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『精霊に捧ぐ言祝ぎの。〜笛吹く姫へ 』
玖堂 羽郁(ia0862)

 星見櫓から見上げる夜空には、春から夏へと移り行く星が数多に輝いている。その名の通り、空を見上げ、星を詠むための櫓の視界を遮るものは、句倶理には存在しない。
 吹き抜ける風は涼やかで、まだほんの少しだけ春の肌寒さを孕んでいた。油断をすればすっかり風邪を引き込んでしまいそうだと、玖堂 羽郁(ia0862)は羽織った上衣を掻き合わせる。
 傍らに居る姉、玖堂 真影(ia0490)もやはり上衣を羽織っていたが、さほど寒さは感じていないようだった。同じようにこの里で育った双子とはいえ、句倶理の長たる為に積んだ過酷な修行が、少々の寒さなど寄せ付けないのかも知れない。
 そんな事を考える羽郁の眼差しの先で、真影は里へと向けていた視線を羽郁へと戻した。くすくすと肩を揺らして、幸せそうな笑みを浮かべて居る。

「とうとう明日ね。――生まれた時からずっと一緒だったのに、何だか、まだ信じられない」
「これからだって変わらないよ。俺の対は王理だけだ」

 そんな真影の言葉に、羽郁はひょいと肩を竦めた。それはある意味で嘘かも知れないが、ある意味では紛れもない真実だ。
 ――明日、真影と羽郁はそれぞれの想う相手と、婚儀を挙げる。羽郁は、最愛の婚約者である佐伯 柚李葉(ia0859)と。真影は、従兄であり側近であり、やはり婚約者であるタカラ・ルフェルバート(ib3236)と。
 その前は、2人の間にある絆が全てだった。だが、愛しい相手が出来てその絆が変わったのかと言えば、それが揺らいだり薄れたりする事はなく――と言って、例えば羽郁にとっての柚李葉が、羽郁にとっての真影に劣るのかと言えば、そんな事は決してなく。
 それぞれがそれぞれに、別々の意味で一番、誰よりも大事。それは矛盾しているようで、何より確かな真実。
 そんな、言葉に紡がない思いを載せた眼差しに、そうね、と真影が頷いた。彼女が羽郁と気持ちを同じくして居る事は、疑う必要すらない。
 幼い頃から、ただ双子という以上に絆が深く、文字通りの一対だった自分達。物心付いた時からずっと、彼らは感情も感覚も共有していた。

「そう言えば、不思議な話があるのよ。タカラに調べさせたんだけどね」
「タカラに?」

 不意にそう言った真影に、羽郁はひょいと首を傾げた。それにうんと頷いた、真影が夜風に遊ぶ髪を押さえながら、あのね、と言葉を紡ぎ出す。
 ――かつて。強固な血と絆で結ばれた句倶理一族の、一番最初に長に立ったのは黄金の髪に緋蒼の瞳を持つ、麗しき姫だった。彼女は姫長と人々から崇められ、一族を導いていたのだという。
 その傍らに常に在ったのは、従者たる黒髪の青年。2人は非常に仲睦まじかったのだが、ある日、かの青年が実はアヤカシだと判明し、事態は一変した。
 従者は、姫長の命を盾に神域に追放され、瘴気に還り。残された姫長もまた、魂を二つに裂かれる呪を受けたという。
 それは恐らく、何も知らないものが聞けば、ただの荒唐無稽な御伽話に感じられただろう。けれども幼い頃から真影と対であった羽郁には、それが真実だと魂で感じられた。
 真影もそれは、同じだったらしい。羽郁を真っ直ぐに見つめて、影真、と呼ぶ――羽郁が彼女を王理と呼ぶように、この場に互い以外は存在しないからこその、真名で。

「不思議でしょ? ――あたし達はきっと、『彼女』だったんだわ」
「ああ、俺もそう思う。きっと、俺と王理は1つだったんだな」

 頷き合って双子は顔を寄せ、身を寄せて、かつて1つであった頃を思い出そうとするかのように、星空の下で瞳を閉じた。そうしていると尚更に、対である互いの存在が、境界すらあやふやに感じられる。
 そっと、真影が囁いた。

「全て定まっているって‥‥不思議ね」
「でも――俺は2つに分かれたお陰で、柚李葉と結ばれるんだな‥‥」

 羽郁はしみじみと、その幸いを噛み締める。真影と1つのままであったなら、きっと羽郁は何1つ欠ける事なく幸せであっただろうけれど。
 真影と1つのままでは、今の彼女がそうであるように、柚李葉とは親友にしかなれなかった。真影との絆とはまた別の、魂が震えるような縁で結ばれる事はきっと、なかった。
 それを想像するだけで、胸が塞がれるような心地がする。柚李葉のぬくもりも、眼差しも、微笑みも、何もかもが誰か別の物になる――そんな事、どうやったって耐えられそうにない。
 だから、2つに分かれてしまった事は悲しいけれども、嬉しい。そんな矛盾した気持ちを抱える羽郁を、察したように真影がぎゅっと抱き締めて、とうとう明日ね、とまた呟いた。
 明日。――彼らの歩んできた世界が、新たに彩られる。





