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『共鳴する歌 』
蛇蝎神 黒龍jb3200


 今年の夏も、相変わらず暑い。
 身体にまとわりつくかのような熱気から逃れるため、撃退士であり生徒の諸君は、仲間たちと共に海や山へと繰り出す。それは戦いの合間に得る休息であり、同時に青春の謳歌でもあった。
 黒龍もまた、彼らと同じような機会を得たので、今回は思い切って避暑地へと繰り出した。
 彼は普段、本の修復や翻訳を請け負っている。その仕事を旅行先でしようと、パソコンと辞書を荷物に入れた。あとは適当に詰め込み、身軽な格好で旅に出る。まさに「羽を伸ばす」には、ちょうどいいくらいだった。

 さすがは避暑地、同じような暑さにも関わらず、風がひんやりとして涼しい。また緑も木陰も多く、気分転換にはうってつけだ。この環境での作業は非常に捗る。翻訳に困っても、外に目をやるだけで、不思議と別の角度から考えようという気になるのだ。
 こうして、定められた言葉は姿を変え、表現もかなり原文に近いニュアンスに置き換わっていく。記述も頭にすんなりと入ってくるといいことずくめだ。
「うんうん。なかなかええ感じやで」
 どうやら仕事に目処がついたらしく、黒龍はパソコンと辞書をおもむろに閉じた。
 その瞬間、周囲は少し強い風に揺られ、自然の音を彼に聞かせる。それは仕事終わりの彼に心地よさを授けるはずだった。
 しかし、黒龍は人の声のなさを感じてしまい、ふと表情を曇らせる。普段ならこの後、親友の誰かと出かけるのだろうが、今日はあいにくひとり。それに、ここは避暑地だ。他者とのふれあいがあっても、まるで吹き抜ける風のような一瞬の出来事に違いない。
「ひとり、か……」
 黒龍は哀愁交じりの微笑を浮かべながら、木造のビーチチェアまで歩き、そのままゆったりと寝そべると、音楽プレーヤーに取り込んでおいた歌を聞き始めた。
 それはある女性シンガーが歌う、恋愛の曲。切ない片思いを描いているが、歌詞は力強く、前向きな気持ちにさせてくれる。黒龍は風に吹かれながらそっと目を閉じ、静かに聞き入った。


『sympathy』

  キミを閉じ込める水晶 溶かすためなら何でもする
  解き放たれるその時を 響き合える時を夢見て


  昨日の夕日眺めて キミは何を思うんだろう
  僕らを繋ぎ止めてる 言葉の意味は揺らめくだけ
  気持ちは翼を持たず 今日もじっと膝を抱え
  明日の夜明けを望み 無垢な瞳で見つめている

  今でも 夢でも キミの目覚めは描けぬまま
  それでも笑うよ 心の光はきっと輝いてるから

  キミは目覚めるさ必ず 凍え震える水晶から
  言葉も声も仕草さえ いつかすべてが絡み合うんだ


  言葉は気持ち揺さぶり いつも声は励ましてる
  心に刻みつつある 想いの意味は少し弱く
  自由に羽ばたく空を 飛ぶには氷が重くて
  誰かの助けを得ても 舞い上がるのはいつの日か……

  氷の中でも 迷い惑うよ 心の中
  鏡のようだよ ふたりの気持ちは乱反射して混じる

  キミがくれたすべていつか ひとつひとつを掲げていく
  集めた炎 解き放ち きっとふたりで響き合うんだ
  キミは目覚めるさ必ず 凍え震える水晶から
  言葉も声も仕草さえ いつかすべてが絡み合うんだ


  信じるならいつもふたり かすかな鼓動を感じ
  キミと僕との距離なんて ふたりで決めればいい……


  キミが目覚めるかわからず 惑い苦しむ時が来ても
  昨日の夕日は知っている(evening sun) 無垢な瞳は僕を見ていた
  キミが答えなき気持ちに 悩み悲しむ時が来ても
  明日の夜明けは知っている(daybreak,lala...) 胸に宿ったかすかな光

  キミは目覚めるさ必ず 凍え震える水晶から
  言葉も声も仕草さえ いつかすべてが絡み合うから
  信じて(I believe,lala...) 信じて(You believe,lala...)
  視線はふたり 未来(まえ)を向いて……


 この曲をずっとリピートで聞いていた黒龍は、いつの間にか眠てしまったらしい。目が覚めた頃には、一面の星空が広がっていた。不意にテーブルへと視線を飛ばすが、仕事道具たちは何も言わず、ただ静かに佇んでいる。
 黒龍の耳元ではまだ、あの曲が鳴り響いていた。
「未来を向いて……」
 彼は愛しい人を思いながら、そっと最後の歌詞を口にした。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 jb3200 / 蛇蝎神 黒龍 / 男 / 24 / ナイトウォーカー


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、市川智彦でございます。
この度はご発注いただきまして、誠にありがとうございました。

ご注文が「ノベル+歌詞」ということで、久々に緊張いたしました。
黒龍さんの気持ちがしっかりと表現できていればと、心から願っております。
またの機会がございましたら、ぜひよろしくお願いします!
流星の夏ノベル -
市川智彦 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年08月13日

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