみる。
『暇してるって聞いたけど、良ければおにーさんと夏入る前にデートでもいかが?』
 送信主は先輩である百々 清世。
「さくらんぼ狩りに行きたい!あと温泉!もちろんドライブデートね!」
 すかさず、ありったけの要求を詰め込んで、返信ボタン。
 了解と集合時間のメールを確認した後、ゲームをセーブ。枕元に置いたスマートフォンでアラームをかけて眠りについた。

 窓から差し込む朝の陽光。嬉しそうに囀る小鳥の歌声。
 カーテンを開ければ、広がるのは清々しい晴空。昨夜の雨は草木に滴る雫はきらきらと陽光に反射し輝いている。
 眠い目を擦りながら、顔を洗いクローゼットを開けて、ずらりと並んだ服からマキシ丈ワンピを手に取るけれど。
(おにーさん、年上だし大人っぽい服装の方がいいかな……けど、これ汚れちゃいそうだしなー)
 ベッドの上へとワンピースを放り、次の服を手に取るけれど、これも違う。
 あーでもない、こーでもない。迷っているうちに気付けばベッドは服の山。
 結局選んだのは動きやすさを重視した、ノースリーブシャツとホットパンツをメインにしたコーディネイト。
「完璧に可愛いかも」
 念入りに日焼け止めと化粧を施して鏡の前で笑ってみた。
 ふと時計を眺めてみると、もう既に約束の時間を過ぎてしまっている。
 慌てて荷物を纏めて部屋を飛び出すと玄関前に携帯の画面を眺める清世の姿。
 ごめん、遅れちゃったと謝ると気にしなくていいと清世は言い、さぁ行こうと促されて、ふたりは車へと乗り込んだ。


 滑るように走り出す車。車窓には流れる景色。開いた窓から入る爽やかな朝の風が頬を撫でる。
 助手席に座るポラリスはうつらうつらと舟を漕いでいた。
「まだ着かないから、寝てていいよー?」
 その様子をちらりと横目で見た清世は少しだけ苦笑を浮かべて言うけれど、ポラリスは折角運転してもらってるし寝ないで頑張ると決めていた。
 だから、彼女は眠い目を擦って眠気を覚ます為に質問を考えて、投げかける。
「じゃあ、おにーさんの好みのタイプとか聞いちゃおうかなー?」
「えー? ポラリスちゃんみたいな子かなー」
 朗らかに応える清世。もー、と笑うポラリス。
 その後も他愛のないことを話し合って、ただふたりを乗せた車はただ道を進んでゆく。



 果樹園に着いた頃にはお昼前。既に日も高く初夏の太陽は燦々と煌めいていた。 
 車を降りて、軽く伸びる。
 少しずつ上がる気温。それはまるで夏がやってくる足音のよう。証拠付けるようにじんわりと蝕むように梅雨の晴れ間の今日も、既に蒸し暑い。
 受付を済ませてパンフレットと籠を受け取り、ビニールハウスの中に入ると蒸し暑さは更に増す。
 けれど、ふたりの興味は目の前に立ち並ぶサクランボの木へと向いている。先から聞こえる声が重なり合って、とても賑やか。ビニールハウスの中は休日ということもあり、それなりに混雑していた。
「んー、パンフレットには色んな品種が書いてあるけど、全然わかんねぇや」
「佐藤錦が甘くておいしいって受付の人言ってたけど、どれがどれなのか解らないよねー」
 ふたりで一緒にパンフレットとにらめっこ。じぃっと眺めて見ても、イマイチよく解らず首を傾げる。
「よく解んないから可愛いの食べよーっと」
 結局、顔を見合わせて出た結論が考えていても仕方が無い。
 ポラリスは一番手近な木に移って身眺めていたら見つけたのは、ハートのような形をしたさくらんぼ。
 早速もぎって、振り返り清世に見せる。
「ねー、こんなの見つけたー。ハート型で可愛くない?」
「おー、本当だ。珍しいねー」
 よく見れば所々に変わった形のなさくらんぼが揺れている。
 スーパーで見かけるものはまん丸く揃ったものばかり。初めてのさくらんぼ狩り体験は何だか凄く新鮮だった。
「こんな可愛いさくらんぼ食べられなーい」
 サクランボのヘタの先を持って、揺らしながら言うポラリスはさり気なく女子力をアピール。
「ポラリスちゃんのハート頂きっ」
「あっ」
 そして、そんなことをしていたら清世に食べられてしまった。
 それに対してポラリスは、ぷーっと頬を膨らませて怒ったぞアピール。
「ごめんごめーん」
「許さなーいー」
「どうすれば許してくれる?」
 言葉に反して、清世の口調は冗談混じりの軽いもの。顔だって悪戯っぽく笑っている。
 そんな、ポラリスだって別に怒っているわけじゃないからお願いも、ほんの可愛いもの。
「じゃあ、あの辺りのさくらんぼ取ってよー」
 そう、ポラリスが指差した先にあるのは高い場所になっているさくらんぼ。
「お、あの辺り美味しそうだもんね」
「いいでしょ、とってよー」
 清世の裾を引っ張って、おねだりするポラリス。その願いを断るはずもなく。
「勿論、高いところはお兄さんに任せろー」
 手を伸ばせば高所になるさくらんぼだって容易く取れた。
「美味しそうなのが取れたよー、ほらあーん」
「あーん」
 清世の差し出すさくらんぼをぱくりと食べて、口に広がる瑞々しい甘さに、思わず浮かぶポラリスの笑顔も満足げ。