 祝言の当日は、よく晴れた青空だった。暑くもなく、寒くもない、祝言には絶好の日和。
 そんな空の下だと、句倶理の里の門に立ち、花嫁の到着を待つ羽郁の心は尚更、浮き立つ気持ちで。これまでの事やこれからの事に思いを巡らせながら、花嫁行列の訪れを、待つ。
 今日の結婚式に臨んで羽郁が身に着けているのは、藍色に句倶理の家紋を白で染め抜いた大紋直垂。髪はぴしりと結上げて、その上に烏帽子を被っている。
 そんな正装で門の前に立ち、予定の時間よりも随分前から、行列が現れるのが今か、今かと待っていた羽郁は、遠くにようやくそれらしき影を見つけて、そわそわと浮き足立った。だがそんな内心を表には出さないよう、じりじりした気持ちで行列が近付いてくるのを、じっと見つめながら待ち。
 しずしずと、一定の速度を保って歩んできた一行が、門の前で止まる。輿が4台に、長持や箪笥、その他の嫁入り道具。さらには道中の世話をする者達などが連なる、ずらりと長い嫁入行列。
 羽郁の前で、列の先頭の輿の御簾がするする上がる。そうして現れた花嫁の姿に、羽郁は目を細めて微笑んだ。

「柚李葉」
「――あなたのお嫁さんになりに参りました」

 そうして名を呼んだ羽郁に、輿の上でほんの少し座りが悪そうだったけれども、緊張や安堵、喜びといった感情がない混ぜになった表情で、柚李葉が少し頭を下げる。すでに白無垢を身に付けた彼女には、それ以上の動きは出来ないのだろう。
 真っ白な練絹に、絹糸で鶴や桜、梅、四季の花々の刺繍を入れた、赤ふきの白無垢。頭に被った綿帽子も、陽光に柔らかく輝く白が眩しい。
 その姿に、これから彼女と結ばれるのだという感慨がひときわ強く沸き起こり、羽郁は眩暈にも似た感動を噛み締めた。ついに、という想いが強く、例えようもないほど強く胸に去来する。
 花嫁行列の中から1人の男が進み出て、羽郁の前に手をつき跪いた。

「御役目、恙無く終了しましてございます」
「ああ、ご苦労だった」
「ぁ、あのッ、ありがとうございました‥‥ッ!」

 そうして役目を終えた事を報告した男に、羽郁が軽く顎を引いて頷いたのと、柚李葉があたふたと頭を下げたのは同時。それに、どこか役目だけではなく深々と頭を下げて、男は腰を落としたまま脇に避ける――彼は、婚礼に先立ち句倶理が遣わした使者だ。
 男が退いたのに合わせて、朗々とした声が羽郁の花嫁が到着した事を門の中に知らせる。その声は次から次へ、あちらこちらで復唱され、里中に広まっていく。
 その余韻が消えないうちに、先導の従者に従って、花嫁行列が再びゆっくりと動き始める。御簾が上がったままの柚李葉の輿の傍らに、寄り添い羽郁もゆっくりと、門の中へと戻って行き。
 そこには、もう1つの花嫁行列が控えて居る。羽郁達と一緒に婚儀を執り行う、真影とタカラのものだ。
 柚李葉の花嫁行列も豪勢なものだけれども、真影の花嫁行列はその比ではない。真影は嫁入りではなくタカラという婿を取るので、嫁入り道具の類は見られないけれども、列をなす人数にせよ、祝衣装にせよ、実に豪勢だった。
 当の真影は白と紅を基調とした、薄物を幾重にも重ねてふわりと広がる、句倶理伝統の花嫁衣裳を身に付けていて、頭には金と紅玉の額冠が輝いている。傍らに寄り添うタカラも同じく句倶理伝統の、銀糸で句倶里の家紋を刺繍した白基調の狩衣を身に纏い、頭には真影のそれと対になるような、紫水晶を散りばめた銀の額冠をつけていて。
 見渡す限りの行列をなす従者達も、揃いのお仕着せとはいえ上等の絹で仕立てた衣に、精緻な刺繍を施したもの。一族の長の婚儀ともなれば、どれ1つを取っても手抜きは出来ない、とこの日の為に女房や従者達が、寸暇を惜しんで準備をした成果である。
 羽郁達が真影達の花嫁行列に近付くと、輿の上に座る姉がちらりとこちらを見た。そうしてタカラに何事か囁くと、頷いた彼がさらに従者に指示を出し。
 ゆっくりと、行列が動き出した。そうして真影達の列を先頭に、羽郁達がその後について里へと向かう。
 里ではすでに、里人が多く姿を見せていて、花嫁行列を1目でも見ようと、今か今かと待ち構えていた。そんな中をしずしずと、特定の歩調で花嫁行列が進んでくると、口々に歓声が上がる。

「長様、おめでとうございます!」
「一ノ姫、二ノ君、おめでとうございます!」
「タカラ様!」
「柚李葉姫!」

 その歓声に、けれども慣れていない柚李葉はびっくりしてしまったようだった。ねぇ、と輿の中から小声で、戸惑った声が少し不安そうに羽郁を呼ぶ。

「う、羽郁‥‥私も‥‥?」
「ああ。だって柚李葉も今日からは、句倶里の一員だしな」
「ぅ‥‥そう、だけど‥‥」

 羽郁の言葉に、柚李葉はその事実を噛み締めたのか、真っ赤になってごにょごにょと口の中で呟いた。そんな柚李葉が愛らしく愛おしく、小さく幸せに笑った羽郁に気付いた里の子供達が、あーッ、と楽しげな声を上げる。
 そんな風に賑やかに、里中を練り歩いて沢山の祝福を受けながら、花嫁行列は本邸へと到着した。最後の1人が敷地の中に辿り着くと同時に屋敷の門が閉められて、里人達の祝福の声が遠くなる。
 ひとまずここで、婚儀の一番最初の一歩が終わりだった。この次の祭事神殿での婚儀まで、それぞれに休息を取ったり、次へ向けての準備をするのである。
 羽郁ももちろんその例外ではなく、身なりを整えたり儀式の手順をさらったりと、やるべき事は幾つもあった。けれどもまずは柚李葉達を休ませるべく、彼女の3人の家族を案内するよう女房に指示してから、彼女を連れて用意した部屋へと向かう。

「柚李葉、こっち。疲れた?」
「ううん。緊張してて、まだ、それどころじゃないかも」

 そうしながら尋ねると、柚李葉はほぅ、と息を吐きながら首を振った。柚李葉の養家である佐伯家も、一般から見ればかなり裕福な部類だが、句倶里とは比べるべくもない。
 何度か本邸にも遊びに来て、泊まったりもした事があるのだから、多少はマシなのかもしれなかった。けれども、羽郁だって今日という晴れの日に少なからず――ある意味ではこの上なく緊張しているのだ、自分より遥かに控えめで慎ましやかな柚李葉が、それ以上に緊張しているのは想像に難くない。
 そう考えながら柚李葉の手を取り、連れて行ったのは祭事神殿へ向かうにも便利な、少し奥まった部屋だった。ざわついて居る屋敷の空気も、ここまではあまり届いて来ない。
 柚李葉が、少しほっとした息を吐いた。けれども、いざ部屋へと足を踏み入れてまた、彼女の動きがぴたりと止まる。
 そんな彼女を促して、羽郁も部屋に足を踏み入れながら、言った。

「大丈夫、みんな女房だから。柚李葉はゆっくり、時間まで休んでて」
「は、い‥‥」
「郁藤丸様。姫様は郁藤丸様がたとは違って、お慣れではないのですから――姫様も見知らぬ者ばかりの中で寛げと仰られても、お困りですわよね?」
「あ‥‥ぇっと、お久し振りです」

 その羽郁の言葉に、くすくすと笑って柔らかに言ったのは、羽郁と真影に古くから仕えてくれている、昔馴染みの女房だ。嫌味ではない口調と、以前にも顔をあわせた事のある女房の姿に、柚李葉がほっとした様子で笑顔を見せる。
 羽郁をわざと幼名で呼んだのも、彼女の緊張を解そうとしての事だろう。そう考えて眼差しを向けると、女房の『まったくお幾つになられても』と言わんばかりの眼差しにぶつかって、やれやれと肩を竦めた。
 他にも部屋に待機させていたのは、やはり羽郁達の傍仕えをして居るものや、分家の玖守家付の女房をあわせて6名。いずれも同世代か、先の女房のようにやや年上の者ばかりだ。
 彼女たちに任せて置けば大丈夫だろうと、判断して羽郁は「頼む」と言い残し、休息の間を後にした。そうして足を向けたのは、自室ではなく、佐伯家の人々を案内させた控えの間の方だ。
 羽郁自身も婚儀の為に、休息を取ったり身なりを整えたりしなければならない身だが、その前に会っておきたい人が居た。婚儀の後では尚更、ばたばたして時間が取れなくなるだろう。
 故に、控えの間に辿り着いた羽郁はその前で足を止め、少し深呼吸をして息を整えた。そうして、いざ声をかけようとした彼は、丁度出てきた人影に気付いて、そのままぽかんと口を開ける。
 そんな羽郁に人影は、玖堂 紫雨(ia8510)は優雅に口元に扇を当て、くすり、と笑った。