 もぎたてのさくらんぼは、なんだか普段より甘く可愛い、そんな味がした。



「ね、おにーさん。温泉はっけーん」
 行きは少し眠たくて、余り外を見る余裕は無かったから、ずっと外を眺めていた。
「入ってく?」
 あまり遅くならないうちに帰ろうと車に乗り込んだから、時間的な余裕は充分にある。
 うん、と頷いて看板を見ると別浴の文字。
「混浴じゃねぇのかー、残念」
「混浴な訳ないじゃーん」
 ぺちんとふざけているようにツッコミを入れたポラリスだけれど、わりと本気で照れていた。
 そんな様子を微笑ましく想う清世はちょっとふざけるように。
「嘘嘘、湯上がり美人に期待してますよー」
「もー」
 そんな互いの間に笑みが咲く。
 さくらんぼデートといえど、ふたりの間に恋愛感情はない。
 清世にとっては、恋人にするには、まだ彼女はちょっと子ども。
 ポラリスにとっても、恋愛対象というより、よく構ってくれるお兄さん。
 けれど、楽しいからそれでいい。デートって言ってもただ遊びに行くようなもので。
「じゃ、30分後くらいに此処でねー」
 清世に見送られて暖簾をくぐる。脱衣所で鏡とにらめっこ。
 温泉に入るならば化粧を落とさなければならないけれど。
(ま、いっかー)
 暫く悩んだ結果。メイクをしっかりと落として温泉に浸かる。
 心地の良いお湯は、ほのかに溜まった疲労と汗をさっぱりと流していく。つい、うとうとして時計を見れば既に時間ギリギリ。
 着替えて外へと出れば、タバコを吸い終えたのか清世がその吸い殻を捨てようとしていた。
「あんま、見ないでよー!」
 湯上がりのポラリスはメイクを落としたすっぴんフェイス。湯上がりのほんのりと桃色に染まった頬でふざけるように笑顔を浮かべている。
「ほら、湯上がり美人だ」
 スタンド灰皿に吸い殻を捨てた清世は、ぽふぽふと頭を撫でた。


 寮に着く頃には、空は綺麗な夕焼け色に染まっていた。
 茜と橙。痛い程に強く二色に分かれた空の色。何処か懐かしさも感じさせるような不思議な色。
 夕陽は強く、そして優しく世界を茜色に染めている。
「楽しかったー! 今日はありがとー!」
 車から降りたポラリスは。目の前に並ぶのは長く映し出されたふたつの影。
「そりゃ、おにーさんも嬉しいよ。今日はありがとね」
「こっちこそ! そーだ、おにーさんが次空いてる日はいつかしら?」
 冗談っぽく笑うポラリスに清世も同じような笑みを返して。
「ポラリスちゃんのためならいくらでも予定開けるからさ、また遊んでね」
「うん! 約束だからねー。じゃあ、またね!」
 その言葉とともに、車に乗り込んだ清世を見送った。
 夕陽に照らされたポラリスの笑顔。
 また明日。また今度。また会おう。
 またね。そんな、小さな約束を繰り返して続いていく、綴る日常の1ページ。

 見上げた夕焼けはただ世界を照らしている。
 ただ、明日を待つ色を浮かべた空は今日も澄んでいた。だから、きっとまた、明日も晴れる。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja3082 / 百々 清世 / 男 / 21 / イフィルトレイター】
【ja8467 / ポラリス / 女 / 17 / イフィルトレイター】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 どうにも果物狩りに行くと何故か毎回大雨か台風に見舞われる水綺ゆらです。
 行き先が悪いのか、運が悪いのか。はたまた果物狩り限定の嵐女なのか。
 その辺りは置いておき、ハートのさくらんぼは可愛かったのです。

 ポラリスちゃんと清世さんのノベルは一部、違うところがありますので両方読んで頂けたら楽しみも増えるといいなーとか思いつつとちらも楽しく描かせて頂きました。
 ご発注ありがとうございました!
鈴蘭のハッピーノベル -
水綺ゆら クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年07月23日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.