「おや、羽郁。柚李葉殿の方は良いのかい?」
「あ、うん、案内してきたけど‥‥父上は、どうしてここに?」
「大切なご息女に嫁に来て頂くのだから、父としてご家族に挨拶をしなければならないだろう」

 当たり前にそう言った父に、それもそうだと頷きはしたものの、やはり違和感は残る。その正体はなんだろうと、考えていた羽郁に答をくれたのは、中から紫雨と一緒に姿を見せた、佐伯夫人だった。
 柚李葉から聞く話でも、実際に顔を合わせた折にもどこか屈託ない、少女のような印象を周囲に与える彼女は、今日は留袖を品良く着こなし、年相応の雰囲気を纏って居る。けれどもくすくす笑う様子は、やっぱりどこか少女めいていて、そうして柚李葉によく似ていた。

「ご丁寧に、お父君がこちらまでご案内下さったんです。ふふ、あの娘は本当に、こんな素敵なお宅にお嫁に行けて幸せね」
「――案内の女房は?」
「皆、今日はお前達の婚儀で忙しい。代わろうと言ったら、喜んで頭を下げていたよ」

 それは恐縮したの間違いだと思ったが、どうせ紫雨は解っていてそう言っているに違いないのだから、突っ込むだけ無駄と言うものだ。何より佐伯夫人の前で、そんな身内のやり取りをするものでもないだろう。
 だから胸の中に湧き出た思いを、溜息を1つ吐く事でやり過ごし、羽郁は佐伯夫人へと向き直った。柚李葉を慈しみ、真の我が子のように可愛がって育ててきた、柚李葉が大好きな養母。
 そんな彼女を真っ直ぐ見つめると、あら、と佐伯夫人が微笑んだ。そうしてちょっと首を傾げた、夫人に羽郁は緊張を覚えながら、口を開く。

「養母上。柚李葉と同じように――俺の事も、今日からは息子と思って下さいませんか?」

 そう言って、羽郁はまた口を噤み、何かの裁可を待つ人のようにじっと、佐伯夫人を見つめた。――この日が来たらそう願い出ようと、ずっと、考えていたのだ。
 柚李葉との婚儀が終われば彼女の家族は、羽郁の家族にもなる。けれどもそれだけじゃなく、彼女には柚李葉と同じように思って欲しかったから、今までは柚李葉の養母として敬意と感謝を込めて『養母君』と呼んでいた彼女を、『養母上』と呼んだのだ。
 そんな羽郁を、しばし驚いたように見つめていた佐伯夫人は果たして、嬉しそうににっこりと微笑んだ。少女のように胸の前で両手を合わせ、嬉しいこと、とうきうきした様子で頷く。

「もちろん、私の可愛い柚李葉の旦那様ですもの。とっても嬉しいわ。――あら、もうお嫁に出すんだもの、『私の』なんて言っちゃ旦那様に失礼かしら」
「はは‥‥ッ、それ、養母上が言わなくなったら、柚李葉が悲しむと思います。俺も気にしません」
「そう? ふふ、我が家のことも実の家と思って、いつでも遊びに来てくださると嬉しいわ」

 にこにこと、微笑んでそう言った佐伯夫人に、必ずと羽郁は頷いた。そんな羽郁に紫雨が目を細めて、そうして何も言わなかった。





 身なりを整え直した羽郁は、時間を見計らって祭事神殿の、祝言の儀の間へと向かった。柚李葉も時間になれば、ここへやって来て共に儀式に望む予定になっている。
 同じく本邸でタカラと別れた後、今日の花嫁の1人として、長として慌しく立ち動いていた真影も、祝言の儀の間までやって来て羽郁に気が付いた。あら、と首を傾げる。

「羽郁。柚李葉ちゃん達はまだ?」
「ええ、姉上。もう少しかかるみたいです」

 姉を先導してきた従者の手前、改まった口調で頷いた羽郁に、そう、と真影は何だか詰まらなさそうに唇を尖らせた。居ないと言えば、タカラもこの場にはまだ来てないのだけれども、そちらを気にする様子はまったくない。
 まったく姉ちゃんは、と内心で苦笑した。柚李葉と親友で、羽郁とは別の次元で彼女が大好きな真影は、よく『羽郁ばっかり柚李葉ちゃんを独り占めしてずるい!』と怒っている。きっと、今唇を尖らせたのも同じような理由だろう――長として様々な役割を果たさなければならない姉が、ただの真影として友人と過ごせる時間は意外と、貴重だ。
 そんな真影に苦笑して、先ほどの佐伯の養母とのやり取りなどを話して居るうちに、控えていた従者が柚李葉とタカラの到着を告げた。途中で一緒にでもなったのだろうか、並んで歩んできた2人は何か話して居る様子だったが、羽郁と真影に気付くと揃って軽く会釈した。

「羽郁、真影さん。お待たせしちゃってごめんなさい」
「ううん。柚李葉ちゃん、タカラと一緒だったの?」
「偶然お会いしたんですよ。柚李葉姫、楽しい時間をありがとうございました」
「いえ‥‥あの、色々なお話を聞けて、楽しかったです」
「そっか。タカラ、ありがとな」

 すっかり緊張がほぐれた様子の柚李葉に、礼を言うとタカラは、とんでもありません、と穏やかに微笑んだ。恐らく、祝言に向けてまた緊張していた彼女に、気を使ってくれたのに違いない。
 柚李葉の手を小さく握ると、ほっとしたような笑みが返ってきた。そんな彼女に微笑み返し、祝言の間の方を振り返るとそこには真影が、傍らにタカラを従えて――それは従えて、という表現が実に相応しい、堂々とした様子だった――羽郁達を待っている。
 そんな姉達の元に、羽郁は柚李葉の手を引いて、ゆっくりと近付いた。手の中の彼女が、再び緊張して行くのが解ってぎゅっと、安心して欲しいと願いを込めて包みこむ。
 4人が揃ったのを確認して、真影に了承を求めてから、従者が新郎新婦の到着と、入場を告げた。同時に、祝言の間の重々しい扉がゆっくりと開かれ、待っていた奏者達が雅楽の音を奏で出す。
 正面には祭壇があり、その前には今日の祭事を司る紫雨が、高く髪を結い上げて真影のそれとは異なる装飾の金の額冠を着け、銀糸で句倶里の家紋が刺繍された純白の狩衣という改まった姿で、新郎新婦を待っていた。本来ならばそこに立つのは長である真影の役目だが、今日の主役はその真影なので、先代である紫雨が担うのだ。
 両脇には一族の者と、それから佐伯家の人々が並び、新郎新婦の入場を今か、今かと待っていた。そんな人々の視線の中を、まずは真影とタカラが、その後から羽郁と柚李葉が、2人並んで静々と祭壇へ歩みを進める。
 紫雨が、目を細めたような気がした。ふとそれに気付いた羽郁は、錯覚かと思ったものの、そうではないと微かに首を振る。
 確かに父は、羽郁と真影を見て目を細めているように思われた。それはどこか誇らしげにも、感慨深げにも見えて、ああ、と羽郁は小さな息を吐く。
 色々と規格外の父ではあるが、紫雨は羽郁達の愛する父だった。そんな父が、自分達の晴れ姿を喜んでくれている事が嬉しくて――そんな父に、こうして祝言を見せる事が出来て嬉しくて。
 知らず、誇らしげに床を踏み締め父の前へと歩んでいった羽郁は、そこから柚李葉と共に少し横に動き、先に辿り着いていた真影達の傍らに並んで立った。そうして慎ましやか眼差しを伏せた新郎新婦の上に、紫雨が粛々とした声で儀式の始まりを告げる。
 朗々とした声が、句倶里の民に今日新たな夫婦が誕生した事を報告し、祝い、加護を願う祝詞を読み上げた。そうして参列者に身振りで合図をするのに、合わせて全員で祭壇に向かい一礼する。
 それが終わると紫雨が羽郁達に向き直り、厳かに口を開いた。まずは真影とタカラへ、この婚姻に異存はないか、了承するかと問いかける。
 真影達が終わると、次は羽郁達の番だった。

「今日この日より、お前達は夫婦となる。双方、それに異存はないか?」
「ありません」
「ありません」

 僅かに緊張に震える声を揃えて頷くと、す、と紫雨が手を上げる。すると巫女姿の娘達が音もなく現れて、新郎新婦と参列者の前に置かれた杯に、誓いの酒を注いで回った。
 とくとくと丹塗りの杯に注がれる、透明に揺れる誓酒。これを飲み干せば、誓いの儀式は完了だ。
 両手で杯を奉げ持つ、羽郁の傍らで同じく杯を奉げる柚李葉が、緊張して、そうして一生懸命になっているのが傍らでも感じられた。生まれた時から句倶里として、大なり小なり儀式と名のつくものに関わる事も少なくなかった羽郁達とは違い、柚李葉は一応儀式の流れを予行演習したとはいえ、ほぼ初めてだから、無理もない。
 それでも一生懸命、手順を間違えないようにと頑張ってくれて居るのが、素直に嬉しく、愛おしかった。紫雨の合図に合わせて誓いの杯を飲み干した、羽郁の胸を暖かな充足感が満たすのは、きっと、そのせいだ。
 ――すべてが滞りなく終了すると、祭壇から下りた紫雨が真影の前に進み出て、すッ、と音もなく跪いた。

「御主殿。これにて祝言の儀は、滞りなく終わりましてございます」
「大儀であった、紫雨」

 それに鷹揚に頷いて、真影が紫雨に声をかける。それから頭を巡らせて、参列した家臣達へと眼差しを向けた。

「皆の者も、大儀であった。今後とも私を支えて欲しい」
「御主殿のお言葉のままに」

 それに腰を折ったのは、家臣達だけではない。祝言を挙げたタカラも、羽郁も――柚李葉や佐伯家の人々以外、その場に居並ぶすべてが真影に頭を垂れる。
 柚李葉が、羽郁に合わせて頭を下げた方が良いのか悩む気配があった。だがすぐに皆が頭を上げ、次の披露の宴へと動き始めたのに、どこか所在なさげに立ち尽くす。
 そんな彼女の手を握り、大丈夫、と羽郁は微笑んだ。

「俺たちも行こう。宴にはこれより、もっと沢山の者が挨拶に来るから、大変かもな」
「え、そうなの?」

 そうして告げた言葉に、柚李葉が目を丸くして驚き、どこか不安そうになる。そんな彼女にもう一度、大丈夫、と囁いた。
 大丈夫、必ず自分が隣に居て、柚李葉を支えるから――と。





 その夜に催された披露宴は、一族のほぼ総てが顔を並べる、実に盛大なものだった。何しろ長とその弟の祝言だ、よほどの事がない限り出席しなければ、謀反を疑われても仕方ない。
 並ぶ料理も勿論、贅と粋を凝らした物ばかり。上座に並ぶ新郎新婦の前にもそれは勿論並べられたが、こういった場では手を付ける余裕がないのが常である。
 それでいて、宴の開始を告げるのが花嫁の1人である真影と言うのも、よく考えるとおかしな話だ。もっともそこは長である以上、仕方のない事で。

「皆、今日は良く集まってくれた。ささやかな宴だが、存分に楽しんで欲しい」

 そんな決まり文句と共に、披露宴は始まった。親族席には紫雨と、佐伯家の人々が並んで座り、柚李葉同様にこういった場には慣れていないだろう3人に、料理の説明をしたり、親族を呼んで紹介したりと、新郎新婦の父と当代の補佐と言う役割に徹している。
 披露宴の主役である羽郁達ともなれば、その比ではなかった。一族の者が入れ替わり立ち代り、長夫婦への言祝ぎを告げた後にやってきて、羽郁と柚李葉に頭を垂れていくものだから、そのたびに謝辞を述べたり、注がれた酒に注ぎ返したり。
 時々、傍らで一生懸命羽郁に合わせて柚李葉も、相槌を打ったり杯にちょこんと口をつけたりした。といって、いちいち全部を飲み干していては、間違いなく柚李葉の身がもたない。

「すまないけど、妻はそのくらいにしてやってもらえるかな。代わりに、柚李葉の分も俺が飲むから」
「う、羽郁‥‥」

 だからさりげなく柚李葉の肩を抱き寄せ、言った言葉に彼女が真っ赤になったのが、初々しいと周りから微笑ましい眼差しを向けられる。それにまた真っ赤になって、ぁぅぁぅと俯いてしまう柚李葉に、今度は暖かな笑い声が漏れた。
 そんな風に宴は賑やかに、華々しく進んでいく。幾度も料理が入れ替わり、追加の料理が座に並んで、あちらこちらで酒がなくなり追加の声が絶え間ない。
 宴が終わる頃合になると、空いた大皿が次々と厨に引かれ、座には軽くつまめるものが中心に並び始めた。それから居並ぶ全員の前に、1つずつ置かれたのは紅白饅頭。
 新郎新婦の前にも並べられた、紅白饅頭に柚李葉が嬉しそうな声を上げた。

「あ‥‥ッ。瀬奈ちゃんのお家のお饅頭?」
「うん。昨日、取りに行ってきたんだ」

 そんな柚李葉の言葉に、羽郁は笑って頷く。かなり大量になってしまうので、さすがに羽郁1人では難しく、相棒の龍と共に取りに行ってきたのだ。
 羽郁の説明に、柚李葉が嬉しそうににっこり笑って、頷きながら饅頭を見つめた。羽郁達の前にも形式として並べられたが、料理も含め、これらは披露宴の後で改めて、新郎新婦の部屋に届けられることになっている。
 だから一先ずはそのままに、一通りが終わった所で羽郁達は、宴の席を後にした。この後は常の宴と変わらず、帰りたい者は帰り、残りたい者は夜通し酒を飲み交わすのだ。
 けれども羽郁達にとっては、この夜もまた大切な婚礼の儀式の1つである。夫婦となる男女が初めて床を1つにし、三日の夜を過ごす――いわゆる三日夜餅の儀だ。
 婚礼衣装を解いて、儀式のために用意された白の夜着へと着替えると、どきどきと逸る気持ちを抑えて女房の先導に従い、件の部屋へと向かう。柚李葉は別の女房に案内されて、やはり同じ部屋へと向かっているはずだ。
 あんまり早く行っても緊張するのではないか、だが待たせても緊張でおろおろしているのではないか――そう想像する羽郁の訪れを、御簾越しに女房が抑えた声で部屋の中へと伝えた。それに応える声が返ってきて、御簾がようやく1人、通れる分だけ開けられる。
 身体を滑り込ませると、女房が羽郁に深々と頭を下げた。そうしてそっと「奥方様はお疲れのご様子です。ご無体はなさいませんよう」と微笑み混じりに囁いて、入れ替わりに御簾の外へと滑り出て行く。
 心外な、と思わずその言葉に苦笑した。もちろん、彼女達が本気で羽郁が、柚李葉に何か無体な事をすると案じているわけじゃないのは、解っているけれども。
 そう思いながら羽郁は半蔀が下ろされて、灯火だけになった部屋の中を見回した。そうして、1組の布団に仲良く並べられた2つの枕と、その傍らに用意された披露宴の食事、紅白饅頭を前に座る柚李葉を見て、女房の言葉を理解する。
 食事の前にちょこんと座り、やはり夜着姿になった柚李葉は、けれども酷く眠たそうだった。ふと気を抜けばかくりと首が落ちそうなのを、ぎりぎりの所で堪えているのが、端から見てよく解る。

「‥‥ぁ、羽郁‥‥‥」
「ごめん、柚李葉。待った?」

 羽郁に、気付いた柚李葉が眠たそうに目を擦りながら、彼の名を呼んだのに微笑んだ。ぺちぺちと、両頬を叩いた彼女が少しだけしゃんとした眼差しになって、だがどこかとろりと眠たそうに、ううん、と首を振る。
 よほど眠いのか、いよいよ夜を共に過ごす、という局面に居る事を、柚李葉はあまり意識して居ないように見えた。だが――そんな彼女も、愛おしい事に変わりはない。
 だから羽郁は、知らず肩に入っていた力を抜いて、柚李葉の傍らに座った。そうして紅白饅頭を手に取り、はい、と渡す。

「これ食べたら、今日はもう寝ようか」
「う、ん‥‥ごめんなさい、ずっと緊張してたから‥‥」
「いいよ。――そうだ、1つだけ。昼間に会った女房達の中で、気に入った者は居た? 柚李葉が気に入った女房を、柚李葉付きにしようと思うんだ」
「ぇ‥‥気に入った、人‥‥?」

 紅白饅頭をしっかりと受け取りながら、柚李葉は眠たそうな口調で羽郁の言葉を繰り返した。うん、と頷くとこくりと首を傾げて少し考えた後に、お日様みたいな人、と呟く。
 柚李葉より少しだけ年上の女房。笑顔が眩しく、それで居て優しく見守られて居るような、ぽかぽかするような人。
 そう言って、小さく眠たそうな欠伸を零した柚李葉に、解った、と頷いた。そうしてようやく、紅白饅頭を口にした柚李葉は、嬉しそうな笑顔で「美味しい」とすっかりお腹に収めた後、ついに羽郁の肩にもたれて眠り込んでしまう。
 そんな彼女の、寝息すら愛おしく、羽郁は幸せな微笑みを浮かべた。起こしてしまわないよう、そぅっと身体の位置をずらして柚李葉を抱き上げ、用意されたふわりと柔らかい寝具に、優しく横たえる。
 その傍らに滑り込むと、安らかな寝息が耳元をくすぐった。よっぽど疲れていたらしいと、改めて感じてそんな柚李葉の髪をそっと撫でる。
 そうして羽郁も瞳を閉じて、その夜は過ぎていったのだった。





 翌日もまた、盛大な宴が催された。といっても今日の宴は、羽郁を含めた男達だけの、ある意味では気の置けない宴だ。
 羽郁だけではなく、タカラや紫雨ももちろん、一族の男としてこの宴に参加する。じゃあその間は新婦や一族の女達はといえば、やはり本邸内の別の対の屋で、同じように一族の女だけの宴が催されておリ、そちらに参加しているのだ。
 男だけの宴ともなれば、妻や婚約者、他の女達の厳しい目を気にしなくて良い分、会話の内容もざっくばらんだ。羽郁は少なくとも5人の男に、夫婦生活を営む上での注意事項を――主に妻に接する時の注意事項をもっともらしく説かれ、少なくとも10人には柚李葉がどんな娘なのかと聞かれた。
 もちろん、婚約を整える時点で一族の幹部は彼女の事を調べていたし、ある程度は耳にも入って居るだろう。だがそれはあくまで調べられた情報であって、言うなれば一族の若い男の中には、もっと率直に羽郁とその婚約者に興味を持っている者も居たのである。
 そういった者にとってもまた、この宴は絶好の機会となるようだった。とはいえこの場には紫雨やタカラを始め、一族の幹部も揃っているし、羽郁だって長の弟という立場だから、さほど困るようなことは聞かれない。
 そんな男達の相手をしながら、羽郁は概ね宴の時間を、タカラや紫雨とゆっくり会話をして過ごした。それぞれに忙しい身の上だから、実の所、こんな機会でもなければあまり、時間を取ることもできないのだ。
 柚李葉は、女の宴の方で目を回したりしていないだろうかとふと、思う。さすがに羽郁も足を踏み入れた事のない場所だから、案じるにもいったいどんな場所なのか、真影から聞いたことがあるくらいで想像がつかないけれども。
 とはいえ、その真影も同じ宴に出席して居るのだから、そう心配することもないだろうが。『柚李葉ちゃんの事は任せて』と頼もしく胸を張っていた真影の事だ、何かあれば全力で守るだろうし、そんな真影がそばに居ればさすがに、長を相手に何かしようとする者も居ないだろう。
 そんな事を考えて、酒を飲んだ羽郁の内心が面に出ていたものか、タカラと紫雨が揃って笑った。

「羽郁、柚李葉殿がもう恋しいのか?」
「柚李葉姫なら、御主殿にお任せしておけば大丈夫ですよ」
「――父上、義兄上」

 そんな2人のからかう口調に、恨めしく眼差しを向けるとまた、2人が声を立てて笑う。恋しくて悪いかと、半ばふてくされて羽郁はまた酒を飲み、唇をへの字に曲げて。
 ――その翌日は、句倶理が祀る精霊に新たな夫婦となった者が、新たに家族となり句倶理に住まうことを報告し、挨拶して、これからの加護などを祈る儀式だった。精霊、といっても何かカタシロのようなものがあるわけではなく、ただその場に精霊が祀られているとされる神域に拝礼するのだ。
 儀式を執り行うのは、今日も紫雨の役目。まずは長である真影に確認を取った後、さすがは先代というべきか、あの父の生来の性格なのか、慣れた様子で粛々と儀式を進める紫雨の前に、羽郁と柚李葉、真影達が頭を垂れて精霊に祈りを捧げる。
 これからの、日々。呼吸が途絶え、鼓動が止まるその瞬間まで、最愛の人と共に歩んでいく、未来。
 まだ始まったばかりのその日々が、願わくばささやかな、代わり映えのない、幸いな日々でありますようにと、静かに願う。願い、そんな日々を築くのだと、誓う。
 柚李葉を、彼女の微笑を守って。この命が続く限り、永遠に。
 ――この儀式が終わればまた宴会が催され、夜になれば三日夜の餅を食べて眠り、明日の朝には柚李葉と単を交換して婚儀は終了する。けれどもそれは、これからずっと続く日々の、ほんの始まりだから。

「‥‥柚李葉、これからも宜しくな」
「――うん。よろしくね、羽郁」

 微笑み囁いた羽郁に、はにかむ笑顔が頷いた。句倶理の里の精霊が、そんな2人を優しく見守っているような気がした。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 /     PC名     / 性別 / 年齢 /  職業  】
 ia0490  /    玖堂 真影    / 女  / 20  / 陰陽師
 ia0859  /    玖堂 柚李葉   / 女  / 19  / 巫女
 ia0862  /    玖堂 羽郁    / 男  / 20  / サムライ
 ia8510  /    玖堂 紫雨    / 男  / 25  / 巫女
 ib3236  / タカラ・ルフェルバート / 男  / 30  / 陰陽師

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、蓮華・水無月でございます。
この度はご発注頂きましてありがとうございました。
お届けが遅くなってしまい、申し訳ございませんでした‥‥

最愛の姫君との盛大な結婚式、如何でしたでしょうか。
ノベルのジスーさんは、プレイングのジスーさんよりも険しく厳しくHPが高い、と色んな方からお伺いしております;
ちなみに今回のお養母さんは、恐らくは愛娘の晴れ舞台、ということで余所行きモードになっておられたのだと思います。
‥‥‥‥多分(

息子さんのイメージ通りの、未来へ続く新たな始まりとなる特別な日々のノベルであれば良いのですけれども。

それでは、これにて失礼致します(深々と
鈴蘭のハッピーノベル -
蓮華・水無月 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年07月29日

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